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2014.09.19

スコットランド独立住民投票(レファレンダム)、否決

 イギリスからのスコットランド独立の賛否を問う住民投票(レファレンダム)で、予想通りの接戦の末、予想通りに独立が否決された。自分にとっては予想通りの結果ではあった。だが、強い確信を持っていたわけではなく、関心をもって見つめていた。
 今回の結果で、スコットランドの独立が否定されたとはいえ、これもすでに書いたが、実質的にはスコットランドの自立化は進み、事実上、独立に近い状態に変わっていくだろう。
 一連の動きを振り返って思うことが3点あった。

 1つは、労働党の失策である。左派政党の失策と言ってもよい。
 この点は日本からは見えにくいかもしれない。日本の政治風土は特殊なので、左翼と右翼、左派と右派、あるいはリベラルと保守といった基本的な対立が他の先進国とは異なっている。
 国際的には労働者の政党が左派であり、今回のスコットランド独立の動向はその左派である労働党の政策に対して違和の表明という点が大きかった。その点を延長して言えば、今回の独立運動は保守化の動きであった。後でも触れるつもりだが、より正確に言えば、地域文化・生活に対する保守的な動向でもあった。
 左派的な動向への違和がスコットランドで沸き起こったのは、その政策への失望なのだが、失望というのは期待の裏返しであるように、前段には期待もあった。
 少し大戦後の歴史を振り返る。日本では新自由主義というふうに、なんでも放り込める分別なしゴミ箱のようなレッテルで理解されることの多いサッチャリズムが焦点になる。この政治改革は、日本では英国病という独自の用語で形容される、1960年代以降の産業保護政策がイギリスの国際競争力を低下させてきたことへの対策であった。サッチャリズムの評価は一概には言えないが、この改革の影響を大きく受けた、あるいは受けたと理解したのがスコットランドだった。まず、サッチャリズムや保守政治への反発があり、これが労働党への期待に結びついていた。
 スコットランドはもともと、労働党色の強い地域で現保守政権の前の労働党政権時代の首相であるトニー・ブレアやロバート・ブラウンもスコットランド出身であり、スコットランド人と言ってよい。
 こうしたスコットランド人材によるイギリスの労働党政治が、おもにイラク戦争とリーマンショックへの対応をきっかけに、地元のスコットランドから忌避されるようになっていた。
 経緯を簡単にまとめると、サッチャリズム的な保守主義にも、グローバル化に沿った労働党左派主義にも、そのどちらにもスコットランドは否定的な思いが高まり、そこに地域政治への希求が高まっていたことがある。もちろん、これに北海油田といった利権の思惑も絡みはする。
 労働党政権への失望というものをどう考えるかという点からは、今回のスコットランドのレファレンダムは日本も含めた幅広い意味合いを持つだろう。

 2点目は、ツイッターでいろいろな人の意見を見ていて思ったのだが、今回のスコットランド独立運動を民族自決・民族独立と誤解している人が少なからずいそうで驚いたことだ。大学教授といった肩書きをもつかたや、識者も含まれていた。
 こうした素朴な誤解が日本で生じるのは、今回スコットランド独立を主導した政党"Scottish National Party (SNP)"が「スコットランド民族党」と訳されているせいもあるだろう。NHKもこの用語を使っており、NHKに登場した解説者も多少戸惑いながら軽くこの訳語に言及して、すぐ「SNP」という略語に切り替えている心情が面白かった。
 この奇妙な定訳語が日本国内で使われている経緯もわからないではないし、原語の"National"を「民族」ではなく「国民」とし、「スコットランド国民党」というふうに、あたかも台湾与党のように、呼べばよいのかもしれない。だが、常識的にもわかるように、スコットランドという国家は目標であり、独立前に呼ぶのもためらわれるものもあるだろう。いずれにせよ、SNPには民族主義的な傾向は実質的にはほとんど見られない。にもかかわらず、日本の政治風土では、なぜか、こうした問題を民族主義の問題に押し込みたい政治的な枠組みが存在している。
 スコットランドの独立は地方自治の国家的な規模の問題である。米国とカナダがなぜ国家を分けているのかという問題に近い。
 そこでスコットランドが国家化する場合の規模について触れておくと、スコットランド人口はだいたい500万人(5,254,800)である。世界には500万人以下の国家は世界に多い。フィンランドも500万人ほどである。その点から考えれば500万人国家としてのスコットランドに違和感はない。
 だが、以前にも考察したが国際的な影響力のある国民国家は2000万人規模を要するラインがありそうだ。独自の軍事力を持ち得るラインでもあるだろう。そうした点からざっとした印象ではあるが、スコットランドは独立してもその後国家運営は、イギリスに依存することになっただろう。
 余談だが、500万人というとだいたい日本の北海道の人口(5,507,456)に匹敵する。当然、北海道も地方自治の主体が独立を志向することもできる。戦後日本では、日本を分割し、北海道をソ連領とする可能性もあった。北朝鮮同様、ロシア側の政府を樹立する可能性がまったく不可能ということでもなかった。

 3点目は今回のレファレンダム参加の年齢基準が16歳以上という点だった。数の上では、有権者登録者約430万人のうちの約11万人程度と少数ではあるが、この層が、名目上の独立は果たせなかったものの今後のスコットランドの地域を担っていくことになる。
 その意味で、今回のレファレンダムは若者世代への政治参加への教育的な効果が大きくあった。この点は日本も今後学ぶ点が大きいだろう。言うまでもないことだが、国際的には有権者は18歳以上が普通という状態に向かっていて、日本はこの点で後進国に位置している。

 以上、3点であるが、もう1点、しいて言えば、主に通貨混乱と原子力政策に関連して想像も付かない事態にならなくてほっとしたということもある。
 
 

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コメント

スコットランド独立投票で行われた投票所での不正行為の決定的な証拠!

ttp://www.youtube.com/watch?v=B2V7DgCXiFM

↑これ、必見です!! NWO(新世界秩序)を阻止するためにはなんとしても。 

世界中に拡散してください!!

投稿: 日本人女性 | 2014.09.21 01:01

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