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2015.06.09

G7サミット(先進7か国首脳会議)でオバマ米大統領が開口一番、なんて言ったか知ってますか?

 G7サミット(先進7か国首脳会議)がドイツのバイエルン州エルマウ城で開催された。G7である。よって西側諸国の問題をどうしようか、という話しかしない。となると、ウクライナ問題やギリシア問題である。それに、日米としては中国の海洋侵出を混ぜたり、いやいや生臭い話から離れて現地でうるさい地球温暖化が話題になる。まあ、そういう文脈で日本でも報道されていた。
 そういう報道が悪いわけでもない。AFP報道でも概ねそういう方向だった。が、私はちょっと、もにょーんとしていた。オバマ大統領がこのサミットに望んだ思いの重点は、うまく報道されてないんじゃないかと思ったからだった。
 関連のNHKニュースはいかにも国際問題の視点ばかりだし、国内大手紙も概ねそんな印象なので、概要としてはそれでもややニュートラル感のあるAFPを引いておく。「G7サミット、ドイツで開幕 ウクライナ情勢でロシアに強硬姿勢」(参照)より。


【6月8日 AFP】先進7か国(G7)首脳会議(サミット)が7日、ドイツで開幕した。議長国ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領をビアガーデンでもてなして関連日程を始めた。
 しかし、日中に笑顔を見せていた米独の両首脳は、オバマ大統領の言うウクライナへの「侵略」に関してロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に厳しい警告を発した。米ホワイトハウス(White House)の声明によると、「両首脳は…対ロシア制裁がいつまで続くかは、ロシアによるミンスク合意(ロシアとウクライナの停戦合意)の完全な実施とウクライナの主権尊重にはっきりとリンクさせるべきだという点で合意した」という。
 ウクライナ東部における政府軍と親ロシア派との戦闘が最近再び激化している中、日本の安倍晋三(Shinzo Abe)首相とカナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は6日、G7出席のためドイツに向かう途中ウクライナの首都キエフ(Kiev)を訪問し、ウクライナ政府への支持を表明した。
 またオバマ米大統領は、財政危機に見舞われているギリシャに言及こそしなかったものの、今回のG7首脳会議の最優先の議題は「雇用と機会を創出するための世界経済」、「強力で繁栄した欧州連合(EU)を維持すること」だと述べた。
 ギリシャ問題はG7首脳会議の大きな議題となっているが、メルケル首相は気候変動、イスラム過激主義、女性の権利、公衆衛生、貧困問題など、他の地球規模の問題にも焦点を当てたい考えだ。
 メルケル首相は、山積する世界的な課題での合意形成を目指しつつ、バイエルン(Bavaria)州の絵本に出てくるような草地と素晴らしい山々を背景に欧州第一の経済大国ドイツの素朴な一面をアピールしたい意向だ。
 会場周辺には気候変動問題やエボラ出血熱などの深刻な病気への一層真剣な取り組みを求めて各国首脳に圧力をかけようという非政府組織も詰め掛けており、2万2000人以上の警察官がG7サミットの会場を取り囲んで警備している。(c)AFP/Richard CARTER/Frank ZELLER

 質の悪い報道ではないが、AFPが基本フランスの報道社なので、どうしてもフランスとしてドイツと米国の思惑という視点が抜けるのかもしれない。ロイター系もざっと見たが、やはり、ドイツと米国の思惑で読める記事は見当たらなかった。
 私が何を言いたいかというと、実は、ドイツと米国は、最近、すげー険悪な関係だったということ。ドイツ国内も影響を受けていた。そういう文脈の報道がないなあと思ったのである。まったくないのかと、ドイツ側の報道を見ると、もちろん、そうでもなかったが。それでもドイツ系の国際報道はどうも国際報道のなかでのバランスにかけるところはあるなと思った。この点、ロシアやイランなどは西側へのカウンター報道があるけど、ドイツは微妙な立ち位置なのだろう。
 このところブログであまり国際関係の細かいところに触れなくなったので、突然言うのもなんなのでドイツと米国の険悪の説明をすると……ああ、これが便利か。ロシア系のスプートニック5月27日「オバマ大統領 G7サミットへの参加拒否へ?」(参照)より。

 米国家安全保障局の監視対象リストがドイツによって公開された場合、オバマ米大統領はバイエルンで開催されるG7サミットへの参加を拒否する可能性がある。ビルト紙が伝えた。
 ビルト紙の情報筋によると、リストが公表された場合、大きな政治的ダメージを招くという。
 特に米情報機関は、ドイツに対して、緊急なテロ脅威に関する情報提供を拒否する可能性があるという。
 一方で米政府は、G7サミットへの参加を拒否する可能性があるとの噂を否定した。
 米情報機関筋によると、「ドイツが掲載を控えている原因は、スノーデン氏の暴露よりも深刻なモチーフがあるからだ」という。
 G7は、バートアイブリングの元米通信傍受施設からわずか90キロのガルミッシュ・パルテンキルヒェン近郊のエルマウ城で6月7、8日両日に開催される。

 こういう背景でオバマさんもメルケルさんも、まず、G7サミットで友好の演出をしなければいけないというのが最初の課題だった。
 実際のG7でどうなったか。当然ながら、オバマ米大統領の開口一番のつかみにかかっている。こうだった。
 「Er hat "Grüss Gott" gesagt.(彼は「グリュス・ゴット」と言った)」(参照)。そして、「"Ich habe meine Lederhose vergessen"(僕は自分のレーダーホーゼンを忘れちゃった)」(参照)、と。これで友好と笑いを一気に掴んだ。オバマ米大統領、お見事というところ。その演出の場をきちんと設けたメルケル首相のほうがもっとお見事ということでもある。
 どういうことか、といううざったい解説がこのエントリーの話なのだが、その前に、エルマウ城について知っておくといい。プンタ「G7開催もうすぐ!本物のセレブのためのウェルネス〜エルマウ城」(参照)がわかりやすい。

ウェルネスホテルで休暇を過ごすのは「自分へのご褒美」。家族連れで訪れる客も少なくない。そんな庶民的なウェルネスとは一線を画した贅沢な隠れ家を見つけた。ドイツはバイエルン州にある5つ星ホテル、エルマウ城だ。実はメルケル首相もこのエルマウ城のファンだということで、6月にはG7(主要国首脳会議)が開催されることになった、現在注目の場所である。

ルートヴィッヒ2世が、ヴィスコンティ監督の映画『ルートヴィッヒ』にも登場する城を建てたお気に入りの場所なだけに、山並みの美しさと、その連なる山々にも微妙に遮られないで照り続ける日照時間の長さは、さすがの立地条件だ。山間の最寄り駅クライスにはホテルから送迎の車が出迎えてくれるので、人里離れていても安心できる。


 行ってみたいなあ。そういうところ。
 オバマ米大統領が開口一番言った「グリュス・ゴット(Grüss Gott)」はバイエルン地方の「こんにちは」である。沖縄サミットでクリントン米大統領が「ハイサイ!」というような感じだろうか。一般的なドイツ語からすると方言の表現になる。
 「こんにちは」の原型が「今日はいかがか?」みたいに考えると、この略の元は、「Grüße dich Gott」「Grüße euch Gott」で、「神の挨拶がありますように」らしい。信仰深いカトリックの伝統を背景にしたものらしい。
 他方「レーダーホーゼン」だが、同題の村上春樹の短編があるが(参照)、肩紐付きの皮製の半ズボンである。バイエルンの祭礼服でもある。実際にはここは英語で "I forgot to bring my lederhosen, but I'm going to see if I can buy some when I'm here."(僕は自分のレーダーホーゼンを忘れてしまったけど、ここでの滞在中に買えるでしょう)」(参照)と述べたらしい。オバマ米大統領の半ズボン姿を想像すれば笑えるというところで、それほど堅苦しい民族衣装という含みは現地ではなさそうだ。
 とはいえ、この話、そうすんなり笑えるものなのかなとちょっと疑問に思った。ようはバイエルンという地方の気風である。
 バイエルンというと、日本では「FCバイエルン」などが有名だが、地域としては、ドイツ最大の州で、正式名が「バイエルン自由州(Land Freistaat Bayern)」とあるように、自治性が強い。というのも、この地域は、神聖ローマ帝国によって10世紀できたバイエルン公国(Herzogtum Bayern)以降、バイエルン選帝侯領(urfürstentum Bayern)からバイエルン王国(Königreich Bayern)という独自の国家的な地域である。
 当然と言ってよいが、スコットランドのように地域の独立を狙うバイエルン民族党(Bayernpartei)がある。スコットランド独立の気運には加勢された(参照)が、現状は実質的な力はない。それでも、現地では今回のG7をどう受け取っているかは気がかりだった。が、特にその点で違和感のある話題はドイツの報道でも見掛けなかった。
 話はそれだけなのだが、ついでに。
 英語関連の報道を見ていると、「バイエルン」は"Bavaria"と表記される。「ババリア」である。「ババリア」というと、駄洒落のように「ババロア」を連想するが、これは駄洒落ではなく、「ババロア」はフランス語で"Le bavarois"である。
 実際には「ババロア」は、フルーツに日本のプリンのようなものを添えたものである。というか、日本のプリンに苺を並べたら立派にババロアになりそうだ。というか、日本のブリンがババロアだろ。じゃあ、あのフルーツムースは何か? だが、まあ、そういうのもある。ついでにいうと、日本のプリンは「カスタードプリン」とされているが、実際にプッチンプリンとかで売られているのは、ゼリーを含んだもので、あれそっくりな"Flan"というお菓子がフランスにある。お菓子の名前としては、"Flan aux oeufs"だろうが、だとすると、ゼリーは必須と言えない。まあ、このあたりのお菓子と名称の関係はよくわからない。

 では、ババロアはバイエルンのお菓子かというと、どうもそうでもないらしい。フランス人が考えたらしい。その経緯もよくわからない。
 そもそも、"Bayern"がなぜ"Bavaria"になってしまうかのも奇妙だが、"Bavaria"がラテン語起源らしい。ただ、中期ラテン語では"Baioarii"、後期ラテン語では"Bojuvarii"で、"Bayern"に近い。
 関連語の"Bavarii"はこの地域の民族名を指す。元来は"baio-warioz"であったらしい(参照)。つまり、この民族だが、ケルト人のボイイ族と見られている(参照)。ハルシュタット西文化圏である。
 ああ、これ、マスターキートンの世界だなと思ったが、あのマンガにはボイイ族の話は出てこなかったようには思った。どうだっただろうか。
 
 

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コメント

そうなんだよなぁ、他国のことをしっかり見て、また、どう見られてるかも調べていて、で、それとなくお互いに応対する。

ところが、笑。日本は、相手国のことも見ないし、どう見られてるかもまったく関係ない。憲法と自衛隊の法的関連を、他国がどう思ってるかなんて、まったく興味がないのかもね。自衛隊は、憲法違反だから、憲法を国民に直してもらうなら、別に問題は起きないけど、自衛隊は違憲じゃない、その自衛隊の活用法を現代にあわせるのも違憲じゃない。ということは、違憲じゃないなら、憲法改正する必要ないじゃんって、なりそうなんだけど、日本人以外はね。今まで通りでも、国際貢献できるし、抑止力もつくってもんだ。ようは、間違いを正せないのだから、もう、信用もされてないのかもね。どうでもいいってことかも。

ドイツはもともと小国の集まりだし、さらに国境にたくさんの国が接しているから、自衛についてはうるさいみたいだよね。日本みたいに、海じゃないし。で、経済格差もできてしまい、国境がぁって感じで。だから、あきれてるんじゃないかなぁ、日本のこと。もう、嫌いかも。ドイツとアメリカの関係が悪化したのは、たんに、アメリカと日本がべったりすぎるからじゃないかな。あと、韓国は、もっとドイツと仲良くなればいいのかも。日本は、もう、ドイツとは仲良くやっていけなくなるね。自衛の考え方が違いすぎるから。

投稿: | 2015.06.10 07:05

こんにちは
いつも投稿を楽しみにしております。
『英語関連の報道を見ていると、「バイエルン」は"Bavaria"と表記され る。』ということがとても興味深かったです。
塩野七生氏の「ローマ人の物語」シリーズでは、ローマ帝国後期の北方民族にバーバリアン(barbarian)の名称を与えていたと記憶しております。
BARBARIE(バルバリー)というフランス鴨の品種の名称との関連はないのかなとふと思いました。
本編とは関係ないことで、すみません。

投稿: inoue | 2015.06.11 22:42

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