韓国語の勉強を始めた
今年に入ってから新しい言語としてはロシア語をやっていた。教材はミシェル・トーマスのもので、初級と中級をとりあえず理解できたな、という程度までやって、後は語彙をそれなりに増やそうと、語彙の教材を始めた。が、これが意外なほど難しい。簡単に感じられないのは初級と中級の部分が曖昧だからではないかと反省して、復習してみた。基本的にそれで合った。ようは教材が難しく感じられるときは復習が足りない。実際のところ語彙の学習では格の学習が多く、難しいものだった。それも一通り終えた。さらに復習をすればいいのだが、ちょっと飽きた。少しロシア語から離れてもいいんじゃないか。ちょっと別の言語を囓りたくなった。そこでなんとなく思っていたのは、韓国語(朝鮮語)と現代ギリシア語とアラビア語だった。とりあえず、韓国語始めるかと、始めてみた。
Korean I, Comprehensive |
韓国語を学ぶにあたって、こっそり思っていたのは、ハングル文字は覚えなくてもいいんじゃないか、あるいは、覚えるなら、韓国語の拼音として、正式に「文化観光部2000年式(Gugeoui Romaja Pyogibeop)」があるはずなんで、そっちのほうで学べばいいやと思っていた。
学び始めて三日目でダメだとわかった。少なくとも自分ではダメだった。ピンズラー教材が暗黙に前提にしているように、言語の学習というのは音声は聞こえるとおりに学び始めればいい。むしろそのほうがいい。だが、韓国語の教材を聞いていると明らかに、音変化後の音として聞こえる。ちょっと難しい言い方になるが、音素配列は音配列とかなり違っているだろうと推測がつく。
そもそもこの推測がつくのも、以前からなんとなく思っていたが、日本語と構造がそっくり同じだからというのがある。私は日本人なので米人と違って、韓国語がなぜこういう語順なのか、ここには主題の格助詞があるだろうとか、自然にわかってしまう。いやさすがに、韓国語と日本語は似ている。
別の言い方をすれば、聞こえている音と、正書法で書かれているものは違うのだろうというのがわかってしまい、いらだつ。ピンズラーの教えに反するが、これはもう一気に、正書法の基礎としてハングルを覚えてしまったほうが早い。
幸い、ピンズラーのフェーズ1の教材にはハングル(オンモン)の読み方のレッスンが別途18課あって、1課10分程度で終わる。ええい、こっちを先にやってしまえ。ということで、かなり集中的にハングルの読みだけの学習を優先した。
実は、ハングルについてはこれまでも覚えては忘れる、というのを繰り返している。ハングルは一種のローマ字というか仮名表記だし、そもそも漢文が読めない民衆向けに、ふりがなとして出来ているので、そんなに覚えるのは難しくない。誰でも、一時間も学べば読めるようになる。ところが、一旦覚えても日常使っていないでいると忘れる。たぶん、日本人だとカタカナとの干渉みたいのがあるのではない。「가」となど、「フト」とか読みたくなってしまう。
ちなみに、ユーチューブにいい教材があるので、これを使うと、15分くらいでハングルの読みは学習できる。
とりあえず、ハングルが読めるようになったので、ハングルを読み返すと案の定、かなり音変化がある。もちろん、ピンズラー教材には正書法のテキストはないのだが、ある程度聞いていたら意味から正書法のテキストは再現できる。
改めてハングルの仕組みを見る。そもそもこれは、漢字の読み仮名としてできた工夫である(「國之語音、異乎中國、與文字不相流通、故愚民有所欲言、而終不得伸其情者多矣。予爲此憫然、新制二十八字、欲使人人易習、便於日用耳。」)。
なので、パッチム(子音字母)は入声(プラス陽声韻)に対応している。別の言い方をすれば、そもそも韓国語(朝鮮語)の音節というかモーラ単位の記法というよりも、漢字に対応させてできたものである。
たとえば、漢数字の「八」は、普通話では「bā」で1声の母音で終わるが、日本語では「ハチ」、韓国語では「팔」。中古音では、[pat]だろうと思われる。日本語や韓国語に古代中国語の入声が残っている。
と、こう今書いてみて、韓国語では、「팠」ではないのだなとしみじみ思う。というか、そもそも漢字音の仮名としてそうしたハングル文字は存在しない。[ptk]への対応は「ㅂㄹㄱ」になる。「tからㄹ」が規則的になっている。このあたり、訓民正音の成立は15世紀なので、李朝の儒者たちも日本の儒者同様、その時代の中国語の文化からはすでに切り離されていただろう。まあ、今後もう少し調べてみたいというか、関心が向く。
今回、しみじみハングルに向き合って考えが変わったことがある。以前は、こんな不合理で古くさい形式の拼音を使うのは不便なので、せめて漢字ハングル混じりにすればいいのにと思っていた。
だが例えば、「東京から来ました」というとき、仮名で「トウキョウカラキマシタ」と書くと読みづらいが、「도쿄에서 왔습니다」はそれほど読みづらいものでもない。「東京에서 왔습니다」のようが読みやすいように思うが、慣れれば変わらないと思えるようになった。
ロシア語を学んでいて、完了体動詞・不完了体動詞、格変化とかやっていた感覚からすると、日本語と韓国語は実にそっくりだなあとしか思えない。特に、日常語のなかに尊敬が修辞ではなく文法に埋め込まれているあたりは、なんだろうという気持ちがする。それでも韓国語には女性語がないだけましかもしれないが、ロシア語だと主語が女性だと過去表現ですら性数一致が強制される。
というわけで、今回の韓国語学習にはピンズラーの教材を使うので、とりあえず、30日間は韓国語を学ぶ。
今日で4日目になる。意外に難しくて、途中で挫折するかもしれない。それでも今回、集中的に韓国語音声を聞き、ハングルに向き合ってみて、いろいろ思うことはあった。
日本としてみれば、韓国語というか朝鮮語は、隣国の言葉なので、ハングルの表記法と漢字の関係くらいは義務教育で教えておけばいいのではないかとも思った。
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コメント
私も去年の頭あたりまで、ピンズラーで勉強してました。
で、当初英語のお試し版みたいな安いものを使い、その後すぐに日本語の1と2にしたのですが、かなり発音が違うなと感じました。英語のは英語ネイティヴが話してる感じで、日本語のは韓国の人が話してるように聞こえました。
どっちがいいかよくわかりませんが、前者は取りこぼしてた音がある感じがしましたね。
投稿: jinon | 2015.05.08 06:12
ハングルの字幕がでる外国映画とかKPOPの音楽動画を見れば早い予感。
最終的には、日本語のヒンズラーかなぁ。こっちは興味があるなぁ。耳から学ぶ日本語。
大企業の副社長にまでなった人とネットで知り合って、一番、興味深かったのは、「とにかく、聞くんです。部下が言うことは、全部。おかしいことも間違っていることも。」で、その他でも、その人がネットで書いたことは、全部忘れたけど、自分の耳で聞いたことは、今でも、いろいろ残っている。ほとんど、金融のポイントだけどね、笑。
とにかく、日本の政治家は、口ばっかり。目と耳を使えよ。
投稿: | 2015.05.17 07:27
あと、演劇で、口立てって書くのかな、台本を一切使わず、演出が口でいったことをそのまま役者が覚えるというのがあって、これも、なんとなくわかるんだよね。
投稿: | 2015.05.17 07:29