スウェーデンとイスラエルの関係悪化の関連でIKEAまで
日本での最近の報道では見かけなかったように思うが、スウェーデンとイスラエルの関係がいっそう悪化している。最近の話題としては、スウェーデンのマルゴット・ヴァルストローム外務大臣(H.E. Ms. Margot Wallström)がイスラエルを訪問しようとしたが、イスラエル首相など政府要人から面会が拒絶され、訪問はキャンセルされた、という話がある。イスラエル側の硬化の理由は単純で、一昨年スウェーデンがパレスチナ国家を承認したことや、ガザ空爆などでイスラエルの罪を追求しようとしていることがある。ただ、それがイスラエル側の公式の見解というのでもなさそうではあるが。
他愛のない話のようだし、日本のネットによく見られるリベラル派があまりこの事態に関心をもってなさげないのも、スウェーデンの対応は当然と見られていることもあるかもしれない。とはいえ、国際紛争を対話によって協調していこうという外交戦略をスウェーデンがもっているなら、自己満足的な外交を展開しても意味はないだろう。
この話題に私が関心をもったのは、そのディテールのほうだった。そもそもなぜ彼女はイスラエル訪問をしようとしたかというと、テルアビブでの、ラオル・グスタフ・ヴァレンベリ(Raoul Gustaf Wallenberg)についての会合に出席するためであった。ヴァレンベリについては改めて記す必要もないと思うが。第二次世界大戦のハンガリーで迫害されていた10万人ものユダヤ人の救出した外交官である。
オスカー・シンドラーや杉原千畝を思えばイスラエルとしても、この件についてはスウェーデンを厚遇してもよさそうなものだがなという思いがあった。ちなみに、マルゴットさんこうした活動に深く関与してきた。
日本などのリベラル派の文脈はこのあたりで終わりだろうと思うし、この先のイスラエル側の言い分を聞いてもさほど意味もないように思うのだが、なんとなくニュースを読んでいくと、ちょっと意外な話があった(参照)。リーバーマン外務大臣は、第二次世界大戦時のスウェーデンを評価していないどころか、当時のスウェーデンは富に目がくらんで、ユダヤ人強制収容所のことを知りながら看過したのだと批判しているのである。一種、スウェーデンの間接的な戦争責任を追求しているようでもある。
しかしそれは別のことのようにも思うし、戦争責任の話題を現在の外交問題に引き出すというのも外交という点では大人げないようにも思うのだが、大人げない話はさらに笑い話のようにつづく。彼は、IKEAのボイコットを提案しているのだった。IKEA不買運動でスウェーデンに圧力をかけるというのだ。なんだそれ? というわけで、これ自体がネタになってしまった。テレグラフなども取り上げていた(参照)。
バカバカしい話ではあるが、逆に考えれば、IKEAがまったくスウェーデンの外交と無関係とまではいえないだろう。一種のソフト戦略の一貫でもあるだろうし、スウェーデンの国家としてもその自覚はあるだろう。実際のところ、IKEAはイスラエルで、そのレストランなども含めて大人気ではあるし、私などもIKEAスタイルというのは好きなほうだなと思っている。スウェーデンといえば、IKEAスタイルというのがソフト戦略である分だけ、その文脈での衝突もあるだろうし、それは国際社会ではビジネス上の課題としても想定していくべきでもあるだろう。
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