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2014.03.05

ウクライナ情勢、雑感

 ウクライナ情勢の変化は国際情報を読む上でも非常に興味深い展開だった。ブログにも留めておきたい。
 興味深い一つには、情報の混乱がある。なかでも「最後通告」についてである。
 一例として、ANN(03/04 17:08)「“最後通告”期限が過ぎ…ウクライナから最新情報」(参照)を挙げてみよう。緊迫感を伝えているようでもあるが、読むと内容は意外に曖昧である。


 「投降しなければ攻撃する」。ロシア軍がウクライナ軍に対して行った最後通告の期限が過ぎて5時間が経ちました。

 (荒木基記者報告)
 (Q.最後通告について、ロシアのメディアはほとんど取り上げていないが、ウクライナのメディアはどのように報じている?)
 実はウクライナでも、あまりこの話は多くは伝えられていません。3日夜、大統領代行のトゥルチノフ氏が「実は、このような最後通告は、以前にもあった」と地元のメディアに伝えていました。また、クリミア半島の現場指揮官レベルでこうしたやり取りが続いていたのではないかという情報も入っています。今、こちらのテレビでは、3日夜から4日朝にかけての国連でのウクライナに関する議論のやり取りが刻々と伝えられている状況です。そして、こちらに入ってきた最新の情報では、ロシアの通信社によりますと、プーチン大統領が演習からの撤退を部隊に命じたということです。ただ、これがクリミア半島の部隊まで含むのかどうかは、まだ分かっていません。
 (Q.クリミア半島の緊張、緊迫した状況を受けて、今、キエフの街の中はどんな様子?どんな空気?)
 私たちは3日、キエフの軍の兵士を募集する事務所を取材してきました。こちらには、私たちが行った時には20人近くの人が並んでいて、多くの人がIT技術者、あるいは会社経営者ですが、彼らが「国を守るためには武器を取って戦うんだ」と私たちに話をしてくれました。欧米による外交努力が今も続いていますが、ロシアに手を引かせるだけの決定打があるわけではありません。町の雰囲気は、戦争の足音が少しずつ聞こえてきている感じがします。


 書き出しの重々しさ(「投降しなければ攻撃する」)に反して、実際はよくわからない。
 そこで事実だけ掬ってみると、「ロシアのメディアはほとんど取り上げていない」「実はウクライナでも、あまりこの話は多くは伝えられていません」「実は、このような最後通告は、以前にもあった」ということだ。
 事実を追ってみると、「最後通告」報道の実態は報道からはよくわからないということがわかる。ANN報道を批判しているのではなく、ANNのこの報道の意図は、「よくわからーん」ということなのかもしれない。
 こうした事態では通常、NHK報道は比較的慎重なのだが、今回はNHKもだいぶぶれていたのが印象深かった。
 3月4日1時27分の「ロシア軍黒海艦隊 ウクライナ軍に最後通告」(参照)より。

 ウクライナ情勢を巡って、南部のクリミア半島を現地に駐留するロシア軍がロシア寄りの地元政府と共に事実上、掌握する事態となるなか、インターファクス通信は現地に駐留するロシア軍の黒海艦隊がウクライナ軍の部隊に対し、現地時間の4日午前5時(日本時間の4日正午)を期限に投降を求め、投降しない場合攻撃すると最後通告したと伝えました。

 このNHKが孫引きにしたのはインターファクス通信なのだが、その典拠はこうなっていた。

 こうしたなか、インターファクス通信は3日、ウクライナの国防省の話として、現地に駐留するロシア軍の黒海艦隊が現地のウクライナ軍の部隊に対し、現地時間の4日午前5時(日本時間の4日正午)を期限に投降を求め、投降しない場合攻撃すると最後通告したと伝えました。
 暫定政権からの正式な発表はなく、今のところ、ロシア側からもこうした情報は伝えられていません。

 事実は、「暫定政権からの正式な発表はな」いということ。
 では、「ウクライナの国防省の話」はどのように伝わっていたか、またインターファクス通信の「報道」をNHKがどう評価したか、だが、これが曖昧である。
 同様の構造は共同にもあった。2014/03/04(10:22)「ウクライナ軍に最後通告 ロ本格介入へ陸海空展開 クリミア独立へ加速」(参照)より。

ウクライナ南部クリミア半島の重要拠点を掌握し実効支配を固めつつあるロシアは3日、本格的軍事介入を視野に陸海空から態勢づくりを進めた。インタファクス通信はウクライナ側の情報として、ロシア黒海艦隊司令部がクリミアのウクライナ軍に対し4日午前5時(日本時間同正午)までに投降しなければ攻撃すると最後通告したと報じた。通告について、ロシア側の情報はない。

 他ソースにあたっても「最後通告」の話は、インターファクス通信以外には見当たらない。
 他方、インターファクス通信は次のような視点の異なる報道もしていた。ロイターの孫引きだが、2014年03月04日(火)04時34分の「ロシア黒海艦隊、ウクライナに最後通告行っていない=インタファクス」(参照

[モスクワ 3日 ロイター] -ロシア黒海艦隊はウクライナに対し最後通告は行っていない。黒海艦隊幹部の発言として、ロシアのインタファクス通信が3日、報じた。
 同通信は黒海艦隊本部に所属する幹部の話として、攻撃は計画されていないと伝えた。同幹部は「攻撃はまったくのナンセンスだ」と発言したとしている。
 インタファクス通信はウクライナ国防省関係筋の話として、黒海艦隊がクリミア半島に駐留しているウクライナ軍に対し、0300GMT(日本時間4日正午)までに投降しない場合は攻撃すると通達したと報じていた。

 時系列にインターファクス通信の視点で整理すると、「ウクライナ国防省関係筋の話」として「最後通告」を報道したのも、「黒海艦隊本部に所属する幹部の話」として「攻撃は計画されていない」を報道したのも同日である。よって、日本時間4時34分の時点では、「最後通告」の報道はどちらかというと、ロシア側の謀略でも想定しないかぎり、打ち消されている印象が濃い。
 この点、ロイターの報道はさらに興味深い。
 ロイターは、インターファクス通信の「最後通牒」報道を次のように伝えていた。3月4日04:11JST「ロシア艦隊、投降しない場合攻撃と通達─ウクライナ国防省筋=報道」(参照)より。

[キエフ 3日 ロイター] -ロシアの黒海艦隊はクリミア半島に駐留しているウクライナ軍に対し、0300GMT(日本時間4日正午)までに投降しない場合は攻撃すると通達した。ロシアのインタファクス通信が、ウクライナ国防省関係筋の話として報じた。
 ウクライナ国防省はインタファックス通信の報道内容を確認していない。ロシア黒海艦隊からもコメントは得られていない。

 断言はできないまでも、ロイターは、インターファクス通信の裏を取ったように見える。またこれには、「ロシア黒海艦隊」のコメントも意識されていた。
 総合すると、ロイターを追う限りでは「最後通告」話は、報道の暴走のように見える。
 ロイターが孫引きしたインターファクス通信の話題だが、共同の孫引きから見ると、さらに付加的な内容があったことがわかる。2014/3/4(4:32)「ロシア軍、ウクライナへの最後通告否定 情報操作示唆」(参照)より。

【シンフェロポリ=共同】ウクライナ南部クリミア半島セバストポリに駐留するロシア黒海艦隊は3日、同艦隊がウクライナ海軍部隊に対し攻撃の最後通告を行ったとの報道を「全くのでたらめだ」と否定した。インタファクス通信が伝えた。
 ウクライナのメディアは、黒海艦隊がウクライナ軍に対し4日午前5時(日本時間同正午)までに投降しなければ攻撃すると最後通告したと報道。これとは別にAP通信もウクライナ国防省当局者の話として、同国海軍艦船2隻が黒海艦隊に進路を妨害され、投降を要求されたと伝えていた。
 黒海艦隊当局者は「われわれがウクライナ軍を攻撃しようとしているという報道の背後に誰がいるのかは明らかだ」と批判、ウクライナ側による情報操作との見方を示唆した。

 検討されるべきことは、インターファクス通信がこの情報の混乱の出所ではあるが、その前にインターファクス通信その混乱の意図を持っていたかが気になる。その点、時系列的に見ると、ウクライナ側とされる報道に対して数時間後にロシア側からの否定の双方を出しているので、意図的というより、通常の通信社としての作業であったと見られるだろう。
 さらに共同が孫引きしているAP通信の状態からもその傍証になる。「最後通告」情報は、インターファクス通信のみが情報源ではなく、かつ、両者がウクライナ国防省当局者となっているからだ。
 その後の経緯を含めると、今回の「最後通告」報道は、概ねウクライナ暫定政権側の情報操作だと見てよいように思われる。
 ただしそのことは、ロシア軍の威圧的な行動を肯定するわけではないし、ネットのソースは見当たらなかったが別途フランス2がクリミアに入った報道などを見るとロシアの軍事的な威圧を裏付ける状態は簡単に見て取れる。
 さらにその後の状況を考慮する上で重要なのは、プーチン大統領自信が軍事介入を否定する記者会見を4日午後モスクワ郊外の大統領公邸で行ったことだ。共同「プーチン大統領、軍事介入せず クリミア併合も否定」(参照)より。

 ロシアのプーチン大統領は4日、モスクワ郊外の大統領公邸で記者会見し、ウクライナ南部クリミア自治共和国で軍を使う「必要はなくなった」と述べた。ロシア系住民が多数を占める自治共和国を「併合する計画はない」と否定した。


 ただ、親露感情が強いウクライナ東部の住民から要請があれば、「あらゆる手段」を講じる権利があると強調。軍の使用は「最後の手段」と親欧米のウクライナ新政権を威嚇した。

 奇妙なのは、同会見についてのNHK報道である。印象は逆になる。3月5日5時14分「プーチン大統領 軍事介入の構え崩さず」(参照)より。

 緊迫した状況が続くウクライナ情勢について、ロシアのプーチン大統領は本格的な軍事介入も辞さない構えを改めて示したのに対し、ウクライナを訪れたアメリカのケリー国務長官は外交による解決を目指す重要性を強調しました。
 ロシアのプーチン大統領は、4日、モスクワ郊外で記者会見し、ウクライナの欧米寄りの暫定政権の正当性を認めない考えを示しました。
そのうえでロシア軍が事実上掌握したクリミア半島について、今の状況では「軍事行動の必要性はなくなった」と述べる一方、今後、ウクライナ東部も含め混乱が拡大した場合、本格的な軍事介入も辞さない構えを改めて示しました。
 この会見を受けて、ウクライナの暫定政権のヤツェニューク首相は4日、ロシア軍がすでにウクライナの主権を侵害していると改めて非難する一方、ロシア政府との間で閣僚レベルで協議を始めたとして、対話を模索していることを明らかにしました。
 南部のクリミア半島では、ロシア軍が駐留地の外に部隊を展開し、ウクライナ軍の部隊の施設を包囲して投降を迫るなど、偶発的な戦闘が起きてもおかしくない、緊迫した状況が続いています。
 一方、アメリカのケリー国務長官は、ウクライナの首都キエフを訪れて暫定政権の幹部と会談し、ロシア軍の動きについて侵略行為だとして非難する一方で、「われわれは対立を望んでいない。21世紀の現在、今回のような対立を解決するには武力ではなく、外交と主権の尊重が必要だ」と述べ、国連安全保障理事会など、外交の場で解決を目指す重要性を強調しました。

 一応NHK報道としても「軍事行動の必要性はなくなった」とのプーチン大統領の言明を伝えているが、強調点は「軍事介入も辞さない」にある。
 誤報とまで言えないにせよ、今回の件では、NHK報道側にややバイアスがあるように思える。
 以上をまとめると、今回の事態のおそらく真相は、ロシア軍が「最後通告」をしたという報道はウクライナ側からの情報操作であり、ロシア軍は、むしろ武器を使った暴発の誘発を抑えるために、即座の圧倒的な軍事力でクリミアを、彼らの合法的範囲内で沈静化した、と見られる。
 この合法性には異論もあるが、逆に言えば、異論があることはロシア側からの論旨に明確に無理があるとも言いがたいことを意味している。国連のレベルでの一致した対応は不可能だろう。
 では、なぜロシアが今回の行動をとったか?
 マクロ的には理解しやすいが、現実の流れのなかでは、西側報道からは見えにくい論点があった。これはロシア側、さらにはロシア系の多いクリミアを中心とした東部側の視点から事態を振り返ってみるとうっすら見えてくる。
 日本語で読みやすい記事では、産経「露メディア激しく批判 欧米報道は「でっち上げ」」(参照)がある。

 親欧米派が実権を握ったウクライナの政変について、ロシアの国営・政権派メディアでは「非合法な政権奪取」として暫定政権や欧米諸国を激しく非難する論調が目立つ。政権転覆につながったデモが過激かつ暴力的だったとの印象を植え付ける一方、ヤヌコビッチ前大統領には見切りをつけたというのが露政権派主要メディアの報道姿勢だ。(キエフ 遠藤良介)

 産経記事は、「政権転覆につながったデモが過激かつ暴力的だったとの印象を植え付ける」として、ロシア側の見解を情報操作的に見ている。だが、ここでも事実を追ってみると興味深い。

 国営ロシア新聞(電子版、以下同じ)は24日付で、デモでは「国の少数派の利益を代表する戦闘員」が活動し、「欧米は過激派を鼓舞した」と前政権時代の野党勢力や欧米諸国を批判。その半面、ヤヌコビッチ氏はあらゆる方法があったのに事態を収拾せず、「結果的に選挙民や同志を裏切った」と論じた。

 ここで述べられていることは、事実が含まれている。このことは、前回「読みが難しかったウクライナ争乱」(参照)でも触れたが、ウクライナ与野党の合意が一瞬にして崩れたのは、ウクライナ野党側の武装集団の要因が大きいように思われるからだ。
 産経はさらりと次のようにも触れている。

 露政権派メディアは、ロシア語を地域公用語に定めることを認めた前政権時代の法律が議会で廃止されたことも批判。ロシア新聞は、少数言語の権利を尊重する「欧州の基準」からの後退だと主張した。

 産経記者の言及のようすからすると、この問題、「ロシア語を地域公用語に定めることを認めた前政権時代の法律が議会で廃止」したことがロシア側で重視されている意味合いにあまり気がついていないようにも受け取れる。
 ここで重要なのは、この「議会」の特質である。
 これは、れいの武装勢力が含まれた「議会」であり、正統的な議会と呼べるか疑問が残る。この点については、NHKの石川一洋解説委員が明確に述べている(参照)。

●暫定政権とは
親欧米の暫定政権で影響力を強めているのは、ウクライナ西部の民族主義勢力です。西部ウクライナは第二次世界大戦中にソビエトに武力で併合され、極めて強い反ロシア感情を持っています。
 ウクライナ民族主義者は、革命の主体となり、多数の流血の犠牲の上に政権を打倒したのは自分たちだと考え、暫定政府の名簿も彼らの同意を得て作成されました。すでに自らの手に武器を持ち、治安機関の枢要なポストも押さえています。

 議会も事実上、民族主義勢力、つまり、極右勢力によって支配されているし、そのことは同時に、暴力が市民国家に収納されず、この党派のもとにあることがわかる。
 この極右勢力による事実上の「議会」支配がまさに、極右らしい活動を即座に開始していた。これが、「ロシア語を地域公用語に定めることを認めた前政権時代の法律が議会で廃止」に関連している。
 ロシア側の声に近い、ロシアNOWの記事「ウクライナの“中立性”の尊重を要求」(参照)に日本語で読める関連情報がある。

 外務省が懸念を示しているのは、国民統一政府の代わりに、キエフに過激な民族主義者を含む「勝者の政府」が築かれていること。「過激派の活動で社会が今後極性化することを許さない」よう呼びかけている。「国家的言語政策基本」法の廃止、少数派の権利の制限に導くキエフの政治家のイニシアチブ、マスメディアの自由の制限、個別の政党の活動禁止についても懸念を示している。
 「ウクライナ情勢に関する問題で西側諸国にはロシアとの協力を求める。情勢が武力衝突に発展する前から提案を行っていたが、西側諸国はあまり関心を示さなかった。だがロシアには相互活動の用意がある。これがウクライナの全国民と全パートナーの利益をくんだ合意とその履行の可能性にもとづいた、誠実な活動であることを踏まえたうえで行うべき」
 北大西洋条約機構(NATO)事務総長が、ウクライナの加盟を依然として優先課題であると発言したことについても反発。「挑発的な声明をやめ、ウクライナの『国内・外交政策基本』法に定められたウクライナの中立性を尊重することを強く勧める」

 まず焦点としたいのは、「国家的言語政策基本」法の廃止である。これはどういうことか。ヤヌコビッチ追放後のウクライナ「議会」で何が起きたのか。
 ロシアの声「ウクライナ議会 国家言語生活に関する法律を廃止」(参照)にこの関連の報道がある。

ウクライナ最高会議(議会)は、2012年7月3日に可決された国家言語政策に関する法律を廃止した。334人の議員のうち232人が賛成票を投じた。
 最高会議は2012年7月3日、地域党が提案した「国家言語政策の基本」に関する法案を可決した。
 法律は、2012年8月10日に発効したもので、少数派の人口が10パーセントを越える地域では、2言語を公用言語とすることが認められると規定されている。

 これだけでは読み取りづらいかもしれないが、ようするに、現状のウクライナ議会が「ロシア語を準公用語化した言語法を廃止」(参照)したということ、つまり、ウクライナ内のロシア語国民を二流市民化する民族政策の実施を掲げたことになる。
 武力を背景にした勢力が国家を借りて、言語弾圧という文化的ジェノサイドに手を伸ばす姿を見て、その対象にある人々が怯えないわけはないだろう。
 これが大きな問題であることは、極右勢力ではない西部のウクライナ人にも理解されていることは、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行の意識にも現れている。ロシアの声「ウクライナ新当局 ロシア語を公用語から除外しないもよう」(参照)より。

 ウクライナ最高会議により任命されたアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は、言語に関する法律取り消しに関する議会の決定を発効させないだろう。クリミアで同大統領代行のスポークスマン、セルゲイ・クニツィン氏が明らかにした。
 27日トゥルチノフ大統領代行は、言語に関する新しい法律を「早急に準備する」作業グループを創設するよう委任した。彼の言葉によれば「新法の中では、ウクライナの東部や西部、あらゆる民族グループ及び民族的少数派の利益が考慮される」。
 ウクライナ議会 国家言語生活に関する法律を廃止
 これに先立ち欧州議会は、ウクライナ最高会議に対し、少数派の権利を遵守し「ロシア語や他の少数派の言語の使用」を保証するよう求めていた。

 また、4日に開催された国連安全保障理事会の緊急会合でロシアのチュルキン国連大使がヤヌコビッチ氏の書簡の内容を公表したがそこでもこの件が問題の主要な例になっていた。ロイター「UPDATE 1-ヤヌコビッチ氏、ウクライナへの軍事介入をロシア大統領に要請=ロ国連大使」(参照)より。

 書簡は「西側諸国の影響を受けたテロや暴力が公然と行われている。人々は言語や政治的な理由によって迫害されている」と主張。「そのため合法性、平和、法、秩序、安定を回復し、ウクライナ国民を守るためにプーチン・ロシア大統領に対し軍事力を行使するよう要請する」としている。

 これに対して、米側の反論は次のようであった。

 書簡は1日付。米国のサマンサ・パウエル国連大使はウクライナでロシア語を母語とする住民の生活が阻害されているという主張には裏付けがない、と反論した。

 確かに現下の状況では、言語迫害が生じているとは言えない。それでも先に見たように西部議会側にその動きがあったことも事実である。米側が言うようにそれ自体が介入の口実にはなりにくいのも確かだが、問題の根は西部議会にある。
 論点を整理すると、ヤヌコビッチ追放後西部に登場した議会は事実上、極右勢力の影響下にあり、その活動にロシア系住民が恐怖を覚え、対応的な行動に出たとしても十分理解できる。
 これに対して、ロシア国益の観点を含めて、ロシア側が行動したこともミクロ的な範囲ではぎりぎり合理的な活動であり、またマクロ的に見ても、現状の推移からは、国際社会の反対も考慮されている点で、性急な、クリミアのロシア併合も想定しにくい。
 むしろ問題なのは、ウクライナ議会に影響力を持つ武装した極右勢力を西側諸国がどのように正常化させるかにかかっている。
 現時点からの今後の展望だが、前回にも触れたように、「決定的なことは2つ。ウクライナはEUには入らない。そして、ロシアはウクライナを失うことは絶対にしない」ということがある。
 その上で、西側つまりNATOは口先やその他裏面的な活動以外では、軍事的には動かない。理由は単純で、ウクライナがNATOに含まれないからである。
 ロシア側の行動は、現状の西側報道から見るよりははるかに合理的にかつ西側諸国と連絡を取り合っており、現状の線からはクリミア併合といった事態も想定しづらい。また、その事態が迫る場合は、武力によるのではなく、クリミア域での住民投票が先行させられるだろう。
 そこまでに至らず、西部の極右勢力の活動が沈静化され、新しい体制ができれば、ロシアとしても以前のようにウクライナとの関係を友好的なものにしていくだろう。
 
 

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