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2014.09.21

フランス経済の低迷とオランド政権の迷走

 フランス経済が低迷している。今年度の成長率は0.4%、来年は1%と見られている(参照)。また、現在10.2%の失業率も、さらにこれを越えていくとも見られている(参照・(参照)。
 とはいえ、それをもってフランス経済が危機的な状況にあるとまで言えないのは、昨日ムーディーズがフランス国債を「Aa1」に据え置いたことからもわかる。ちなみに日本はAa3である。
 フランス経済の低迷の原因についてはいろいろな議論があるが、関連して目立つのはオランド政権の迷走がある。象徴的なのは、先月25日、モントブール経済相(当時)を更迭し、内閣改造を行ったことだ。
 更迭理由は、モントブール元経済相が、緊縮財政路線のオランド政権の意向に反し、緊縮財政路線の撤回を主張したことだった。ロイター記事で拾っておこう。8月26日「フランスが内閣改造、大統領は緊縮財政批判の経済相更迭へ」(参照)より。


 モントブール氏は24日、2008年の金融危機以降実施されてきた財政赤字削減策はユーロ圏経済を台無しにしており、各国は迅速に方針転換しなければ有権者はポピュリストや過激主義の政党に流れると警告した。
 さらにドイツに対して緊縮財政という「妄想」によってユーロ圏経済を破壊していると強烈に批判するとともに、自身と同調する2人の閣僚は職にとどまる意向がないと表明していた。


 モントブール氏は会見で「全世界はわれわれにこの馬鹿げた緊縮政策をやめるよう懇願している。緊縮政策はユーロ圏をどんどん景気後退の深みへと沈ませ、ついにはデフレをもたらそうとしている。われわれは緊縮政策が財政赤字を縮小させるどころか生み出していることを認める知恵と政治的勇気を持たねばならない」と言い切った。

 どうだろうか? 私はこれは社会党左派であるモントブール元経済相の主張が正しいように思われる。欧州中央銀行(ECB)ドラギ総裁も緊縮財政についてすでに懸念を表明している。
 モントブール氏の発言は同時に現在のフランス政局にも関連している。

 オランド大統領にとっては今後、モントブール氏ら造反閣僚が議会で勢力を糾合し、改革実行に必要な左派与党内の多数派が切り崩されるリスクがある。

 現下の混乱は、オランド内閣の倒閣運動にもつながっていると見てよいだろう。
 このあたりは、フィナンシャルタイムズも言及していた。「[FT]左派閣僚更迭で賭けに出た仏政権(社説) 」(参照)より。

 第2に、モントブール氏の排除で政権運営が不安定になることが考えられる。オランド政権の求心力は弱く、支持率は17%にとどまる。モントブール氏は、社会党や緑の党の反対派が構成する国民議会の反緊縮派を支持できるようになった。これによりフランス政界は「ねじれ状態」に向かう。最悪の場合、解散総選挙に追い込まれ、(その結果として)左派の大統領と右派の内閣が共存する混乱した事態に陥る恐れがある。

 あまりよい言い方ではないが、「左派の大統領と右派の内閣が共存する混乱した事態」が想定される。欧州左派の混迷と矛盾が浮かび上がってくる一例とも見られる。
 こうしたフランス政局の文脈を眺めると、一昨日のサルコジ復活宣言がただの悪い冗談だとも思えなくなる。朝日新聞「仏サルコジ氏、表舞台に復帰へ 2017年大統領選視野」(参照)より。

 フランスのサルコジ前大統領(59)が、政治の表舞台への復帰を表明した。2017年の大統領選をにらみ、まずは最大野党・民衆運動連合(UMP)の党首選に立つ。社会党オランド政権の任期半ばで、仏政界は「ポスト・オランド」へと動き出した。

 それにしても、なぜ左派オランド政権がこのような混乱に至ったのか。もともと当初から政策的な無策が指摘されていた点については特に弁護もできないが、緊縮政策に固執するのは、EUの財政赤字基準(対GDPで3%)を守ろうと公約していたことがある。しかしこれも、15年ですら4.3%までしか下がらないと見られている。それにしても、そうした公約がするっと通ってしまった空気、つまり経済的な問題を政治問題に還元しようとした政局の成功は、逆に現在となっては仇となった。
 結局、フランスでの政局の混乱は、モントブール元経済相とオランド大統領の対立に見られるように経済政策における左派の混乱と、それに乗じた政局の右傾化の二つの動向があるように見える。そしてどちらも、旧来の左派的な枠組みでは解決できない。
 こうしたフランスでの混乱がEUに再び危機をもたらすまでにはまだ時間がかかるだろう。だが、そろそろスケジュールに乗り出したようには見える。
 
 

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