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2014.05.21

日本人学生の問題解決能力って高いんじゃん

 OECDによる「生徒の学習到達度調査(PISA) 2012年問題解決能力調査」について、この4月に発表された当初、いくつかニュースで見たように記憶している。記憶を辿ると日本ではゆとり教育から脱した成果が見られたかという文脈で、米国では米国の教育は呆れるほど低いといった文脈だったかと思う。
 この手の調査は、通常アジア諸国、日本、韓国、シンガポールが上位に来るものなので、さして面白くもないものだと思っていた。強制的な詰め込み教育をすればテストの成績はあがるだろうが、それが人間に必要な学力と言えるかそもそも疑わしい、そう思っていたのである。どうも違うようだ。
 そう思ったのは、19日付けのフィナンシャルタイムズ記事「問題解決に優れている国は批判的思考法を促進する(Countries that excel at problem-solving encourage critical thinking)」(参照)という記事を見かけたからである。
 表題のように、ここで問われているのは、問題解決の能力であり、批判的思考法という学力である。こうした面では、日本は劣っていると日本国内的なイメージでは思われていたのだが、記事を読むとそうでもない。これは同記事の15歳の年齢で比較した問題解決能力の各国比較のグラフに端的に表れている。

 一位はシンガポール、二位は韓国。日本はそこから差を開けられて三位である。フィンランドはぐっと下がる。欧米はかなり低い。
 さすがシンガポール、さすが韓国、と言いたいところだが、国家規模を考えるとシンガポールはご愛敬だし、韓国は日本の半分ほど。すると日本の少年少女の能力はそれ自体が国際社会で国威と言っていいくらいのものがある。
 とはいえ、こうした問題解決や批判的思考法というのもいわゆる詰め込み教育と相関しているのだろうとはいえそうで、そうした言及も同記事にはあるのだが、どうも日本については、もうちょっと変わった点があるらしい。


But there were interesting exceptions to the rule. When Japanese students were compared with children in other countries of similar performance in maths, science and reading, the Japanese teenagers showed better problem-solving abilities.

しかしこの法則には興味深い例外があった。日本の学生を、数学・科学・読解力で同能力の他国学生と比較すると、日本の10代は比較的優れた問題解決能力を示していた。

This, the OECD suggested, might be explained by Japan’s focus on developing problem- solving skills through cross-curricular, student-led projects.

OECDの示唆では、これは、日本が、生徒主体の総合学習を通して問題解決能力を発達させているからかもしれないと説明されている。


 ほぉという印象を持った。本当なのかなという疑問もある。個人的に思ったのは、日本人の子どもはなにかとこぎれいで、思考もこぎれいなところがあり、それが問題解決の能力に重なっているんじゃないかということである。ま、ごく個人的な印象として。
 ところでこれって文科省とかに資料があるんじゃないかと探すとあった(参照PDF)。
 読んでいくとなかなか面白い。たとえば、よく貧富の差が学力差に反映するという議論が日本では盛んだが、問題解決能力ではさほどでもないらしい。

日本は、生徒の家庭の社会経済文化的水準と問題解決能力の得点との関係が弱く、かつ問題解決能力の平均点が高いことがわかる。つまり、日本は、家庭の経済状況や教育環境の違いが問題解決能力に影響する程度が小さく、生徒が問題解決能力を獲得する教育機会において、平等性の高い教育システムを築いていると言える。

 これはなかなかに含蓄深い。個人的な印象をいうと、これは学校システムというより日本の情報世界が本質的に持っている学習効果ではないだろうか。そう思うのは、ごく個人的な印象だが、高学歴と言われる人が日本だとさほど一般的な問題解決能力が高くないように見えるからだ。
 もう一つ気になったのは、問題解決能力の男女差で、日本にある特有の現象が見られることだ。ごく簡単にいうと、男女差が、男子優位に大きいのである。もっとも女子も全体的には高い能力を示しているのだが、他国と比べていると、どうにも奇妙な印象がある。この点について文科省の資料には記載されているが、問題としてのコメントは見られなかった。

 日本は、問題解決能力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの各分野において、男子が女子よりも得点が高い一方、読解力の分野において、女子が男子よりも得点が高く、それぞれ統計的な優位の差がある。OECD平均も同様の傾向が見られる。

 問題解決能力が数学的リテラシーと科学的リテラシーに相関しているならそれの結果とも言えないこともないが、日本にやや特異に見える現象は奇妙な印象が残った。
 以上を総合的に見ていくと、学力という点では、日本はほとんど問題ないようだ。
 ただ、それを言うなら、シンガポールや韓国のほうがさらに上ではないかというのがあるかと思う。シンガポールのような小国は例外として、韓国については、PIAAC(Programme for the International Assessment of Adult Competencies/ 国際成人力調査)(参照)という成人(16歳から65歳)の能力比較で見ると、各面で日本が韓国に優っている。将来的にこれが縮まってはいくだろうが。
 
 

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