ブログにけっこう穴を開けてしまった。理由はいくつかある。なんか書きたくないというのもある。選挙が近くなってきたブログの空気がいやだというのもある。私事が意外と忙しいというのもあるにはあるが(プリンを作ったりガトー・オ・ショコラを作ったりなども含めて)、そのわりにはだらっとツイッターはやっている。あと、ピンズラー方式のフランス語学習が最後の追い込みにかかっていて、けっこうこれを優先しているというのもある。まあ、そんなこんな、comme même。
いつもなら世界情勢のブリーフィングみたいなことも書くのだが、特に新しく特記することはないのではないか。
オバマ政権によるアフガニスタン政策は惨めに失敗しつつあるし、後世に業績を残そうとしたオバマケアは、公平に見れば成功したとも言ってもよいが、オバマ大統領の人気は下がり、阿呆な共和党という敵失のなかですら議会選挙では民主党は苦戦しそうだ。ただ、特に新味のある話でもない。
エジプト情勢については、自分が想定したよりひどい状態になってきたが、最初から軍のクーデターだったように思われるので大きな変化はないと言えばない。
シリア情勢についても以前書いた以上の展開はない。
そういえば、フィナンシャルタイムズが安倍首相を批判した社説を掲げていて、一部で話題になっていた。邦訳も出ている。「東シナ海で戦争へと向かう流れを止めるべきだ FT社説 」(参照)である。
新たな懸念の原因となったのは、今週の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)における安倍氏の発言だ。ジャーナリストたちとの会合で首相は、靖国参拝の正当性を主張しただけでなく、今の日本と中国の対立関係を、第1次世界大戦前の英独関係とはっきりと比較してみせたのだ。当時の欧州の二大列強は幅広い貿易関係をもつ間柄だったが、それでも武力衝突は避けられなかったのだと首相は述べ、今の中国と日本も「similar situation(似たような状況)」にあると付け足した。
安倍氏はただ単に今の対立関係がいかに深刻か、強調したかっただけかもしれない。もしそんな戦争が起きれば悲劇だし、たとえば中国政府と日本政府の間のホットライン設置など信頼醸成の方策が必要だとも首相は話した。しかし、1914年の欧州と現在の比較そのものを日本の総理大臣が容認したというのは、ぞっとするほど恐ろしいし、扇動的だ。両国をなんとかして瀬戸際からひきずり戻そうと、周りは必死にならざるを得ない。
フィナンシャルタイムズ社説は息巻いているが、問題の付け足し個所(similar situation)は安倍首相本人からのものではないらしい。
関連した朝日新聞「首相発言、欧米で波紋 日中関係、大戦前の英独例に説明」(
参照)より
安倍晋三首相が、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での各国メディア幹部らとの会合で日中関係を問われ、第1次世界大戦前の英独関係を引き合いに出して説明した。大戦を教訓に、衝突を避ける手段を構築すべきだという意味合いだったとみられるが、欧米メディアが「日中間の緊張が極度に高まっている」と受け止めて報道し、波紋が広がっている。
菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で「真意をしっかり伝えたい」と述べ、大使館を通じて発言の意図を海外メディアに説明する方針を明らかにした。
会合は22日に主要メディアの幹部ら約30人が出席して開かれた。安倍首相は質問に日本語で答え、通訳が英語で伝えた。
安倍首相は「日本と中国が尖閣諸島を巡り武力衝突する可能性はあるか」との質問に、「軍事衝突は両国にとって大変なダメージになると日中の指導者は理解している」と説明。そのうえで「偶発的に武力衝突が起こらないようにすることが重要だ。今年は第1次世界大戦から100年目。英国もドイツも経済的な依存度は高く最大の貿易相手国だったが、戦争は起こった。偶発的な事故が起こらないよう、コミュニケーション・チャンネル(通信経路)をつくることを申し入れた」と述べた。
この発言を通訳が伝える際、英独関係の説明に「我々は似た状況にあると思う(I think we are in the similar situation)」と付け加えた。首相が英独関係を持ちだした意味を補ったとみられる。この通訳は、日本の外務省が手配した外部の通訳だったという。
朝日新聞報道は微妙な形態をしているが、問題発言が通訳の追加であることは示している。
この事実関係だが、裏取りは共同通信だったらしい。産経新聞「英紙の安倍首相発言報道 通訳の補足説明で誤解!?」(
参照)より。
【ロンドン=内藤泰朗】安倍晋三首相がスイス・ダボスでの会見で、日中関係について第一次大戦前の英国とドイツの関係と「類似性」があると発言した-と英紙などが報じた問題で、首相が述べていない内容を通訳が補足説明していたことが分かった。
会見に記者が同席していた共同通信が24日、報じた。首相は日本語で発言し、通訳は「われわれは似た状況にあると考えている」との文言を英語で補足したという。中国などが反日キャンペーンを展開する中、海外への情報発信の難しさを浮き彫りにした形だ。
首相の発言については、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニスト、ラックマン氏が22日、ブログ記事で「安倍氏は現在の中国と日本の間の緊張状態を第一次大戦前の英独の対立関係になぞらえ『(当時と)同じような状況』と述べた」とし、日中紛争が避けられないかのような印象を与えた。
報道を受け、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は「(首相は)第一次大戦のようなことにしてはならないという意味で言っている。事実を書いてほしい」と反論していた。FT紙は24日付の論説記事でも、「1914年の欧州との比較は恐ろしく、扇動的だ」と批判した。
つまり共同通信記者がこの、通訳による追加という事実性を伝えたらしい。が、共同通信自体のオリジナル記事が私には見つけられなかった。どっかにありますかね?
さて、この問題、日本側からすれば通訳の問題であるとは言えるが、海外側からすれば通訳を含めて日本側の発言なので、フィナンシャルタイムズの息巻きもむげに非難することはできない。
それでも報道の全体構造からすれば、欧米側メディアの思い込みがもたらした面は大きい。
先の産経記事は同じくフィナンシャルタイムズのアジア担当ピリング記者による「第二次大戦などでも日本に問題があるとの見解が欧米では根強い。日本の知識がない記者ほど、その流れで書く傾向が強い。センセーショナルに書く風潮もある」と指摘しているが、つまり、そういうことだ。日本の知識が薄いジャーナリストが日本について、センセーショナルな記事を書きがちなのである。
経済についてなら普遍的な知識で日本経済の状況もカバーできるが、日本の歴史や政治の分野ではきちんとした知識を持ち合わせている外国人ジャーナリストは少ないものである。つい喋りたがる政権批判的な学者さんとか市民団体をメモってしまう。
ちなみに該当の記者会見について日本政府側からは、次のようにまとめられている。「外国メディアへの首相発言」(
参照)より。
菅義偉官房長官が23日の記者会見で説明した安倍晋三首相の外国メディアへの発言は次の通り。
尖閣諸島は1895年に日本の領土となった。日中両国は互いに最大の貿易相手国であり、日本企業の進出により中国も雇用を創出してきた、切っても切れない関係だ。従って、一つの課題ゆえに門戸を閉ざしてはならず、戦略的互恵関係の原点に戻るべきだ。条件を付けずに首脳会談を行うべきであり、首脳会談を重ねることで両国関係の発展の知恵が生み出されると思う。
(日中が軍事衝突する可能性について質問され)ちなみに、今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時、英独関係は大きな経済関係にあったにもかかわらず、第1次世界大戦に至ったという歴史的経緯があった。ご質問のようなことが起きることは日中双方のみならず、世界にとって大きな損失になる。このようなことにならないようにしなくてはならない。中国の経済発展に伴い、日中の経済関係が拡大している中で、日中間の問題があるときには相互のコミュニケーションを緊密にすることが必要だ。(2014/01/23-19:20)
特段に問題のある内容とも思えない。
外交ではないが、政治家による問題のありそうな発言といえば、小泉元首相の発言が少し気になった。スポーツ報知「【都知事選】細川氏、心ないヤジに「…ハイ」」(
参照)より。
東京都知事選(2月9日投開票)は25日、告示後初の週末を迎えた。細川護熙元首相(76)は小泉純一郎元首相(72)とともに、午後3時からJR立川駅前で演説した。
同駅南口に集まった約3000人の聴衆を前に、細川氏は緊張もあったのか、時には“おとぼけ発言”も。「自然エネルギーによって国づくりを進めなければいけない。水と緑と太陽と、それから…もう1つ、何だろう?」と、聴衆に対して、まさかの?問いかけ。数秒後に「…風と、加熱…いや、地熱もありますね」と続けた。さらに「口から出まかせ言ってんじゃねーぞ」の心ないヤジには「…ハイ」と答えてしまう一幕も。「私は1人で自民党の支配を壊したんです。でも、長期間続きませんで…」と妙なアピールも繰り出した。
その後、北口での演説には約5000人が集まったが、今度は小泉氏の口から思わぬ言葉が。「東日本大震災は、天が与えてくれた大事なチャンスだ」と明言した。「東北の人には怒られるかも知れないけど、犠牲を無にしてはいけない」とフォローしたものの、きわどい言葉で原発ゼロを訴えた。
想定外?の出来事はその後も続いた。細川氏はこの日夕、東京・六本木ヒルズのイベントスペースでトークショーを行う予定だったが、急きょ中止に。主催者側は「(場所を管理する)テレビ朝日から許可が下りなかった」と説明。細川氏は予定を変更して、六本木での街頭演説に向かった。
「東日本大震災は、天が与えてくれた大事なチャンスだ」というのは、以前似たような発言をした石原慎太郎元東京都知事の発言が話題となったことを思うと、けっこう問題発言のようにも思われるが、今回の小泉氏の発言は、どうも話題になっていないようだ。
スポーツ報知の飛ばし記事か、あるいは事実ではないのかもしれない。どうなのだろうか。あるいは、その場でフォロー発言をしたから、問題発言はなしなし、となったのだろうか。
ごく印象に過ぎないのだが、小泉氏は今回、反原発の細川陣営についたため、その側の人が問題発言として話題にしたくないということをマスメディアが察してしまったのではないだろうか。真相はよくわからないが、いずれにせよこの小泉氏の発言は問題にはなっていないようだ。
とかいうのは前書きで、実は、このエントリーでは他の話をつもりだった。が、なんか長くなってしまったので、これはこれにて。À demain!