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2016.01.19

IMF的に見た日本の経済の課題と労働政策提言で思ったこと

IMFは毎年日本経済の審査を行っているが、最近の審査状況が公表される前に概論的な発表の会があり、主に学生を対象としたようでもあるので、経済の勉強がてら聞きに行った。端的なところ、IMFが日本をどう見ているのか、文書以外な部分で感じ取れるものがあればよいと思っていた。

話題は大きく分けて二つあり、IMFによる、日本経済(主に財政・金融政策)への提言と労働状況についての提言である。

まず日本経済の課題だが、展望の条件が4つ提示された。まず、先進国間の金融政策の非対称性である。ごく簡単に言えば、米国の金融緩和政策が終わったことへの世界経済への影響と見てよい。発表会では言及がなかったが、その影響はマレーシアなどにすでに大きく現れている。つまり新興国マネーの問題になるだろう。

二点目が中国経済のリバランシング。これもごく簡単に言えば、中国バブルのソフトランディングとしてよいだろう。このあたりはIMF的な視点では、中国政府による対応が進みつつあることの評価が前面に出て、さほど危機感としては意識されてはいない印象を受けた。ようするに、中国の過剰な生産能力の解消に経済が内需主導型に切り替わることを期待するというものである。まあ、それ以外は結論もないだろうが。

三点目は貿易の縮小。四点目はコモディティ価格の不安定性。後者は基本的には原油と見よく、この二点合わせて実質、世界的な需要不足の問題である。

こうした条件認識からIMFとしては世界経済のリスクを捉え、日本経済のあり方を位置づけるということで、特段に目立った結論はでない。だが、印象としては、通称アベノミクスとされている金融緩和は好意的にかつ成功として受け取られているようだった。日銀についても、方向転換ではなく、現行政策の延長でいっそうの市場との対話よよくすることが求められていた。インフレターゲットで見ると、2%を割るようではあるが、その適度な安定した弱インフレが望まれるというものである。加えて構造改革が求められるという、毎度の話もあった。

日本の場合、近年の消費の落ち込みは統計上も目立つ問題である。そしてそのきっかけは消費税というどう見ても税政策の失態でしょう、というような指摘は微塵も感じられなかったし、これから来る消費税増への問題指摘もなかった。このあたりの暗黙の了解の空気はなんだろうかという違和感はあった。

構造改革については依然指摘されている項目が並び、新味はないが、その背景としては、少子高齢化の人口要因が強く意識されていた。これはつまり、労働状況の問題でもある。

そうした流れもあり、二つ目の議論は、日本の労働状況をどう改善するかという提言になる。こちらの話題は、各種の見栄えのしない徳目の羅列ではなく、日本の労働状況の分析から始まっていて興味深いものだった。要点はなにかというと、日本の労働状況の問題は、正規労働者と非正規労働者の二重性に問題があるとするものだった。

それだけ取り上げらればどうという話でもないのだが、方針としては、日本では正規雇用の保護が厳しすぎることと、非正規雇用の低賃金ということの解消が課題であり、それにはその中間的な労働形態を推進すべきだというのである。具体的なレベルの話ではなかったが。

会合は終始英語で勧められたのだが、この話題については、日本語で異論も出ていた。一つは、こうした二面性の問題は、原因ではなく、かつての日本経済の成功の惰性的な結果にすぎないということ。もう一つは、労働の二極性は停滞の結果であるとするものだった。どの議論もそれなりの支持は可能だが、大局的な労働人口の変化を考えると、いずれ、現状の正規雇用と非正規雇用の中間的な形態を取らざるをえないだろうという考えには落ち着く。

さしあたっての労働問題としては、賃上げがある。これが日本の場合、形の上での労働闘争より、政権主導で推進されているふうに見えることは、現在日本の奇妙な現象のようにIMF的には見えるようでもあった。

この点については、私などの印象からすれば、正規雇用の側から非正規雇用の視座を取り組んだ労働政策の不在があると思う。

個人的な印象でまとめるなら、この数年間のアベノミクスによる企業の貯め込む分を早急に労働者に還元することで消費を活性化する必要はあるだろう。

最後に、社会派ブロガーばりにおちゃらけた締めを言うのもなんだが、ネット的な正義に多い、いわゆる福祉的な再配分よりも、非正規雇用をまでも含めた賃上げの動向を生み出すことが重要には思える。

しかし実際のところ、こうした議論では、ルサンチマン的な視点を超えることが難しい。たとえば、正規雇用と非正規雇用の中間形態の模索のような提言は、擬似的なイデオロギー論のなかでかき消されるだろう。そのこと自体、つまり、日本における現行の政治的な言説は、実際には構造改革の抵抗として機能していく(正規雇用の高齢者保護)、ということなのだろう。
 
 

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