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2016.06.02

「バーナンキによる刺激策助言を受け入れるのに日本は13年も遅れた」とな

ネットを見ていると、消費税先送りについて、アベノミクス失敗を示すものだから、安倍首相は辞任せよ、安倍内閣は総辞職せよ、といった議論が目に付く。日本は自由主義国なので、いろいろな議論があってもいいだろう。私としては、さて他にはどんな議論があるのものかな、海外ではどうかな、とパラパラと各種の意見を見ていくと、WSJの記事で、ちょっと懐かしいものを見つけた。正確には、この記事が懐かしいわけではない。

記事は「バーナンキによる刺激策助言を日本は13年も遅れて受け入れている(Japan is Taking Ben Bernanke’s Stimulus Advice 13 Years Late)」(参照)である。リードには「前連邦準備制度理事会(FRB)議長は10年以上も前から、日本は金融と財政の刺激策が一対になっていると示唆していた」とある。

簡単にいうと、今回の、安倍首相による、さらなら消費税増税の背景にある経済政策は、13年も前に、バーナンキ前FRB議長によって示されていたものだった、ということである。もっと簡単にいうと、ニッポンって10年以上も遅れてるぅ、ということである。まあまあ。

記事を読んでみると、私にとっては既知のことでもあるが、昨今のさまざまな議論を背景にすると、これはもう一度、注意を喚起するというか、想起してもよい話だな、ちょっと紹介の抄訳でもするかと思った。

のだが、ふと、これってWSJだからすでに日本語になってんじゃね、と探すと、あった。ちょっと表題が違うしリードもないが、記事は同じだった。「13年早かった、日本へのバーナンキ提言」(参照)である。

日本政府は膨大な財政赤字を縮小させるための最も重要な取り組みを放棄している。まるで米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のベン・バーナンキ氏が2003年に示した助言に従っているようだ。

安倍晋三首相は1日、消費増税を先送りし、新たな財政刺激策を今秋にも公表する方針を明らかにした。

この措置は、バーナンキ氏が13年前にFRB理事として日本を訪れた際に送ろうとした助言そのものだ。

同氏は「日本のデフレを収束させる一つの可能なアプローチは、限られた時間ではあるが、金融および財政当局間の協力を強化することだ」とし、「具体的には、日本銀行ができれば減税やその他財政刺激策との明確な連携を図り、国債の買い入れをさらに増やすことを検討すべきだ」と述べた。

 同記事では示唆は二点あり、もう一点はこちらである。

バーナンキ氏は当時、日本がそれを聞き入れるかどうかに関係なく(現在はしっかりと耳を傾けているわけだが)もう一つ提言を残している

「日銀はよく知られるインフレ目標でなく、物価水準目標を導入すべきだ。これは、直近のデフレ期に物価へ及んだ影響を除外するためのリフレ期を想定することを意味する」と語った。インフレ目標は物価が毎年一定の割合で上昇することを目指すものだが、物価水準目標はGDPが将来のある時点までに一定規模に達することを目指す。

日銀は2%というインフレ目標を掲げているが、安倍首相にも経済水準についての目標がある。政府は昨年、GDPを現在の水準から20%増の600兆円に引き上げるという目標を発表した。

記事の結論は、今振り返ると単純ではある。

当然ながら、日本政府に対しバーナンキ氏と同じような戦略を呼び掛けたエコノミストは数多くいた。だが、事実上は日銀の支援である債券買い入れと並行して財政刺激策が行われる可能性がある、と考える日銀関係者はほとんどいなかった。

バーナンキ氏のアドバイスは13年早かったのだ。

まあ、それだけの話といえばそれだけのことだが、この13年前とされるバーナンキ氏の元ネタは私も以前読んだことがあり、それで「ああ、あれか懐かしいな、振り返ってみるか」と思ったのである。

同記事にはリンクはなかった。ネットにもう原文ないんだっけと調べてみると、FRBのサイトにきちんと残っていた(参照)。

Remarks by Governor Ben S. Bernanke
Before the Japan Society of Monetary Economics, Tokyo, Japan
May 31, 2003
Some Thoughts on Monetary Policy in Japan

これの翻訳は、高橋洋一訳「リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉」(参照)の第7章にある。


こうして振り返ってみると、安倍首相は再登場にあたってマクロ経済学を学び直したおり、バーナンキ氏のこの講演も読んで学んでいただろうし、先の本も読んでいたことだろうな、と思った。と同時に、今なお読んでない人も少なからずといったことろだろう、世論やメディアを眺めると。まあ、それもそういうものでしょう。

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