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2014.02.26

読みが難しかったウクライナ争乱

 ウクライナ争乱については読みが難しくなかなか書けなかった。まあ、私などが書いても毎度ながらいやなコメントを貰うくらいがオチだが、実のところ、2月20日以降、私の読みは外していた。そのあたりから少し書いてみたい。
 外したなあと思ったのは、21日時点の暫定的な和解でとりあえず政権崩壊は避けられるだろうと見ていたからだ。
 少し振り返る。21日AFP「ウクライナ政府、反政権側と「暫定的な和解」と発表」(参照)より。


【2月21日 AFP】ウクライナの首都キエフ(Kiev)で起きた反政権デモと機動隊の激しい衝突により多数の死者が出た前日から一夜明けた21日、同国のビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領は3か月に及んでいる反政権派との対立を終結させるために、両者間で暫定的な和解が成立したと発表した。
 欧州連合(EU)が確認したところによると、ヤヌコビッチ大統領と野党の指導者らは長時間に及んだ協議の末、21日に「一時的な」合意書に調印する見込み。旧ソ連からの独立以来、最悪の危機から脱出するための大きな一歩となることが期待される。


 前日20日には、キエフの独立広場(Independence Square)でのデモ隊と機動隊の衝突により、昨年11月にデモが始まって以来最悪の少なくとも60人が死亡した。警察はデモの参加者に対して実弾を発砲し、またデモ側の医療関係者によれば、政権側の狙撃手が建物の屋上からデモ隊を狙い撃ちしたという。
 この事態に国際社会が懸念の声を強める中、政権側と野党側の緊急協議を仲介するためにポーランド、ドイツ、フランスの3か国は外相を、ロシアは特使を派遣した。

 ウクライナを取り巻く関係国の結束がこれでできたのでこれで、とりあえずなんとかなるだろうと私は見ていた。
 今回のウクライナ騒動は18日に大きな転機があった。

 今回の事態は、ロシア寄りのヤヌコビッチ政権が昨年11月にEU加盟への前提となる連合協定の署名を見送ったために、怒った親EU派が抗議行動を開始したことが発端。抗議デモはこれまで1月下旬の一時期を除き、概して平和的だったが、今週18日に戦場さながらの騒乱へと豹変した。政権側は過去数日間の死者は77人と発表しているが、反政権側は20日の1日だけで60人以上が警官隊に撃たれて死亡したと主張している。21日には独立広場に2万人が集まり抗議した。
 抗議に参加したセルゲイ・ヤンチュコフさん(58)は「(和解の)ステップは我々が必要としていたものだが、これだけたくさんの血が流された後で、あまりに遅すぎると思う。これは人道に対する罪で、ヤヌコビッチ(大統領)はハーグ(の国際刑事裁判所)へ送られるべきだ」と語った。

 18日の大争乱が大きな転機だった。私はこれを関係国の強力でなんとか押さえ込めるだろうと見ていたわけである。
 この時点では、その動向が強いようでもあった。同じくAFPで22日「ウクライナ大統領と野党代表が合意文書に署名、露は署名せず」(参照)より。

【2月22日 AFP】反政権デモと警官隊の衝突で3日間におよそ100人の死者が出たウクライナで21日、ビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領と反政権派が、旧ソ連からの独立以降、最悪の危機の収束に向けて合意文書に署名した。


 合意文書は欧州連合(EU)の大国である独仏と、文化的にウクライナと関係が深いポーランドの3外相がEUを代表して2日間にわたって行った仲介でまとめられたもの。EUはウクライナ政府幹部らに対し、暴力行為に関わった責任があるとして、域内への渡航を禁止する制裁措置を発動している。

 ところがこの直後、大きな変化が起きる。
 反政権デモ隊によって首都キエフが掌握され、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領が首都キエフを出て、職権乱用罪で服役中のティモシェンコ元首相が釈放された。
 簡単に言えば、EUなどの合意が反政権デモ隊によって無視された形になった。合意に参加した反政府派はどうなっていたのか?
 そこが今回の争乱の、自分にとっては一種の謎であり、報道から未だに見えてこない。
 印象でしかないのだが、和平合意を崩す武装勢力がよほど大きな意味合いをもっていたのではないか。
 連想されるのは極右連合「右派セクター」である。毎日新聞1月31日「ウクライナ:極右連合「右派セクター」が第三勢力に」(参照)より。

【モスクワ真野森作】反政府デモが激化したウクライナで、極右連合「右派セクター」が第三の勢力として台頭してきた。今月19日、首都キエフでの治安部隊との衝突で、デモ隊側の反撃の中心となり、過激な「武闘派」として注目を集めると同時に、ヤヌコビッチ政権と交渉を重ねる野党指導者も批判し、独自の要求を掲げて、情勢を複雑にしている。
 ロシア通信によると、右派セクターは複数の極右団体の連合体として昨年末に登場した。ソ連崩壊後の1990年代に誕生した「ウクライナの愛国者」「ウクライナ国民会議」といった古参組織と、この数年に結成された「白いハンマー」など若者組織で構成。違法カジノの襲撃や取材記者への暴行で知られる組織も含まれ、反ユダヤ主義者や熱狂的なサッカーファンも加わっている。特定のリーダーはなく、集団指導体制をとる。


 同国の政治学者コルニロフ氏は、露有力紙「モスコフスキー・コムソモーレツ」に対し、「極右団体は今回のデモに当初から参加し、勢力を伸ばした。メンバーの戦闘訓練を行ってきたため、衝突にたけている」と語る。野党第3党の極右政党「自由」と一体の関係にあり、欧州的価値観を理想とする他の野党勢力や一般市民とは異なる民族主義的な国家像を目指しているという。

 この勢力が今回の争乱の転機をもたらしたということであれば、彼らの動きは、ウクライナの「一般市民とは異なる民族主義的な国家像を目指している」ことになり、俯瞰的な国際情勢の読みは今後も外れることになる。
 どうなのだろうか。この勢力の動向については、1月24日AFP「流血のウクライナ反政権デモ、過激化の裏に謎の右翼集団」(参照)が参考になる。

■親露でも親欧でもない新勢力
 「右セクター」はウクライナを「強い独立国」ととらえており、ロシアの影響を完全に排除したウクライナ国民による「人民の統治」の実現を目指している。同時に、野党主流派の掲げる欧州連合(EU)への加盟にも同意していない。
 「われわれ民族主義者は、祖国を占領する政権を革命的な方法で転覆しなければならない。それ以外の方法は存在しない」。AFPの取材に応じた「右セクター」指導者の1人、アンドリー・タラセンコ(Andriy Tarasenko)氏は、こう断言した。
 ごく最近までほとんど知られていなかったこの集団は、政権への効果的な対抗勢力になれなかったとして全野党を批判し、あらゆる野党勢力との協力を拒んでいる。
 ウクライナの既存の極右政党「自由(Freedom)」とも、その党首オレフ・チャフニボク(Oleg Tyagnybok)氏とも、全くつながりはない。11月以降のデモを率いてきた元ボクシング世界チャンピオンの野党指導者ビタリ・クリチコ(Vitali Klitschko)氏や、連合野党「祖国(Fatherland)」幹部のルセニー・ヤツェニュク(Arseniy Yatsenyuk)氏に対しても、拒否感をあらわにしている。
 「人々は抗議のために街頭に繰り出したのに、その間2か月にわたって舞台を占拠してきた野党指導者たちは、現状維持に全力を尽くしただけだ」とタラセンコ氏は非難した。19日の大規模集会では、クリチコ、ヤツェニュク、チャフニボクの3氏に、デモ参加者から中傷が浴びせられた。


■ネット通じて組織、「これは戦争だ」
 熱心なサッカーファンの集団をメンバーに含む「右セクター」は、SNS最大手フェイスブック(Facebook)を始めとするソーシャルネットワークを通じて運動を組織している。
 同連合は「ウクライナの伝統的なキリスト教と民族主義のイデオロギー」を原則に掲げる団体「トリズブ(Tryzub)」の分派だ。トリズブは、第2次世界大戦(World War II)中~1950年代に旧ソ連と戦った「ウクライナ蜂起軍(Ukrainian Insurgents Army、UPA)」の指導者、ステパン・バンデラ(Stepan Bandera)氏から影響を受けたと主張している。

 繰り返すことになるが、この勢力が今回の争乱にどれだけ関与していたのかが、よく読めない。
 ただ、私が当初想定していたように、いわゆる国際情勢に関心を持つ人々が、できるだけマクロ的に見てきた像とは異なる世界が突然出現したと言えるのではないか。
 補足すると、いわゆる国際情勢的な線でウクライナを見ていくと、大変化が発生する前までは、例えば、21日時点でのWSJ「ウクライナで何が起きているのか―理解のためのクイックガイド」(参照)や、同じく21日のAFP「ウクライナはなぜ炎上しているのか?」(参照)といった解説で事態が説明できたはずだ。しかし、これらの論説は現下の状況説明にはすでに弱い。もちろん俯瞰図は今後のウクライナや世界を考える上で重要な基礎知識ではあるが、今回の事態についていえば、私の予想と同様、読みの点で決定的に失敗していた。
 ともあれ、実際にこのように展開してしまったウクライナ情勢だが、今後をどう読んだらよいのか。
 私が修正した現在の状況認識は、手の施しようのないアノミーである。
 とにかく国家に収納される暴力が市街に露出している状態をなんとかできるかにかかっている。その方向が現状見えるのかというと、わからないとしか言えない。
 とはいえ、マクロ的な状況はそれなりに明確になっている。
 決定的なことは2つ。ウクライナはEUには入らない。そして、ロシアはウクライナを失うことは絶対にしない。
 この部分はブログらしく説明すべきなのだが、おそらく大方の識者の見解でもあるだろうから省略する。
 それに関連するのだが、ウクライナは分裂するか、という問題がある。東側のロシア寄りの住民がロシアに庇護を求めて、それをきっかけにロシアに編入される可能性はあるだろう。そうなるかまでは読み切れない。
 西側社会としては、ティモシェンコ元首相を5月の大統領選挙で支援してなんとか形だけはウクライナ統合持っていきたいところだろう。西側報道からはこの件で悪役に仕立てられがちなプーチンだが、メルケルと会談して所定の合意は取れているようにも見える。
 余談だが、報道という点では、ヤヌコビッチの悪政を暴く報道はロシア側から出ていることにご注意。これはロシアの今後の意向を踏まえた物語もあるだろう。
 
 

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コメント

私は極東ブログの海外時事ネタは読物としては好きです。
iraqの時みたいな素敵な地図入りだったりするとムッハー(*゚∀゚)=3。

とはいえ、海外時事ネタはある意味どこでも読めます。

極東ブログらしさで引き込まれるネタは、
やはり、外語・基教系だと思います。

詩編とかピンズラーの「やってみた」シリーズは
自分的には更にムッハー(*゚∀゚)=3でした。

英独は基本的に文法・単語・作文な自分で、
案の定中途半端ですが、自分にとっての
「実用」は会話ではなく、マニュアルやら資料を
読み抜けるかどうかでしたので、その意味では
これまでの人生で十二分役だってくれました。

ぶっちゃけ、会話なんて必要になった時、
「仮名ふり会話」で十分。と、思っていました。

今回は、ピンズラーに触発されて「それ」を
iPhoneのsiri嬢で発音添削として試しています
(返事は聴き取れませんが、友達いらないw)。
今後は、siri嬢の「ツンデレ」育成がテーマです。

ちなみに、ドイツ語の頃「r」音を滑らかに使う方法として
自分流で、「g」のつもりで撃っていました。
実際、海外の方が日本のアニメに訳を付けてうp
されている中で、日本側の歌詞の「g」音を
彼らは「r」音に聞き違えていたり、を見つけてムッハー(*゚∀゚)=3。

ここら辺も、極東ブログの以前の記事に
近いことが触れられていたりでムッハー(*゚∀゚)=3。ムッハー(*゚∀゚)=3。

いやなコメントがくるのは、多分、
時事ネタにからみつつ、意味ありげながら、
最後まで何か奥歯にはさまったようウダウダの時では?
だから、何やねん!的なあれです。
乙武氏事件の後の障害者が床屋に来た回とか。
最近は最初の一口で分かるので大丈夫ですw

でも、ブログですから徒然上等です。
気にしていたら商業サイトになってしまうと思います。
頑張ってください。っていうか、ありがとうございます。

投稿: 昨日な世界 | 2014.02.27 09:49

訂正です。
×:iraqの素敵な地図、ムッハー(*゚∀゚)=3。
◎:kurdの素敵な地図、ムッハー(*゚∀゚)=3。

シリア問題から西クルディスタン(Western Kurdistan)出現の可能性
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2012/07/western-kurdist.html

ちなみに、自分の極東ブログ暦は、この回からです。

クルドといえば、今回のウクライナも含めて
バザール帝国なんだとかそうです。知らなかった。
てっきり、プーチンんの天敵王子の仕業だと
思っていました。

ちなみに、コプトとかダマスカスとかも、ムッハー(*゚∀゚)=3。

投稿: 昨日な世界 | 2014.03.03 17:53

(また)読みがハズレたことを気にされてますがこのブログはここ数年どんどん的中率が暴落中ですよ
だから余計にグダグダ感でイラッとするのはありますね
その原因が同じようにここ数年で的中率を暴落させてる新聞記事に頼りきってる弊害なのか?
それを変えることが出来ないブログ主さまの加齢による思考硬化なのか?
有料じゃないから仕方ないと言えばそれまでなんですがね(笑)
老害だけにはならんで下さいウクライナの草莽が極右(?)なんて如何にもマスゴミの好みなレッテル貼りに踊らされてなんだかなぁ…そらハズしますわ

投稿: | 2014.03.09 00:48

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