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2014.06.15

そして女児殺害事件と遠隔操作事件の報道は途絶えた

 たぶんこんな疑問を持っている人は少ないと思うが、私は、栃木女児殺害事件とPC遠隔操作事件の報道がどのように推移していくか、この間、見つめていた。そして、どうやら、この二事件の報道は途絶えたかに見える。理由は難しくない。他の話題が生まれているし、この件では新しいネタが投下されないからだろう。私は違和感をもっている。
 私の読み落としかもしれないが、女児殺害事件について最新の主要な週刊誌で見かけることがなかったのも違和感を強くした。週刊誌の読者層がすでにこの話題に関心をもっていないという理由も当然あるだろうが、その統制されたような沈黙に奇妙な印象を受けている。少なくとも、この事件には、どうやら確たる証拠もなく、冤罪事件と同じ構図があるのにそのことへの言及すらない。
 ネットから見渡せる範囲が主になるが、その他の報道でも見かけなくなった。だが、その言わば消灯とも言える前、この事態の前に、逮捕後一週間目に当たる10日、東京新聞「「自信の逮捕」乏しい物証 今市女児殺害 容疑者逮捕1週間」(参照)に、ようやくと言えるが、この問題の構図への疑問が書かれていた。


 栃木県今市市(現日光市)の小学一年、吉田有希ちゃん=当時(7つ)=を殺害したとして、殺人の疑いで鹿沼市の無職勝又拓哉容疑者(32)が逮捕されてから十日で一週間。栃木、茨城両県警の合同捜査本部は「自信を持って逮捕するに至った」と強調したが、凶器など犯行を裏付ける直接的な物証には乏しい。殺害現場も特定できないなど、未解明な点も残る。

 捜査本部や捜査関係者によると、勝又容疑者は「一人で下校途中の子を、無理やり車に乗せて連れ去った」と供述。「自宅に連れていった後、別の場所で殺害した」などと説明したとされるが、肝心の殺害場所は曖昧なままだ。
 物証となる有希ちゃんのランドセルや衣服は「処分した」、凶器の刃物は「殺害後、遺棄現場までの途中の山中で捨てた」と話しているとされ、いずれも見つかっていない。
 勝又容疑者の自宅のパソコンには、有希ちゃんとみられる画像があったとされる。しかし、画像はインターネットで取り込むこともできる。
 事件をめぐっては、現場に残されたDNAが捜査幹部のものと判明したり、不審車両のイラストが発生二年後になって公表されるなど、捜査の不備が指摘された。
 自供に頼るだけでなく、客観的な裏付けのある証拠に基づき、犯行状況や動機を解明することが求められる。


 この記事は10日のものだが、その後、その疑問について私が見た範囲ではなんら進展はないようだ。
 茨城両県警の合同捜査本部は「自信を持って逮捕するに至った」と強調したというが、それを市民はどう受け止めてよいのか、宙ぶらりんの状態になり、そして報道も途絶えつつある。
 11日の読売新聞「勝又容疑者の供述あいまい…殺害場所特定できず」(参照)では、供述が二転三転している様子が描かれていた。

 勝又容疑者は逮捕直後、捜査本部の調べに対し、「茨城の山中で殺した」と供述。9日に勝又容疑者を立ち会わせ、同市の山林で現場検証を行ったが、殺害場所や時間の特定に至らなかった。ここ数日の取り調べで、勝又容疑者は供述の矛盾点を追及されると黙ったり、「言いたくない」と答えたりしているという。

 警察側にはおそらく焦りがあるのだろうが、報道がない現状、わからない。ただ、警察が現状、容疑者の自白に頼っていることの弱みは理解しているらしく、率先して可視化的に調べは進められているようだ。10日の時事「乏しい物証、動機解明急ぐ=取り調べ、全面録画も—逮捕から1週間・栃木女児殺害」(参照)では録画が強調されている。

◇全過程を録音録画
 捜査本部は取り調べの全過程を録音録画している。直接裏付ける物証が乏しく、供述が最大のカギを握るためだ。8年半前の記憶に基づく供述は曖昧な部分もあり、別の捜査幹部は「裁判で任意性の争いを避けられ、否認に転じても有力な証拠になる」と説明する。 

 推測なのだが、物的証拠が出てくる可能性はもうほぼ絶望的なのではないだろうか。そして、これまで報道されてきた逮捕にまつわる理由付けは、どうも根拠としては成立せず、報道側も誘導的な立場にあったことに今頃気まずい思いをしているのではないだろうか。
 事件報道の混乱した推移を追っていて私が思うのは、容疑者の記憶がすでに曖昧なのではないかということだ。嘘をついているというより、事件後の時関係から現実記憶が歪んでいるのではないだろうか。
 いずれにしても、このままこの冤罪と同構造の異常な状態のまま報道が立ち消えていくことに、ある恐怖のようなものを感じている。
 PC遠隔操作事件の報道も途絶えたようだ。
 この事件はすでに解決したから途絶えてもよさそうにも思うが、気になるのは、それまで被告を擁護して、被告の告白があってからも、今後も事実の解明を見つめて行きたいとした人たちからの声もほとんど途絶えたように見えることだ。
 非難にとらないで欲しいのだが、精力的にこの事件を追っていた岩上安身さんのサイトでは「【特集】PC遠隔操作事件」(参照)だが、被告の告白まで精力的にアーティクルが書かれ、また今後の展開も次のように約束されていた。

※この特集ページは、5月20日午前に片山祐輔被告が一連の事件への関与を認めるより前に取材したものをまとめたものです。IWJは、今後の展開についても引き続き取材を継続します。

 該当特集の枠外で「2014/05/30 片山被告、遠隔操作のトリックを暴露「まだ見つかってないサーバーが」 ~PC遠隔操作事件 第10回公判後の記者会見」(参照)などで記事が書かれているので、その後の継続取材は理解できるが、そろそろ1か月近くが経過したので、特集記事としても、その後の「展開についても引き続き取材」が読める時期ではないかと期待している。次回公判が20日なのでそれを待ってということかもしれない。それでもその際は、5月22日の第九回公判以降も含めて記事にしていただけたらと願っている。
 第九回公判については随分報道されたようだが、改めて見直すと、心にひっかかることがある。ニッカンスポーツ「片山祐輔被告、保釈取り消し後初公判」(参照)より。

被告人「今まで多くの人をだましてしました。まぁ...まず、脅迫の対象にした方、誤認逮捕の方々に対して謝罪したいです。あと、弁護士の先生や検察官や裁判長、支援してくれた方々、家族に対しても裏切りました。加えて、届いたメールにもひどいことを書いてしまいました。その中で支援してくれた女性ジャーナリスト、裁判長の名前をあげて脅迫したのは、まさか公判中に片山がそんなことを書くはずがないだろうと思わせるためでした。すべての人に申し訳ないと謝罪したいです」
と、述べると、弁護人が「どうも申し訳ありません」と付け加えて質問終了です。これで閉廷かと思ったら、
検察官「じゃあ、こちらもちょっとだけ」
と、検察官からも質問です。

検察官「全部やってない、ハメられたと主張してたのに、すべて認めようと思ったのは何故なんですか?」
被告人「前回の(真犯人を名乗る)メールが自作自演だとバレて、言い逃れることができないので...、あれが出て、3つの選択肢がありました。シラを切りとおすこと、すべて認めること、死ぬこと。1分で死ぬことを考えました」
検察官「シラを切ろうとは思わなかったんですか?」
被告人「河川敷にケータイ電話を埋めたとき、指紋が残っているかは確認してなかったんですけど、DNAとか証拠が出てくるだろうと思いました。まさか、(警察が)そこまでするとは考えてなかったので、シラを切るのは無理だと思いました」
ここで検察官が質問を終えて着席すると、弁護人が立ち上がって、
弁護人「追加で1点だけ。メールはともかく、本件全部を認めたのは何故なんですか?」
被告人「本文の内容で、onigoroshiのメールアドレスにアクセスしたと書いてあって、実際にログインしている表記がありまして、真犯人でないとパスワードを知りませんので...。そこさえなければ、有罪になるのが怖くてメールは送ったけど、本件はやってないと言ってたかもしれません」
と、述べて質問はすべて終了。

 こうなってくると、被告人の発言をどこまで本当のこととして扱うかも重要になってくるよなぁ。この日だけで傍聴席を11回も見回していつもの違って落ち着きもなかったし。


 被告の告白関連時の報道にさらに加えるべき新事実はないかのようだが、気になったのは、「追加で1点だけ」として弁護人が加えたのはなぜなのだろうか?ということだった。
 弁護人が追加しなければ、「まさか、(警察が)そこまでするとは考えてなかったので、シラを切るのは無理だ」ということで告白にいたることになったが、この追加によって、それが事実上否定されることになる。告白の理由は、「onigoroshiのメールアドレスにアクセスした」という自分のミスだとしており、つまり、その自分のミスがなければ、「本件はやってないと言ってたかもしれません」としている。
 弁護人の意図としては、この事件を、警察側の執拗な追求が実を結んだというより、被告の失敗が自業自得として告白にいたったという話にしたいように読める。それがどのように弁護になるのかが、この時点では私にはよくわからなかった。
 その後、直接的にはこの事件とは関係ないのだが、気になる情報をネットで見かけた。結論から先に言うと、ネットによるありがちなデマにすぎないだが、「片山祐輔「自殺未遂したのは嘘。本当はずっとホテルにいた」」という掲示板記事を見かけた。デマであることは明白である。公判日数と整合しないことや、リンク先アドレスがAFPであることから偽記事であることは明白で、ネットユーザーが釣られたわけだが、しかし、ふと考えてみると、「1分で死ぬことを考えました」という公判の被告の証言もなんら確証的なものではないことに気がつく。先の公判傍聴記に「こうなってくると、被告人の発言をどこまで本当のこととして扱うかも重要になってくるよなぁ。」というのは共感できる。
 何を言いたいかというと、被告は自分のそれまでの虚偽を告白したのだから、これから言うことが正しい、という保証は何もないのだということである。事件の核心についてすべて認めたのだから、今後は真人間に戻って正しいことを言う、という推定はまったく根拠がない。
 弁護側はこの点を織り込んでいるから、先のような追加質問になったのではないだろうか。つまり、被告の嘘が混じり込む可能性の多い推定はできるだけ避けるようにして、弁護のロジックが今後作られていくのだろう。たしかに、今後、この裁判で弁護側はどういう弁護のロジックを作っていくのだろうか?という点は興味深い。
 
 

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コメント

社会の根本、国が機能しなくなってる。。
基本的人権を保証するはずの国家の機能、裁判・警察、行政、医療、、、、どうして?

ここに焦点を当てれば、多くの事件の答えが導き出せるはずなのに、、
持って回ったまどろっこしい作り出した冤罪事件やドラマ事件で
実際に展開されてるほろーストの実態をごまかそうとしている??

テレビではまるで、上記がしっかり機能してるかのように思い込まされる刑事ドラマや政治ドラマが流されてる。。

これらが、無線報道、無線で電話通信もパソnetも可能になってるという実は目や手で確認できない媒体でコントロールされてるという環境で、
つまり、、身内を手先に使った冤罪事件が横行しているという裏返しではないか?
家族愛と信頼を悪用し、手先にするには、洗脳する薬物や訓練期間が必要になる。。

S55に私学歯科大に入学し、阪神大震災後には大ぴらに話題になるイジメで登校拒否となり、
福島区から北摂へ移転する前の放射線科教授が病院長時期の精神神経科で父と通院していたのが、どうも、、日記を書かされてるが、その日記が嫌に卑屈に屈折してるのに、へんに感じた。
どうも、、この時期に、父子は薬物だかの洗脳が始められたということではないだろうか??
チャプリンが真似た特徴に似た仁井氏が同志社女子中高に現れたのが、S44、校長になり、それまでの校風が正反対となり、高校からの入学者も変わった。。
その一人に、吉見さんという中華料理屋さんのお嬢さんがいて、
私の自宅の近く引っ越してきていた吉岡さんという美人の奥さんのことを叔母さんがいるといっていた。。
彼女たちが、実質、戦勝者だったのだろうか。
確かに阪神大震災以降、吉岡夫人の隣に、吉見さんというお家が引っ越してきている。。?
せまい町会の方はすっかり、世代だけでなく家族の構成まで、
変わってしまって、、似てはいるが、どうも?二枚舌?なのか。。?
前日とは正反対のことをいうそっくりさんにすり替わってるようにも疑われるようで。。
どうも戸籍や法務局の登記簿が関係してるのではと?調べると、、
阪神大震災前まで日本で使われていたはずのしっかりした薄いしなやかで、インクや墨がクッキリと鮮明な和紙ではない登記簿原本がすり替えられてしまっている。。
筆跡も、昭和期には高卒で楷書で間違えないで記録する書記専門の役所職員がいて、一日、その記録に従事していたはずが、
今、大阪の戸籍謄本を調べると、慌てて書きなぐったような資料が閲覧することになり、驚いてしまった。。
つまり、、登記も戸籍もすべて改竄されつつあるということで、、
実質的な国の乗っ取りが進んでる状態ではないか?

投稿: 尻尾曲がりのよしワン | 2014.06.19 07:51

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