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2016.06.01

核のない世界を目指す第一歩はどこだろうか?

オバマ大統領の広島訪問の際、儀礼的・修辞的な話はひとまず置くとして、現実的に、核のない世界を目指す第一歩はどこだろうか?と考えてみて、まあ、パキスタンの核兵器ではないかなと思った。そう思っている人が日本にどのくらいいるだろうかなとも思い、そういえばと、昨年末の「シャヒーン3(Shaheen III)」のニュースを思い出した。日本語で読めるニュースはAFP「動画:パキスタンで弾道ミサイルの試射、核搭載も可能」(参照)くらいだったように思う。事実だけを告げる短い記事だった。

【12月14日 AFP】パキスタン軍は11日、核弾頭の搭載が可能な弾道ミサイル「シャヒーン3(Shaheen III)」の試射を実施したと発表した。パキスタン政府はこの2日前、最大のライバル国であるインドとの首脳レベルの和平交渉を再開する可能性があるとの声明を出したばかり。

世界の核兵器問題をどう捉えるかというと、日本と限らないが、ついその数から考えやすい。米ソが核兵器で対立していた時代もあったので、しかたがない。だが、核兵器の問題の大枠は、その削減の手順からしても核拡散防止条約(NPT)が基本になる。

ということは、NPTの枠に収まらない核兵器をどうするかという問題が優先的になる。この問題は、日本のリベラルの言論では、反米・反イスラエルということから、イスラエルがNPT外に隠し持つ核兵器が話題に移りやすいが、イスラエルの核兵器は実質米国のタガが嵌められていると見てよいので(中東諸国が米国を信頼している限りはということ)、その点ではNPTの拡張としてあまり国際問題にはならない。

すると残るのは、NPT外に核兵器を持つ、インドとパキスタンと、それとまあ北朝鮮の3国である。北朝鮮が国際問題になるのは概ねこの文脈になる。幸い北朝鮮は現状はまだまだお笑いの状態にある。となると、実質的な問題はインドとパキスタンの2国ということになり、NPTに収まらない両国がぶつかり合うと核戦争になりかねないということで、課題として浮かび上がってくる。

皮肉なことに、先のAFPのニュースにもあったように、ここでは小規模の冷戦の構図がすでに出来ていて、むしろ両国の核兵器のバランスが崩れるほうが危険な状態になる。その意味で、「シャヒーン3(Shaheen III)」開発もしかたがないかとも言えそうだが、そもそも隣接する国家であるインドとパキスタンが、双方、長距離射程の核兵器搭載弾道ミサイルを持つというのはどういうことなんだという問題がある。

話がごちゃごちゃしてきたが、国際的な課題としては、インドとパキスタンをNPTに収めるにはどうするかということで、日本が核のない世界を求めるなら、まずここが重要になるはずである。

ところがどっこい、米国は、実質対中国の枠組みでインドの核兵器の存在を認めることになり、日本も同じ文脈でインドと実質的な軍事的な是認の関係になってしまった。端的に言えば、米国がNPTを破ってそれに日本が追従しているのはどうなんだということだが、幸い、日本の平和運動や核廃絶運動ではこれがそれほど課題になっているふうは見えない。イスラエル同様、インドの核も米国のタガが嵌ったと見てよいかもしれないが、そこがなんとも。

さて、ここからが「シャヒーン3(Shaheen III)」についての本題なのだが、この現状の問題は、この裏にいるのが中国だということ。日本で報道されているかざっと見わたしたがなかった。日本だと中国の核問題の話題は少ない。

この話題は、ちょうどオバマ米大統領が広島を訪問する直前にもあった。インド側のメディアで見かけたものだが、インディアン・エクスプレス5月25日記事「パキスタンへの中国の核兵器供給が米国とインドに脅威を与える、オバマ政権は警告した(China’s supply of nuclear weapons to Pakistan pose threat to US, India, Obama administration warned)」(参照)では、リードに「このような致命的なシステムを中国がパキスタンに供給するのを確実に停止させるために、米国政府はどのような手順を採るのか詳細に説明するよう、オバマ政権に二人の有力議員が報道によれば問いただした」とあるように、簡単に言えば、パキスタンの核弾道ミサイルシステムの裏にいるのは中国と見られている。

二年前のディプロマットによる「シャヒーン3(Shaheen III)」を巡る両国の関係の記事(参照)も参考になる。もひとつブルームバーグ系の比較的新しい記事もある(参照)。

ただ、パキスタンの「シャヒーン3(Shaheen III)」への中国の関与は、弾道ミサイルの技術であって核兵器そのものではない。その意味では、パキスタンの核兵器をどう見るかということがNPT的な枠組みでは中心的な問題になる。

これに関連して、昨年の話題ではあるが、サウジアラビアがパキスタンから核兵器を調達するという話題があった(参照)。この手の話題は他にもあり、トルコの核化も懸念されている(参照)。

これらに類する話の多くは与太話と見てもよいにはよいのだが、シリアも一時期核化を目論んでいたし、イラクもイスラエル空爆を受けた時期には核化の目論みがあった。大枠で言うなら、パキスタンの核兵器は、中近東の核化の起点になりかねないので、構造的に大問題であり、これにバックドアのように中国が動いているのが、世界の現状の核問題で一番不安な要因だろう。まあ、私などはそう思うのですが、という話にすぎないが。

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