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2014.10.11

加藤達也・産経新聞前ソウル支局長による朴槿恵大統領への名誉毀損起訴の不可解

 韓国の司法当局が、加藤達也・産経新聞前ソウル支局長を朴槿恵大統領への名誉毀損により情報通信網法違反の罪で在宅起訴した件について、私はごく基本的なことを勘違いしていたかもしれない。
 名誉毀損とされた該当文章だが、現在でも普通に産経新聞のサイトから「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」(参照)として読むことができる。率直に言って、こんなくだらない内容が自由に読める報道の自由が日本にはあるのである。
 私が勘違いしたかもしれないと思ったのは、この内容を韓国語で翻訳した記事(参照)が名誉毀損の対象になっていたのだと思い込んでいた点である。
 そのうえで私は、わざわざ他国に行って他国の言語で嫌がらせのような記事まで発表することはないのではないかと思っていた。
 とはいえ、原文を読まない限り、なにが名誉毀損なのかも判断しがたいし、私は韓国語を読みこなす能力がないので、詳細が分からない以上、判断は控えるしかないだろうと思っていた。
 それが勘違いだったかもしれない。
 名誉毀損とされたのは、まさに、この産経新聞のサイトに日本語で記載された記事そのものだったらしい。そんなことがありうるんだろうか?
 疑問に思ったのは、昨日zakzakという産経系のサイトに掲載されたコラム「「行方不明」「下品」…事情聴取で浮き彫りになった日韓の言語文化の違い 産経前ソウル支局長起訴 」(参照)を読んでからのことである。


 【ソウル支局】韓国検察が産経新聞前ソウル支局長に対する一連の事情聴取で重点を置いたのは、前支局長がコラムで使った「行方不明」「下品」といった漢字語についてだった。これらの言葉は通常、韓国語では日本語より強い意味となる。「朴槿恵(パク・クネ)大統領を誹謗(ひぼう)した」と検察側が前支局長の在宅起訴に踏み切った背景には、こうした日韓の言語文化の違いもあった。

 正直なところ、まさかと思った。が、この先を読むと、どうやら、産経新聞のサイトに日本語で記載された記事がもとで起訴されているとしか読めない。

 2日間にわたった8月の聴取で検事が時間を割いたのは、「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…」というコラムのタイトルに、なぜ「行方不明」という言葉を使ったのか-だった。
 沈没事故当時の朴大統領の居場所について、大統領府の秘書室長は「分からない」と国会で答弁していた。日本では首相の動静が分単位で報じられるが、朴大統領は事故当日、7時間にわたって大統領府内の所在がはっきりしなかった。
 前支局長は「国会の質問者や国民が所在を明確に知りたかったはずだ」と強調したが、検事は、大統領府内にいたのだから「行方不明ではない」と指摘し、記事は虚偽であると認めさせようとした。
 「行方不明」は韓国語では、「行方をくらます」といった強い意味で受けとめられる。前支局長は、日本語では同じ敷地内にいて姿を見かけない程度でも使うと説明したものの、検事とのやり取りはかみ合わなかった。

 これが本当なら、日本語で書かれた、通常日本人向けと想定される記事について、韓国検察は、裁判のために韓国語に翻訳したもので、起訴を行っていることになる。これはどう考えても、翻訳の質の問題ではないかと思えてならない。
 問題の該当となるコラムだが、私も8月時点で読んで、下品なくだらないコラムだなと思ったが、そう思った理由の最大の点は、独自取材がなされていないことで、読めばわかるが、韓国でのデマをまとめた以上の内容になっていなことだ。この点は、各方面の識者からも指摘されていて、このコラムが名誉毀損ならなぜ元ネタの記事は名誉毀損にならないのか疑問視されていた。
 しかし、ことの大半は、検察側の私的な翻訳の解釈だったのだろうか。
 zakzakの記事では同質の翻訳問題が取り上げられている。

 次いで検事が追及したのは、コラムで「『下品な』ウワサ」という表現を使った意図だ。前支局長は、「品格が落ちる」という意味で漢字熟語の「下品」を使ったと説明。だが、韓国語では「下品」はほとんど使われず、「賤(いや)しい」を意味する強い言葉で訳されがちだ。検事はこの言葉を「誹謗」の一つとみなしたようだ。
 コラム中の「政権の混迷ぶり」「不穏な動きがある」という表現も問題視された。「混迷」や「不穏」は政権の不安定さを伝える用語として日本の報道でしばしば使用される。だが、韓国語の「混迷」はより強い意味となり、「不穏」は「反逆的な陰謀」を示す言葉としても用いられる。
 このため検事は、これらの単語は「大統領を誹謗するためのものではないか」と迫った。(後略)

 このzakzak記事では、結語として次のように述べている。

 日本語と韓国語には同じ漢字語が多いが、ニュアンスが異なる言葉も少なくない。さらに、韓国ではハングル表記が主で、漢字の本来の意味に疎くなっている。こうした事情も今回、誤解を生んだ背景にある。

 もし問題の核心がそうなら、その前提は、韓国語が日本語と同じという認識が潜んでいることになる。別の言い方をするなら、韓国検察が加藤氏のコラムを名誉毀損とするなら、それをきちんと翻訳して司法に提出しなければならないはずだ。
 このzakzakが伝えている事実部分は本当なのだろうか?
 基本的に日本語を解する日本人向けに日本国内と想定されるサイトに発表した言論が、たまたま記者が韓国にいたという理由で名誉毀損で裁判に掛けられるのだろうか? 
 以上の構図が本当なら、自由主義国家として考えられない事態である。どうなのだろうか?
 以上の疑問が自分では明確になっていない。
 しかし、その点が明確になっていなくても、そもそもこの起訴は言論封殺として批判されるべきだろう。
 気になるのはこの検察の背後である。読売新聞「韓国市民団体、名誉毀損の告発を乱発」(参照)より。

 【ソウル=吉田敏行】産経新聞ソウル支局の加藤達也・前支局長(48)が情報通信網法の名誉毀損罪で在宅起訴されたきっかけは、現地の市民団体による刑事告発だった。
 被害者本人の告訴が必要な日本と異なり、韓国の名誉毀損罪は、第三者の告発でも捜査・起訴できるため、告発が乱発される要因にもなっている。

 この読売新聞記事の真偽もいまひとつよくわからない。そもそも名誉毀損として成立するためには、被害者の意思が必要であり、それに反してまで第三者が起訴ができるとは思えない。もしそうであれば、朴大統領の意向が関連していることになる。
 私の知識は不確かなので、仮定に仮定をかさねることになるが、もし今回の名誉毀損に、朴大統領の意向が関連しているなら、韓国国家はべたにもう独裁者による暗黒状態と言ってよいだろう。
 ただ、正確な事実関係がわからない。本当に、日本語の記事を私的翻訳で検察が起訴したのか、朴大統領の意向が関連しているのか、この二点は現状の報道から明確にならない。
 こうした現状は、日韓問題に閉じないことは、米国務省のサキ報道官は8日の会見でも示されていたことでもあきらだろう(参照)。

QUESTION: In South Korea, former Seoul bureau chief of the Sankei Shimbun, the Japan’s daily newspaper, was indicted on charge with defamation of President Park. Do you have any comment on that?

質問者:韓国でのことですが、産経新聞(日本の日刊紙)の前ソウル局長が朴大統領の中傷容疑で起訴されました。あなたはこの件にコメントがありますか?

MS. PSAKI: We are aware of the reports that the Seoul prosecutor’s office today indicted the Sankei Shimbun Seoul bureau chief -- bureau editor for defamation. We’ve been following the investigation by the Seoul prosecutor since its initiation. We certainly don’t have additional details. As you know, we broadly support freedom of speech and expression, and we have outlined in the past, and including in our recent reports that we issue annually from the State Department, about our concerns about the law on the books in South Korea.

サキ氏:私たちは、ソウル検察当局が今日、産経新聞ソウル局長(編集局長による中傷)を起訴したという報告を知っています。私たちはその開始以来ずっとソウルの検察による取り調べを追っています。私たちは確かなところ、追加の詳細情報を持っていません。ご存知のように、私たちは幅広く、表現言論の自由を支持し、以前にまとめましたが、韓国の法律記載への私たちの懸念については、私たちが毎年国務省から出るしている最新報告書に含めてあります。


 米国としては、言論の自由の侵害として注視していることを明確にしているものの、詳細な事実関係がよく認識できないということのようでもある。
 なお、サキ報道官が言及している報告書は国務省は2013年版の人権報告書・韓国(参照)である。
 該当となるのは以下である。

Libel Laws/National Security: The law broadly defines and criminalizes defamation, which could have a chilling effect on news coverage. The law calls for a punishment of up to seven years in prison. In 2012, according to a media report, more than 13,000 defamation complaints were filed and 3,223 persons were convicted. While the vast majority of those found guilty were fined, 24 individuals were sentenced to prison.

名誉毀損法/国家安全保障:該当法律は幅広く中傷を定義し、有罪としている。このため、ニュース報道に対して萎縮効果を及ぼすことができる。法律は最高禁固7年の処罰を要求している。2012年には、メディアの報告によると、13,000を超える中傷不満が申し立てられて、3,223人の人が有罪宣告された。有罪とされた大部分に罰金が科され、24人の個人が禁固刑を宣告された。


 試訳文中の「萎縮効果」は”a chilling effect”の定訳語だが、原義は「身も凍るほどの影響」ということで、英語のニュアンスが伝わる。
 ぞっとするね、ということだ。
 
 

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2014.10.10

ピンズラー教材ドイツ語2をようやく終えた

 ピンズラー教材ドイツ語2をようやく終えた。教材は本来一日一課だから、30日で終わるはずなのに、70日かかった。途中、もうダメだとなんども思った。こんなに難しい言語だと思わなかった。

cover
German I,
Comprehensive
 当初、ドイツ語なんて英語とそっくりで簡単じゃないかと思っていた。枠構造とかも規則は簡単だから覚えたらそれでいいではないか。動詞変化も格変化も規則的だし数は多くないから暗記はそれほど難しくない。まあ、そこまではそう。
 愕然と難しいと思ったのは、聞き取りからだった。だんだん自然な速度になるにつれ、聞き取れなくなる。Duで受ける動詞が倒置になるとDuのDの音が、動詞の変化形のstに吸収されて聞こえない。ちょっと気になって音声波形を分析してみたけど、Dは発音されてなかった。
 格変化も一通り暗記しただけだと、聞き取りのなかでほいっと出てくるときは難しい。発話するときには格変化の感覚がないと違和感がある。というか、プログラミング言語を書いているような感じで、自然言語の感覚が追いつかない。
 どうしたらいいんだろうと思って、とまどっているとき、Allaboutのサイトで次の詩を知った。"Der Tod des Todes bringt dem Tod den Tod."
 ナンセンスなようだが、「死神の死は、死神に死をもたらす」とも訳せる。これを呟いていると、ただ冠詞だけ並べて暗記するよりも格の感覚が乗ってくる。同サイトでは他のお勧めもあったが、なんどかやってみて次のようにしてみた。訳は適当だが、いちおう文章化できればいい。
 男性形と女性形と並べるより、男性と中性形、そして、女性形と複数形としたほうがわかりやすかった。

Der Tod des Todes bringt dem Tod den Tod.
Das Geld des Geldes bringt dem Geld das Geld.

死神の死は、死神に死をもたらす。
金の銭は、金に銭をもたらす。

Die Liebe der Liebe bringt der Liebe die Liebe.
Die Kinder der Kinder bringen den Kindern die Kinder.

愛の神の愛は、愛の神に愛をもたらす。
子らの子らは、子らに子らをもたらす。


 冠詞だけで取り出すとこうなっている。

m: der, des, dem, den
n: das, ---, ---, ***

f: die, der, der, ***
p: ---, ---, den, ***


 基本的に、男性形以外では、目的格は主格と同じで、むしろ、denの場合の感覚をきちんとするよさそうだ。所有格については、desとderの感覚。そして、与格は別途、前置詞なんかと合わせて覚えればいいのかという感じになってきた。
cover
German II,
Comprehensive
 ピンズラーはこうした変化形を表化しては教えないので、ある程度、自分なりに格の感覚が出来てくると、逆にいい練習になった。
 そして、この格変化だけど、単に定冠詞だけはなく、代名詞Sieのなんかもこれに準じているし、zuがzurやzumに変わるのも、格変化の音の響きに準じていることが感覚的にわかってきた。
 そのおり、英語で「he, his, him」なのになぜ、「she, her, her」なのかと疑問にふと思った。これはドイツ語と同系の言語の名残だろうな。
 ドイツ語の定冠詞の格が男性名詞だと、des, demと活用し、女性名詞だとder, derと活用する。これは、英語のhis, himそしてher, herと対応している。ということ。
 もちろん、現代ドイツ語の人称代名詞だと、「彼」はseiner, ihm、「彼女」はihrer, ihrになる。だけどたぶん、これは現代ドイツ語もドイツ語として変化してそうなったのだろう。というか、現代ドイツ語の人称の使い方はとても難しい。
 いすれにせよ、このあたりで、ふーむ、なんとかもう少しドイツ語やっていけるかなという感じになった。
 枠構造についてはもうひたすら慣れるしかなかった。
 この「ひたすら」に準じて思ったのだが、昨年から、フランス語、中国語と学んで来て、それらも忘れないように勉強を続けようとしてきたのだが、いったん、やめることにした。日課的な英語の勉強もやめた。語学はしばらくドイツ語だけに集中しようと思った。この踏ん切りもけっこう大変だった。おかげで英語の発音がドイツ語っぽくなった。これはもうしばらくしてから戻すことにしようと思う。
 とはいえ、Duolingoのフランス語だけは少しずつ進めた。
 この毎日こつこつと小学生の漢字の書き取りみたいにDuolingoを勉強するのも積み重ねるとそれなりに効果はありそうだ。いちおうDuolingoの説明だと、私は65%フランス語を学んだそうだ。ドイツ語は37%。
 というか、Duolingoをやって思ったのだけど、語学は初級的なことが終わると、あとは語彙だなあと思う。これはピンズラーも言っていたが、語学でいちばん難しいのは語彙だと思う。
cover
Learn German
with Paul Noble
(Collins Easy Learning)
 この先、ドイツのフェーズ3を進めるか、しばらくDuolingoでドイツ語を進めて、一点集中的に、ロシア語か朝鮮語でも学ぶかちょっと戸惑っている。ポール・ノーブルのドイツ語に戻ってみたい気もする。
 それにしても、フランス語は英語(ピジン化したフランス語)の延長、中国語は日本語(漢文)の延長に思えたけど、ドイツ語は根幹で英語に近いぶん、英語の違いが最初は楽に見えたけど、学ぶにつれ、逆に阻害要因になってきた。これは英語国民でも同じように感じるのではないか。他方、ドイツ人にしてみると、英語は比較的習得が楽な言語に見えるだろうなと思った。動詞変化や格変化、前置詞格変化や枠構造・倒置などがないので。
 あと、ドイツ語勉強して、哲学者だとカント(Immanuel Kant)やヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)、マルクス(Karl Heinrich Marx)、ハイデガー(Martin Heidegger)、文学者だとヘッセ(Hermann Hesse)やリルケ(Rainer Maria Rilke)、音楽だとベートーベン(Ludwig van Beethoven)やモーツアルト(Wolfgang Amadeus Mozart)などが、随分身近に感じられるようになった。特にマルクスとかハイデガーとか原語の感覚が少しわかってくると、ああ、なーんだ、そうことかという感じもした。G-W-Gとか、Daseinとか。
 英語もおぼつかないが、それでも初級レベルのフランス語、ドイツ語、そして中国語を学んで、だいぶ世界の見方というか世界というものを受け止める感覚は変わったなと実感する。これらの国の人名とか見て、カタカナ使わなくてもわかるというのもけっこう便利だ。
 
 

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2014.10.09

野田国義参議院議員に謝罪せよとまでは思わないが、謝罪したほうがよいのではないかとは思う。

 7日の参議院予算委員会の基本的質疑で、山谷国家公安委員長が在特会メンバーと一緒に写真を撮っていたということに関連した質疑の際、委員会室で山谷氏に「団体のメンバーと懇ろなのではないか」というやじが民主党議員と思われる側から複数回飛び、これはセクハラ発言ではないかと話題になり、民主党の蓮舫元行政刷新担当大臣は、やじを飛ばしたのが同党所属議員による発言であることを認め、議会に対して陳謝した。このおり、やじを飛ばした議員は名乗り出るようにも示唆された。
 名乗りでたのは民主党・野田国義参議院議員であった。しかし、野田議員は、私の誤解かもしれないが、陳謝はせず、セクハラとして受け止められたのは誤解であると釈明するに留めた。NHK「民主 野田参院議員 やじを認め釈明」(参照)より。


 そのうえで、野田議員は「山谷大臣と団体との関係が親しいのではないかという意味で『ねんごろ』という表現をしたが、結果として誤解を与えたことは申し訳ないと思っている。今後の対応は党と相談して決めたい」と釈明しました。今回のやじを巡って、民主党は8日朝の参議院予算委員会の理事会で、重く受け止めているなどとして、各会派に陳謝しています。
 菅官房長官は午後の記者会見で、「私は現場で聞いていたが、確か3回も言っていた。セクハラ発言の最たるものだったと思うし、女性の品格を著しく傷つける発言だと思う。やじを飛ばしたことを認めたのであれば、素直に謝罪したようがよろしいんじゃないかなと私は思う」と述べました。

 現場にいた菅官房長官は「セクハラ発言の最たるものだった」との認識を示したが、当の野田議員は「結果として誤解を与えたことは申し訳ない」としている。つまり、セクハラではないとの認識である。
 野田議員の釈明には詳細報道があった。産経「山谷氏への「懇ろ」やじ 野田議員釈明詳報「九州ではよく使う」」(参照)より。

--どういう意図でやじったのか
「全く違った解釈をされているんで、ちょっと私も驚いている。というか憤りも逆に感じている。私の場合、小川(敏夫元法相)先生が質問していて、いわゆる在特会(=在日特権を許さない市民の会)との関係、思想的な懇ろな関係、そしてそれが長くずっと続いていた、いわゆるそれが懇ろな関係じゃないかということで言ったつもりなんですね」
--親しいという意味だったのか
「九州じゃあ、よく使うんよ(注:野田氏は参院福岡選挙区選出)。今日も理事会で九州の先生が言ってくれたらしいが、懇ろって結構使うんよ。そしたらどうもこっちは違うみたいだね。それがまあ、一つ反省なんだけど」
--問題になった点はどう釈明するのか
「そういうことで在特会との思想的なつながりが親密、懇ろでしょう、と。小川議員の発言に対して明確な答弁もなくて、はぐらかす発言をずっとしていたから、そういう中でみんな、『が-』ってなったんじゃない。そこで私自身もそういう意図で、発言したということですね。だからなんでそういう取り方するのかなと思ってね。皆さんも辞書をひいてもらえば分かるように、いくつか意味があって、その一つに確かにという部分が一つあるよね。皆さんがおっしゃっていることでしょう。しかし、僕の場合はまったく在特会との関係が長く続いていたことが懇ろでしょうと(言った)」
--蓮舫筆頭理事が予算委理事会で謝罪したことをどう考えるか。騒動になった点は
「誤解を招いたということは申し訳なかったということなんですが、僕はそういう意味で使って、全く皆さんが思ったような取り方はしてませんので。おかしいって、安倍晋三首相が最初におっしゃっていたけど。九州じゃ、よく使うよ」
--やじの内容は「宿泊先を知っているなら懇ろではないか」ということだった
「そうそう。だから宿泊先を知ってるぐらい懇ろなんでしょうと。そうでしょう。だから在特会とのつながりが長く、親しいから宿泊先を知っているんじゃないのということを言っている」
--「宿泊先」と言うと、違って受け止められるのではないか
「しかし、来たという形になっていたじゃない。小川先生の話も訪ねてきたという話よ。そうでしょう。訪ねてきたというところを、ずっと小川さんも話していたよ。訪ねてくるぐらいだったら親しいんじゃないですか。そうよね。確かに。僕も泊まっているホテルなんかあんまり教えないよね。親しい人しか。だから、それが懇ろなんでしょう。親しいというね。それも長年。だからずっと長く付き合っていらっしゃったら、いろいろマスコミも今書き始めているみたいだけど。それで明解な答弁もなく、はぐらかしての答弁ばっかりが続いていたということでしょう」
--都議会でもセクハラ発言が問題になった。それと比較する声もあるが
「全く違うじゃない。辞書を引けば、全然違うじゃない。皆さんが一方的に当てはめているだけであって、僕の言わんとするところは全く在特会との付き合いが長くて親しいんでしょうと。だから、私が在特会と懇ろな関係でしょうと。どうとる? ねえ。個人との話じゃないわけだから」

 野田議員の釈明のポイントは「懇ろ」という表現は、九州では「親しい」という意味で使うし、「辞書を引けば、全然違う」とのことで、性的な文脈で読むことは誤解であるから、セクハラ発言ではないということだ。そこで文脈を再現しておこう。聞き取れる範囲で書き起こしてみた。



小川:平成21年2月22日、この日に在特会の幹部が3人いると。その他の方も含めて大臣は記念写真を撮っているということが公表されておるんですがね。これは大臣が宿泊されているホテルに朝、訪問してきたんではないですか。
山谷:あのぉ竹島の日の集会のことだと思いますけども、朝訪ねて来たとかどうかということはあのちょっと記憶にございません。あのその人が関係者、、在特会の関係者だということも全く存じておりません。
小川:記憶にないのにね、なぜ講演会の場でたまたま頼まれたから写真を撮ったと説明できるんですか。
山谷:あのぉ政治家でございますから様々な場所で、ま、様々な方とお会いするということでございまして、え、写真を求められれば撮るということでありますが、あ、その方たちが在特会にメンバーであるということは全く存じませんでした。
小川:あの訪問したほうのですね、在特会の幹部の方がこういうふうにホームページで言っていますよ。「山谷先生の宿泊されているホテルに押しかけ、そうしょう、少々遅い夜明けのコーヒー」とこういうふうに言っています。大臣が泊まられているホテルに朝方午前中にですね、訪問したんじゃないんですか。大臣はそれを受け入れてお会いされたんじゃないんですか。
野田ヤジ:「宿泊先まで知っているっていうのねは、懇ろな関係じゃねえか」
山谷:そのような、どのようなホームページかは私は承知しておりませんが、私はあの早寝でございましてですね、夜明けのコーヒーなどは飲みません。

 ヤジ部分は次のほうが、多少聞きやすい。

 私はこれを聞いて二つ印象をもった。一つは、山谷議員が「夜明けのコーヒーなどは飲みません」と笑って述べているが、これは、「夜明けのコーヒー」の含みを理解してのことだろう、ということだ。この文脈ではもとは在得会が使っている表現だが、昭和の人間であれば、これからピンキーとキラーズの『恋の季節』の次を思い浮かべる。


夜明けのコーヒー
ふたりで飲もうと
あの人が云った
恋の季節よ

 これが一般的にどう受け止められているかというと、日経のコラム・春秋がわかりやすい(参照)。

春秋
2013/10/29 3:30
 昭和29年のことだ。ブラジルで、同じホテルに泊まるフランスの若い俳優が歌手の越路吹雪に声をかけた。「あす朝早く二人でコーヒーを飲もう」。うなずいた越路さん、約束を守ろうと翌朝、眠い目をこすり彼の部屋をノックすると、彼は一睡もせず待っていた……。▼越路さんはやっと気づく。朝のコーヒーを一緒に飲もうとは、一夜をともにしようという誘いなのだと。この逸話を気に入ったのが越路吹雪を家族のように支えた作詞家の岩谷時子さんだった。かくして後年、ピンキーとキラーズの「恋の季節」に「夜明けのコーヒー 二人で飲もうと~」の一節が盛り込まれたのである。

 つまり、「夜明けのコーヒー 二人で飲もうと~」は、「一夜をともにしようという誘い」ということで、その文脈を山谷議員も了解したうえで、またこれが回答になると理解したうえで、そんなことはないでしょう(飲みません)と否定したわけである。
 ここで考えることは、なぜ山谷議員がそう文脈を考えなければならかったかである。それは、小川議員から「夜明けのコーヒー」の言葉が出て、野田議員のヤジで「宿泊先まで知っているっていうのねは、懇ろな関係じゃねえか」という文脈が形成されたからではないかと思う。ヤジがこの文脈を形成したように見える。
 しかし、野田議員としては、文脈をはずして、「懇ろ」の字義から釈明しているが、その字義を文脈に挿入すると、「宿泊先まで知っている親しい関係」ということになる。ここで、なぜその男女関係で「宿泊先」を告げるかといえば、「一夜をともにしよう」あるいは、性的な密会という含みが生じるからだろう。
 私はこの部分からそのように受け取ったし、これは、管官房長官が言うように「セクハラ発言の最たるものだったと思うし、女性の品格を著しく傷つける発言だ」ということに同意した。
 もう一点は、しかし、それも解釈にすぎないということだ。それはゲスの勘ぐりだというなら、それもそれはそれで受け入れたいとも思う。たぶん、このエントリーにもゲスの勘ぐりというコメントが来るだろうと予想する。山谷議員や在得会を弁護するための議論だと脊髄反射される方が少なくないと予想するからだ。
 だから、解釈問題だという還元のしたかたもあるだろう、ということで、野田国義参議院議員に謝罪せよとまでは思わない。
 それでも管官房長官や私のような受け止め方はけして少数ではないだろうという点で、きちんと謝罪したほうがよいのではないかとも思う。
 謝罪を勧めるのには、もうひとつ理由がある。山谷議員を在特会の関連で批判したいなら、セクハラと受け止められるような追求はしないほうがよいからだ。そこはきちんと分けたほうがよいと思う。この意見が、野田国義参議院議員や民主党に伝わってほしいと思う。
 セクハラというのは受け取った人の問題である、とまでははっきりとはわからないし、また山谷議員がこれをセクハラとして受け取ったかも判然とはしない。しかし、国会の場で直接的な事実関係の判然としないなかで、密会的な性関係を否定するような配慮を女性に強いる状態自体が、私にはセクハラの空気であると感じている。
 
 
 

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2014.10.08

青色LED開発関連ノーベル物理学賞もなんか微妙だった

 今年のノーベル物理学賞の受賞者に青色LED開発の関連で、カリフォルニア大学教授の中村修二さん、名城大学教授の赤崎勇さん、名古屋大学大学院教授の天野浩さんが受賞した。よかったかと言えば、よかった。うれしいニュースかといえば、うれしい。ということ。ああ、でもなあ。どっちかというと微妙なニュースだった。どうリアクションしていいか、ちょっと困惑した。
 中村修二さんが受賞することはわかっていた。今年になるか、というのはわからなかった。その点では予想していたわけではない。いずれ取るでしょう、いつごろなんだろうと思っていたくらいである。
 しかし、振り返ってみると、予想はできた。なんとなく失礼な言い方になってしまうのを恐れるが、赤崎勇さんのお年である。
 基本的にこの分野の業績は中村修二さんの単独でよいのではないかとも思っていたが、ノーベル賞の傾向として先駆的業績には配慮するので、赤崎さんははずせない。すると、お二人かな。もうひとりジェームズ・ビアード、誰?みたいな感じになるか。
 てなふうに思っていたところで天野浩さんなので、はて?と思ったが、赤崎勇さんのお弟子さんだからということなのではないか。「低温バッファー層技術」開発時に天野さんは修士二年だったが一人前の研究者として扱った赤崎先生がいい先生でしたというこのような印象を持つ。というか、ノーベル賞側では、中村さんと赤崎さんは決まっていて、そこからいろいろ調べて検討し、こういう師弟関係が日本には好ましい、という配慮の意味合いがなかっただろうか。
 中村修二さんについては、彼が話題になる時代をずっとなぞって見てきたので普通に知っていることはある。いろいろ語られ、それが語られるべきテンプレ話題になりすぎていて、今振り返って特に言及すべきこともない。
 それでも、彼の研究は文字どおり、独創だっただろうと思う。「窒化ガリウムを選んだのはやけくそでした」(参照)より。


 ついでに,フロリダ大学に1年間行かしてくれと言って,MOCVD(有機金属気相成長)を勉強しに行きました。
 1989年に日本に帰ってきて,それから青色LEDの研究を始めました。これを始めるときに,過去10年を振り返って,それまでとはまったく違うやり方でやると決めたのです。
 それまでやってきたのは,全部他人の真似なんです。文献を全部かき集めて,片っ端から一生懸命読んでやっていました。そうするとどうしても,無意識にひとの真似をするんですよ。頭の中に入っているんですね,概念が。先にやった人がこうだと決めつけたものが。
 だから今度は文献を読まないと決めました。論文も本も一切読まないと決めたのです。
 それから,人のやっていない材料ということで,窒化ガリウム(GaN)を選びました。当時,青色LEDというとジンクセレン(ZnSe)とかシリコンカーバイド(SiC)とかもあったのですが,もう大手がやってる材料は絶対やるまいと決めました。自暴自棄でGaNを選んだわけです。当時,名古屋工業大学の赤崎勇先生だけはGaNをやってらっしゃったのですがね。
 外国でも,数は多くないのですが,いくつか窒化ガリウムの論文が出ていました。それもすべて無視,です。

 赤崎先生の業績なくしてできたということでもないだろうが、見方によっては、やはり中村さんの独創でよいような気はしている。
 自然科学のノーベル賞というと、ついしかたないと思うのだけど、日本の科学振興とか、基礎研究の予算とか、言われるわけだけど、中村さんの独創で思うのは、もっと素の力みたいな感じかなあ。たとえば、装置開発でも、彼はこう言っていた。

ヒーターの設計が一番難しいんですね。私はそのあたりは得意なんです。10年間装置を自作し続けた経験が生きているのですよ。今の人はどんなにいい大学を出ても,改造ができないですね。私はそれまでずっと,ガラクタをかき集めて自作をやってきましたからね。ヒーターも自分で巻いたし,透明石英の溶接とかも,ずーっと自分でやってきましたからね。

 つまり、そういう人が独創なんだろう。そういう人材を育てるというのは、科学教育をとか予算をというのと少し違うような気がする。
 もう一点、今回のノーベル賞で、当然話題になって困惑するだろうなと思って、そのとおりになったことが、中村さんの国籍問題である。別の言い方をすると、日本人なのか、ということだ。
 日本の場合、二重国籍を認めない建前で、しかも他国籍を取ると、たしか自動的に日本の国籍は失効だから、中村さんは、その意味でもう日本国籍はないのではないかと思う。はっきりしたことはわからないのだけど、これを機会に日本も二重国籍ありにすればいいのではないか。
 ちなみに、中国系のノーベル物理学賞受賞者には、李政道、楊振寧、丁肇中、朱棣文がいるが、中国人と見るか米国人と見るか、どうでもいいような問題にも思える。
 米国というのは、オバマ大統領も父親はケニア人だし、米国籍で米国人という以上のこともないだろう。
 
 
香港・真正的普選
  

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2014.10.07

日本人イスラム国兵士志願問題が微妙に面白い

 日本人イスラム国兵士志願問題が微妙に面白い。不謹慎な、と思われるかもしれないが、微妙に面白いのである。ブログのネタにしかならないんじゃないかというくらい。
 昨日、イスラム過激派組織「イスラム国」の志願兵になろうとしてシリア渡航を計画したとされる日本人の大学生の関係先が捜索を受けた。日本人からもイスラム国への志願兵が現れたのかと、驚きをもってそのニュースを聞いた人もいるだろう。私もその一人だった。しかし、どうもこの問題、シリアスな問題というより、微妙に面白い。
 なにより、この問題の発端となる募集が単なるイタズラだったようだ。
 このネタは以前からネットのネタで流れていたのは私も知っていた(参照)。まさか、このネタがこの事件の募集張り紙だったとは思わなかったが、NHKの報道映像を見たら同じだった。

 NHK報道によると背景は次のように、ただのイタズラだったらしい(参照)。


 その後の警視庁の調べで、大学生は東京・秋葉原の古書店にあったシリアでの勤務を募集する貼り紙を見て応募していたことが分かりました。
 貼り紙はことしの春に貼られ、「求人」、「勤務地:シリア」などと書かれていたということです。
 貼ったのは古書店の関係者の男性でNHKの取材に対し「誰かに頼まれたのではなく、これを貼ればどうなるかと思って、おもしろがって貼っただけだ」と話しています。
 また、この関係者は応募してきた複数の若者をイスラム法学が専門の大学教授などに紹介したということです。

 つまり、元々ツイッターとかに流されることを想定した上でのバイラル用のネタだったと理解してよさそうだし、流れて来たこのネタについて、私もまたネタかあと笑って終わりにした。
 で、このネタに警視庁がまじめくさってぱくついたのはなぜなんだろうか?
 しかも、当初の報道はけっこう大まじめに読めるものだった。「日本人 「イスラム国」に参加計画か」(参照)より。

警視庁によりますと、この大学生はシリアに渡航する求人に応募し、渡航を計画したということで、任意の調べに対し「シリアに入ってイスラム国に加わり、戦闘員として働くつもりだった」と話しているということです。

 しかし、そもそも求人はネタではないかと思われるのに、どうしてこういうふうな情報を警察は流したのだろうか。
 理由を少し考えてみると、その「求人に応募し」というのは疑問だとしても、学生がシリアに渡ろうとしたことは本当だったのかもしれないからだろうか(参照)。

 イスラム過激派組織「イスラム国」に戦闘員として加わるためにシリアに渡航しようとしたとして日本人の大学生の関係先が捜索を受けた事件で、この大学生が7日、成田空港から出国する計画だったことが警視庁への取材で新たに分かりました。
 ことし8月にも渡航しようとしていたということで、警視庁で詳しいいきさつを調べています。

 トルコ経由でシリアに行こうとしても別に違法でもないし、手引きする裏の組織についてこの時点ではなんら報道もないので、このニュースもよくわからない。印象だと、特段に計画もなく、とにかく「シリアに行く!」と騒いでいた変な学生さんということのような印象は受ける。そう思える報道も出て来た。FNN「「イスラム国」戦闘員事件 北大生の男「なれないなら自殺する」」(参照)より。

 イスラム過激派組織「イスラム国」で戦闘員になるために、北海道大学生の男がシリア入りを計画していた事件で、男は、ジャーナリストのインタビューに、「義勇兵になれないなら自殺する」と話していたことがわかった。
 シリア行きを計画していた北大生は「そこには戦場があって、全く違う文化があって。イスラムという強大な宗教によって、民衆が考えて行動している。このフィクションの中に行けば、また違う発見があるかな。それくらい」と話した。
これは6日、「イスラム国」で戦闘に参加する私戦予備の疑いで、警視庁公安部の事情聴取を受けた北海道大学生(26)が、取材のため、一緒に渡航する予定だったフリージャーナリストのインタビューに答えたもの。
 男は、この中で「義勇兵になれないなら、自殺すると思う。たとえシリアで死ぬことになっても同じことだ」と話していたという。
 インタビューをしたジャーナリストの自宅も、6日、家宅捜索を受けていた。
 フリージャーナリストの常岡浩介氏は「警視庁公安部捜査員7人が来まして、支度している機材を洗いざらい押収していった。『(北大生は)もしもシリアに行かないとしたら、ことし中か、来年にも、間違いなく自殺しているから、シリアで死ぬことになっても、全く変わりがありません』という言い方をしていた」と話した。
 男は、秋葉原の古本を扱う書店でシリア入りを募るビラを見て、シリアに渡航歴のある元大学教授の手配で、トルコ経由でのシリア入りを計画し、イスタンブールに向け、7日、成田から出国する予定だった。
 この元教授は、8月にも今回の北海道大学生と、千葉県出身の23歳の元アルバイトの男性をシリアに連れていく予定を立てていたが、男性の親の反対などにより、頓挫していたという。
 警視庁は、7日朝からこの元教授の関係先を捜索し、裏づけ捜査を行っている。

 相談に乗った常岡浩介氏によるとどうもこの大学生には特段イスラム国に賛同して志願兵になりたというものでもないようだ。一種の鬱憤晴らしみたいなものようでもある。
 その後、ツイッター周りの情報を読んでいくと、該当の学生さんはその界隈では有名な人らしく、どうやら、イスラム国への支持というわけでもなそうだ。
 警察の対応も、その異常さ加減が微妙だ。なんで「刑法93条 私戦予備及び陰謀罪」なんか持ち出してきたのだろうか。
 これ、ちなみに、法的な根拠はNHK報道ではこう(参照)。

 刑法の私戦予備及び陰謀罪とは、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その準備または、陰謀をした者を罰する規定で3か月以上5年以下の禁錮刑にするとしています。
国家の意思とは無関係に私的に外国に対して武力の行使を行う目的で武器や資金の調達、それに兵員の募集を行うことなどが、「準備」に当たるとされています。
また、「陰謀」とは、2人以上の人が戦闘を実行するために謀議などを行うこととされています。
 この規定が実際に使われるのは、極めて異例です。
 中東地域の紛争に詳しい桜美林大学の加藤朗教授は「日本でこうした法律が適用されるのはこれまで聞いたことがなく、大変驚いている。イスラム国はプロが作ったような宣伝用の動画をインターネット上で公開するなど世界を対象に巧みな宣伝活動を行っていて、イスラム教の教義を知らない日本人でも、影響を受けかねないと思う」と指摘しました。

 警察としては、これ死文化していると思われるのもなんだから、ちょっと使ってみようかというノリだったのかもしれないし、この死文ならみなさんも警察の冗談だってわかるよねって親心だったのかもしれない……それはないだろうなあ。ただ、親心じゃないけど、パターナリスティックに日本人に脅しをかけたという意味合いはあるだろう。なんかそれでも権力の濫用だなあというのも面白い……いや面白いと言っていいか微妙かあ。
 そういえば、これ当初朝日新聞が「逮捕」と誤報を出していたが(参照)、どうにも、そもそも逮捕できるような事件ではありませんね。
 まあ、微妙に面白いということについては以上の通りで、もっとこの学生さんについての情報など(参照)を掘ると面白おかしく書けるのだけど、率直に言って、この学生さんがこの事件の中心的な課題ではない。
 ただ、これ、イスラム国と関係ない実に日本人らしい頓珍漢な話だよなで終わるかというと、ちょっと考えてみると、欧米からイスラム国に参加する若者も案外この程度のノリというか、いや生死も賭けているくらいだからこの程度とか言っちゃいけないのだろうなとは思うが、この日本の学生さんが言ったみたいに「そこには戦場があって、全く違う文化があって。イスラムという強大な宗教によって、民衆が考えて行動している。このフィクションの中に行けば、また違う発見があるかな」として乗り込んでヒャッハーしちゃうということはあるのだろう。
 その意味では、イスラム国の問題がきちんと日本に日本らしく影響したということかもしれないとも思う。
 
 
香港・真正的普選
 
  

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2014.10.06

モディ首相時代の中印関係(アルナチャルプラデシュ州問題)

 インドがインド人民党(Bharatiya Janata Party、BJP)のモディ首相の時代となった。これに合わせて、新しい中印関係、というか、中印日関係について少し触れておきたいことがある。
 基本的な構図は、中国に対して日本とインドが領土問題を含み緊張関係にあることだ。この構図からは、自由主義の日印の関係強化によって、中国の軍拡を抑制し、自由主義諸国の関係にどのように上手に取り込むかという課題が浮かびがある。概論としてはそうだが、個別から見ると微妙な印象がある。
 首相就任後活発な外交を展開しているインドのモディ首相だが、インドの思惑としては経済面では日中を両天秤に掛けている。この戦略は自然なので、日本の安倍首相は5年間で3.5兆円の投融資を行うと賭けた。相手は中国であり、これに上回るかが見どころだったが、習主席からは同期間で約2兆2千億程度で受けた。形の上では日本側の賭けが買ったが、中国としても微妙なバランスの額である。
 このモディ・習会談の際、興味深いことがもう一点あった。この投資を決めたのは9月18日、ニューデリーで実施された会談だったが、その前日、モディ首相がその故郷グジャラート州に習主席を招いているさなかに、中国軍がインド北部カシミール地方で実効支配線を越えてインドに侵入しインド軍と対峙したことだ。首脳会談が平和裏に進んでいるなか、軍事衝突の危険があったのである。
 軍事を背景にしたいかにも中国らしい外交のやり方だとも言えるし、インドもこうした中国の手法には慣れているのできちんと受けていた。もっとも平和主義国である日本側から見ると、奇妙にも見える。
 冗談はさておくとすれば、普通に考えてもこの中国のやり方は異常なことである。中国という国はこういうわけのわからないことをする。
 難しいのは、中国のこうした行動に総合的なメッセージが存在するのか、軍の行動が政府下にないため、政府の意向とは別にこういうことが起きるのか、それすらもよくわからないことだ。当然、こうした行動は、他国に不可解な恐怖を与えているのだが、そのことも中国は理解しているふうではない。
 中印会談時の中国軍の軍事的な威嚇については、当の習氏としても困った事態と見ていたふしもある。帰国後、彼は軍に対して異論とも取れるメッセージを出していたからだ(参照)。もっとも、たとえそうであっても、困った事態にはまったく変化が起こりそうもない。
 今回の中国軍によるインドへの軍事的な威嚇だが、モディ・習会談が直接の背景ではないのかもしれない。
 6月のことだがインドは、中国の地図で、インドが実効支配しているアルナチャルプラデシュ州について、中国領の南チベットとして記載されていたことに批判を表明し、国際社会が注目した。
 この批判は、中国の領土対応が突然変わったことで偶発的に起きたことではない。モディ首相が選挙活動をしていたときから、関連する領土問題についての主張には大きな比重で含まれていた。
 モディ氏は首相就任前にアッサムに趣いた際、「この地球上のいかなる権力もインドからアルナチャルプラデシュを消し去ることはできない」とも述べていた(参照)。
 こうした点からすると、中国側としては、今回の軍事的な威嚇はモディ首相に対するテストの意味合いもあっただろう。むしろ会談がテストに適した時期と見られていたかもしれない。繰り返すが、こうした中国の奇妙な外交手法は、今後日本にも適用されるので、日本人もこうした手口は学んでおくとよい。
 個別にアルナチャルプラデシュ州問題を現時点で簡単に再考してみたい。これは中国が南チベットと呼んで自国領土主張している問題だが、奇妙な呼称からも連想が付くように、当然チベット問題とも関連している。この点については以前このブログでも危機の可能性がある時点で言及したことがある(参照)。今回は簡単に地図で再確認しておこう。赤い部分がそれである。

 この位置に関連して日本人として留意しておきたいことの一つは、アルナチャルプラデシュ州の西側の部分が、ブータンであることだ。ブータンが日本に対して親日国であるとアピールしたい背景は、こうした地図から一目で見て取れる部分がある。この地域に第3の勢力を関与させておきたいのである。
 アルナチャルプラデシュ州を巡る緊張の今後だが、日本も含めた国際社会としては、問題地域であることは認識しても、あまり事を荒立ててほしくない地域でもあり、そのメッセージは、話を聞きそうにもない中国は別として、インド側に伝えられてはいる。
 だがそもそも、モディ氏が首相になったこと自体、この領土問題がインド国内でナショナリズムと結びつきやすい状況にあることを示している。
 日本側や西側報道からはあまり見えてこないが、今回のモディ・習会談でも、アルナチャルプラデシュ州問題に関わる、ブラマプトラ川ダムの問題がインドのアッサムでは主張されていた(参照)。
 このダムについては環境問題としても重視されてきつつある(参照)。近い時期に、突発的な問題が発生する可能性もあるだろう。
 
 
香港・真正的普選
 
  

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2014.10.05

ああ、安倍政権の外交センスは嘆かわしい(訂正追記あり)

訂正・追記(同日)この記事末に追記したが、10月3日に菅官房長官から「自由で開かれた体制」を求める旨の談話があった。よって以下の関連記述は間違っていたことになる。以下は、それを見落としている時点の記述である。その事実を認識した現在、安倍政権の対応は正しいとしたい。

 香港で普通選挙を求める市民のデモについて、二つ気になっていることがある。
 一つは、日本のリベラルと称する人たちのこの運動への関心が低いことだ。あるいは関心があっても、香港の人たちはデモ行動ができて偉いという程度で、香港の人たちが民主主義の基本である普通選挙を求めているのだということが、よく理解できてないんじゃないか、という印象があること。まあ、しかし、これは印象にとどまるのでブログの話題にはならない。
 もう一つは、安倍内閣がこの問題に沈黙しているかに見えることだ。率直な印象をいうと、この「黙っていようっと」という印象は、安倍内閣を批判する種類のリベラルとも共通しているように思える。しかし、それについては大したことではない。
 問題は、なぜ安倍内閣が、自由主義国で民主的な普通選挙を持つ日本として香港の民主化について言及しないのだろうか?ということだ。
 他国への内政干渉になるから普通しないでしょ、ということだろうか。中国共産党政府がそう言っているのを真に受けるのも、彼らの領土主張を真に受けるくらい滑稽なことに思えるが。
 米国オバマ大統領は、中国の王毅外相に直接、批判を述べている。朝日新聞「米大統領「香港市民の志を支持」 中国外相は強く反発」(参照)より。


 オバマ米大統領は1日、香港で行政長官選挙の改革をめぐる抗議デモが拡大していることについて、訪米中の王毅(ワンイー)・中国外相に「香港市民の志を支持する」と述べ、香港の安定には開かれた制度が必要との考えを伝えた。ホワイトハウスが発表した。これに対し、王氏は「中国への内政干渉だ」と強く反発した。

 ケリー国務長官もこの点は明確にしている。

ケリー氏は会談前に記者団に対し、「できる限りの高度な自治と法の支配に基づく社会が、香港の安定と繁栄には重要だ」と指摘した。その上で、学生らに催涙弾を使った警察当局に抑制を求め、「デモ参加者の平和的に意見を述べる権利が尊重されることを希望する」とも語った。

 香港のかつての宗主国でもあり、香港の民主化が50年間保たれることで中国と合意した英国でもキャメロン英首相は言及している。「キャメロン英首相、香港デモでの衝突を「深く懸念」」(参照)より。

キャメロン氏はスカイニュースに対し、香港の中国返還の際の英中合意に触れ、「中国側と設置した(一国)二制度の下で香港の人々に民主的な将来を与えることが重要との合意があった。それ故、今起きていることについて私は深く懸念しており、この問題が解決することを望む」と述べた。

 とはいえ、フランスのオランド大統領やドイツのメルケル首相がこの件について言及したという報道も聞かないので、日本の安倍首相だけが特異というものでもないのかもしれない。
 とま、そう思っていた。
 そうしたなか、ジャパンタイムスでスタッフ・ライターの人が興味深い記事を昨日、書いていた。「Japanese officials silent on drama unfolding in Hong Kong(香港で展開しているドラマについて沈黙を守っている日本の政府高官)」(参照)である。

In the past few days, high-ranking government officials were willing to discuss the importance of keeping Hong Kong stable, prosperous and free. The city is particularly important to the future of Japan and the Asia-Pacific region, they said.

この数日のこと、いくにんかの政府高官が、香港を安定させ、繁栄させ、自由にしておくことの重要性について快く議論していた。あの都市は、特に日本とアジア太平洋地域の将来に重要であると彼らは言っていた。

But when pressed by reporters, they have been tight-lipped about whether they support the pro-democracy demonstrations in Hong Kong and residents’ calls for universal suffrage. This has raised suspicions they are afraid of upsetting Beijing.

しかし、レポーターが強く押すと、香港の民主化賛成デモと、住民らの普通選挙権への要求を支持するかという点について、彼らの口は固かった。このことで彼らが、北京を動揺させることを恐れているという疑惑を招くことになった。

The four high-ranking government officials contacted by The Japan Times, two who spoke publicly and two who spoke separately on condition of anonymity, responded exactly the same way: by ducking the question.

ジャパンタイムズが接触した、4人の高官--公然と話した2人、および匿名を条件に別個に話した2人--は判を押したような反応をしたのである。つまり、質問を回避した。

This signals that not responding is the government’s official policy on the Hong Kong demonstrations.

これは、反応しないということが、香港のデモについての政府が公式な方針であるということの合図なのである。


 これは安倍政権の方針ということだ。
 ああ、安倍政権の外交センスは嘆かわしい。
 率直に言って、ひどいもんだなと思う。そして、このことが、ひどいことなんぜと声を上げないリベラルなんて、ナンセンスでしょと思う。
 もちろん、外交的な配慮があることは理解できる。

Prime Minister Shinzo Abe is trying to arrange a meeting with Chinese counterpart Xi Jinping on the sidelines of the Asia-Pacific Economic Cooperation forum in November in Beijing. This is widely believed to be another reason for Tokyo’s restraint, though Suga denies it.

安倍晋三首相は、北京で11月に開催されるアジア太平洋経済協力会議フォーラムに合わせて、中国側の相手として習近平との会合を手配しようとしているさなかである。管はそれを否定するが、これが、日本政府による抑制のもう一つの理由であると広く信じられている。


 率直なところ、日本政府は、英米の指導者ほどのトーンではなくても、とにかく結果として天安門事件の流血を避けるような配慮として言及があってもよいのではないか。たとえば、「香港での普通選挙を求めるデモは平和裏に解決することが好ましい」くらいには。
 そしてその結果として中国側からの会談ボイコットになるなら、それを甘んじて受けるべきだろう。そうすれば、批判していても対話を維持する米国への対応と、日本への対応の差が明確になってよい。
 関連して言及しておくと、中国政府へのチキン対応は、ダライ・ラマの扱いで国際問題になっている。
 一番ハデにヘマにやったのが南アフリカである。あるいは中国の手前そうならざるを得なかったのかもしれないが。「南アがダライ・ラマ入国拒否、ノーベル平和賞6人が国際会議ボイコット」(参照)より。

【9月26日 AFP】南アフリカ政府がチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ(Dalai Lama)14世への査証(ビザ)発給を拒否したことに抗議して、ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者6人が南アフリカで来月開かれる国際会議へのボイコットを表明した。カナダを拠点とする「ノーベル女性の会(Nobel Women's Initiative)」の広報担当者が25日、述べた。


 「ダライ・ラマはチベット問題に対して非暴力的な交渉による解決を呼び掛けている」と、ノーベル女性の会はボイコット発表の際に述べた。
 さらに、中国政府がダライ・ラマの移動の自由を制限するために政治的な圧力をかけていると非難し、「中国は南アフリカが同宗教指導者の入国を拒否したことに公式に謝意を表明した」と付け加えた。

 これは南アだけの問題ではない。グローバルポスト「No one likes the Dalai Lama anymore(ダライ・ラマを好む人はもう誰もいない)」(参照)で包括的に触れていた。
 英国のキャメロン首相は2012年5月、中国政府の警告に反してダライ・ラマと会談したため、中国の怒りを買った。そして中国をなだめるためにいろいろ苦労したらしい。寛容とされるノルウェーでも、劉暁波にノーベル平和賞を与えたことで中国の怒りを買い、その反動でダライ・ラマと高官の接触は拒まれた。
 つまり、中国は、自由主義諸国も香港と同様にしてくれるということでである。手始めに身近なところから。


追記(同日)
 ニュースに見落としがあった。10月3日に菅官房長官からの関連の談話があった。ANN「菅長官、香港に「自由で開かれた体制を望む」」(参照)より。


 菅官房長官は、香港で学生らによる大規模なデモ活動が続いていることついて「1国2制度において、自由で開かれた体制が維持されることを強く望んでいきたい」との認識を示しました。
 菅官房長官:「我が国としては、香港において引き続き1国2制度のもとに、従来からの自由で開かれた体制が維持されて我が国と緊密な交流関係が維持されていくことを強く望んでいきたい」
 香港の民主的な選挙を求める大規模なデモ活動は、香港の学生らが行政長官の辞任などを求めて今も座り込みを続けています。菅長官は「香港の平和と安定はアジア太平洋地域の繁栄と発展に重要な役割を果たしている」と述べ、引き続き事態を注視していく考えを示しました。


追記・補足(同日)
 ジャパンタイムスの記事でも管官房長官の談話については言及していたが、否定的な文脈からクローズな場での発言だと私が誤解していた。関連部分は以下のとおり。

“The future of Hong Kong is extremely important to the future of Japan. The prosperity and stability of Hong Kong will play an important role for not only China, but also for the whole of Asia,” Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga said Friday at a news conference.

「香港の未来は日本の将来に極めて重要である。香港の繁栄と安定性は中国のためにだけでなく、アジア全体のためにも重要な役割を果たすだろう」と内閣官房長官菅義偉は記者会見で金曜日に語った。

But when asked whether Japan supports the street protests, as the U.S. White House officially did on Monday, he didn’t answer.

しかし、米国ホワイトハウスが月曜日に公式にしたように、日本が街頭での抗議を支援するかどうかを尋ねられたとき、彼は答えなかった。


 
 

 
 
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