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2014.04.07

なぜ関係詞が中国語にはないのだろうか?

 中国語の文法、特に統辞論が依然わからない。ただ、学習上は、文型を整理したものを暫定的に統辞論的に当てはめていけば、さしあたって問題はない。
 このことが基本的に奇妙なのは、文法がわからないというのはそれほど不思議なことではないことだ。私などは日本語のネイティブなのだが、日本語の文法が統辞論的にどうなっているのかよくわかっていない。おそらく日本語の場合、格指標が明示的なので、動詞による文への統辞的な支配が弱いのだろうとは思うので、あまり印欧語的な統辞論で考える必要はないのだろう。
 だが、中国語は日本語のような格指標はない。基本、動詞による文への統辞的な支配が強いように見える。動詞句(VP)の基本的な構造は、いわゆるSVOに(主語+動詞+目的語)なっている。日本のようにSOVではない。
 ところが学習していくと中国語は「動詞による文への統辞的な支配」というものではなく、動詞はどうも隣接する数語の支配程度であり、文への支配とは言いがたいようだ。
 具体例がないとわかりづらいと思うが、別の言い方をすると、動詞を中心した熟語が3文字か4文字が連鎖して句を形成し、これが句単位で意味論的な戦略で並んでいるような気がしてくる。印欧語的なS->NP+VP(文は名詞句と動詞句からなる)というより、VP+VP....->Sというように、熟語のボトムアップの言語なのではないだろうか? これに意味論的な機能語(時制や論理構造を示す)が加わって、文法のような構造を見せているだけなのではないか?
 まあ、このあたりは、まだよくわからないのだが、この考え方に惹かれるのは、どうも漢文というのはそのようにできていると言ってよさそうだからだ。漢文は書き言葉であって、自然言語のネイティブ直観が想定できないが、実際の普通話は、漢文のような公的な性質が普通話に出ているのではないか。
 とはいえ、中国語で副詞句(M, MP)の挙動を見ていると興味深い。SVO的な印欧語の場合、SVOMという構造になりやすい。特に場所や時間の副詞句の場合。少なくとも、印欧語だとSMVOやSVMOは、文法的なエラーとまではなくても違和感がある。中国語の場合は、「Basic Patterns of Chinese Grammar」(参照)に説明があるように、SVMO的に、Mが文末に来るのを逆に避けるようになっている。これはどうも意味論的な戦略からではなく、統辞論的な意味あいで文法臭い。MSVOはできる。
 これに関連して、関係詞節を考えた。SVO的な言語であれば、Vの支配が明確なので、後置的な関係詞・関係詞節が作りやすいのだが、ここも不思議なことに、中国語の場合、これがない。
 ちなみに現代日本語にもないのだが、これは、SOVの構造から、関係詞節があっても、Vに前置せざるを得ない、不利な基本構造だからではないだろうか。
 余談だが、この点、日本の古語だと似たような構造がある。


同じ帝、立田川の紅葉いとおもしろきをご覧じける日...

 この古文の関係詞的な「の」の用法を拡張すると、現代日本語に後置的な関係詞・関係詞節が追加できないでもない。そういえば、高校生のとき、冗談で関係節の英文を日本の古文に訳して遊んでいたことがあった。
 ところで、この「の」を前置すると次のような構造になる。古文の文法をも逸脱はする。

同じ帝、紅葉いとおもしろきの立田川をご覧じける日...

 これは古語でも非文だが、中国語の関係詞・関係詞節は「的」を用いてこうした前置の構造をしている。
 そこで一般的には中国語は「的」による関係詞節的な前置が長すぎると不自然になるとして、それ以上はあまり議論されない。文法の問題が意味論的な問題なのか語用なのか判然としない。
 だが、このあたり、どうもなにか文法が潜んでいるようで納得がいかないでいたのだが、先日、「中国語概論」(参照)を読んでいて、ちょっと気になる議論があった。
 次の二文を「汽车」でまとめるという場合である。実際上は、関係詞に似た構造になるはずである。

A:他把自已的汽车卖掉了
B:那辆汽车是去年才卖的。

 このようになるとされている。

他把那辆汽车卖掉了,去年才卖的。

 Bはいわゆる「是~的」文なので、最初から「的」でまとまっているのでわかりやすいといえばそうだが、すると、通常はこうなるはずである。

他把去年才卖的汽车卖掉了。

 ただ不自然な感じがしないでもない。
cover
中国語概論
 気になるのは、先の「他把那辆汽车卖掉了,去年才卖的。」は不自然ではないのか、というのがよくわからないことだ。同書には「追加式」とあるが倒置法的な表現なのだろうか。
 素直に見るかぎり、「那辆」が関係詞の機能をして、「,」後置の「的」文であたかも関係節が後置されているようだ。
 先の例文も「是~的」文の含みに、「去年才卖的汽车」があるはずだ。
 この構文の結合法を応用すると、中国語に印欧語的な関係詞節がかなり自由に導入できるはずなのだが、どうなのだろうか。
 
 

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