フランス語入力に向かないフランス語キーボード
そうなんじゃないかと思っていたが、はやりフランス語のキーボードはフランス語入力に向いてないようだ。AFPのニュースが面白かった。「正確な仏語作文、キーボードが妨げ?仏政府が指摘」(参照)より。
【1月22日 AFP】言葉を正しく使用することにこだわるフランス人にとって、完璧な文章を入力する際の妨げとなっているものはキーボードの配列だった──。仏文化・通信省は最近発表した報告書で、フランスで使用されるキーボードの配列が「正しいフランス語の入力をほぼ不可能にしている」と指摘した。文字の上にアクセント記号を付けることはおろか、極めて重要な記号やユーロ通貨の記号のような簡便な記号を入力することさえ不可能な現状に対し、同国政府はキーボードの配列を微調整するよう求めている。
ちなみにフランス文化省のソースは、"Vers une norme française pour les claviers informatiques"である(参照)。
Saviez-vous que, contrairement à la plupart de ses voisins européens, même francophones, la France ne dispose pas, aujourd’hui, d’une norme décrivant le clavier utilisé sur les différents matériels informatiques traditionnels ?
BBCなんかでもこの話題はけっこくしつこく扱われていた(参照)。
実感としていうと、フランス語のキーボードはそこまでひどくはない。とはいえ、フランスで標準とされるAZERTY配列は、通常英語で使うQWERTY配列と主要なキーの位置が少し違うので、英語を書いているときと、フランス語を書いているときのキー操作の意識を切り替えるのがいらいらする、というか混乱する。
この混乱は二つの方法で回避できる。一つはカナダで使われているカナダ方式のキーボードを使うことだ。まあ、これでかなり解決する。英語のキーボードを拡張したようになっているからだ。もう一つの解決策は、英語のキーボードにinternationalというのがあり、これだと、フランス語もドイツ語も入力できる。
じゃあ、それでほとんど解決かというと、シルコンフレックスがうまく行かなかった。というわけで、英語を頻繁に使う日本人がフランス語も入力するというなら、カナダ方式でよいし、以前も書いたが、Chromebookだとこのキーボードの切り替えがかなり簡単にできる。
ところがまだ問題はあるのだ。フランス語の引用符である«»の入力方法がわからない。このあたりはかなり機種依存の問題でもある。Chromebookだとどうなるのか調べてみたら、どうもカナダ方式のキーボードに多言語というのがあって、それだとできる。じゃあそれでいいかというと、日本人が使っている日本語キーボードだと左Shiftキーがでかくて、Zの左のキーがなくùが入力できない。とほほ。通常のカナダ方式のほうがまだましだった。
そのほか、キーボードについてはユーロ記号などいろいろ微細な問題があるが、どっかで妥協するしかない。
さて、今後フランス本土ではキーボードはどうなるかだが、フランス文化省としても急いで変更するというのでもないようだ。BBCではドヴォラーク方式に近いBÉPOという方式も紹介していたが、時が経てば意外とカナダ方式が普及していくかもしれない。とはいえ、このQWERTY配列もなかなかに不合理なものだ。
そもそも問題として、どいうしてフランス語にはラテン字母がアクサンなどで拡張されているかというと、基本はそのほうがフランス語の音声や歴史的な音変化を写しやすいからだろう。それも言語の伝統であるし、慣れると、英語のように無理やりラテン字母で正書法を抑えこんだ言語のほうが不思議にも思えてくる。
ラテン字母の拡張といえば、エスペラント語にもあるのだが、このキーボードもあるのかちょと調べてみたら、ちゃんとあった。昔はタイプライターでエスペラント語を書くのはけっこう大変だったが、隔世の感はある。と、見ていったら、先ほどのBÉPOはエスペラント語にも使われているようだ。へええ。
キーボードなんて変な入力インタフェースだなとも思うが、根本的な改善は難しい。個人的にはせめて入力方式だけでもドヴォラーク方式にしたいと思っていたのだが、いまだ果たせない。
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