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2013.12.12

「組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った」という共同報道の出所はどこなんだろうか?

 昨日共同通信の報道、「政府、共謀罪創設を検討 組織犯罪処罰法改正で」(参照)がツイッターなどで話題になっていた。理由はこの記事に「明記」されているように、「秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ」ということである。そういう議論が起こりそうなことは理解できるだが、さて、この共同通信の報道の出所はどこなんだろうか? まず、報道はこう。


政府、共謀罪創設を検討 組織犯罪処罰法改正で
【2013/12/11 00:45】

 政府は10日、殺人など重要犯罪で実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った。政府関係者が明らかにした。
 共謀罪が広く適用されれば、国による監視が強化される恐れがある。機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法に続く国権強化の動きといえる。秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ。
 政府は、2020年の東京五輪開催に向けてテロ対策の必要性が高まったと判断している。


 つまり、その「政府関係者」って誰なんだろうか。
 共同の同報道には、その後のものと思われるもう少し長い版がある。「共謀罪の新設、政府が検討 実行行為なくても処罰 組織犯罪処罰法改正案、14年提出へ【2013/12/11 10:51 (2013/12/11 11:54更新)】」(参照)。

 政府は、殺人などの重大犯罪で実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」新設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った。政府関係者が11日明らかにした。政府は2020年東京五輪開催に向けてテロ対策を強化する必要性が高まったと判断している。
 改正案は、4年以上の懲役・禁錮に当たる罪を対象とする方向。殺人罪や強盗罪など重大犯罪の実行行為がなくても合意だけで処罰可能となる。
 共謀罪をめぐっては、国連が00年11月、国際テロの不安が広がっていることを背景に「国際組織犯罪防止条約」を採択し、参加国に共謀罪の創設を求めた。
 日本政府は同年12月、条約に署名。法務省は改正案の目的として、暴力団による組織的殺人や悪徳商法グループの組織的詐欺など、犯罪集団による重大犯罪の取り締まりを挙げている。
 政府は03年以降、数回にわたり改正案を国会提出したが、日弁連や野党が「市民活動や組合活動などにも拡大解釈されかねない」と強く反対し、廃案と継続審議を繰り返した。第1次安倍政権でも成立を目指していた。
 先の臨時国会で成立した特定秘密保護法には、実際に犯罪行為をする前でも、謀議に加わった段階で処罰対象とすることが規定されている。
 これに関連して、菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で「政府としてはまだ何も決めていない」と述べた。
〔共同〕

 後から出たと思われる長い版の報道でも「政府関係者が11日明らかにした」とあるが、後で追記されたのかわからないが、後段を読むとわかるように、「菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で「政府としてはまだ何も決めていない」」として、その政府関係者の、おそらくリークと思われる情報を否定している。
 共同通信の誤報ではないかとも思えるが、誤報であるかどうかは、その「政府関係者」が誰だかわからないとなんとも言えない。ジャーナリズムの建前上開示はできないだろうが、気になるところだ。いずれにせよ、この共通通信の報道については、政府が11日午前中に、即座に否定しているので、この記事を元に、「組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った」と騒ぐ根拠はなくなった。もっとも、だからといってこの法案について議論するなという意味ではないが。
 共同だけが飛ばしたのかと思って他報道を見ると朝日新聞にもあった(参照)。

共謀罪の創設、安倍政権が検討 五輪に向けテロ対策強化
2013年12月11日21時47分
 安倍政権は重大な犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となる「共謀罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正の検討に入った。2020年の東京五輪に向けたテロ対策強化が狙い。ただ、特定秘密保護法が国民の「知る権利」を損なうと批判された直後でもあり、来年の通常国会への改正案提出は見送り、提出時期を慎重に見極める方針だ。
 共謀罪は、重大な犯罪にあたる行為を「団体の活動」として「組織により」実行しようと共謀するだけで、実際に行動を起こさなくても罰する内容。
 政府は00年に国連で国際組織犯罪防止条約が採択されたのに伴い、条約締結のために国内法の整備が必要として、03年から3度、関連法案を国会に提出した。ただ、対象となる犯罪が600以上にのぼることなどから、当局の恣意(しい)的な適用を懸念する世論の反発が起き、いずれも廃案となってきた。

 朝日新聞の報道では、明確に、この情報の出所が明記されず、「安倍政権は……組織的犯罪処罰法改正の検討に入った」とされている。同日否定した菅義偉官房長官記者会見についての追加報道は探したが見当たらなかった。
 逆にNHK報道では、こうした共同通信・朝日新聞報道を否定した菅義偉官房長官記者会見のほうだけを取り上げていた(参照)。

「共謀罪」関連法案 通常国会提出せず
12月11日 21時16分

 菅官房長官は、午後の記者会見で、テロなどの重大な組織犯罪の計画の謀議に加わった場合に処罰の対象となる、「共謀罪」を新設するための関連法案について、来年の通常国会に提出する考えのないことを明らかにしました。
 「共謀罪」は、テロなどの重大な組織犯罪について、実行していなくても、犯行の計画の謀議に加わった場合に処罰の対象とするものです。
 政府は平成12年、テロなどの組織犯罪を防ぐための国連の「国際組織犯罪防止条約」に署名し、条約の批准に必要な国内法の整備として、「共謀罪」を新設するための関連法案を、平成15年以降、国会に3回、提出しましたが、いずれも廃案になっています。
 これについて菅官房長官は午後の記者会見で、「『何も検討していない』と申し上げている。国会に提出する予定はない」と述べ、来年の通常国会に法案を提出する考えのないことを明らかにしました。
 一方、政府筋は、「特定秘密保護法に対する反発を考えると、来年の通常国会への提出はなかなか難しいだろう。ただ、東京オリンピックも控えているので、提出の検討は続けなければならない」と述べました。


 NHK報道では、共同報道と異なり、11日の午後となっているが、官邸にあたってみると、午前と午後で二回にわたって否定されている。午前「平成25年12月11日(水)午前」(参照)。

記者 長官、共同通信の橋本(?)ですけど、別件なんですけども、共謀罪創設についてお尋ねします。あの国連がですね、2000年だったと思うんですけど、国際組織犯罪防止条約を採択して、ま参加国、参加国にですね、あのー、共謀罪の創設を求めている。で、日本政府としては今後どのようにあの、進めていくお考えなんでしょうか。
長官 あのー、今ご質問にありましたように、国際組織犯罪防止条約、それを締結するための担保法でありますけども、ま、これについては、いつどうするかということは、まだ政府では決めてません。
記者 産経新聞の山本ですけど、名護市長選について……(中略)
記者 北海道新聞、佐藤です。一つ前に戻るんですけど、共謀罪の必要性について、政府としてはどのようにお考えでしょうか。
長官 ですから、国際犯罪防止法を締結すると、そういう担保法について、海外からそう言われてますけども、ま、政府としてはまだ何も決めてない、そういうことです。

 記者会見を聞いているかぎり、この時点で、すでに共同通信は「組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った」という報道を流していているにも関わらず、そのことには触れず、共同通信自社記者から特に文脈なく「別件なんですけども、共謀罪創設についてお尋ねします」としてこの話題が切り出されている。好意的に見れば、自社報道の裏を取りたいとも読める。だが、報道のあり方としては、この質問の後に「政府関係者」とこの記者会見をまとめて初報道したほうがよかっただろう。共同通信が自社でこの問題を作成している印象を与えてしまうことになるからだ。
 午後の記者会見でもこの話題が冒頭から扱われている。「平成25年12月11日(水)午後」(参照)。

記者 読売新聞の※※(?)ですけど、午前中の記者会見でも出たんですけども、えー、共謀罪を創設する組織的犯罪処罰法改正案ですけれども、来年の通常国会の提出に向けて検討に入ったという報道があるんですけれども、これまでの検討状況に何か変化はあるんでしょうか。
長官 ま、あのー、午前中、私申し上げましたけど、何も検討しないということを私は申し上げました。ということは、国会に提出する予定はないということです。

 これを見ると、読売新聞記者は、共同通信報道や朝日新聞報道の政府側の裏を取りたかったということがわかる。
 公式な記者会見が真実を述べているとは限らないが、状況を見るかぎり、共同通信の勇み足であることは否めないし、この段階で「秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ」と加えたのは、報道誘導の印象はぬぐえない。
 関連だが、関連報道を見ていくと、記者会見で否定された後も、興味深い報道が見られた。東京新聞「秘密の次は…共謀罪 「戦争できる国」へ着々」(参照)である。

秘密の次は…共謀罪 「戦争できる国」へ着々
2013年12月12日
 内閣支持率の急落もなんのその、安倍晋三首相が「警察国家」「戦争できる国」に向けて一気にアクセルを踏み込んだ。希代の悪法たる特定秘密保護法を強引に成立させたかと思えば、今度は、事前の話し合いだけで処罰される「共謀罪」創設が急浮上した。十七日にも閣議決定される国家安全保障戦略には武器輸出推進が明記される見込みだ。来る。次々と来る。 (林啓太、小倉貞俊)

◆市民運動監視、つぶすことも
「安倍政権は、日米で戦争を遂行する体制づくりを進める一方、戦争に反対する団体を監視して運動を委縮させたい。共謀罪は、言論の抑圧に悪用される可能性が極めて高い」。日弁連共謀罪等立法対策ワーキンググループ副座長の山下幸夫弁護士は懸念する。
 実行行為がなくても、犯罪の謀議に加わるだけで処罰対象となるのが共謀罪だ。安倍政権は、共謀罪を創設する組織犯罪処罰法改正案の検討に入った。菅義偉官房長官は11日の記者会見で、同改正案について「(来年の通常)国会に提出する予定はない」と明言したが、いずれかのタイミングで共謀罪が政治日程に上ってくるのは間違いなさそうだ。
 自公政権は2003年から三度、関連法案を国会に提出。第1次安倍政権も共謀罪の導入を狙った。そのたびに野党や日弁連から「市民活動などにも拡大解釈されかねない」と強く反対され、すべて廃案に追い込まれた。
 過去の関連法案によると、殺人や強盗、建造物等放火など4年以上の懲役・禁錮を定めた600以上の罪が対象となりそうだ。これまで政府は、暴力団や組織的な詐欺の取り締まりを共謀罪創設の目的に挙げてきたが、今回は20年東京五輪のテロ対策も「大義名分」に掲げたいらしい。
 しかし、石破茂・自民党幹事長の「絶叫デモはテロ行為」発言を引くまでもなく、自民党には暴力団も反戦団体も等しく「危険な集団」に映る。共謀罪があれば、市民運動を監視するだけにとどまらず、場合によってはつぶすこともできる。例えば、反戦団体にもぐり込んだ公安警察のスパイが「政府の建物への放火をみんなで計画している」とウソの密告をすれば「自白を証拠に、団体の関係者が有罪にされかねない」(山下氏)。
 それにしても、秘密法成立直後に共謀罪を持ち出すとは、どういう神経か。
 山下氏は「秘密保護法が共謀罪へのハードルを下げた」との見立てだ。現行法では共謀の段階で処罰できる罪は爆発物取締罰則など少数だが、秘密法にも特定秘密を知ろうと共謀するのを罰する規定が盛り込まれた。「秘密保護法の審議では、共謀の規定の危険性がそれほど問題にされなかった。共謀罪導入の露払いはできたと考えているのではないか」
 このままでは秘密法の二の舞だ。小倉利丸・富山大教授(監視社会論)は「どんなにデモで国会を囲んでも、安倍政権が続く限り、共謀罪の導入を強行するだろう。阻止するには安倍政権を退陣に追い込むぐらいの大きな運動を今からつくり出さなければならない」と力を込めた。

◆首相の野望 続々
 4月にスタートした国家安全保障会議(日本版NSC)に続き、外交・安全保障分野でも安倍路線は着々と“実績”を積み上げる。

(中略)

[デスクメモ]
「こちら特報部」は2006年、反共謀罪キャンペーンで日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞に選ばれた。私は当時、政治部記者として国会の動きを追った。権力の邪悪なたくらみは頓挫したはずだった。因果はめぐる。亡霊の復活に血道を上げる安倍政権と対峙(たいじ)しなければならない。(圭)


 東京新聞記者の思い入れはわからないではないが、現段階では、「それにしても、秘密法成立直後に共謀罪を持ち出すとは、どういう神経か」という指摘の事実根拠は、政府側がすでに公式に否定している以上、共同通信が報道の出所を明らかにしないかぎり、明確に言えることではないだろう。
 なお、以上の経緯とは別に、組織犯罪処罰法改正案だが、すでに菅義偉官房長官の会見にもあったように、国際協調の一環として過去に推進した経緯もあり、また、この推進が求められている。問題は、どのように世論の不安を了解して勧めるかだが、法務省に関連の情報が以前から記載されている(参照)。

国際組織犯罪防止条約の交渉過程での参加罪に関する日本の提案について

○  条約交渉の初期の案文では、共謀罪については、組織的な犯罪集団の関与の有無にかかわらず、すべての重大な犯罪の共謀を対象としているという問題点がありましたし、参加罪については、特定の犯罪行為との結び付きがない「犯罪集団の活動への参加」を一般的に処罰の対象としているという問題点がありました。
○  そこで、我が国は、当時の案文のままでは我が国の法的原則と相容れないとの意見を述べた上で、共謀罪については、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加えるべきことを提案するとともに、参加罪については、特定の犯罪行為と参加する行為との結び付きを要件とした、別の類型の参加罪の選択肢を設けることを提案しました。
○  しかし、この別の類型の参加罪を設けるとの提案については、犯罪となる範囲が不当に狭くなるなどの指摘があり、結局、各国に受け入れられませんでした。
○  他方、共謀罪については、我が国の提案に基づいて、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することができるものとされました。
○  そこで、既に一定の重大な犯罪については共謀罪が設けられている我が国の法制との整合性を考慮し、組織的な犯罪集団の関与する重大な犯罪の共謀に限って処罰する「組織的な犯罪の共謀罪」を設けることとしました。


 法務省側でもこの問題は他国を説得し、自国法のあり方を含めて、検討している様子はうかがえる。
 この問題を現時点から検討することはよいが、報道社が不正確な情報を元にした問題提起のような報道をフライングするかに見える状況は、冷静な議論を進める上で好ましいものではないだろう。
 
 

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2013.12.11

なんでフランスの本はフランス国外で読まれないのか?

 なんでフランスの本はフランス国外で読まれないのか? さて。普通、そんなものじゃないのとも思うが、フランスとしてみると、なぜかと思うことはあるのかもしれない。とはいえ、そもそもこのニュース、私が見たのは、BBCであった(参照)。読んでみると、それなりに、ふーんと思える話である。適当に話をつまんでみる。
 フランス作家は、近代国家ならどこでも有名なものである。ボルテール、デュマ、ユーゴ、フローベールやプルーストなど。文学が好きなら馴染み深い。これらは第二次世界大戦前。それどころか第一次世界大戦前。その後はどうかというと、ちょっとお寒い状態が続いていると言われると、まあ、そうかな。僕なんかの世代だと、サルトルやカミュなんかの小説は読んだものだったが。
 近年ではどうかというと、フランス作家の作品は、英語圏では比較的売れていないらしい。なぜなんだ?
 しかも、当のフランス人は英語圏などから翻訳される本を好んで読んでいるらしい。小説なんかだとざっと半分くらい英米圏の翻訳物。例えば何を? この記事には書いてないが、BBC記事中の写真に写っているのは「 フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」だったりする。あのなあ。
 「ミシェル・ウエルベック」は例外としてとあるが、どのくらいフランス人作家の本が英米圏で読まれているだろうか。2008年のノーベル文学受賞の「ジャン・マリー・ル・クレジオ」さえ英米圏ではあまり知られていないとのこと。日本ではというと、それなりに知っている人はいる。僕は知っているけどね。
 こうしたフランスの出版事情の理由の一つとして記事で上がっているのは、翻訳代理店がフランス作家を拾ってくれないということだ。そうかもしれない。ということで、今年のアカデミー・フランセーズの小説賞作家、クリストフ・オノデビオという人が上げられているのだが、英米圏からは無視されているらしい。ほかにMarie Darrieussecq、Nelly Alard、 Philippe Labroとかいう作家も記事に上げられているが、聞いたこともないなあ。フランスのベストセラーならまず間違いなく英米圏では翻訳されないともある。翻訳自体にコストがかかるというのもあるというのだが、どうなんだろうか。

cover
恋人はゴースト
 『恋人はゴースト』という米国映画の原作はフランス人作家マーク・レヴィで有名な部類だが、それでもあまり関心が持たれているとも言えないようだ。ちなみに、アマゾンで見たら、英訳本はいくつかあった。邦訳はわからなかった。なさそう。この映画は見ておきたいな。
 こうした状況にフランスの知識人で苛立つ人もいるらしい。特にいらっとさせるのは、もしかしたら、フランス作品自体、つまんないんじゃないのかという疑念だ。あるいは、おフランスなエリート感が逆に嫌われているのではないのか。フランスはアマゾンに抵抗して(参照)、書店文化などを保護しているせいもあって、そうしたのが逆に過保護に働いて文化的な魅力を弱めているのかもしれない。例えば、フランスの書籍は手にとってもカバーデザインはそっけない。ジャンルも英米圏ほど幅広くもない。ノンフィクションだと知的過ぎてしまう。文学でもヌーボー・ロマンとか文学過ぎて、等身大のフランス人の生活を反映していない。ただ、そのあたりは現在のフランス人作家も留意してはいるらしいということで記事は締められている。
 かえりみて日本はどうかというと、よく言われるように日本の作家の作品も海外では読まれないが、村上春樹のようなビッグネームはある。よしもとばななも読まれているような話題も耳にするがどうなんだろうか。一昔前なら、谷崎潤一郎とかは読まれていたようでもあった。よく知らない。
 日本の場合、フランスのこうした状況と違って、英米圏の作品が圧倒的ということはないように思う。SFやミステリーなんかだと状況は違うのかもしれないが、英米圏の作品で日本人で好まれるのは、ダン・ブラウンやジェフリー・アーチャーとかふと思うがどうなんだろ。ケン・フォレットの『大聖堂』などは作品としてはけっこう読まれたか。
 ざっと思うのは、日本というのは、文化的に大衆的に洗練されていて、自然に出版の世界でもガラパゴス化しちゃうというのはあるんだろう。その点、フランスなんかだと、自国の知識人の伝統と大衆のグローバル化の二極になってしまうのかもしれない。
 
 

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2013.12.09

[書評]20時間ですばやく何でも学ぶ方法(ジョン・コーフマン)

 人はふと、なにか新しいことを学びたいと思うものだ。外国語とかプログラムとか楽器とか。では、習得するまでにどのくらい時間がかかるだろうか。20時間でなんとかなるとしたら、ちょっといい話ではないだろうか。1日1時間やれば1か月以内でなんとかなるはずだ。

cover
The First 20 Hours
  この話は、先日の記事(参照)でも言及した「20時間ですばやく何でも学ぶ方法(ジョン・コーフマン)」(参照)にある。実際に読んでみた。まだ翻訳は出てないのではないかと思う。原題は「The First 20 Hours: How to Learn Anything ... Fast」である。
 TEDでも話題になっていた(参照)。

 TEDでは、その手法を4つくらいに絞っていたが、オリジナル本を読んでみると、10に分けていた。意訳を添えておく。


  1. やるなら好きなこと。Choose a lovable project.
  2. 一度に一つに集中。Focus your energy on one skill at a time.
  3. どこまでやるかを決めておく。Define your target performance level.
  4. スキルは分けて習得。Deconstruct the skill into subskills.
  5. 道具を用意する。Obtain critical tools.
  6. 邪魔を除く。Eliminate barriers to practice.
  7. 練習時間を取る。Make dedicated time for practice.
  8. 素早く自己評価する。Create fast feedback loops.
  9. 練習時間は時計を置いて計る。Practice by the clock in short bursts.
  10. たくさんいそいでやる。Emphasize quantity and speed.

 書籍では、この10の原則が第1章で詳しく説明されている。どれも、なるほどなと呻らさせるものはあった。
 興味深いのは、以上の原則は、技術(スキル)であって、学習(ラーニング)とは分けてそれには第2章で別の10の原則が上げられていた。
 カーフマンはこれらを「高速スキル獲得」として見ていた。メタ学習の原理になる。同じような原理を自分も考えていたので、いろいろ参考になる面もあったし、自分ならちょっとこう考えるかということもあった。
 実証的なものとはいえず、カーフマンの経験談が多い。が、それも面白い。とにかく20時間齧り付けという取り組みは重要なようだ。何かの習得を始めると心理的な障壁が大きいからだとしている。
 具体的にカーフマンがそのメソッドで習得したのは、ヨガ、プログラミング、タッチタイピング、囲碁、ウクレレ、ウインドサーフの6つのスキルで、それらが第4章以降、1章ずつ当てられて、本は終わる。
 率直に言うと、これらのスキルは私の場合、ウインドサーフ以外は習得しているので、説明がわかりやすい反面、多少退屈にも思えた。ウインドサーフは20代にほんの少しやったが洋上で風に流されるくらい終わった。
 面白かったのは、タッチタイピングである。私は普通にタッチタイピングができるし、米人でできない人もよく見かけたので、そんな話かなと思ったら、違った。では毎度のドヴォラークかなというとそうでもない。Colemak(参照)である。つまり、コーフマンは従来のQWERTYのタッチタイプからColemakに変えたわけである。最初はけっこうきつそうだが、習得後の話を読むと、ああ、これはちょっとうらやましいなと思った。私もタッチタイプは変更したいと思っていたのだ。が、ISOのキーボードですら国内で買うのが面倒になりやめた。いまでは、情けない、JISを使っている。そういえば最近親指シフトの話を聞かないが、どうなったのだろうか。
 全体として、本書の大半を占める個別のスキルの話にあまり魅力がないのと、原則論が主観で終わっているのが残念だった。個別スキルについては具体的な話だから、そこから一般原則への示唆はあるだろうが、私としては、任意の習得対象の教材をどのように構成するかというほうに関心がある。
cover
はじめての
インストラクショナルデザイン
 一般にはこの分野はインストラクショナルデザイン(instructional design)と呼ばれ、当初はスキナー派の考えが主流になって、ADDIEモデル――(Analysis)、設計(Design)、開発(Develop)、実施(Implement)、評価(Evaluate)――となっているのだが、モデルというには当たり前過ぎて実際には使い物にならないように思われる。古典的な「インストラクショナルデザインの原理」(参照)も読んだが自分にはあまり実践的ではなかった。
 こうしたメタ学習の理論だが、実際にはそういうメタ性というのは存在しないのかもしれないとも疑っている。本書でカーフマンも語学について言及しているが、語学なども独自の教授法があるが、決め手はなさそうに思える。
 
 

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