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2014.09.29

御嶽山の噴火のニュースで困惑したこと

 御嶽山の噴火のニュースを聞いたとき、噴火というだけで驚いたが、その後しばらくよくわからない状態でいた。変な言い方だが、何がわからないのかわからないという感じだった。
 御嶽山は以前にも噴火した。1979年(昭和54年)に水蒸気爆発したときは前橋にも灰が降った。休火山と見られていた御嶽山が噴火したということも合わせて大きなニュースだったが、人的な被害が出たという記憶はない。だが、今回は被害が出たらしい。(追記:記憶違いで当時は「死火山」と見られ、これを機会に「死火山」「休火山」がなくなった。)
 当初けが人は少なくとも8人、4人が灰に埋まっているといった報道(参照PDF)だったので、それほど人的な被害はないだろうとも思っていた。ただ、山頂に150人以上取り残されているとの報道(参照)もあり、被害者は膨らむ可能性はあるなと思った。いずれ、水蒸気爆発の影響で溶岩流ということではないさそうだ。
 被害者が増えれば大事件だろうとも思ったが、今まさにその救出活動なのだろうと思い、報道を見守ることにした。NHK系の報道が厚かったが、災害者を気遣ってというのもあるだろうが、関係者の情報が入手できたので報道にしているような印象もあった。
 その後、心肺停止者が31名という報道も流れ、大きな災害であることは察せられた。反面、千人単位の人が亡くなるような巨大な天災とまではならなかったかとも思った。
 今回被害者が多かったのは、なぜだろうかとも考えた。そこがよくわからない部分だった。仮にこう言えるだろうかとも思った。つまり、被害者は登山客であり、わざわざ危険な地域に入っていたから被害にあったのだ、と。しかし、彼らとしても、安全だと想定して入ったのだから、そうも言えない。
 ここで、自然に思考はこう向かう。事前に危険性は予知できなかったのか。また、事前に危険地域は指定できなかったのか?
 前者については、振り返ってみると、無理だったと考えるのが妥当だろう。いろいろ調べてみると予兆と見られる地震はあった。10日からである。気象庁「火山の状況に関する解説情報の発表状況 御嶽山」(参照)にまとめられている。16日はこうだった。


 9月10日からの火山性地震及び火山性微動の回数(速報値を含む)は以
下のとおりです。
             火山性地震 火山性微動
 9月10日        52回     0回
 9月11日        85回     0回
 9月12日        10回     0回
 9月13日         7回     0回
 9月14日         8回     0回
 9月15日        27回     0回
 9月16日(15時まで) 12回     0回

 その後はこの情報は途絶え、27日に次のようになる。

1.火山活動の状況
 御嶽山では、本日(26日)11時53分頃に噴火が発生しました。
 山頂火口の状況は視界不良のため噴煙の高度は不明ですが、中部地方整備局が設置している滝越カメラでは南側斜面を噴煙が流れ下り、3キロメートルを超えるのを観測しています。11時41分頃から連続した火山性微動が発生し、現在も噴火が継続していると推測されます。
 15時までの火山性地震及び火山性微動の回数(速報値)は以下のとおりです。
           火山性地震
  9月26日11時   79回
  9月26日12時  159回
  9月26日13時   31回
  9月26日14時   23回
 
 噴火発生後も火山性地震の多い状態が続いています。

 この経緯を見ると現時点の体制では今回の噴火は予測できなかっただろう。
 なお、この16日だが噴火警戒はレベル1だった

<噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)が継続>

 今回の噴火後はレベル3となっている。

<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>

 レベルの解説も公開されている(参照)。これでもわかるように、レベル3は「有史以降の事例なし」である。
 単純に考えると、今後は、10日のような兆候があった時点で、レベル2に引き上げれば、人的な被害は避けられそうだ。


 だが、ここで思うのである。今後の噴火はそのように起こるのだろうか? つまり、今回は予兆があったが、この次の噴火は今回と同じ予兆があると言えるのか?
 たぶん、答えは、ノーだろう。
 予兆なく、レベル3状態は発生すると考えたほうが妥当だろう。
 すると、どうなるのか?
 つまりこれが冒頭記した「変な言い方だが、何がわからないのかわからないという感じだった」という核にある。
 被害を絶対に出すなというなら、いかなる時でも入山禁止とすればよいということは言える。だが、それも可能だろうか。そう疑問に持つのは、その地域の産業全体とのバランスでそういう決定がどういう手順で下せるのか、よくわからないということである。
 ここで私はふと、そういえば、日本の新聞の社説はどんな意見を出しているのかと気になる。覗いて見る。
 朝日新聞の社説を読んだ。率直にいって雲を掴むように思えた。29日「御嶽山噴火―火山リスクの直視を」より。


 今回、噴火するまで御嶽山の警戒レベルは、5段階で最低の「レベル1」(平常)だった。
 気象庁は噴火を予知することは困難だったとしている。火山性の地震が今月になって増えたが、ほかに異常がなく地震も落ち着いていた。地震の続発は、地元自治体に伝えてもいた。
 もし地震が増えた段階で、火口周辺への立ち入りを規制する「レベル2」に警戒レベルを引き上げていたら、あるいは立ち入り自粛を呼びかけていたら、被害を減らすことができただろうか。検証が必要だろう。
 自己責任にゆだねられる部分が多い登山で、こうした警戒情報をどのように伝え、万が一の事態にどう備えるのか。それぞれの火山で、地元自治体は気象庁や登山愛好者らと相談してみてはどうだろう。
 火山噴火予知連絡会の拡大幹事会はきのう見解をまとめた。今回の噴火は、地下水がマグマで熱せられて起きた水蒸気爆発で、火砕流を伴った。今後も同程度の噴火や火砕流の発生に警戒が必要と呼びかけている。
 国内の噴火で犠牲者が出たのは、1991年の長崎県の雲仙・普賢岳以来だ。110もの活火山がある日本だが、全体としては静穏な歳月が続いてきた。
 火山噴火は比較的低いリスクと見なされ、他の災害に比べ対策が遅れている。火山予知連が監視強化を求め、気象庁が常時監視する47火山でさえ、必ずしも観測体制は充実していない。


 世界有数の火山国である以上、政府は火山のリスクを軽視していてはならない。
 火山の観測や研究を強化するとともに、噴火被害の軽減策を着実に図るべきである。

 揶揄したいわけではないが、ナンセンスなことを言っていると思う。レベル2に上げていたらというのは今回の事例であって、今後はわからない。検討対象でもないだろう。「地元自治体は気象庁や登山愛好者らと相談してみてはどうだろう」というのはなんかのギャグということでもないだろう。
 結語に至っては、およそ、ではどうしたらいいのかというのがわからず、提言にすらなっていないように思える。
 というわけで、他紙も見たが、率直に言って、引用する意味も感じられなかった。それでも部分的に見ると。
 読売新聞社説。

 最近は、中高年の登山ブームもあり、登山客でにぎわう火山は多い。周辺には温泉など有名観光地もある。万一の事態があることも忘れてはならない。

 毎日新聞社説。

 00年3月の有珠山(北海道)噴火では、地震活動が活発化したことを受け、噴火2日前に自治体が住民に避難指示を発令したが、11年1月の霧島山系・新燃岳の噴火では、事前予知ができなかった。こうした経緯を教訓に、噴火警報の在り方や活火山の監視・観測体制の見直しについて、今後、検討を重ねてほしい。

 産経新聞も結語は似ているが途中、率直に不可能だと認めている。

 観測技術の向上により、自然災害の予測がある程度可能になった分野もある。しかし、全ての災害を予測し、リスクを回避することは不可能だ。

 結局、どういうことかというと、今回程度の被害を考えるなら、「常時、御嶽山は入山禁止にすべきだ」ということになる。ただ、これが新聞各紙社説で主張されてないのは、ちょっとそれは言えないよねということだろう。
 あるいは、「入山するなら災害の覚悟はしてくださいね。災害時には救助は行いますが」ということだろうが、それもちょっと言えないよねということだろう。災害後の責任の問題は厳しくなるだろうし。
 困ったなと思う。
 そして、困ったなと思うのは、たぶん、この問題、なんとなく忘れ去られて、20年後くらいにまた災害を起こすのではないだろうか、ということだ。
 
 

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コメント

トムラウシ山の遭難を思い出しました。

中高年だけならまだしも、
大人の甘い判断で、子供が巻き込まれている件。

南無。

投稿: 昨日の世界へようこそ | 2014.09.29 13:37

 山登りは自己責任です。
 しかしこの様な微弱地震情報を世間に流すシステムを構築して置くことも重要ではないでしょうか。
 自治体にだけ流しても、経済重視のこの世の中、そこから先はストップしてしまいます。
 携帯スマホやパソコンで、このような情報を欲しい人は登録して置けば入手出来るようにして置けば、今回の中で被害に遭った方でも、行かなかった方が居たかも知れません。
 原発政策(放射能問題)など殆どのことが当て嵌まると思います。
 自己責任を言いたてるならば、情報も世間に流す。
 そうでなければ自己責任も全うできません。

投稿: hotaka43 | 2014.09.30 02:57

登山がブームになっているし、遭難や事故は、平時のニュースでもよく流れているので、噴火は、派手なだけで、登山の危険リスク自体は変化はなく、単純に、登る人の数が異常なんだと思う。対応するとしたら、登山保険か、登山資格制度ぐらいだと思うなぁ。とにかく、火山は登らないようにするしかないね。

ただ一番驚いたのは、政府情報が少なすぎだと思う。情報をわざと減らしていたんじゃないの? そっちの方が問題ありすぎ。別にテレビやラジオを24時間災害ニュースをしろとはいわないけど、ネットで情報が細かく知れるようになっていないと、ネットで噂やデマが広がるだけだと思うけど。

投稿: | 2014.09.30 06:24

「入山するなら災害の覚悟はしてくださいね。災害時には救助は行いますが」というのは、当たり前で、現状維持ということだから、わざわざ言わないのでは。

投稿: | 2014.09.30 12:42

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