ユダヤ人とアラブ人の恋の物語をめぐって
日本の、特にネットの世界ではというべきか、民族的な差別をやめようという声が多いように思う。それは当然だと思うが、実際はというと、差別的な発言をした人を一斉にバッシングするというこのほうが多いのかもしれないと思う。否定的な処罰感情が先行しているみたいだ。まあ、それはそれとしても、もっと肯定的に、「民族を超えて愛し合おう」という声や運動はどうかというと、日本ではあまり見かけない気がする。文化的な問題だろうか。そんなことをなんとなく思っていたので、最近見かけたイスラエルの話題は興味深かった。
話は、イスラエルで高校の教師が教材にしたいと願っていた小説を、イスラエルの教育省というのか政府が禁止したらしい。教育上、よろしくないということなのだが、どういう話かというと、アラブ人男性が、イスラエル人、つまりユダヤ人の女性とニューヨークで恋に落ちるという恋愛小説、「ボーダーライフ(Borderlife)」。2014年に出版され、イスラエルの文学賞も受賞した。今年中に英訳も出るらしい。作者は、1972年生まれのイスラエル女性ドーリット・ラビニャン(Dorit Rabinyan)。ちょっと調べたら、ツイッターのアカウントもあった。
民族間の恋愛に教育行政が関与するとか、いやさすがにそれはないでしょと私も思う。そんなことで社会的な問題になるのか、と。しかし、教育省としては、ユダヤ人とアラブ人の緊張になるのを懸念してということらしい。当然、こうした威圧的な政府の態度に反発は起きるでしょう。でも、日本のようにたたバッシングで炎上するというのではなかった。
どうしたか。こうしたのである。
作成したのは、タイムアウト・テルアビブ。アラブ人とユダヤ人の6つのペアが「禁じられた行為」をしているのだが、見てわかるように、同性愛も含まれている。
日本でもこういうのをすればいいんじゃないのかと思った。
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