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2014.07.15

「3Dプリンターわいせつデータをメール頒布」逮捕、雑感

 昨日に続いて、もにょーんとした話題。これも皆目わからない話題だなあと思うが、書いてみるかな。ちなみに、昨日この修辞を使ったら、「皆目わからない」のは、ご年配だからじゃないだろうか」と言われてしまったよ。まったくね、年じゃでな、っていう話は、たぶん今日公開するcakesの開高健についての記事のほうで書いたんで、じゃ、こっちはこっちで。
 話題はあれです。まず、ニュースを拾っておこうと、それにはNHKが無難だなと思ったけど、NHKで見つからなかった。なかったっけかな。
 代わりに比較的早い時期と思われるニュースとして毎日新聞「3Dプリンター:わいせつデータをメール頒布 警視庁逮捕」(参照)を拾っておく。


毎日新聞 2014年07月14日 11時37分(最終更新 07月14日 12時13分)
 3D(三次元)プリンターを使い、女性器を造形するためのデータを頒布したとして、警視庁保安課は14日、自称芸術家、五十嵐恵容疑者(42)=東京都世田谷区野毛2=をわいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕したと発表した。「わいせつ物とは思わない」と容疑を否認しているが、同課は全国の30人以上にデータを送ったとみている。五十嵐容疑者は「ろくでなし子」の名前で、女性器をテーマにした創作活動で有名。
 逮捕容疑は今年3月20日、香川県の会社員男性(30)ら不特定多数に、3Dプリンターで出力すると、女性器の造形物ができるデータをメールで送信したとしている。
 同課によると、五十嵐容疑者は女性器をかたどった小型ボートを制作するためネット上で寄付を呼びかけ、寄付をした人にデータを配ったとみられる。【林奈緒美】

 最初このニュースに触れたとき、その記事で言うところの「自称芸術家」さん、知らないなあと思って、ちょっと活動を見た。面白そうには思えた。
 面白そう、というのは、「[書評]絶頂美術館(西岡文彦): 極東ブログ」(参照)で言及したクールベ (Gustave Courbet)の「世界の起源(Origine du monde)」(参照)の前で、5月29日にご開帳した女性芸術家デボラ・デ・ロベルティズ(Deborah De Robertis)の芸術活動が国際的に評価されていたという話題があったからだ。フィガロは彼女の«Je veux mettre à nu tous les regards»という主張のインタビューも取り上げていた(参照)。
 草間彌生やアラキーもこうしたインパクトのあるパフォーマンスをしていたけど、最近の日本ではそういうの見かけないなあ、日本のアートも元気ないなあと思っていた(あ、そうでもないか)。
 なので、最近の日本でもそうした活動が出て来たかなとちょっと思ったわけである。
 こうしたアートではすでにスイス人の女性芸術家ミロ・モア(Milo Moiré)が有名である。ミロ・モアは出産パフォーマンスみたいなのもやっていてけっこう強烈。彼女はドイツ語圏らしく、シュピーゲルなんかでも取り上げていた。
 アートのコンセプトとしては「The Script System」ということで、たしかになあというインパクトはある。

These everyday blindness I wanted to break through my performance. The Invisible (Invisible or become) make visible distribute such disorders as spores for a liberating thought.

こうした日々の盲目性を私はパフォーマンスによって壊したいのです。不可視性(あるいは不可視になったもの)を可視にする不調和が、思考の自由のための胞子となるのです。

 ここまでくると、艾未未みたいにアートだなあという感じ。

 さて今回の話題だが、日本のネット的にはこんなふうに展開していた。RBB「電磁的記録頒布 : 女性器はわいせつ物か……ろくでなし子の逮捕に賛否」(参照)より。


 自身の女性器を型どりデコレーションしたアート作品「デコまん」で知られる同容疑者。タブーを取り扱うその作品には常に賛否がつきまとうが、同容疑者の活動に賛同する著作家でアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」の運営責任者である北原みのりさんは、今回の逮捕について「3Dプリンターで外性器をスキャンしてデータ化したことが、まるで銃をつくったかのような騒ぎです。猥褻か猥褻でないかの、終わらなき不毛な闘い、始まってしまった」と訴えた。
 また、同容疑者の逮捕を不当だとする支援者の間ではすでに即時釈放を求める署名運動も開始されている。署名サイト「change.org」で開始された署名運動の発信者は、五十嵐恵容疑者の作品について「ろくでなし子さんは性的タブーに挑むという趣旨でご活動なさっていますので、彼女の作品は性的搾取や嫌がらせを目的とした『わいせつ物』とは異なります」と違法性はないと訴えている。

 まあ、いいんだけど。ああ、日本的だなあと思った。
 ブログなんで自分の雑感を簡単に書きますね。
 まずこれ、報道から逮捕理由を見てもわかるけど、「わいせつ電磁的記録頒布容疑」なんですよね。
 ネット的に「わいせつ」に反応しちゃうのもわかるのだけど、ポイントは「電磁的記録頒布容疑」のほうで、「頒布」という日本語がわかりにくい若年の人もいるかもしれないけど「売っちゃった」ということです。
 なので、まず問われるのは「売っちゃった」?という点。
 先の毎日新聞の報道だとそのあたりがちょっとわかりづらいけど、「容疑者は女性器をかたどった小型ボートを制作するためネット上で寄付を呼びかけ、寄付をした人にデータを配ったとみられる」というのが、「売っちゃった」というスキームだったか、ということ。


追記:刑法175条「わいせつ物頒布等の罪」の「頒布」では、有償・無償を問わないので、ここは間違いでした。

 その上で、次に、それって「わいせつ」という表現行為の問題になるわけです。
 で、この法律が「電磁的記録」ということは、別段「3D(三次元)プリンター」を特定していないわけで、話をわかりやすくすると、同じことを「2D(二次元)プリンター」でやったら、どうなの?ということ。
 つまり、「ファンド・レイジングです、ご賛同いただける方には、私の女性器の写真を送ります」というのを、どう捉えるかということ。
 私の印象だと、それはダメなんじゃね、ということ。
 ただ、そこで逮捕かよ、というのは、こうした問題(3Dわいせつ造形の頒布)を見越した警察の脅しなんだろうなとは思うんで、やりすぎだよ、とは思う。
 で、その上でさらに日本的だなあと思うのは、「わいせつ」と言われてもいいじゃんと思う。
 デボラ・デ・ロベルティズもミロ・モアもそこを問いかけている。だからその行為が芸術なんで、そこにインパクトがなければ芸術じゃない。艾未未も中国政府を怒らせてこそ芸術なわけです。
 当局を擁護する気はさらさらないけど、それまで五十嵐さんのやってきた活動について当局が黙認していたのは、いわゆる体制的な芸術の範疇におさまっていて、怒っていなかった。
 あと、俺、ご年配だから知っているけど、日本でもむかーしストリーキングというのがあって、というか今でもあるけど、けっこうお手軽。脱いだらアートになるってもんじゃないということで、つまり、そこでアート・センスが問われる。
 パフォーマンスから上手に衝撃をうまく出せて、当局や常識的な市民を一部、かんかんに怒らせて、一部、それによって得られる思考・感覚の自由や新しい獲得に対して喝采があってこそアートなわけですよ。
 私?
 デボラ・デ・ロベルティズもミロ・モアにも喝采。

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コメント

日本的ってのはむしろ、一般市民にそういう自由な思考を与えるような行為を管理者が善しとしない傾向が現れたという事なんじゃねえのかな・・・

俺は逆に、この日本的な(ゆるい)管理傾向は優れているし、維持すべきと思う。

なぜなら、このような自由な思考を簡単に他人に与えられて感化されてしまうような一般人は、99㌫以上所詮まがいものの自由、というよりはサヨク的ヒステリーに支配されて、その属性を操る悪意の支配者に略取されるだけに思うから。

ペック氏が平嘘の中で自由の定義を語っていたじゃん。あんなのを平時からできる人間が、この先1000年内に半分以上になるかといえば、無理だろ?っていうか、こういうのこそナルシスの喚起に見えるのだが。商業的ヒステリーによる被害者を増やすぐらいだったら、まがいものの自由を売り物にする人間を処分する方が効率がいいと考えるのはそれなりに理のある事だと思う

投稿: rabi | 2014.07.15 12:35

脱法ハーブが広がっているように、脱法アートというか、もっとレベルが低いものも広がっていて。逮捕の実数も急激に伸びているみたい。脱法ビジネスだよね。

つまり、合法と違法の間の脱法ゾーンが拡大しているから、取り締まる側は苦慮した結果なんじゃないかな。

アメリカなら、脱法行為は、恥ずかしいこと、もっと言えば神の教えに反することで、自省しているみたいだけど、日本だと、脱法バンザイの人がいて。

びっくりしたのは、脱法バンザイのまま、アメリカへいけば、日本で捕まらないし、アメリカも捕まえるわけがないって、めちゃくちゃで。アメリカじゃぁ、脱法で捕まっても報道しないだけでさ。例えば、相手がノーって拒否しているのに、やめないでついていくだけでも、捕まるみたいなのに。脱法ビジネスであっても、観光ピザでビジネスしたら、違法なのに。

結局は、日本の心が乱れているんだろうな。幸運から見放されるだけだと思う。ま、政治家も、どうどうと法をつくってから正義を主張するのでなく、違法ではない脱法という手法をとってるからね。脱法じゃ、日本の運命は傾くのに、どんなに美しくなっても。どっちかというと、泥より蓮は出でるの方が、日本らしさなのに。蓮の絵ばかり見せられてもね・・・。泥をかぶらない政治家ってなさけないよね。

投稿: | 2014.07.16 05:58

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