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2014.09.23

普天間飛行場の辺野古「移設」で新設される「軍港」機能について

 ブログをエバノート代わりに使うのもなんだが、自分の備忘のためにもちょっとメモしておこうかなと思う。ブログを選んだのはこのメモは公開してもいいんじゃないかということ。そういう次第で特に目新しい話題があるわけではないが、普天間飛行場の辺野古「移設」で新設される「軍港」機能についてである。
 話の焦点がしょっぱなから反れてしまうかもしれないが、この問題の現状の一般的なイメージを知る点からも、普天間飛行場の辺野古「移設」の最新のニュースを拾っておきたい。まあ、現状、この問題は政府側からはこんな感じで語られているという一例である。「防衛相 辺野古移設の計画推進を強調」(参照)より。


9月23日 16時00分
 沖縄県を訪問した江渡防衛大臣は、アメリカ軍普天間基地の移設を計画している名護市辺野古沿岸部を視察したあと、記者団に対し、辺野古への移設が基地の危険性を除去する唯一の解決策だとして計画を推進する考えを強調しました。
 就任後初めて沖縄県を訪れた江渡防衛大臣は、宜野湾市にあるアメリカ軍普天間基地を一望できる高台を訪れ、同行した宜野湾市の佐喜真市長から、市街地にある基地が住民生活に及ぼしている影響などについて説明を受けました。
 そのあと江渡大臣は、移設を計画している名護市辺野古の沿岸部をヘリコプターで上空からおよそ1時間にわたって視察しました。
 視察を終えた江渡大臣は記者団に対し、「沖縄の皆さんのなかに、移設への反対意見があることは承知しているが、日米両政府の間では唯一の解決策は辺野古への移設だと決定している。県民に理解を深めてもらうよう努力していきたい」と述べ、辺野古への移設が基地の危険性を除去する唯一の解決策だとして計画を推進する考えを強調しました。

 つまり、「辺野古への移設が基地の危険性を除去する唯一の解決策」という点を政府は強調している。しかも、「反対意見があることは承知している」というので、最善の策ではないが次善だろうという含みがある。
 普天間飛行場は、自著でも言及したが、現状、市街地に置かれて米国の基準も満たしていないので(米国なら即座に撤去となるはず)、その危険性を第一に考えると、とにかく移設したほうがよいというのが政府側の押しのポイントだ。カレー味のうんこより、うんこ味のカレーのほうがいいんじゃなか論である。
 この義論についてはそれ以上ここでは立ち入らない。
 では何のメモかというと、ちょっとその議論の前提に嘘があるよなあ、と思う点だ。どこが嘘かというと、「移設」ではなくて「新設」でしょ、ということ。
 「新設でも移設でしょ」という言い方もあるかもしれないけど、新しい機能を加えて機能まで変えちゃったら「移設」って言わないないんじゃないのか、というのがメモのポイントである。
 辺野古の新基地は、既存普天間飛行場に何を加えて機能を変えるのか?
 答えは、軍港。
 これも自著に書いたけど私は1995年の沖縄少女暴行事件の際に沖縄で暮らしていて、普天間飛行場撤去に関する話題は当時でずっと見てきたのだが、東京に戻ってしばらくした2007年、辺野古新基地についてニュースがあった。琉球新報「普天間代替 米が大型岸壁、戦闘機装弾場を要求」(2007年10月24日)より。

 米軍再編に伴う米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設をめぐる2006年5月の最終合意直前の日米協議で、米側が代替施設に現在の普天間飛行場にはない戦闘機装弾場(CALA)や214メートルの岸壁を要求していたことが米公文書で分かった。現飛行場にない施設の整備方針が明らかになったことで、単なる移設でなく基地機能強化の性格が鮮明になった。
 代替施設建設の埋め立て用土砂を採取する予定の辺野古ダム地域や、移設でつぶれるキャンプ・シュワブの陸域部分についても米側は環境影響評価(アセスメント)を実施すべきだと求めている。防衛省が現在進める普天間代替施設のアセスの方法書は辺野古ダムに言及しておらず、装弾場や岸壁の存在も示していない。
 214メートルの岸壁は、従来の施設計画図で大浦湾側に示されていた燃料用の小規模桟橋とは別物。海兵隊員とヘリを海上輸送する輸送揚陸艦も着岸可能な規模で、普天間代替施設の軍港機能を担うとみられる。
 公文書は、普天間移設問題に関連してジュゴン保護を米国政府に求めた訴訟で米政府が提出した資料で、同訴訟の原告団が23日夜、名護市での報告会で明らかにした。文書は、普天間の代替施設で名護市と防衛庁(当時)が基本合意した直後の4月20日付で、日本側の提案に対し米側が逐一コメントを付している。
 一連の文書には、代替施設建設の年次ごとの工事進ちょくを示した地図も添付されている。それによると、工事着手から1年後(アセス着手から4年後)には大浦湾側の海中に堰(せき)を建造し、2年後から3年後に順次海域を埋め立ててV字形滑走路を途中まで整備、4年後までには予定海域をすべて埋め立てる予定だ。

 2006の時点で、当初の移設計画にはなかった軍港機能を追加してしまっていたのだった。請求したらわかったということで、極秘ということでもなかったのだろう。
 その後の経緯だが、どうやら、これは「軍港ではない」という話になっているようだ。昨年の沖縄タイムス「辺野古 新型の軍港に 県「岸壁」主張 識者ら「既に機能保持」」(参照)より。

 辺野古埋め立て申請書で判明した272メートルの係船護岸や斜路(スロープ)設置などによる新基地の軍港機能について21日、申請書審査中の県土木建築部はこれを否定し、「審査への影響はない」とした。在日米軍基地に詳しい識者は、新基地はうるま市の米海軍ホワイトビーチ同様に「米軍港湾としての補助的な支援機能を持つ」と説明する。山口県の岩国基地沖合移設時に係船護岸建造が突然“後出し”された経緯を振り返り、「不足する設備は米軍の将来的な運用の中でいくらでも追加され得る」と指摘している。
 本紙の取材に県土木建築部は「冬場の波の高さ」「波の影響を軽減する防波堤のような施設もない岸壁で、港の形態を持たない」などと軍港機能を否定している。


 また辺野古新基地計画には、ホワイトビーチのような艦船向けの給水設備や高圧電気供給設備といった支援施設がない。だがホワイトビーチの高圧電気供給設備も運用途中で建設された。県の軍港機能否定について、篠崎さんは「軍港と呼ぶか呼ばないかの違いだが、軍の荷役機能を持つ岸壁があることに何ら変わりはない」と話した。

 「岸壁」であって、軍港ではないということだ。なるほど納得、というべきなのか、苦笑すべきなのかよくわからない。
 このあたりは比較的公平に見てきたNHKでも、「軍港」という言葉は使わないものの、疑問を投げていた。「時論公論「説明置き去りで進む辺野古移設」」(参照)より。

加えて、新たに建設される代替施設の機能です。面積自体は205ヘクタールと、普天間基地の半分以下ですが、4分の3にあたる160ヘクタールは、沿岸部を埋め立てて作り、1本しかない滑走路は、V字型の2本になります。さらに全長250メートルを超える大型船が係留できる岸壁や、航空機に弾薬を搭載するエリアなど、普天間基地にはない機能が整備される予定です。代替施設は完成すれば簡単に撤去というわけにはいきません。これで負担の軽減と言えるのか、むしろ基地機能の強化と固定化ではないかという疑問は、移設に肯定的な人の中にもあります。

 で、この先、まだ続きがある。今年の7月31日沖縄タイムス「米軍、辺野古に高速輸送船配備検討」(参照)より。


 【平安名純代・米国特約記者】米軍が名護市辺野古の新基地に高速輸送船(HSV)を配備する可能性を検討していることが29日、分かった。沖縄で前方展開している第31海兵遠征部隊(31MEU)を辺野古から乗艦させることで機動力を高め、アジア太平洋地域への即応展開能力を拡大するのが目的。複数の米政府筋が沖縄タイムスの取材に明らかにした。


 日米両政府は、2005年の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書に、「海上輸送を拡大し、共に実施する」などと、相互輸送協力の方針を明記。一方で、米軍内では、新基地にホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)や高速輸送船(HSV)が運用できる軍港機能を整備する必要性を検討していた。
 メイバス海軍長官は28日、米海軍横須賀基地(神奈川県)で講演し、太平洋地域に両用即応群(ARG)を追加配備し、佐世保基地に20年までに沿海域戦闘艦(LCS)を配備する方針を説明。軍事費大幅削減などで遅れが生じていたアジア重視戦略について「確実に実施される」と強調した。
 同長官は昨年2月、米下院軍事委員会に提出した書面証言で、新たに獲得した高速船を沖縄とオーストラリアに配備された海兵隊の輸送用として運用する方針を明らかにしている。

 この話がどのように沖縄タイムスにリークされたのか、いやリークじゃないよ公開情報みたいなものだということなのか、まだまだ懸案という事態なのか、その後の報道を私は知らないこともあってよくわからない。
 ただ、「軍港」と呼ぶか呼ばないかという問題より、これもう、普天間飛行場の代替移設基地、とかいう話ではないよな。
 この点について、政府側からの明確な説明というのがあったのかどうか私は知らない。ないんじゃないかと思う。だとしたら、きちんとまとめて情報を公開し日本国民全体に説明しないといけないのではないか。
 
 

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