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2015.05.22

サムソンはなぜ"Samsung"なのか?

 スマホの「Galaxy S6」から製造社のロゴ「SAMSUNG」が消えたことが先日話題になっていた。「iPhone」から「Apple」が消えたような感じである。と言ってみたものの、別にiPhoneにAppleとロゴが特記されているわけでもなく林檎マークがあるくらい。
 それでも、なぜそれまであった「SAMSUNG」が消えたのか、というか「SAMSUNG」というロゴを意図的に消したのか。しかもこの対処は日本市場に限られていたのはなぜなのか。気になるところだ。
 当のサムソンが説明している。ITmedia「日本の「Galaxy S6/S6 edge」にSamsungロゴがない理由は?――新COO堤氏が語る」(参照)より。


 国内モデルで「Samsung」ロゴをなくしたことについては、「Galaxy S6/S6 edgeは“ゼロスタート”で開発した。Galaxyの進化を皆さんにご理解いただきたいので、『Galaxy』を全面に出させていただいた」とコメント。Samsungロゴがないのは今のところ日本のみだそうで、裏を返せば、日本ではまだGalaxyブランドの認知拡大を図る余地があるということ。Galaxy S6/S6 edgeを日本のユーザーへどのように伝えていくのか。堤氏、そしてサムスンの手腕に注目したい。

 じゃ、注目。そこで、このSamsungロゴの「サムスン」だが、なぜ「サムスン」なのだろうか? ハングルのロゴを見るとわかる。

 元は「삼성전자」である。
 これは漢字に戻せる。戻すと、「三星電子」である。
 そこでつい「三星」って何?という疑問もわく。東洋文化の文脈で連想するのは、「福、禄、寿」三人の仙人である。が、そうではない。中央日報「악수하는 모습 본딴 현대차, 조화와 화합 강조 포스코… 」(参照)より。漢字を補って。


삼성(三星)이란 이름에서 '세(三) 개의 별'을 떠올리는 사람이 많지만 Group의 공식(公式) 입장(立場)은 "관련(関連)이 없다"는 것이다. 우리민족(民族)이 가장 좋아하는 숫자(数字)이기도 한 '삼(三)'은 크고 많고 강하다는 것을 상징(象徴)한다. '성(星)'은 밝고 높고 영원(永遠)히 빛나라는 뜻을 담고 있다.

サムスン(三星)という名前で「三つの星」を思い浮かべる人が多いが、Groupの公式公式立場は、「関連がない」ということだ。私たちの民族が最も好きな数字である「三」は、大きく多く強いことを象徴する。「星」は、明るく高く永遠に輝けという意味を含んでいる。


 「三星」は、①明るく②高く③永遠に、という意味らしい。
 さて「サムスン」という言葉の表記の話に戻る。「삼성(三星)」が元であれば、これを英語的というかローマ字風に表記すると「Samsung」になるのではないかと、まず思える。そこで「Samsung」でハングルを書いてみる。「삼숭」である、公式の「삼성」にならない。これをあえて漢字に戻すと「三崇」となる。または「三嵩」か「三崧」である。
 京畿道楊州市に三崇洞という地名があり、三崇宮という同郷寺院がある。漢字の知識のある韓国人にとっては、「Samsung」から連想されるのは、三崇宮ではないかと思う。が、現在の「삼성」のハングル表記を超えて、そこまで漢字音から連想できるかもわからない。
 いずれにせよ、「サムスン(Samsung)」からハングル表記考えると、公式の「삼숭」にはならないという奇妙なことになっている。
 では、公式の「삼숭」をローマ字表記にするとどうなるのか。公式の文化観光部2000年式でローマ字化すると、というか、中国語のように拼音化すると、「samseong」となる。現行の「Samsung」にならない。
 現在の韓国では自国の名称を文化観光部2000年式によってローマ字化しているので、国家に関連するのであれば、サムスンは「Samseong」となるはずだが、そうならない。
 となると、「サムスン(Samsung)」表記の起源は何か?
 文化観光部2000年式以前のローマ字化のはずではないかと調べてみると、以前まずよく使われていたマッキューン=ライシャワー式で考えると。それだと、「Samsŏng」になる。やはり現行の「Samsung」にならない。他の方式で「Samsung」が出来るか調べてみたが、わからなかった。
 おそらく、「三星」から「삼성」となりそこから「Samsung」が生じた、というのではなく、英語名のロゴとして新規に「Samsung」ができたと考えてよさそうだ。
 しかし、そうだとすると、これは英語風に読むと「サムサン」になってしまう。
 むしろ、現在の「サムスン」は、日本語のローマ字読みに近い。サムスンの企業発展の過程で日本語のローマ字読みの影響を受けていた時期があったのかもしれない。
 なお、英語としては、「Samsung」から旧約聖書の英雄(士師)のサムソン(「サムソンとデリラ」のサムソン)を連想するが、それだと「Samson」である。その文脈でもじるなら「Samsong」ではないかとも思う。それをハングルにすると「삼송」となり、漢字かすると「三松」になる。
 ごちゃごちゃと議論したが、ようするに、「Samsung」のロゴの表記は謎である。
 ただしそれを言うなら、「ヒュンダイ(現代、현대)」の「Hyundai」も文化観光部2000年式なら、「Hyeondae」とラテン語みたいになる。
 ちなみに先日取り上げた、「西武新宿駅」の「세이부신주쿠역」も文化観光部2000年式でローマ字化すると「Seibusinjukuyeok」となる。日本語のローマ字をハングル化して韓国のローマ字化にしても、もとが音価主義なので、ほとんど日本のローマ字と変わらない。ということは、この例では韓国で文化観光部2000年式のローマ字化が進展すれば、日本語のローマ字でも問題なさそうだ。ただし、別の例だと奇妙な問題が生じる。「高田馬場駅」は「다카다노바바역」だが、ローマ字化すると「dakadanobabayeok」になる。日本人がこれを見ると、「ダカダノババイエ~ok?」みたいになる。日韓のローマ字共通化は無理だと言っていいだろう。
 いずれにせよ、ここで疑問が生じるのは、「サムソン(Samsung)」や「ヒュンダイ(Hyundai)」のラテン字母の表記の混乱を見てもそうだが、そもそも韓国では文化観光部2000年式のローマ字、別の言い方をすると韓国式拼音、が普及しているのか疑問に思える。
 まず、はっきりしていることは、韓国の国としては、文化観光部2000年式拼音を推進しようとしていることだ。このことは公式の文書で採用され、地名のローマ字母表記でも使われているからだ。
 日本でも歌謡曲などでも知られる「釜山(プサン)」は、ハングルでは「부산」で、韓国のローマ字表記では「Busan」になる。マインドマップの創始者のような印象だが、「Busan」の発音は発音記号では[pusan]で、実際の音を聞いてみると「ブサン」に近い印象もある。부は前に母音がくると「ブ」に聞こえる。なので「ブサン」でもいいようにも思えるが、仕組み上は日本語のローマ字読みの「ブサン」ではない。
 「金浦空港」の「金浦(キンポ)」も、ハングルでは「김포」で、「キンポ」の音に近い。が、表記は「Gimpo」である。独島は「ドクト」と日本で読まれることがあるが、ハングルは「독도」。ローマ字では「Dokdo」。音は「トクト」。皮肉なのか、もじって「Dogdo」と表記されることもある(参照)。同様に、日本で「キムチ」と言っているあれは、「김치」なので、ローマ字では「gimchi」になる。韓国としてはローマ字が整備できたわけだが、「Gimchi」が「キムチ」というのは日本人にはちょっとわからないのではないか。
 基本的にローマ字化というのは、音価をラテン字母で疑似表示するのではなく、一つの正書法として統一的に確定しているということだ。中国語の拼音もそうで、「北京」は「Běijīng」とラテン字母で表示するが、発音は「ペイチン」に近い。
 いずれにしても、ローマ字化は必然的に発音とずれてしまうことになる。日本語の場合は、正書法としてのローマ字化を訓令式として、英語発音に近づけたのがヘボン式である。が、それでもずれる。
 中国語の拼音、つまりローマ字化が国内の国語教育の基本に採用されているのに対し、また日本でもローマ字化は小学校で教えるのに対し、韓国ではローマ字化は教育の場で教えられているふうはない。韓国語の外国語教育でもそうした教材は見かけない。たぶん、ないだろう。
 なお、以上は韓国の場合であって、北朝鮮では別の方式を使う。興味深いのだが、北朝鮮は元来ソ連の傀儡国家として成立した背景もあって、ロシア語のキリル文字を使う表記法があり、現在でも正書法となっている。「平壌」の「평양」は「Пхеньян」である。
 韓国語のローマ字化の今後はどうなるのかも、ついでなんで考えてみた。というか、私は韓国語を学ぶとき、中国語同様、このローマ字を通して学べばいいのではないかと当初思っていたからだ。しかし、実際に学んでみると、訓民正音でも明らかなように、元来は漢字のまざる文化がベースにあり、漢字を意識する点でハングルのほうが便利だった。
 元来が漢字なら中国語のように拼音化できそうなものだが、韓国語の場合は言語の基本部分にアンシェヌマンが多く、これがローマ字だと切れ目の意識が逆にわかりにくくなる。そういう点からすれば、韓国語は中国語と日本語の中間的な言語であるがゆえに、正書法も独自のものにならざるを得なかったかのだろう。
 
 

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