« なるほど捕鯨を自由化すれば捕鯨は終わるかも | トップページ | ああ、安倍政権の外交センスは嘆かわしい(訂正追記あり) »

2014.10.04

「ホラサン」への空爆は何だったんだろうか?

 自分なりに調べてみたがわからなかった。9月22日に米国が実施した「ホラサン」への空爆である。心にひっかかったままというのもなんなので、ブログに書いておこう。
 疑問の核は非常に簡単である。イスラム国に空爆をすると言ったオバマ米国大統領が、それとは関係のない「ホラサン」に空爆をしたのは何故か?
 もちろん、あとから理由は付くし、その理由はあとで触れたいと思うが、率直に言って、そんな話は事前に聞いてなかったし、いったい、どんな根拠で、そんな空爆が可能だったのだろうか? もっと、言えば、どさくさにまぎれにこんなことやっていいのだろうか?
 事態をNHKのニュースで確認しておこう。「米軍 別の過激派組織「ホラサン」も空爆」(参照・リンク切れ)より。


9月23日 19時53分
 アメリカ中央軍は今回、イスラム国に対する空爆に加えて、シリアで活動する別の過激派組織「ホラサン」に対しても、空爆を行ったと発表しました。
 「ホラサン」は、アフガニスタンやパキスタンなどの出身者からなる国際テロ組織アルカイダ系の過激派組織で、アメリカの情報機関は、イスラム国と同様にアメリカにとって脅威になり得るという見方を強調しています。
アメリカ中央軍は今回、シリア北部のアレッポの西で、「ホラサン」の司令部や爆発物などを製造する施設、それに訓練場などに対し、8回にわたって空爆を行い、作戦はアメリカ軍が単独で実施したと発表しました。
 また、空爆の目的は「ホラサン」が即席の爆発装置の開発や欧米諸国から戦闘員を勧誘するなどの活動をし、アメリカなど欧米諸国に対する差し迫った攻撃を計画していたことを阻止するためだと説明しています。

 NHK報道はアメリカ中央軍の話をまとめただけで、あまり報道の体をなしていない。そのことは、NHKにも自覚されているらしく、こう続く。

米にとって脅威の「ホラサン」
 アメリカのメディアは、イスラム過激派組織「ホラサン」について「アメリカにとっては『イスラム国』よりも脅威になり得る」などと、相次いで報じていました。
 アメリカの新聞、ニューヨーク・タイムズやAP通信は、今月に入ってアメリカの情報機関の当局者などの話として、「『ホラサン』はアメリカを狙って攻撃することを目標としており、その脅威は『イスラム国』よりも大きい」などと報じました。
 また、CBSニュースも18日、CIA=中央情報局の元高官へのインタビューで「『ホラサン』は攻撃の対象をアメリカやヨーロッパにしており、空港の警備をすり抜けて機内に持ち込める爆弾を開発している。シリアでは、実際に運ぼうとした欧米の戦闘員も見つけている」と伝えていました。

 米国メディアをNHKがまとめてみましたということで、正直といえば正直だが、ブログの記事みたいなものにしかなっていない。もっともそれは日本の報道社は他も同じではあるが。
 さて、どうにも変な話である。
 シリアはとりあえず主権国家である。そこにひょっこり空爆してよいものだろうか。いいわけはない。そして、今回のシリア空爆は、シリアの防空網を考えると、ますますよくわからない。ごく簡単に言えば、米国はシリアの防空網を抜けたか、あるいは、シリア政府(アサド大統領)が暗黙に自国空爆を認めたか?
 おそらく後者だろうと見られている。
 そこで「ホラサン」への空爆を当てはめると、特段に陰謀論というわけでもなく、「ホラサン」への空爆はシリア政府というかアサド大統領の、暗黙かもしれないけれど、認可があったと見てよい。そして、認可するのも当然で、「ホラサン」はシリア政府(アサド大統領)の敵だからだ。しかも、アレッポはアサド側にとって激戦の要所である。
 この先は陰謀論めく。ここから陰謀論……シリア空爆にあたって米国とシリア側で裏の交渉があって、「アレッポ近いあそこを叩いておいてくれたらOK」みたいなことになっていたんじゃないだろうか。……ここまで陰謀論。ただ、この陰謀論は否定できない。陰謀論は終わり。
 さて、このホラサンへの空爆理由だが、ブルームバーグ「米本土への「差し迫った攻撃」計画、「ホラサン」空爆の理由」(参照)ではこう伝えていた。

 イラクとシリアで支配を拡大する「イスラム国」が注目される中、より差し迫った脅威としてここ数週間にホラサンが浮上。米国の情報当局は、ホラサンの方が米国と欧州への攻撃に一段と的を絞っていると分析する。
 国防総省は声明で、ホラサンは国際テロ組織アルカイダの「経験豊富な古参兵士のネットワーク」で構成されていると指摘した。米当局はホラサンの攻撃計画や、それに関する情報の信頼性に関する詳細を明らかにしていない。
 ランド・コープ(サンタモニカ)のインターナショナル・セキュリティー・アンド・ディフェンス・ポリシー・センターでディレクターを務めるセス・ジョーンズ氏はホラサンについて、「西側を脅かす組織の頂点に位置する」と指摘した。
 国防総省によれば、アレッポ西方のホラサンへの攻撃には巡航ミサイル「トマホーク」が使用された。これとは別に、米国とアラブ5カ国はイスラム国の14の目標物に対し空爆を行った。

 いろいろ書いているが重要なのは「米当局はホラサンの攻撃計画や、それに関する情報の信頼性に関する詳細を明らかにしていない」ということ。わからない、というのが確実なのである。
 以前のブッシュ大統領のとき、不確かな情報を元に軍事行動に走ったとかよく批判されたものだが、今回のオバマ大統領も構図としてまったく変わらないが、なぜか十分な批判を見かけない。なぜなんだろうか。なんとも不可解でならない。
 ブルームバーグ報道はこう続く。

 米国が懸念しているのはイエメンを拠点とするアルカイダ系武装勢力「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の爆弾専門家イブラヒム・アシリ容疑者とホラサンがつながっているとみられることだ。アシリ容疑者は衣服や人体内に爆弾を埋め込む技術を開発しているといわれている。米国は同容疑者殺害を図り無人機による空爆を行ってきたが成功していない。
 オバマ米大統領は23日にホワイトハウスで、「アメリカを攻撃し、アメリカ人に危害を加えようと策略を立てる者に対し、はっきりさせておかなくてはならない。米国は市民を脅かすテロリストの隠れ場所を放置しない」と述べた。

 さらっと書かれているが、この情報はまったく不確かである。
 また、「米国は同容疑者殺害を図り無人機による空爆を行ってきた」ともさらっと書いているが、ようするにイエメンでオバマ大統領が認可した殺人ロボットを使って日夜暗殺を繰り広げていたわけである。
 「ホラサン」グループだが、イスラム国に匹敵するような脅威なのだろうか。もちろん、そう語られているのだが、事実関係を見ていくと疑問は深まる。AFP「アルカイダ系組織「ホラサン」、シリア空爆で一躍注目の的に」(参照)より。

 米国防総省は、ホラサンが欧米に対する「大規模な攻撃」を計画中だったとした上で、欧州あるいは米国に対する攻撃計画の「最終段階」にあったホラサンの戦闘員らを殺害したと発表した。
 専門家やバラク・オバマ(Barack Obama)政権によれば、アルカイダの元最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden)容疑者の仲間や古参工作員らが率いるホラサンの存在は、以前から知られていた。メンバーは最大1000人ほどで、イスラム国の戦闘員推定3万1000人よりもはるかに小規模だ。

 つまり1000人ほどの組織である。イスラム国の規模には匹敵しない。もちろん、それでも脅威だったということだが、どういう脅威なのかは、はっきりしない。

 ホラサンが計画していたとされる攻撃の内容はこれまでほとんど分かっていなかったが、米当局は先週になってその計画を把握したと報じられている。米CNNテレビは情報当局筋の話として、ホラサンの計画には、歯磨き容器や爆発物に浸した衣類などの非金属製の爆弾の使用も含まれていたと伝えた。

 驚くべきことは「米当局は先週になってその計画を把握した」ということで、これは、それほど緊急性があったということか、なんとなくその時のノリで空爆しちゃったかのどちらかだろう。案外、後者ではないのか。
 さていずれにせよ、「ホラサン」への空爆は意味があったのだろうか。時事がロイターの孫引きでこう伝えている。「アルカイダ系指導者の死亡認める=戦闘員がツイッターで」(参照)より。

【エルサレム時事】米テロ組織監視団体SITEは28日、国際テロ組織アルカイダの戦闘員がツイッター上で、アルカイダ系の武装組織「ホラサン・グループ」の指導者ファドリ氏が、米軍による空爆で死亡したことを認めたと明らかにした。ロイター通信が伝えた。

 やはり不確か情報であり、先の中心人物イブラヒム・アシリ容疑者については話が途絶えた。
 結局その後、どうなったのだろうか。というか、この空爆はなんだったのだろうか? 率直に言って、こんな変な話はないと思うのだが。
 あまり疑問が投げかけられているふうでもないが、9月28日のヒューマン・ライツ・ウォッチは「米国/シリア:米国が違法な攻撃か 調査必要」(参照)で疑問を呈していた。

(ニューヨーク)— シリアのイドリブ県で米軍が行ったとみられるミサイル攻撃で、少なくとも7人の一般市民が死亡した。武力紛争法違反の可能性を念頭においた調査が必要だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2014年9月25日のマスメディアに対する声明内で米国防総省のジョン・カービー報道官は、米国による攻撃でシリアの一般市民に死傷者が出たという報告を検証したが、一般市民の死について「現地から信頼に足る報告」を米軍は受けていないと述べた。
 地元住民らがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところでは、9月23日早朝にイドリブ県北部の村落Kafr Deryanで、少なくとも男性・女性がそれぞれ2人、子ども5人が死亡した。未確認ではあるが、男性2人はイスラム過激派組織アルヌスラ戦線のメンバーだったという情報がある。これら一般市民が、米国の保有するトマホーク巡航ミサイルにより殺害されたという目撃者証言と一致する動画もある。

 奇妙なのはこの先である。

 米国防総省は9月23日にフェイスブック上で声明を発表。同日に米中央軍が、アレッポ県西部を拠点にするアルカイダ系過激派組織「ホラサン集団」に8回の攻撃を実施し、同省がいうところの「米国および西側諸国の利を損なう差し迫った攻撃構想の粉砕」をしたと認めた。同省は空爆地域の特定をさけ、アレッポ県西部に位置するKafr Deryanへのいかなる攻撃についても詳細を発表しなかった。
 「人権のためのシリア・ネットワーク(SNHR)」の報告によると、Kafr Deryanへのミサイル攻撃で直撃を受けたのは、武器庫を含むアルヌスラ戦線本部だという。同ネットワークはしかしながら、武器の隠し場所への米軍攻撃で起きた二次爆発で、100メートルほど離れたところにある民家が崩壊し、12人の一般市民も犠牲になったとしている。これら犠牲者の氏名にはヒューマン・ライツ・ウォッチが収集した目撃者証言と一致するものも含まれる。

 正直いって、ヒューマン・ライツ・ウォッチの情報もよくわからない。私の誤解かもしれないが、ホラサンへの攻撃のどさくさで秘密裏に市民への空爆をしていたのだろうか。
 ところでその後だが、昨日、3日付けのロイター「U.S. strikes on al Qaeda group in Syria did not inflict decisive blow: sources」(参照)の記事があった。それによると、現状まだ調査中ではあるが、「ホラサン」への空爆は失敗だったようだ。空爆した地域の「ホラサン」グループは実際にはもぬけの殻でもあったようだ。
 おいっ。
 
 
香港・真正的普選
 
 

|

« なるほど捕鯨を自由化すれば捕鯨は終わるかも | トップページ | ああ、安倍政権の外交センスは嘆かわしい(訂正追記あり) »

「時事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ホラサン」への空爆は何だったんだろうか?:

« なるほど捕鯨を自由化すれば捕鯨は終わるかも | トップページ | ああ、安倍政権の外交センスは嘆かわしい(訂正追記あり) »