迫る都知事選についての雑感
都知事選についてブログで何か書くことに、いやな感じがしていた。理由は、この手の話題をブログに意見を書くと、揶揄や罵倒、さらには表裏の嫌がらせがどっと増えるからだ。私は、石原慎太郎という政治家を支持したことなどはこれっぽっちもないが、彼へのバッシングが不当に思えたときは、ここは不当ですよという指摘はブログをしてきた。すると、私は石原支持ということにされた。日本の精神風土からしてそうなることはわかってはいたし、そうなる日本の精神風土のみたいなのが大嫌いだから自分の思うところを書いてきた。まあしかし、それでよかったのかというと自分が受けた不利益のほうがはるかに大きかった。
基本、政策にあまり関係がない選挙マター、しかも、右派・左派だけが問われるような選挙マターの構図に結局に落ちるような状況では、何を言っても意味がない。なので、私は今回の都知事選、およびそこに至る経緯はそんなものだろうと見ていたので、黙っていた。
しかし、猪瀬前都知事辞任の経緯と今回の都知事選は、「政策にあまり関係がない選挙マター」なのだろうか。どうだろう。私は、現在の東京都政に早急に問われている政策というのが見当たらない。もちろん、一部の人が声高に「反原発」を掲げていることは知っている。それが重要な政策だと考える人もいるだろう。私は都政という地方自治にそれが一義に問われているとは思えない。地方自治らしく、東京都民の生活が円滑に進むために諸政策が整備されればそれでいいと思うだけだ。北京や上海のように住民が呼吸困難になるような大気汚染になってほしくはない。地震対策や富士山噴火対策なども推進してほしい。そのための政策は整備してほしいといった課題である。逆に、都は東電と関連が深いが、実質その観点(東京都民の生活が円滑に進むために諸政策)で「反原発」の意味は限定されるだろうし、実際のところ、対立的に都政側から原発を推進するという政策の意義もさほど思いつかない。原発問題は国政マターということも大きいが、そうであってもあまり選択の余地はなく、今後も目立った政策というのもなく、だらだらと新しいエネルギーミックスの体制に移行するだけだろう。実はそのことに世界の側は驚いているのである(参照)。
政策という点でいうなら、「反原発」を含め、都政に求められていることはそれ自体はそう難しいことではないだろう。世界最大の都市として(諸観点から東京は世界最大の都市の都市と言えるだろう)求められる課題や、高齢化や流入民が増える課題についても問題自体はそう複雑ではない。無制限の資金が存在すれば理想はかなえられそうにも思えるし、実際都経済は比較的には貧弱というものでもない。つまり問題は、問題そのものより、それをどう具体的に政策に移すかという地方自治の政治技術にかかっている。都知事と都議会と、東京という大国にも比すべき行政機構の三者がどう運営されるか、そのなかで都知事の意味合いはどの程度あるのか。それに都民がどう関与できるのか。つまり、そういう行政の具体的な問題になる。
都知事に現実的に求められることは何だろうか? 私は、東京都の最大の問題はこの巨大な行政機構自体にあると思う。問題と呼ぶのは拙いかもしれない。本質的な必然的な弱点と言うべきかもしれない。この行政機構は過去の事例から見てもおそらく有能に作動しているが、その有能さを理解し、是認し、さらにそこに、東京都という地域らしさがどのように反映しているか。その人間的な了解というものがなければ、政治はただの機械になってしまう。そうではないための、ひとつの象徴が都知事というものだろう。であれば、都知事にはかなり巧緻な行政能力と、東京という地域らしさの気風の二つが求められる。
私は石原前都知事を支持したことはなかったと言ったし、実際、都民として彼に投票したことは一度もない。彼はキャリアのある国政の政治家ではあったが、彼自身が有能な行政能力を持っているかについて私は納得できなかった。が、その部分は彼のスタッフに補われていたようだし、東京という地域らしさの気風こそは彼はよく体現していた。多数の都民が彼を支持していることは理解できたし、それに寄り添うという意味でのみ、私は彼の都政は支持していた。
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舛添氏の政治家としての能力は国際的な水準で遜色がないとも思う。が、では、強く舛添氏を支持しているかというと、そうでもない。先にも述べたが、「東京都という地域らしさ」をこの人に感じることはほとんどない。都知事から東京弁が聞こえないとすれば、さみしく思うし、案外都民の大半がそう感じているだろう。
ネットを眺めると、宇都宮氏と田母神氏の支持者が多い。実は、私は知事は舛添さんでよいですよと、ちょっとツイッターで呟いてみた。そのあたりの支持者からどれだけ嫌がらせの反応があるかなと思ったのである。あまりなかった。一つには、私がネットの世界において影響力がないと見なされていることがあるだろう。もう一つは、この二者の支持者はその内部的な対立で消耗戦に入っているように思えたことだ。
こうした不毛な問題は菅直人元首相が期せずして体現していて面白い。彼のブログの9日の記事から(参照)。
自民党にとっては細川元総理の出馬が実現することは悪夢だろう。自民党が原発ゼロ候補に乗ることはできないからだ。また舛添氏も出馬に当たって原発政策をはっきりさせることを迫られる。
宇都宮さんは良質な候補者だが、社共の支持だけでは当選は難しい。
細川さんが立候補を決めれば原発ゼロを求める都民は、当選可能な細川さん応援に集中すべきだ。細川さんであれば、たとえ舛添さんが出馬しても、十分当選できる可能性があるからだ。
単純な話、自派に近い陣営が勝てるかどうかだけが彼の関心なのである。そして、おそらくこれがその派の内部的な消耗でもあるのだろう。
ついでなので、宇都宮健児氏についてだが、私は彼が都知事であってもよいだろうと思う。ああ、美濃部都政再現かとは思うし、その顛末も思う。あの顛末を知っている都民なら彼に投票しないかというと、青島都知事を出した都民である。大丈夫だぁ。志村けんでもよいのである。というか、志村けん氏が都知事でもよいのではないか。青島氏も志村氏も東京人らしい人である。
田母神俊雄氏については、熱烈な支持者がいて、これが細川・宇都宮と同じような構図で、田母神・舛添という消耗構図にあるようだ。よくわからない。が、ざっと見たところで、田母神氏が当選する見込みはなさそうだ。ドクター・中松氏やマック赤坂氏の部類ではないかと思う(両氏まだ名乗られていないご様子だが)。
現実的には、細川氏か舛添氏のどっちかが都知事になるだろう。私としては、細川氏のようなご高齢が政治家をされること自体反対だが、都民が選ぶなら、それでもよいだろう。
東京都知事選の公示日は23日なので、あと10日間は新しい顔が出てくる可能性がある。過去の経緯を見ると、ぎりぎりに出て来た人が都知事になるという事例も目立つ。宇都宮・細川、舛添・田母神という消耗プロセスが充分に進むと誰か出てくるのだろう。
誰に出てほしいかという人が思い当たらない。東国原英夫さん、あたりだろうか。それでもよいだろうなと思う。大前研一さんはどうかと思い出し年齢を見ると、71歳。2月に72歳。微妙なお年だ。もっとも彼が出てくることはないだろう(参照)。
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コメント
次の部分を強く支持します。
---quote---
日本の精神風土からしてそうなることはわかってはいたし、そうなる日本の精神風土のみたいなのが大嫌いだから自分の思うところを書いてきた。
---unquoet---
投稿: id774 | 2014.01.13 11:13
今回のエントリ、楽しく読みました。
ブログ・twitterなんかは、さまざまな人の意見を眺めるには
最高のメディアだと思うんですが、finalventさんが仰る
揶揄や罵倒、嫌がらせというのがあるだなんて聞くと、
世間の人々というのは狭量だと感じますが、多くの人はwebに
影響力があると信じているのかもしれませんね。
代々東京に生まれ育った家の者としては、finalventさんが言及されているように、
江戸東京弁の所謂"東京の人"にやってほしいと思っています。その裏には、
まつりごとというやつで、結局は誰でも同じという、やや脱力的な思いもありますが。
都政というのが何であるかを置き去りにして、争点なきところへ無理矢理に争点を
拵えるという、しかもそれが脱原発だなんて、よしてくれとも思います。
始めてコメントしました。
思えば随分前から極東ブログ読者です。twitterもフォローしています。
これからも楽しみにしています。
投稿: | 2014.01.13 14:27
ここまで田母神氏を押す意見が皆無で驚いた。党利党略とか勝ち馬に乗る等は関係ない。私は絶対に田母神氏に投票する。何となくとか誰でもよい等ではない。その理由を求められれば、原稿用紙10枚くらいは余裕で書ける。防災、テロ対策、インフラ整備、特亜人の犯罪・不法滞在の取り締まり、治安強化、自虐史観に基づいた歴史認識や教育の改革など、期待することは山ほどある。そして、この人以外に保守の愛国者はいない。
投稿: 都民 | 2014.01.13 18:29
都政と「脱原発」が無関係だという物言いが(主に保守派の方で)ネットでは目立ちますが、この物言いほど福島県や新潟県の方達に失礼な言い方はないでしょうね。
福島の原発は大電力消費地である東京都のために建設されていたわけですから、もし多くの都民が本気で「原発政策」と都民や都政は無関係だ、と思っているのだとしたら正直ゾッとします。そこまで都民の人たちがバカだとは私は思いませんが。「いや国の政策だから『東京都』は関係ない」と都民が思っているとしたら、それは自分達の判断を回避するための「逃げ」ですね。自分たちの電力消費の問題なのに、逃げちゃだめですよ。
猪瀬前都知事は、口でこそ「脱原発」と言っていませんが(おそらく無駄な敵を増やさないための知恵でしょう)、やっている政策は「脱原発」政策でした。彼の施策を見れば東京都としてやれる「脱原発」政策はかなりあるのだと感心させられます。結局「東電病院」が彼の命取りになったのは皮肉ですが。
この猪瀬路線を継承するか、否か、というのは結構都政にとって重要な課題のひとつだと思いますよ。
投稿: | 2014.01.13 20:09
貴殿にとってはどうでもいい事のように見えますね。でもねぇこれから2年半国政に刺激を与える選挙って、これくらいしかないんじゃないですか?ってことはこのままアベ自民がいろんな事推し進めて、何時かはあなたにも影響するってことじゃないのかなあ。因みに私は宇都宮氏支持です。だってさぁアベ止めなきゃ日本消えるよ。考えてみて見て下さいよ。米国茶会は「日本いらない。手を切ろう。」って言いだしているし、FRBの副総裁にイスラエル中央銀行総裁が就任するんですよ。ここまで露呈させるユダヤ資本や中国覇権に武力で対抗しようなんて愚かな考えじゃあ沈没するしかないでしょ。
投稿: hotaka43 | 2014.01.14 02:55
ブログやTwitterでの悪意ある反応にうんざりされている事と思いますが、私は貴ブログをいつも楽しみにしていますし、そういう人は決して少なくないと思います。
ポジティブな反応というのはなかなか表明されず、逆にネガティブな反応は強調して現れてしまうないものですが、ブログ、Twitterの愛読者としてはこれからも出来る範囲で活動して頂けると嬉しいです。いつも読んでるだけなので、改めて応援している表明をさせて頂きます。
投稿: 一読者 | 2014.01.14 12:24
政治家の人材不足ってこんなに深刻化していたのかと恐ろしく感じます。
立候補者を見ると、左右極端な思想やスタンドプレーが目立つひとばかりで、大きな組織を動かす実務能力があるとは思えません。
うがった見方をすれば、とりあえず一定数の集票能力を見せて、次の国政選挙出馬が本命の気がします。
大企業や大組織のトップ経験者とかいいと思うんですけど、そういう人にとって政治家って魅力無いんでしょうね・・・。
投稿: ゆきだるま | 2014.01.18 13:57
>>ゆきだるま氏
貴方にとって、厚生労働省や熊本県+日本国、航空自衛隊、日本弁護士連合会は大組織ではないのでしょうか?
有力とされる4候補は、上記の組織でトップを勤めた経験がありますが。
投稿: | 2014.01.22 23:30
やっぱり、田母神さんしかいない。
桝添に都合の悪いスレッド全部消されてる。
愛国心 vs 売国奴、守銭奴、在日、アカ、エロ禿げ。
投稿: 一都民 | 2014.01.29 19:45
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投稿: 原発ドカーン | 2014.02.03 18:43