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2014.06.14

現下のイラク危機、雑感

 イスラム系武装組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」によるイラクの情勢が急展開しているかのように見える。簡単に現時点の雑感を書いておきたい。
 現在の事態の象徴的な出来事は、6月9日の夜、イラク首都バグダッド(Baghdad)北方350キロに位置するイラク第2の都市、ニナワ(Nineveh)州の州都モスル(Mosul)が陥落したことだった。数百人程度と見られるISISによって、州本庁舎や刑務所、テレビ局が占拠された。
 しかし、突発的な侵攻というわけではない。すでに昨年末からISISの活動は活発化していて、1月にはバグダッドに近いファルージャがISISの元に落ちている。ファルージャは、もともとスンニ派の多い地域であり、シーア派色の強いマリキ政権への反対者が多い。
 この時点で、米国もイラク国内の事態に懸念し武器供与を強めている。現マリキ政権もその補助を受け、それなりの対応をしている。例えば4月には、イラク軍はシリア国内に入り、イラク内のISIS組織に燃料を運ぼうした車両8台を攻撃した(参照)。今年に入り、すでにイラク政府も米国も、シリアから侵入するISISに警戒していたと見られる。だが、その延長でファルージャをイラク政府側が奪還することはできないままでいた。
 今回のモスル陥落から始まる事態も、こうした文脈で見れば予想外のことではなかった。だが、モスル掌握の9日から2日後の11日という短期間に、フセイン元大統領の故郷でもある北部主要都市のティクリートまで掌握されると、ISISの進路が南下して、次は首都バグダッド包囲を狙っていると見られるのも不思議ではない。そこで一気に国際的な危機として認識されるようになった。
 6月以降の事態をファルージャなどの文脈から切り離してシリア側からの武力侵攻として見ると、確かに危機が迫るようにも感じられる。だが、モスルとティクリートはファルージャ同様に、イラク国全体から見ると少数派のスンニ派が住民の多数を占めているので、基本的には、シーア派色の強い現マリキ政権への反発という土壌があり、今回の急変もその土壌に載ったものである。
 また基本的にISISの侵攻は、都市単位の点と線の制圧なっていて、地図で領域をべったりと塗って表すような領土的な制圧ではない。現状では、次のようなものと見られている(参照)。黒い部分がISISが掌握している地域である。なお、これは現状であって今後も変化はリンク先に掲載されるとのことだ。

 地図の赤い部分が攻撃のある部分で、見てわかるようにバグダッドが取り囲まれているようにも見える。当面は、首都バグダッドが今後どのようになるのかとい問題が取り上げられるのは、世界の人の関心の持ち方からしてしかたがない。連鎖して、現マリキ政権が崩壊し、文字どおり「イラク・シリア・イスラム国」なるもが出現するのではないかという関心も避けがたい。
 今後はどのようになるだろうか。つまり、バグダッドは陥落するだろうか?
 いろいろと予測はあるが、私は当面の陥落はないと思う。理由は二つある。一つはこれまでのISIS侵攻はイラク内のスンニ派に支えられてきた面があるが、バグダッドではその背景が弱いこと。もう一つの理由は、ISISの侵攻がクルド人地域を実情避けている(参照)ことから推測されることだが、クルド地域のように所定の武力をあるところを避けることでここまで侵攻できたので、現状はまだ弱点を突いて動いている状態であることだ。バグダッドでの本格的な戦闘にはまだISISは耐えないのではないだろうか。

 この予想は逆に言えば、今後のイラクは事実上の内乱の状態が長期的に継続することも意味している。
 しかも、この内乱にはISISを取り巻き、大きくわけて四者の関係者の利益が大きく関わっているために、全体構造から抑制することが難しく、長期化するだろう。
 利益者の第一は当然だが、イラク内のスンニ派勢力である。これでシーア派中心の現政権を弱体化させることができる。実際のところ、ISISの今回の活動は、イラク内のスンニ派人脈の軍事経験が生かされていると見てよく、クーデーターあるいは革命の志向がある。
 第二は、クルド人である。今回の事態でもはや引き返せなくなったことでもあるが、クルド人自治区が実質独立を遂げた。イラク政府が内乱状態であれば、つまり、暴力を収納する国家が不在となり、クルド人の区域は自身が国家の機能を担わなければならない。これはクルド人の悲願である独立の達成とも言える。当然彼らに利益がある。すでに油田のあるキルクークもクルド人が掌握した。ただし、この事実上の東部クルディスタン独立は、それ自体が別の国際的な問題を引き起こしかねない。
 第三は、隣国イランである。同じシーア派としてイラクへの関与を強めることになる。結果、イラク内にあるシーア派の聖地ナジャフとカルバラが事実上、イランの関与の下に入ることが利益として見込める。
 第四が、サウジアラビアである。ISISを含め、シリア内で活動している反政府派を支援しているサウジアラビアを中心とした、クエートやカタールなどにもその力の誇示という利益と、イラクの原油を不安定化させる点で利益がある。
 この地域の平和の実現は以上の利益者に関わる。
 こうした利益者の利益を抑制するための国際的な連携が必要になる。だが、シリアでの失敗を見ると難しいだろう。
 なお、米国はこうした利益者に含まれない。
 現状、オバマ政権は、シリア問題やウクライナ問題と同様、修辞だけで済ませている状態で、表面的に軍事介入をすることはないだろう。ただし、リビアを背後から崩壊させたのが米国であるように、見えづらいなんらかの手を打つ可能性はある。
 実際のところ、イラクがさらなる混乱に陥れば、イラク戦争の意義が米国的には失われてしまうので、そこは米国の総意としては避けたいところだろう。

 

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2014.06.09

自分と同い年の校長先生の不謹慎な犯罪にちょっと驚く

 基本的にこれは自分にはどうでもいいニュースなんだけど、「うぁあ、こいつぅ、俺と同い年かぁ」というところで、ちょっと驚くニュースというのがある。昨日の七時NHKニュースでも報道されていたけど、「小学校長がトイレで盗撮容疑逮捕」(参照)というニュースだ。
 NHKのニュースは一週間くらいで消えてしまうので、きちんと「忘れられる権利」を自然に守っているけど(皮肉1%未満)、私のブログはもう10年もやっていて、どうやら生きているかぎり続けそうな気配もあるので、残るのもなんだから実名部分はコメコメで引用する。


 群馬県高崎市の小学校の校長が、勤務先の学校の女子トイレに侵入し、女性教諭をスマートフォンで盗撮したとして、県の迷惑防止条例違反などの疑いで逮捕されました。
 逮捕されたのは、高崎市立大類小学校の校長、※※※※容疑者(56)です。
 警察の調べによりますと、※※校長は、今月5日の昼前、勤務先の学校の1階にある女子トイレに侵入し、女性教諭をスマートフォンで盗撮したとして、建造物侵入と県の迷惑防止条例違反の疑いが持たれています。
 トイレにいた教諭が頭の上にカメラのようなものが差し出されたのに気付き、学校から通報を受けた警察が調べを進めていたところ、※※校長が7日夜、高崎警察署に出頭してきたということです。
調べに対し「撮影したのは、間違いありません」と容疑を認めているということです。
 高崎市教育委員会の速水裕行学校教育担当部長は「被害者をはじめ、児童や保護者の皆さんに大変申し訳なく深くおわびします。今後、事実を確認したうえで厳正に対処します」と話しています。

 はあと。溜息出るなあ。しょーもないなあ。
 なんでこうなっちゃうかなあ。
 今年56歳だと俺より一学年下だけど、これから誕生日というなら俺と同学年だよなあ。校長先生というから、それまで立派にやってきたんだろうな。それでで、「女子トイレに侵入し、女性教諭をスマートフォンで盗撮」かよ。他ニュースにあたったら、「20代の女性教師」らしい。うひゃあ。
 あのですね、私がですよ、当時の平均的な男性として25歳くらいで結婚とかして、すぐにほいと翌年子どもを持っていたとしますよ、今、娘、30歳ですよ。三十路アラサーですよ。
 平均的な年齢で結婚してないとしても、子どもがいたら、20代近い。20代の女性って、すでに自分らの娘の世代ですよ。せっせと、おしめ取り換えていたあの娘ですよ。うひゃあですよ。
 って、そういう話でもないんだろうな。
 この校長先生に共感できるかというと、まあ、僕にはないのだけど、ないというのは、しかし、公平に言うなら、趣味が違うからなあということで、じゃあ、お前の趣味はなんだよというと、まあ、そこは口ごもるけど、盗撮とか下着泥棒とかはないんで、反社会性からは免れているんだろう。
 その点、校長先生のお趣味が女装とかだったら、家族には迷惑は掛けるかもしれないけど、逮捕ということにはならないんじゃないか、よほどのことでないと。いやいや、56歳校長先生で女装趣味というのはあってよいと思います。俺は、その趣味もないけど。
 そういう性的なお趣味という部分を除いて、もっと一般的に「背徳」という感じでまとめてしまうと、人間って56歳になっても、一種の「背徳」の欲望を抱えているものだなあと、しみじみ思う。
 そのあたりの、「背徳」ならぬ「背徳的な欲望」自体でいうなら、自分の場合はどうか? ある種、文学的な欲望でうまくごまかしているというか、なんらかの理由でそっちに向いているのだろうなと思う。でも、背徳の強度では同じなんじゃないか。
 こういう「背徳性」というのは「虚偽の人」とはまたちょっと違うものがある。なんなんだろうか、人間って地獄だなあと思う。
 そういえば、最近のあのニュースも同年代の校長先生だったな。同じくNHKから、同じくコメコメで。「元校長 ネットで知り合った男から買った」(参照)より。

 覚醒剤を隠し持っていたとして逮捕・起訴された、福岡県の小学校の元校長が「覚醒剤はインターネットで知り合った福岡市の男から買った。気分がよくなるものだと言われて軽い気持ちで使ってしまった」と供述していることが、捜査関係者などへの取材で分かりました。
 警察はすでに別の覚醒剤事件で起訴されている福岡市の男を今後、追送検し、詳しいいきさつを捜査する方針です。
 福岡県春日市の小学校の元校長、※※※※被告(57)は、覚醒剤およそ0.5グラムを隠し持っていたとして、先月、逮捕・起訴されました。
 警察は覚醒剤を入手したいきさつを調べていますが、※※被告が「インターネットで知り合った福岡市の男から購入した。気分がよくなるものだと言われ、軽い気持ちで使ってしまった」などと供述していることが捜査関係者などへの取材で新たに分かりました。
また、「4年前の人事異動で自宅から遠い小学校へ転勤を命じられ、左遷されたと感じたのをきっかけに使うようになった」とも供述しているということです。
 警察は、別の男に覚醒剤を譲り渡したとして逮捕・起訴されている、福岡市の※※※※被告(55)が※※被告にも譲り渡したとみており、今後、追送検してさらに捜査を進める方針です。

 今年誕生日を過ぎていたら、彼も俺と同い年なわけで、実はコメコメを検索したらけっこうきちんとした教育面での業績みたいなのもめっかって、先生、立派じゃん、とも思ったけど、覚醒剤というのは、かなりいけない背徳だよなあ。
 当初、この事件、率直にいうと、その地域の風土が関係して、幼なじみとかそういう経路で普通に貰っていたんじゃないかと思っていたが、「インターネットで知り合った福岡市の男から購入した」というので、これもちょっと唖然とした。
 「インターネットで知り合った」人に会うものかなと思うが、まあ、そこは考えてみると、パソコン通信とかでもそういう経験は自分でもあるんだが、それでもネット上である程度、懇意というか伝わった上でのことだと思うのだが、この校長先生の場合は、むしろ覚醒剤への関心からだったのだろう。まいったなあ。
 まあ、こうした背徳者の犯罪は、他にも事例はあるだろうし、たまたま最近、こうしたことが重なっただけだろうと思うけど、社会的にちゃんとしてきて56歳にもなった人間が、背徳の欲望に突き動かされて転落していくというのは、ああ、人間!と思う。

人の生の道なかば、
ふと気がつくと、私は正しき道の失われた
暗き森の中をさまよっていた。
ああ、そこがどのようなものだったかを語るのは
いかに辛いことか、鬱蒼と茨に満ちたこの野生の森を
思い返すだに、恐怖が甦る。
その余りの苦しさは死にも劣らぬ。

---「ダンテ『神曲』地獄篇対訳」(参照PDF


 人生、そういうもんだよなあ。
 虚偽の人間つまり悪の人と、背徳の人とはどう違うのかというのは微妙なもんがあるし、重なりもあるのかもしれないが、背徳というのはけっこう普通の人が抱えているものだろうなあ。
 
 

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