三酔人徒政問答2
南海
やあ久しぶり(参照)。ところで出席予定だった終風君だが来られなくなった。体調が悪いらしい。こんとこブログにも穴を開けていたしからな。
洋学
別にあんなやついなくてもいいよ。ブロガーがどうたらっていう時代でもないしな。
豪傑
それもそうだが、終風君がポリタスに発表していた『日本の「18歳選挙権」は高校改革からやり直せ』(参照)は悪くなかったよ。先日の参院選といい都知事選といい、「18歳選挙」の実現だったわけだが、この問題についてもっときちんと日本の社会は対応すべきだったし、今からでも遅くない。
洋学
豪傑君からその言葉を聞くのはちょっと意外だ。君なら、若者の選挙といえば、SEALDsで事足りていると考えていたんじゃないのか。あれもSMAPみたいに解散したらしいがね。
南海
ところで洋学君は、前回の話のとおり、都知事選では「舛添要一」に投票したんだろうね。
洋学
そうだよ。何か疑問でも。
南海
いや、君のことだから「小池百合子」に鞍替えしたんじゃないかと思ってね。おっと、「鞍替え」っていい表現じゃあないけどさ。そのあたり、君が小池をどう思っているかちょっと聞きたい感じはしていたところなんだ。最初にこっちの手の内を明かしておくと、僕は「小池百合子」に入れたよ。政治家としてのキャリアもあるし英語もアラビア語も話せる。実際今回のオリンピック閉会式での和服姿の演出も見事なものだった。今週の日本版ニューズウィークにまた彼女のエッセイが寄稿されているが、きちんとよくまとまっている。増田寛也だったらあそこまできちんと書けないだろう。
洋学
南海君も軟弱になったものだ。歳っていうものかな。終風君も先日59歳になってしまったとか泣いていたが。しかし南海君もそこまで正直に言うなら、こっちも率直に言おうって気分にもなる。簡単に言うと、小池百合子って薄気味悪いんだ。
豪傑
そうそう。まったくな。
洋学
豪傑君の賛意には申し訳ないが、たぶん豪傑君の感覚とは違う。君が小池百合子に感じる薄気味悪さというのは、ナショナリストとか保守主義とか、あれなんだっけ「日本会議」っていうのか、そういうどうでもいい右派イデオロギーの問題だろう。そうじゃないんだよ。違うんだ。
豪傑
何が違う? 小池百合子が都知事になったとたん政務担当特別秘書に採用したのが野田数だぜ。こいつ、ナショナリストどころか、洋学君のお好きな西欧風に言えば「極右」そのものじゃないか。戦前の「大日本帝国憲法」の復活を求める活動とかしてんだぜ。
洋学
それなんだが、そこはさすがに君と議論する気もないんだ。ユークリッド幾何学の第五公理じゃないが、どこまで言っても平行線。ただ簡単にいえば、都政においてナショナリストとか極右とかの看板掲げて非難しても、あの極右の石原慎太郎都知事でなっとかやってきちゃった実績がある。都民もそこは麻痺している。
豪傑
だから、その麻痺が問題なんだろ。それに小池百合子の右傾度は石原慎太郎の比じゃないんだ。
南海
うーん、それはどうかな。ちょっと想像が過ぎると思うなあ。さっきも言ったが、小池百合子の、今週の日本版ニューズウィークの寄稿とか読む限り、極右的なものはほとんど見当たらない。しかもあれ、野田数とかが代理で書ける文章じゃないよ。というところで、洋学君が小池百合子に感じる薄気味悪さって何だ?
洋学
権力さ。なんていうのか、日本の政治家において、こんなに権力を純粋に志向した政治家なんかいたんだろうかという感覚でもある。
豪傑
洋学、おまえこそ何言ってんだ。日本の政治家なんて、全員、権力志向じゃないか。戦前そして戦後も自民党の独裁権力の闘争の歴史じゃないか。
南海
ああ、なるほどな。いや、豪傑君、ちょっと待ってくれ。僕は洋学君の言わんとしていることはなんとくわかる。豪傑君の言うような日本の腐敗した権力者というのもわかるんだが、あれだよ、ウォルフレンの『日本/権力構造の謎』だ。彼は、国家というものは本来、「政治的中心の存在を前提とする、責任の所在」を前提とするのに、日本にはそれが欠落しているがゆえに、国家ではなく「システム」だとした。そして、この「〈システム〉は政治的責任感の発達した、自立した市民の存在を許し得ない」から「マスコミと企業を通しての教化によって、解放された市民の発達が阻まれている」ということ。実体としての権力者はいなかったんだ。
豪傑
何言っているのか、さっぱりわからんね。くだらない修辞だ。国家というのはそもそも暴力装置であり、権力の機構だ。そしてこれを支配しているのは権力者だ。もっとシンプルに考えるべきだ。
洋学
ほらな。そこが豪傑君のいいところでもある。というわけで、南海君向けに言うと、小池百合子に感じるのは、ウォルフレンが規定した日本という「システム」を超える権力を志向している薄気味悪さなんだ。もうちょっと言うと、彼女は、都政を足がかりに国政の中枢に昇ろうとしている。とはいえ、これが普通というものだ。ヒラリー・クリントンなんかまさにこうした権力の亡者だ。野田数の使い道にしても、極右とかそんな単純なものじゃない。いや、単純といえば単純なんだが、彼が日刊SPAに連載していた都議の連載エッセイを読むと面白いよ(参照)。続けて読むとわかるが、これが実に支離滅裂なことを書いているんだが、あれが元小池百合子の鞄持ちだったという文脈で見るなら、彼女はこの間、都議の空気を実によく読んでいたんだ。もともと彼女はずっと都知事を狙っていたしな(参照)。
南海
あれだな、『日本版NSC創立に際して、私が感心して読んだのは猪瀬直樹さんの『昭和16年の敗戦』でした。また私の座右の書は『失敗の本質』です』って話だ。2014年の話だったな。とすると、しばらくは小池百合子都政のお手並み拝見ということころか。ところで、豪傑君は誰に投票したんだ。残念なことに宇都宮健児は立候補もしなかったが。
洋学
あれは笑えたな。
豪傑
実に嫌なやつらだ。鳥越俊太郎に決まっているだろう。実際、初戦段階では他候補を抜いて優位にあった。あの状況で宇都宮さんに引いてもらうのはしかたなかったし、決して悪い戦略ではなかった。
洋学
で、今でもそう思っているのかね。
南海
洋学君、その話はもういいだろ。宇都宮健児が出馬を断念した内幕を知りたかったら、産経新聞でも読めばいいだけのことだ(参照)。
洋学
たしかに、鳥越陣営と宇都宮支持者の問題なんかどうでもことだが……
南海
なんか他に気になることでもあるのか。
洋学
ないと言えば嘘になる。だから、「舛添要一」に投票したんだということでもある。小池百合子も叩けばホコリは出る。そして叩かれてもサバイブするようなら、さっき言った嫌な感じが実現する。どっちもろくなものじゃない。
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