これこそがテロなんだと思った
23日の宇都宮城址公園付近で複数の爆発については、昼頃何かのニュースで聞いた。複数の爆破があり、一人死亡ということで、テロかなと思った。しかし、米国での同種のテロ事件から想定していた規模ではなさそうなので、不審な思いを残しつつそれほど関心は持たなかった。その後、同日の7時のニュースでは、すでにその死者は72歳の元自衛官で、自殺図ったと見られると知り、自分としてはあらかたの関心を失った。
その後、なにか思い出すなと心を探り、2015年6月30日の東海道新幹線での71歳の男性の焼身自殺を思い出した。あれは、巻き添えの死者を出した点で、恐ろしいものだと思っていた。ネットでは、たしか低年金者の下流老人という視点や、こうした世相を導いたのは安倍政権だとかいう批判を見たように思う。今回はどんなネットの反応があるだろうかと連想したが、探ってみる気力もなかった。
その後、連日このニュースは続いたが、米国大統領選挙と同様、関心を失ったこともあり、録画したニュースの良さでさくさく飛ばしていたのだが、ふとこの老人がブログを書いていたというのを知った。消去されていなければ残っているだろうし、直接残っていなくてもまとめサイトのようなものに残っているだろう。覗いてみるかとブラウザを立ち上げ、すぐに該当ブログが見つかった。複数あった。どれも同じ内容だった。リンク先を書く必要はないだろう。
最新の記事は9日付けだった。まず見たタイトルが「内閣官房 内閣法制局 内閣府 宮内庁 国家公安委員会・警察庁 総務省 法務省 文部科学省 厚生労働省」とあり、嫌な気分になった。「衆議院議長公邸」に宛てた、やまゆり園の事件を連想したからである。これが「デアデビル、ジェシカジョーンズ、ルーク・ケイジ、アロー、ザ・フラッシュ」だったら少し救われただろうか。まあ、少しくらい。
そしてブログを読んでみた。つい読んでしまったのである。するといきなり、「ネット炎上を期待しているのですが、訪問者さえ少なく、色々と工夫しております。大げさにしなければ成りません。」とあり、萎えた。そういうことだ。炎上を期待して色々工夫したいなら、この手のことに詳しい人を僕は知っているけどなあと某氏を思ったが、炎上芸人の某氏は意外と健全でこうした話題には関心ない。
そして全部読んでみた。72歳とはいえ私のように12年以上もブログをやっている人でもなく、過去ログは少ない(私のは多い)。そして基本主張は明確なので(私のは明確でもない)、自分なりにすぐにわかった。知的障害者の娘と新興宗教を信じる妻から見放され、裁判でも自分の正義が通らず、財産も失うということらしい。地獄だなあとそれはと素直に思った。自分がそういう立場なら、これはこれで地獄だなあと感じる、と思ったのである。
ただ、自分なら自爆しないだろう。爆発物が作れてもそうはしないだろう。いや、どうかな、どうだろうか。法でさばけない正義もあるとデアデビルは言っていた。くどい。
それからふと奇妙なニュースを見かけた。共同などにも類似のニュースはあったが東京新聞「「秋葉原のような事件を」 宇都宮爆発 元自衛官がネットに書き込み」(参照)より。
宇都宮市中心部の公園で爆発があり、巻き込まれた男性三人が重軽傷を負った事件で、自殺したとみられる元自衛官栗原敏勝容疑者(72)が三月ごろ、ネットに「秋葉原無差別殺傷事件のような事件を起こしたい」との趣旨の書き込みをしていたことが分かった。同容疑者の妹が共同通信に証言した。
栃木県警は、現場周辺で複数の乾電池やリード線のような物、ビー玉、くぎを発見。栗原容疑者が自作した爆発物の一部で、ビー玉やくぎは殺傷能力を高めるためとみて殺人未遂容疑で調べる。栗原容疑者の車と自宅の火災も、爆発物を使った可能性があるとみている。
証言によると、栗原容疑者は三月ごろ、七人が死亡、十人が重軽傷を負った二〇〇八年の秋葉原無差別殺傷事件と類似する事件を起こしたいとフェイスブックに書き込んだ。
栗原容疑者が当時、妻との離婚などを巡る訴訟で自暴自棄になっていたため、妹はフェイスブック上で「罪のない人を道連れにするようなことは先祖が許さない」と忠告。しかし「先祖に許しを願った」と回答が来たため、とうとう覚悟が固まったのかと危ぶんだという。
姉にも相談し、一緒にいさめると、その後は落ち着きを取り戻したようにみえたが、安心した頃に事件が起きたという。
ブログのほうにはそうした記述はなかった。フェースブックかあ。ちょっと覗く気はしない。そもそもできないのではないか。記事にも「同容疑者の妹が共同通信に証言した」とある。
報道では「との趣旨」であって趣旨の含みはよくわからない。妹さんは「罪のない人を道連れにするようなことは先祖が許さない」と言ったというのだから、あくまで道連れであって、秋葉原無差別殺傷事件のような意図的な無差別殺人でもないつもりだったのか。それにしても、72歳の男の妹さんというから、60代後半だろうか。そんなふうにフェースブック活用しているのですね。
そこで自分の関心は終了。後は特に考えることもない、と、チキンカレーを作っていたのだが、そのときふと奇妙なことに気がついた。
彼はなぜ爆破自決をしたのだろうか。そうしないと、世間の人が彼にとって重大な問題に目を向けないからである。彼は自身の正義を主張したかったのである。冤罪だとも言っていた。現代のヨブのひとりである。
そうだろうか? 彼は怒っていたのだ。それは彼のブログにくだくだと書かれた裁判関係への人々への怒りから始まったものだろうが、その後、彼の怒りは、その正義を受け取らない人々に向けられていた。
その「彼の怒りと正義を受け取らない人々」とは、私であり、あなたである。彼は、殺傷能力のある道具でその正義を私たちに向けたのである。
これこそがテロなんだと思った。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)