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2014.09.11

拝啓 色川先生(NHK BSプレミアムドラマ)

 テレビレコーダーの未試聴リストを見ていたら、NHK BSプレミアムプレミアムドラマでこの3月に放映された『拝啓 色川先生』が入っていたので、へえと思って見た。
 もちろん、録画予約をしたのは私なので少し記憶があるが、ほとんど忘れていた。表題に色川先生とあるくらいなので、このドラマだと色川武大をどう描くかなという関心もあった、開けてみると原作は伊集院静『いねむり先生』(参照)だったので、少し驚いた。
 驚いた理由は、昨日書いた「いねむり先生 [DVD](出演。藤原竜也・西田敏行): 極東ブログ」(参照)と原作が同じだったからというより、同じ時期に同じテーマを民放とNHKでやったのかという点だった。調べてみると、民放のほうは2013年9月、NHKは2014年3月なので、半年の差はある。民放が先だが、この間隔だとNHKは民放を見てからの企画ということでもないだろう。
 視聴後の全体の感想を先に述べておくと、こちらの作品も面白かった。率直にいって、同じ原作なのか、どっちが原作に近いのかよくわからないという印象もあった。こちらのNHKドラマのほうはDVDなどで販売はされてなく、また地上派で放映されたふうでもないので、いずれ地上派で再放送するのではないだろうか。関心のあるかたは見る価値がある。
 少し調べてみると、原作では主人公は伊集院静をモデルとしているものの「サブロー」であって伊集院静その人ではない。だが、NHKのほうでははっきりと、伊集院静としていた。ドキュメンタリー仕立てにしているのである。ただ、「黒金ヒロシ」という名前は明確には出てこなかったと思う。
 色川は國村隼が演じていた。國村隼と言ってもピンとこない人もいるかと思うが、見れば、あの渋い役者さんだとわかるだろう。けっこうなおっさんに見えるが、年はと調べてみると、私より二つ上。この物語の色川を演じるにぴったりの年齢というところだ。渋さのなかに微妙な色気とイノセンシーを感じさせる演技が上手だし、この作品ではその特性を上手に活かしていた。なるほど、色川が女にモテるのはこれだよなという部分である。
 反面、色川が持つ恐ろしい部分については、率直に言ってうまく演じられているふうではなかったし、脚本的にもそういう面は強調されていなかった。私の色川への思い入れが少し勝ってしまった。
 ついでのような言い方になるが、伊集院静を演じる村上淳だが、悪くない。悪くないだけよいと言ってよい。微妙な軽さはそれでよいのかもしれないが、印象はその分、薄い。
 ドキュメンタリー風のドラマではあるが、映像の作りはどちらかというと映画に近い。決定的なことを言うと、この作品こそ二時間枠できちんと作るべきだっただろう。ところどころ、ドキュメンタリー的な趣向で時間を省いていて、そこが奇妙に浮き立ってしまっている。
 特に夏目雅子は、イメージとしては描かれているが、役者としては登場しない。そもそもそういう作品なのだと言えないことはないが、ちょっと無理がある。このドラマでは夏目を描く代わりに、彼らの恋愛が当時どんなにスキャンダルだったかということを表すために、当時の週刊誌のページをいかにもドキュメンタリーふうに画面に並べて映した。ああ、そうだったなあという思い出も蘇るが、この表現手法はちょっとずるい。
 同原作でも民放作品とは、テーマすら違うように思えた。民放のほうでは、伊集院静扮する主人公の、妻への愛と罪責の苦しみから逃れるというのがテーマだが、NHKでは、妻への罪責はあるにせよ自身のやりきれないような駄目さかげと創作者の存在はどうあるべきかということがテーマとなっていた。この後者の創作者・小説家はなぜ生きているのかというところで、色川武大とつながるように作成されていて、その点では、きれいに出来た脚本だった。
 ドキュメンタリー仕立てのせいか、冒頭いきなり、64歳の伊集院静が登場した。ぼそぼそと近況と作家の本質のようなことを語るのだが、背景には東北大震災への思いが滲んでいるようだった。
 彼は小声でどっこいしょと椅子に座り、さりげなく、妻のことを語っていた。「家内の体調悪かったんで」と。「家内」は篠ひろ子である。当時のことを思い出すと、ああこの色男また女優か、と思ったものだったが、1992年だったか。彼らの年齢を見ると、伊集院が42歳、篠ひろ子が二つ年上なので44歳だった。いつ頃からの関係だったか、伊集院が小説家として盛り返したころからなのか、もっと深い過去があるのかよくわからないが、ありそうな印象はある。
 伊集院静と篠ひろ子の再婚では、いろいろ人生を経た大人の恋愛として祝福する気持ちと、長くは続かないよという思いと二つあった。が、お二人連れ添ってもう20年以上。それだけで人間というものだなあという実感がある。
 繰り返しになるが、やはり1時間でまとめるために、かなりきれいにまとめているが、そもそもきれいに整えてしまうには無理のあるテーマだった。そのあたりは脚本家や演出にも理解されていてるだろうというのは、モロ師岡の役回りなど本筋から離れる部分が面白かった。
 同じ原作で二作見てしまったせいか、どうしても隔靴掻痒感は残る。作品の出来不出来とは別に、こーじゃないんだと思う。夏目雅子っていうのはこーじゃない、色川武大はこーじゃないと、つい思ってしまう。
 
 

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