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2014.07.14

ベネッセ情報流出事件、雑感

 率直に言って、私にはベネッセ情報流出事件が皆目わからない。そんな人間が何か雑感を書いてもなんの意味もないようだが、逆に考えて、こんなふうに考えているという一例があってもよいのではないかと、書いてみる。結論から言うと、以下、大したことは書いてない。


なんでこれが事件なの?
 まず、なんでこれが事件なのか?が、よくわからない。
 いや、(1)個人情報が最大で2070万件という大規模な流出だったし、(2)その情報が「進研ゼミ」を使うベネッセで子供や保護者の氏名や住所や電話番号や性別や生年月日ということで、少子化時代のカネ儲けには重要な情報だった(数千万円の価値がある)、という二点は、わかる。
 つまり、「すげーなあ。そんな大量な情報が、ほいっと盗めちゃうんだ」という感想はもつ。厳密には「盗み」と言えるかまだ未定である。「流出」はしたわけだが。
 もう一つ加えると、(3)優良企業がこれかよ、つまり優良企業なイメージがあるベネッセであることと、その流出情報をほいほいと購入しちゃったのが優良企業的なイメージのあるジャストシステムだったこと。買うに当たって悪意はなかったんだよで済むのかというと法的には済むだろうけど、「おまえら、常識、どうなの?」感がある。


で? と立ち止まる
 で?
 と、ここで止まる。(1)自分がこの事件にどう関わっているかわからない(被害者ならプンスカしたいかもしれない)、(2)なんの犯罪なのかよくわからない、(3)どうしたらよいのかもわからない。
 わからーん。
 冷静に考えると、(1)おそらく私の情報は流出して私は迷惑を被っているはずだが鈍感なんでさほど気にしていない、(2)不正競争防止法が関係するだろう(東芝のデータを韓国企業に流出させた元東芝技術者も同法違反容疑で逮捕されたし)、(3)現行法と業界ルールが現状適正ではないんで、今後なんとか規制しないといけないなあ、ということである。
 まあ、雑感、以上であります、ということなのだが、極めて残尿感の強い一件である。


もにょんとした感じはどこから?
 うーむ。
 残尿感に絞ってみると(絞るか?)、これ、今回は件数が異常に多いように見えるけど、その点を除けば、常態。なんというか、現状、そこにルールはないよ的な無法な世界である。そういう無法な世界をそれなりに、しゃーないよなと私たちは見ていた。
 それが今回の件で、もうそうもいかないなよあ、このあたりで、しゃんとせい、という感じなんだろう。だからいかにも、残尿感なわけです。
 むしろ今回、ベネッセとジャストシステムがやらかしてくれたおかげで、こうしたろくでもない実態がどっかーんと可視になったというのはある。ありがとうと言いたいかというと、ないけど。
 無法な世界といえば、現在この件で、ベネッセの外部業者の派遣社員を警視庁が任意での事情聴取しているのだが(参照)、そのあたりも、わからないではないけど、ちょっともにょ~んとするところ。


企業がなんか麻痺している
 率直に言ってこの顧客情報っていうのはベネッセの死活決める情報だと思うのだが、それをほいとアウトソースしちゃうものかというあたりに、そもそもこの業態の経営わかってんの?という上から目線がぴかーんなわけです。形の上ではベネッセが被害者という構図ではあるんだけどね。
 さらにぴかぴかーんとすると、「派遣使っている外部業者使うなよ」とかちょっと言いたくなって、「まてよ、それを言ったら派遣差別かな」と目をきょろきょろさせてみたくなる。派遣だからコンプライアンスが守れないわけはないよな。
 とはいえ、コンプライアンスに見合うだけの重要な業態として派遣が雇われているという実態はないんじゃないかと思う。たぶん。社員が悪いことに手を染めたくなるインセンティブを削ぐくらいなことは、経営はすべき。
 このあたり、業界的にどう規制するか、あるいは経産省かな、お上がどういう基準を持つべきかは、よくわからない。
 現実問題としては、こうした個人情報を売買していた市場が存在していたし、そこでほいっと桃太郎トマトを買うみたいにジャストシステムが買うのに疑念もなかったというのも、まあ、そんなものだろう感がひしひしとある。やばくね?とか思わなかったんだろう。なんかが、麻痺してんだよなという感じはする。


私たちもなんか麻痺している
 ちなみに何が麻痺しているかという点でいうと、個人情報というものへの感性もあるだろうと思う。
 そのせいで、欧州でこれがどんだけ市民の癇に障っているかという状況はあまり日本では報道されていない(参照)。
 文化が違う?
 いちおう個人情報流用には同意を得る……オプトイン・オプトアウトというのがあって、迷惑メール問題でもいろいろ騒いだ。あれなんだが、あれで解決しましたか? してないよね。
 今回の件も、「こいつが悪だ」みたいのがマスコミ的にツルされて、世間がガス抜きされたら、また、まひまひな状態は続くんじゃないだろうか。
 もちろん、それじゃ日本の産業が成り立たないんで官僚さんはお仕事するだろうが、そのあたりも全体としてみると、麻痺の構図の一環なわけですよね。
 言うまでもないけど、この問題、市民一人一人が自分のプライバシーに自覚をもって対処していくべきな的な結論って、江戸時代に戻ろうみたいなどっかの先生の空論みたいで、あ・り・え・な・い・よ。
 余談だけど、アプリとかサービスを使うときに、「同意しますか」と聞いてくる、あれ、なんとかならんのか。半分同意するから、半分使わせろと思うのだけど。


空しい正論をこいてみると
 空しい正論をいうと、こうした問題に敏感なEFF(電子フロンティア財団)みたいな政治団体があって、プライバシーレポートとか出してくれるといいんじゃないかと思う。こんなの(参照)。
 これって企業にけっこうなプレッシャーになって2013年と2014年ではけっこうな違いが出た。
 日本もEFFみたいな団体があるらしいんだが、よく知らない。余談だけど、EFFとはむかーしちょっと関連があったんだけどね。
 集団訴訟みたいのはどうかなと思うけど、無理かなとも思う(参照)。
 あと、正論じゃなくてちょっとした思いつきなんだけど、市民の一定数が意図的に偽のプライバシー情報を流して、それを使ってたまに名簿業者を締め上げるとかいうのはどうなんでしょうかね。今回のベネッセの件でも癖のある登録からルートが発覚したみたいだし。
 
 

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