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2014.07.09

アフガニスタン情勢がかなり混迷

 予想外の事態ではないが、アフガニスタン情勢がかなり混迷してきたので、この時点で簡単に言及しておきたい。


近況をNHKのニュースから
 現状の最新ニュースをNHKから拾ってみる。簡素に要点がまとめられているのだが、率直に言って、これを聞いてどのくらい理解できるだろうか? 7月9日3時07分「アフガニスタン元外相「選挙勝者は自分」」(参照)より。


 アフガニスタンの大統領選挙は、暫定結果で次点となったアブドラ元外相が演説し「選挙の勝者は自分だ」と訴え、独自の政権を樹立する可能性も明らかにし、混乱が広がるおそれが懸念されています。
 アフガニスタンの大統領選挙は7日、決選投票の暫定結果が発表され、ガニ元財務相が1回目の投票でトップだった対立候補のアブドラ元外相を得票率で10ポイント以上の差を付けて上回りました。これを受けて、ガニ陣営や選挙管理委員会による大規模な不正があったと主張してきたアブドラ元外相は8日、首都カブールで演説し、「不正が行われた選挙の結果を受け入れることはできない。われわれが勝者だ」と訴えました。
 そのうえで独自の政権を樹立する可能性も明らかにし、「国が分裂しても誰も口を挟むことはできない。決定を行うために数日待ってほしい」と述べ、今後、数日のうちに重要な決定を行う考えを示しました。
 その一方で、アブドラ元外相は「国の分裂や内戦を望んでいるわけではない」とも述べて、支持者に対して冷静な対応を呼びかけています。
 アブドラ元外相としては、独自の政権の樹立も辞さない姿勢を示すことで最終的な選挙結果を発表する選挙管理委員会を強くけん制するねらいがあるとみられます。
 選挙管理委員会は、政府高官らによる不正があったことを認めていて、今後、不正を審査する委員会の判断などを経て最終的な選挙結果を発表しますが、両候補が共に結果を受け入れる可能性は現時点では低く、混乱が広がるおそれが懸念されています。

 このNHKニュースには関連ニュースのリンクがないので、文脈がわかりににくい。いちおう昨日には「アフガン大統領選 暫定結果発表」(参照)も報道されてはいるが。
 NHK側の全体的な解説では、比較的最近のものでは、4月時点の時論公論「アフガニスタン ポスト・カルザイ時代へ」(参照)があるが、以降目立った解説はない。


重要な3点の背景
 重要な背景が3点ある。
 (1) 13年に及ぶカルザイ大統領が引退し、後継者選びの大統領選挙が実施される。つまり、国家権力の移譲が行われると理解してよい。
 (2) 4月5日に大統領選挙が実施された。この選挙そのものの実施も危ぶまれていたが、1200万有権者の700万人が投票し、推定投票率60%に及んだ。これをどう見るかだが、予想外に多いと国際社会に受け止められた。前回は40%でカルザイ政権について国民は半ば諦めムードだったのと対照的でもあった。
 (3) 最大15万人が駐留した米国を含め国際部隊の大半が今年の年末までにアフガニスタンを撤退する(約1万人の米兵は残る)。米国オバマ政権としては、カルザイ政権後のアフガニスタン政権に軍事・警察力を完全に移譲する予定だが、このシナリオが狂う可能性も高い。


第1回の大統領選挙候補はどうか?
 4月5日のアフガニスタン大統領選挙が実施はどうだったか?
 有力候補は3人いた。

 (1) アブドラ元外相
 (2) ガニ元財務相
 (3) ラスール前外相

 国際社会としてはどの有力候補でも大きな問題はないとも見られていたが、各候補には前提な差があった。
 まずその前提の前提となるのは、アフガニスタンが多民族国家であり、タリバン以外にも内部に民族対立を抱えていることだ。このため、よくアフガニスタンの未来は国民の判断に委ねべきだということが、実際には空論になる。
 対立の大きなポイントは、国民の40%を締めるパシュトゥーン人とそれ以外ということ。
 パシュトゥーン人の票が割れなければ、パシュトゥーン人の代表がアフガニスタン大統領となると見てもよいが、ことは単純ではない。
 第一回の大統領選挙を民族の視点で見ると、パシュトゥーン人のガニ氏とラスール氏で割れることになった。また、アブドラ氏はパシュトゥン人とタジク人の双方の血をついでいるが、政治的にタジク人に近いとされている。またハザラ人の支持も得ている。
 カルザイ大統領は表明していないがラスール氏が意中の後継と見られていた。
 もう一点関連して、前回の大統領選挙では、ガニ氏はカルザイ大統領に次ぐ第2位となっていた。


第1回の大統領選挙結果はどうか?
 第1回の大統領選挙結果はこうなった(参照)。

 (1) アブドラ氏が得票率45%
 (2) ガニ氏が31.6%。
 (3) ラスール氏が11.4%

 過半数がなかったので、再度決選投票となった。
 この際、ラスール氏は撤退しアブドラ氏の支持を表明した。つまり、同じパシュトゥーン人候補ガニ氏を支持しなかった。アブドラ氏はタジク人を基盤としている。
 単純に考えると、これで決選投票はアブドラ氏が過半数を超えて優勢になるはずであった(参照)。


大統領選決選投票後の混乱
 決選投票も実施された。投票率も第一回とほぼ同じく、1200万人の有権者のうち700万人以上が投票に参加したとみられる。
 そこで暫定結果を含めその結果を待つばかりかというと、どうも大方の予想に反して、ガニ氏優勢の噂が立ち、これを受けて、アブドラ氏陣営は選挙不正で100万票の虚偽があったと主張。6月下旬にカブールで大規模でもが実施された。
 実際、選管も、政府高官らによる不正があったことを認めている。


決選投票の暫定発表
 アフガニスタンの独立選挙委員会は7月7日、大統領選決選投票の暫定結果を発表(参照)。

 (1) アブドラ氏、43.6%
 (2) ガニ氏、56%

 予想に反して、ガニ氏が過半数を超えた。
 通常の手順であれば、これでガニ氏が次期アフガニスタン大統領と予想されるのだが、ここで冒頭の最近のNHKニュースの状況となった。つまり、アブドラ氏がこの結果は不正だからこの状態を認めないというのである。
 加えて、同ニュースにあるようにアブドラ氏が「独自の政権を樹立する可能性も明らかに」した。
 ガニ氏もこのまま推移すれば政権を樹立することになり、アフガニスタンに二つの政府が生まれることになりかねない。
 すでにこの点を懸念してケリー米国務長官は二政府の状態を米国は認めないとの声明を出している(参照


もう一つの大きな要素、タリバン
 アフガニスタンの状況を見るうえで、もう一つの大きな要素がタリバンである。すでにタリバンは一部地域で、独自の司法を確立しつつある。
 タリバンはこうしたアフガニスタン政府の動向に活発に反対攻勢を強めていて、昨日の8日では、アフガニスタンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)を狙ったとみられる自爆テロで、兵士4人と市民10人が死亡した(参照)。
 ごく簡単にいえば、挙国政府が実現できないまま国際部隊が撤退すれば、アフガニスタンはカオスに戻るだろう。
 幸いこの懸念は、ガニ氏もアブドラ氏も認識していて、国際部隊の駐留継続を求めると見られている。


で、どうなるのか?
 決選投票の結果はまだ暫定発表であり、正式発表は調査の上、24日になるとされている(参照)。
 正式発表をもって一氏が敗北宣言をすれば、とりあえず、カルザイ政権的な状況が続く。だが、現状ではその方向性がまったく見えない。
 米国や国際社会に一定の圧力があれば、両氏の和解の上に新政権を樹立させることになるだろうが、その予想は弱い。
 意外と、今回の暫定発表は、そもそも無理な二派の調停のための演出だったとも考えらるので、そう悲劇的な事態ではないのかもしれない。裏面でいろいろな政治的な駆け引きが推進するプロセスであるかもしれない。
 結局のところどうなるだろうか。
 私としては、アフガニスタンはしばらく緩慢な無政府状態に陥るのではないかと見ている。


追記(7月13日)
 その後、ケリー米国務長官が11日カブールを訪問し、ガニ氏・アブドラ氏両陣営と協議し、両候補と共同で会見を開き、どのような結果でも連合政権となる見通しがたった。「アフガン 全票調査し連合政権へ」より。


アフガニスタン大統領選挙で不正があったとして一方の候補が暫定結果を拒んでいる問題で、アメリカが仲介した結果、候補の2人は、すべての票について調査を行ったあと、新たな大統領が対立候補と協力して事実上の連合政権を樹立することに合意しました。

 「今回の暫定発表は、そもそも無理な二派の調停のための演出だったとも考えらるので、そう悲劇的な事態ではないのかもしれない」という結果に一応落ち着いた。その意味で、「アフガニスタンはしばらく緩慢な無政府状態に陥るのではないかと見ている」は、外したかのようでもあるが、たぶん、実態はそうなるだろうとは思っている。
 

 
 

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