« [映画] ベティ・ブルー | トップページ | [ドラマ]昨夜のカレー、明日のパン(NHKドラマ) »

2014.11.07

先日、ジョセフ・ナイの講演を聴いた

 秋の叙勲受章のためだろうか、先日、米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が来日し、各所で講演やシンポジウムに出席していた。その一つに一般人の聴講もできるものがあり、応募しみたら当選したので聞きに行った。いろいろ思うことはあったがブログに書くまでもないかなと思っていたが、少し書いておこう。

cover
国際紛争-理論と歴史
原書第7版
 ジョセフ・ナイ(Joseph Samuel Nye, Jr)は、著名な米国の国際政治学者で、国際関係に関心を持つ人なら知らない人はいないだろう。現在での影響力についてはよくわからないが、今でも国際政治学では代表者の10人、あるいは5人には入るのではないか。
 ただ77才というお年なのでそこはどうかと思っていたが、お目にかかると血色もよく、言葉も明晰で(美しい英語だった)むしろ驚く程だった。来春に新刊本を出すということで、講演はその概要ということだったが、書籍のプロモーションというほどのことはなかった。ちなみに書籍のメインテーマは、中国の台頭を国際社会はどう捉えるかということである。結論からすると、20年くらいのスパンで見るなら米国を中心とした西側諸国の脅威とはならないだろういうものだった。特に奇を衒った議論はないので、退屈といえば退屈な展開とも言えたかもしれない。
 講演を聴きながらとったメモを見直すと、中国が中東の原油に依存している意味合いを強調していた点は興味深かった。ナイらしい基調としては、中国のソフト・パワーの弱さの強調もあった。
 ところでナイに私が注目したきっかけは、自著にも記したが私が沖縄で暮らしていた時代の思い出に重なる。
 民主党クリントン政権下で1995年に少女暴行事件があり、これが米軍基地問題見直しに発展していった。この時期、国防次官補として、つまり民主党政権側のブレーンとして国際関係の問題を事実上支えていたのがナイであった。
 また、それを日本側で受けたのが岡本行夫で、講演では彼も登壇していた。私としては、ナイと岡本が並ぶのだから、沖縄問題の関連の話でも聞けることを期待していた。が、その話題はまったくなかった。
 ナイの業績ともいえるのだが、あの時代に、通称「ナイ・イニシアティヴ」、「東アジア戦略報告(EASR)」を彼が作成し、これが「アーミテージ・リポート」を介して現在至る、日米同盟の再定義に関連する基礎となっている。そのせいか、日経のシンポジウムではアーミテージと並んで出席していた。
 ナイは基本、民主党拠りであり、今後の米国の動向と合わせてそのあたりをどう読んだらいいのか、講演を聴きながら私はぼんやり考えていた。が、これも特にまとまった考えはない。
 話が散漫になるが、沖縄との関連での関心でもう一つ、先日の、彼がハフィントンポストへの寄稿(参照)にも関心があった。
 これはなかなか興味深い寄稿で、なぜか日本ではあまり注目されているふうでもないが、日本の防衛における沖縄の意味合いがまた大きく変わることを示唆している。簡単にいうと、内地の日本人には、沖縄という位置が日本の防衛にとって重要であるといった単純な議論が多いが、ナイはすでに沖縄の米軍基地そのものが米国の軍事において弱点になりうることを指摘している。まあ、このあたりの議論はいろいろと難しいし、講演では、対中戦略の質問などが出ても、ナイはこの議論には一切触れていなかった。
 そういえば、ナイの講演の後に岡本の講演があり、彼はどんな話をするのかと聞いてみたが、特に議論の骨格というものはなく、内輪の雑談という印象だったので、残念にも思えたが、逆に雑談らしくけっこうざっくばらんに言うものだなとも思った。
 岡本の話で印象に残った一つの例を上げると、中国の情報戦として、日本と米国の分断があり、さらに日本と西側諸国の分断という構図によって、中国の非民主主義的かつ非人権的な構図の転倒というのがあるとのことだった。そういう表現ではなかったが。
 その先の彼の説明も実にざっくばらんで、ようするに中国としては、安倍首相をヒットラーに重ねるイメージ戦略によって、第二次世界大戦の枢軸対連合国の構図で、日本はナチスで敵、中国は米国と同じ連合国として仲間としたいというのだ。
 まあ、冗談もかもしれないが、ネットなどを見ていると、執拗に安倍首相をヒトラーになぞらえる傾向をよく見るので、案外中国からのイメージ戦略の影響もあるのかもしれないとも思った。
 と書いてみると、思い出すのだが、岡本は、靖国問題は、内政の問題だとしていたのだが、いわゆる外国が触れるべき問題じゃない論というより、内政のプライオリティとして靖国が出ちゃうのはしかたがないんだという印象だった。こうした関連でナイに向けても質問が出たが、ナイは特に目立った意見は述べていなかった。が、韓国については、いろいろ問題があるにせよ、北朝鮮の脅威を考えると日韓は未来志向で協調したほうがいいとはしていた。
 という点で、そういえば、朝日新聞が日経のシンポジウムに触れてこういう記事を出していた。「河野談話見直しは「日本に傷」 ナイ米大教授が指摘」(参照)。

 米国の知日派で知られるハーバード大教授のジョセフ・ナイ元国防次官補は30日、東京都内であったシンポジウムで、慰安婦問題をめぐる河野談話の見直し論について、「河野談話の細部を蒸し返すのは、日本を傷つけることになる。中国や韓国、他の国が日本をたたく手段を与えてしまう」と述べ、懸念を示した。
 ナイ氏は、「(慰安婦をめぐり)日本が80年前の過去を振り返るのは大きな間違いだ」と述べ、核やミサイル開発を進める北朝鮮に対応するためにも、韓国との関係を重視すべきだとの認識を示した。同席した米国のリチャード・アーミテージ元国務副長官も「我々の国では、アフリカ系米国人の扱いを謝罪してきたし、し続けるだろう。(謝罪が)百年で十分だということにはならない」と語った。
 ナイ氏はまた、靖国神社に代わる国立追悼施設の建設にも賛意を示した。

 このシンポジウムについては日経新聞のほうも読んでみたが、私の読み落としかもしれないが該当の話は日経にはなかったように思う。
 で、この朝日新聞の取り上げ方なのだが、「核やミサイル開発を進める北朝鮮に対応するためにも、韓国との関係を重視すべきだ」というのは、私がナイ講演で聴いた彼の考えからすると、韓国や中国と過去の問題にそもそも関心を向けるのはよしたほうがいいということだ。なので、この朝日新聞が、慰安婦問題をめぐる河野談話の見直し論を焦点化するのは文脈が違うように思えた。
 自分の印象をまとめると、ナイとしては韓国や中国を刺激しても日本はヘマをするだけだから、こんな問題に手をつっこまず、もっと日本ができることをやってくれという感じだった。
 
 

|

« [映画] ベティ・ブルー | トップページ | [ドラマ]昨夜のカレー、明日のパン(NHKドラマ) »

「雑記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 先日、ジョセフ・ナイの講演を聴いた:

« [映画] ベティ・ブルー | トップページ | [ドラマ]昨夜のカレー、明日のパン(NHKドラマ) »