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2016.01.26

台湾「大統領」蔡英文が中国を抜いて世界に伝えた日本への謝辞

蔡英文氏が台湾の「大統領」になることは事前の動向からわかっていたし、中共側も今回は早々に敗北を認めていたゆえに、前「大統領」馬氏との対応のパフォーマンスなどを演じていた。つまり、今回の民進党政権の樹立は国際的にはとりわけ新しいネタでもないので、ぼんやりと眺めていたのだが、一つ気になっていたことがあった。蔡氏が当選した際の会見についての、産経新聞での報道、「「尖閣は台湾側に主権があるが、日本との関係強化を続ける」 英語通訳のみ日米名指しで感謝」(参照)である。

ネットなどではありがちに尖閣諸島の帰属への言及が注目されていたが、台湾の大統領として従来からの建前の国是を変えるわけもないので、どうでもいいことではある。気になったのは、英語通訳のみ日米名指しで感謝というくだりである。

 ■なぜか英語通訳のみ日本と米国を名指しで感謝
 「私はこの機会を通じ、台湾の人々を代表して、台湾の民主的な選挙への関心と支持に対して海外の友人たちに感謝したい。台湾は国際社会の一員として積極的に国際協力に参加したいと願っており、全世界の友人と利益を分かち合い、責任を分担し、地域の平和と安定のために最大の貢献をしたい」

 《「海外の友人」に感謝を示すくだりで、なぜか英語の逐次通訳のみ「米国や日本、その他の国々を含む(海外の友人)」という、本人が中国語で発言していない表現が出てきた。本人が原稿の表現を飛ばしたのか、あえて英語のみこの表現を入れたのかは不明だ》

この時点の産経の報道では、中国語(国語)の発言と英語通訳の差について、読み飛ばしか、あえて英語で入れたのか、不明としている。普通に考えれば、失念による読み飛ばしか、中共に配慮した意図的な読み飛ばしであろう。どちらかはわからないが、ふと思ったのは、なんらかのエラーの類であれば、公式文書では訂正されているはずだということだ。そこで、ちょっと原文にあたってみた。民進党のサイトはほぼ公式としてよいだろう。「總統當選人蔡英文國際記者會致詞中英譯全文」(参照)より。

藉由這個機會,我也要代表台灣人民,感謝國際友人,對於台灣民主選舉的關注和支持。做為國際社會的一份子,台灣願意積極參與國際合作,台灣也願意與全世界的盟友共享利益、共擔責任,並且為區域的和平穩定,做出最大的貢獻。

On behalf of the Taiwanese people I would also like to use this opportunity to thank our international friends including the U.S. Japan and other countries for their support towards Taiwan’s democratic election. As part of international society Taiwan is willing to participate in international cooperation efforts sharing the same benefits and shouldering the same responsibilities as our partners from around the world. We will also greatly contribute towards peace and stability in the region.

会見時のままが掲載されている。つまり、中国語では日本への言及がないが、英語ではかなり明瞭に日米が特記されている。つまり、今日台湾で民主選挙ができる最大の貢献者は米国でありついで日本であった、というメッセージが読み取れるし、このことは英文を通して理解される世界に向けて明確に発せられているとしてよい。

では日本ではそのメッセージを受け止めたかというと、蔡氏は他所でも同種のことは述べているので、それなりに受け止めたとしてもよいのだが、先の産経報道の指摘に注目したメディアは見当たらなかった。

というあたりで、ふとでは英文で受け止めたメディアの反応はどうだったのかとBBCあたりを覗いてみると、当然がらそこはきちんと受け止められていた。「Tsai Ing-wen elected Taiwan's first female president」(参照)より。

She thanked the US and Japan for their support and vowed Taiwan would contribute to peace and stability in the region.

かなり明確に、米国と日本と限定されている。

そこで、ふとこれBBCの日本版ではどう報道されていた調べてみた。該当英文記事が示唆されている記事はすぐに見つかった。「台湾総統選で野党・民進党主席が勝利 初の女性総統に」(参照)である。

ところがこの記事には、英文報道にはあった該当の日米への謝辞についての記述がないのである。明らかに翻訳記事ではない。率直に言うと、日本語BBCでは、台湾の大統領が日米に謝辞を述べた部分について、日本語では報道をはずしたのである。

日本版BBCが独自の報道見解を持ってもよいと思うが、こういう台湾国内における中共への配慮のようなものを日本向けに踏襲してくれるのは、やってくれましたね、感はある。

まあ、総じてみれば、台湾問題について日本語のメディアにはいまだに中共の顔色を伺うという空気のようなものはあるのだろう。


 
 


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