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2016.05.31

38歳のベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)的問題について

27日の、広島でのオバマ大統領の演説を執筆したのは、38歳のベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)である。同日付の英紙ガーディアン記事「誰がヒロシマ・スピーチを書いたのか(Who wrote Obama's Hiroshima speech?)」(参照)に関連記事がある。同記事としては、38歳のベン・ローズ大統領副補佐官を浮き立たせるというより、全体としてはオバマ大統領の声をよく伝えたとしていた。また同記事には、彼を論じたニューヨーク・タイムズ記事についてのリンク(参照)もある。

で、まあ、そうした記事は比較的、38歳のベン・ローズ大統領副補佐官について、それなりに公平を意識して書かれているのだが、たまたま東洋経済サイトで「オバマ大統領「広島演説」は一大叙事詩だった 魂をゆさぶる、神がかり的なコミュ力」(参照)をざっと読んで、批判する意図はないが、ちょっと困ったなあとは思った。表題からも察せられるが、こんな感じ。

同マガジンによれば、「優れた物語の語り手」であるローズ氏は「大統領のために考えるのではなく、大統領が何を考えているのか」がわかるのだという。「どこから僕が始まり、どこでオバマが終わるのか、わからない」とまで言う一心同体の存在にまでなったスピーチライターはまさにオバマ大統領の懐刀。ホワイトハウス随一のインフルエンサーとしてツィッターなどで情報を発信し、記者たちのオピニオンにも大きな影響を与える存在だ。

同マガジンというのは先のリンクのニューヨーク・タイムズであり、また同記事でも先のガーディアン記事に言及しているのだが、うーむ、元記事のほうには、のベン・ローズ大統領副補佐官の最近の問題についても言及があり、その「記者たちのオピニオンにも大きな影響を与える存在」がまさに大きな問題になっているのだが、はてさて。

ちなみに、ちょっとググったら朝鮮日報でも「オバマ氏広島訪問:歴史的演説で脚光浴びるスピーチライター」(参照)という記事があったが、問題点への言及はなかった。

あれ、なんでないのかね。ともう少しググったがこの件について日本ではあまり話題が見当たらなかった。

どういうことかというと、先のガーディアン記事にもこうある、これである。

The article is controversial because Rhodes claimed to have orchestrated naive Washington journalists and thinktanks into accepting last year’s nuclear deal with Iran.

この記事が議論を呼んだのは、ローズが、マヌケな政治ジャーナリストやシンク・タンク員を振り付けして、昨年のイラン核問題を受け入れさせたとしているからだ。

この話題は、17日のワシントンポスト社説「議会でのオバマの挑戦 / ベン・ローズ大統領副補佐官はイラン交渉での嘘について説明しなければならない(Obama’s challenge of Congress / Ben Rhodes must account for the lies about the Iranian negotiations)」(参照)でも扱われている。

簡単にいうと、ベン・ローズ大統領副補佐官は、イランとの核合意の際、オバマ大統領とイランの宗教指導者の間で交渉が始まった、とかふいていたのだが、それが嘘でしたぴょん、ということで、大騒ぎになったわけである。もうちょっと言うと、オバマ大統領の理想の核のない世界ということで彼の唯一の業績となりそうな、イラン核合意が、どうやら、ベン・ローズ大統領副補佐官の嘘の上に築かれていたっぽい。

というわけで、英米圏では、38歳のベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)の近況については、この嘘つき野郎(spin doctor)、という非難がわきあがるさなかでの、ヒロシマ演説だったので、なんだかしらけるないう空気があって、まあ、リベラルなガーディアンとしては、ちょっとベン・ローズ大統領副補佐官を援助してみたいもんだよ、というのが、そもそもこの話題の背景構図だった。ちょっとググったら、Japan Todayというサイトでも擁護記事があった(参照)。まあ、擁護したくなる気持ちはわかるが。

とはいえ、この問題を、ベン・ローズ大統領副補佐官に焦点化すると、こいつは嘘つきなのか、という枠組みに落とし込みやすいが、そんな次元でリベラルうんぬんを議論しても虚しい。問題は、オバマ政権時代に、ベン・ローズ大統領副補佐官のような人物が政治プロセスに登場したことであり、つまりは、こうした人物が、スピンドクター(情報を操作して人々の心理を操る専門家)なのか、政策決定者なのか、ということだ。で、そのものずばりの問いかけをTimes記事「真実のベン。ローズはスピン・ドクターなのか政策決定者なのか?(The Real Ben Rhodes: Spin Doctor or Decision-Maker?)」(参照)でしていた。

まあ、あまりアイロニーで言いたくはないのだけど、オバマ=ベン・ローズという修辞の政治学は、同じインパクトの修辞の釣り合いということでトランプ米大統領候補台頭の道を用意したような気がする。では、ヒラリー・クリントン米大統領候補ならこうした傾向に歯止めがかかるかというと、ベンガジ事件(参照)とか見ていると、そうとも思えない。

衆愚政治には修辞政治、とかいうと、ただの駄洒落みたいだが、リベラル理念がけっきょく修辞に落とし込まれてしまうというのは、巧言令色鮮し仁ではないが、政治の言葉に酔いたいという民衆ニーズに政治が応えていちゃいけないんじゃないかな、困った問題だな、と思うのですけどね。まあ、そんなこと言うと、その言い方はなんだと修辞的に嫌われるもんですよね。

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