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2014.07.08

ドイツ語は日本語と同じSOV言語だったのか

 ポール・ノーブルのドイツ語レッスンをいっきにやったあと、まあ、ドイツ語という言語がどういうものかはだいたいわかった。英語を元にドイツ語を構成するコツみたいのもわかった。だが、語彙力がなさすぎるうえ、耳がドイツ語に慣れていない。これでは言語を学んだ部類に入らないなということで、ピンズラー方式でドイツ語をやりなおして、10日。どうか。
 いや簡単。なにより、発音が楽。中国語を学んだあとのせいかもしれないけど、聞き取りに不可能な音はない。またナチュラルな発話にしても英語のように不自然な潰れ方はしない。米語とか日本語とかナチュラルな速度で発話すると発音がかなり変わる。
 次に、正書法が楽。中国語とか日本語とか、もうありえないレベルの正書法はもっていないし、フランス語みたいに奇っ怪な正書法もない。
 語彙も基礎レベルだと、英語とほとんど同じ。こんなに同じだったとはびっくりな感じ。
 そして文法も楽。中国語のような、どうなってんのこの言語みたいな不可解さはない。
 ドイツ語、こりゃ楽でええわ、と思っていた。
 大間違い。
 なんか変だ。
 このなんか変だ感は、文法だった。ピンズラー方式で英語で学んでいるのだが、フランス語の時とはかなり違う。どう違うのかというと、フランス語の場合でも、"Tu me manque."みたいな、なんじゃみたいな構文はあるけど、基本的に慣用表現としてかまわないし、全体からすらばそれほど慣用的な癖はすくない。ちなみに、中国語の場合は、そもそも文法なんてなくて、慣用表現のかたまりなんじゃないかという絶望感もあるが。
 理由はすぐにわかった。
 フランス語の場合、だいたい英語を逐語翻訳してもだいたいあっている。"Je t'aime."のように代名詞が動詞の前に来たり、再帰的な"Je me lave."みたいな表現はあるが、これも基本的に代名詞の動詞の関連で文法に収まる。
 ところが、ドイツ語、語順が変だ。
 変というのは、英語からドイツ語に移すとき、語順が変わる。いやこれもフランス語の副詞の位置と英語の副詞の位置が違うとか、中国語で語順が変わるとかいうのはある。が、どちらも基本慣用的なり文法的にわかる。ドイツ語、そのレベルじゃない。
 たしかに、ドイツ語の語順も文法的にきちんとわかっている。だが、なんで、そうなるの?ということにさほど疑問はない。もちろん、それがドイツ語だからさ、というのはわかる。
 だが、なんで、こうも英語とフランス語と違うのか。というか、英語の場合、結局、フランス語のピジン語なんで、だから同じということなんだろうが。つまり、ロマンス語とフランス語の語順みたいなもののコツみたいのがわかればそれほど違和感はない。ドイツ語、違うぞ。
 ドイツ語の語順が「変」なのは、変というのでもないのだけど厳密には、あれだ。と、「枠構造」でぐぐったら、ウィキペディアに例があったが、"I may drink tea."が"Ich darf Tee trinken."になる。枠構造だ。
 この枠構造については、最初にやったポール・ノーブルのレッスンで彼がなんどもそこを理解させようとしていたおかげで、それはそういうのかというレベルではピンズラーでドイツ語を学んでいても不思議ではないのだが、やはり違和感は残る。
 そんなおり、『ドイツ語とのつきあい方』(参照)というドイツ語の入門書を読んでいたら、こう説明されていて、ぎょっとした。


 文は、まず主語が与えられ、それに合致した定形が添えられ、そのとなりへ他の必要な文要素が並べられてできあがってゆくものだと考えてはいませんか。
 そうではありません。文は、不定詞から出発して、これを不定詞句に発展させ、そのうえで仕上げとして主語と結びつけてはじめてできあがるものなのです。

 これだけだとなんのことかわからないと思うけど、要は、主語があってこれを受ける動詞があってということから文ができるんじゃなくて、最初に不定詞があって、それに主語がくっつくんだよというのである。
cover
ドイツ語とのつきあい方
 同じじゃんと思う人がいるかもしれないが、そうではない。
 例えば、"lernen"があるとする。日本人の英語感的に考えると、まず、「私」があって、「学ぶ」、「何を」ということで、"Ich"があって、"lerne"があって、"Deutsch"が来るので、"Ich lerne Deutsch"となる、かのように思う。
 ところがこの本の考えでは、不定詞で"lernen"がある。「学ぶ」ということがある。で、学ぶんだから、「何を学ぶ」んだということで、"Deutsch lernen"という不定詞句ができあがる。
 それにあとから、主語、たとえば、"Ich"がつくっついて、これに合わせて、動詞前方に移動して、形を整えて、"Ich lerne Deutsch"となるというのだ。
 説明としては不合理のようだが、同書はこれで他についても説明していって、一定の合理性がある。
 このレベルではものの見方の差みたいなもんだし、これって、いわゆる"S->NP + VP"という考え方とは異なるように見えるけど、"+"は時間的な展開ではないから、VPがあってSPが付くと理解してもよいい。それはそれとして。
 ここで、あれれと思ったのは、この不定詞からの考えだと、"Deutsch lernen"があるわけで、OV構造からSOVができて、そこから表面的にはSVOのように考えていく。
 すると、ドイツ語というのは、SOV言語なのか?
 こうした考えが出てくるのは、いわゆる「V2語順」(二番目の句が常に動詞または助動詞)の問題も関連している。
 これも調べたらウィキペディアにあったのだが、"ich dieses Buch lese."があって、動詞が前に出て、"lese ich dieses Buch"となり、そのあと、"Ich"が話題化されて、"Ich lese dieses Buch."になる。
 そんな関連から調べるといろいろな議論があることもわかったが、気になったのは、「話題化」。これは「主題化」と考えるほうがよいのではないか、つまり、TC(Topic-Comment)化ではないかと。そう考えたのは、中国語の場合の主語と言われているのも、基本「主題」のように見えるし、日本語も同じ。「主題化」というのは、学習者のけっこう文法に重要な要素だよな。
 そう考えると、ドイツ語の場合、主題化に動詞が引っ張られてSVOのように見えるということなのではないだろうか。
 もちろん、ドイツ語を学ぶ上でそんなこと知らなくてもいい。
 ついでに、今日のレッスンに出て来た、"Ich möchte heute Abend mit Ihnen essen."
 これなんかでも、時間の副詞句が第二動詞の前方に来る。中国語なんかでも同じ。ドイツ語の場合、mit Ihnen が場所なんで、ポール・ノーブルがTIP(Time Infront of Place)ルールとしていたが、これらの副詞句の位置が、たぶん、OV構造と密接な関連があるのだろう。
cover
クラーク先生の英語勉強革命
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 難しく考えずに、英語とは違うルールだと考えてみれば、中国語ほど難しくはないのだが、微妙に英語の発想とぶつかる。
 逆にいうと、フランス語の場合、文法の意識はけっこう英語と同じで、そういえばグレゴリー・クラーク先生が、フランス語読んでいるときは、フランス語だと気がつかなかったという感覚に近い(参照)。

私が、四苦八苦して日本語の勉強に取り組んでいたころのことです。あるとき、知り合いの日本人から、フランス語の文章を英語に直してくれと頼まれました。そのとき、私はフランス語をフランス語だと意識しないで読んでいました。ちょっと変な英語が書いてあるなあ、そんな程度の感覚だったのです。日本語があまりにも難解な言語だったために、難易度レベル二程度のフランス語は、母国語のように思えてしまったということです。

 英語国民でフランス語をある程度学ぶと、そういう感じなんじゃないかな。
 結局、言語学的にはドイツ語はSOVの基底から生成というよりパラメーターの考えで整理できそう。そうした研究から、UG(普遍文法)というのの支援になるんではないかと思う。
 が、個人的にはUG自体にはもうさほど関心ないんで、語学学習者にとってこうした文法現象というのはどういうことなんだろうかと疑問に思う。
 
 

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