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2013.10.05

悩んだけど、もう少し書いておこう。たぶん、私の発言はそれほど届かないだろうと思うし

 悩んだけど、もう少し書いておこう。たぶん、私の発言はそれほど届かないだろうと思うし、だったら、その程度にまで声を上げておいてもよいんじゃないかと、思ったからだ。話は、一昨日、昨日と関連する消費税増税とマスメディアと権力の構造についてだ。
 昨日のエントリーで、予想はされていたけど、9月12日の、読売新聞による「消費税増税に首相が意向を固めた」とする「飛ばし記事」について、「あれは飛ばし記事じゃない。なぜなら実際に消費税があったからではないか」という根拠から、あれを飛ばし記事とする私の発言について、「負け惜しみ感が半端ない」「強弁」「ファイナルベントはどうしちゃったんだ」というようなコメントがあった。批判と受け止めたい。
 ツイッターなりのコメントなら対話もできる。だが、そうした批判は対話できない場所からのものがどちらかというと多い。コメント者の意図としてはそのまま捨て置かれることが前提なのだろう。
 そもそもそういう立場の人があってもよいとは思う。
 だから、そのこと自体は問題ではない。
 問題は、いや問題の一つは、批判の根拠である。「10月に入ってからの結果が消費税増税だったから、9月12日の読売新聞による『消費税増税に首相が意向を固めた』という記事も、正しかった」とか「リーク記事としては新聞記事として普通のものに過ぎない」とするその考え方である。私は、それはおかしいと思うし、間違っていると思う。
 私がそれを「飛ばし記事」であるとした最大の根拠は、9月12日当日の官房長官記者会見で、公式に否定されたことだった。私は、それで基本的に十分だと思ったし、読売新聞記事やそれに先導された大手メディアの同質の記事も仔細に読めば、最終決定をしたのではないだが、首相の内心の意向を明らかにしたという、ソース不明な奇妙な記事だったからだ。さらに言えば、官房長官からの公式な否定が出たのに、それはさほど重視されなかったことも奇妙だった。
 もちろん、こういう反論も成り立つ。つまり、「首相の内心が公式見解と違うのは違うのと当然だ」という反論である。でも、それは疑問が必然的に伴う。
 どうやって読売新聞は、首相の内心を知ったのか?
 記事にはそのソースが書かれていなかった。
 そこで、「ソースは開示できないリーク記事だった」と考えることはできる。だとすれば、ではどこからのリーク記事だろうか?
 普通に考えれば、首相の内心を知る側近筋ということになるだろう。
 そして、その首相の内心を知る側近筋と読売新聞は独自のチャネルを持っていたということになる。
 加えて、そのリークのチャネルが使われたということは、リーク側の思惑があるということになる。読売新聞も思惑に荷担する。
 だったら、リーク側の思惑がまず考慮されるべきではないのか。
 そこが問題ではないか。私の批判者にそこをなぜ考える人が少ないように見えた。
 状況を思い出そう。
 首相は9月の時点では、10月初旬に消費税増税の決断を公式に開示しないことを明らかにし、また実際、その言明通りに行動してきた。
 リーク側の意図は、すると、首相の表面的な言動と実際の思惑は違うのだということを伝えることにある。
 そのメリットは何か? 
 二つのケースがある。
 (1)リーク側が本当に首相の内心を知る側近筋である場合。そうであれば、首相の意図がこのリークに反映していたことになる。つまり、首相は、なんらかの意図で、公式には言明できないが、1か月くらい先に「消費増税という本心」を国民に伝えたかったということになる。だとすれば、それは何だろうか。「消費税というショックに備えなさい」という配慮でもあったのだろうか。それならなぜ公式に否定したのだろうか。公式な否定は不要でないか。あるいは官房長官は「首相の意向はわかりません」といった内容を温和に伝えることもできたのに。
 (2)リーク側が首相の側近人物であっても、首相と対立する人物であって、リークによって首相を操作したいという思惑を持っていた人物であった可能性もある。それだとどうだろうか。可能性として想定されるから、それも考えてみよう。
 その人物は「消費税増税の決断は現実には首相が決めるのではなく私が決めるのだ」という意図があるかもしれない。リーク情報から社会の消費税増税決定の空気を形成することで首相の外堀を埋める意図もあるかもしれない。あるいは、消費税増税に反感を持つ国民もいるから、「首相の内心をリークすることで反感の空気を形成したい」という意図かもしれない。ただし、この「反感の空気」は世論が消費税を受け入れる空気がある程度醸成されているなら、抑制できる。9月12日時点を振り返ると、消費税は絶対に反対とする世論は少なく、どの時点で導入するかについては曖昧な状態だったが、抑制可能な状況にはあった。
 二つのケースのどちらだろうか。
 もう一度別の視点から整理してみたい。
 9月12日の読売新聞記事で問われるのは、それが「結果的に真実を伝えていたからリーク記事ではない」、または、「普通のリーク記事であって飛ばしというものではない」というより、問われるのは、(1)リーク元はどこか、(2)リーク元の思惑は何か、ということだ。
 この件で問われるは、そこである。
 私の印象だが、私の批判者は、(1)リーク元は首相と同心の側近であり、(2)リーク元の思惑は、首相公式メッセージとは異なる内心を伝えたかった、という前提に立っているはずだ。
 私の批判者はなぜそう考えたのだろうか。
 私の印象としては、安倍首相は、民主党政権時の菅首相や野田首相と同様、最初から消費税増税の思惑を持っていたから、それが読売新聞記事で暴露された、という前提である。読売新聞・渡辺恒雄をナーブに捉えているからでもある。
 その想定が成立する根拠は何だろうか?
 私はそこがわからない。
 私は、逆の想定をしている。
 私は、安倍首相がマクロ経済学を実によく学び、少なくとも私以上にそれを理解した上で、各種の発言を行っていたと見ていた。
 彼が再登場してからのマクロ経済学的な発言は、単純な誤解や報道の歪みを除けば、少なくとも私のレベルの理解からは間違いを見いだせなかった。
 そして、そのこと、つまりマクロ経済学を理解する有力政治家の存在は、長期にデフレ下にあった日本の状況では、かなり珍しいことだし、しかもそのような人物が政治の中枢に立ったことは驚きでもあった。
 ただし、明瞭にしておきたのだが、経済以外の分野で安倍首相を評価できることはほとんどないし、経済分野といっても、金融政策以外の財政政策や産業成長論といった分野で評価できることもほとんどない。
 それでも、日本を長い間蝕んできたデフレをマクロ経済学から認識できる政治家が現れ、しかも政治力を行使できることは、一面では希望だった。
 全面的な希望ではない。
 むしろ、これは市民の視点からすればとんでもない敗北だった。安倍晋三が政治の中枢に復帰したのは、石原伸晃を立てようとした自民党の一派に対して、一種党内クーデターがしかけられてのことであり、陰湿な政争の結果に過ぎないからだ。市民の声が届いたというものではない。その意味では、これは絶望の一形式なのだと言ってよい。
 希望面だけを言えば、安倍首相の金融改革は、想定以上のものだった。日銀副総裁に岩田規久男が就いた一例を挙げても、私には奇跡に思えた。また経済顧問として内閣官房参与に浜田宏一が就いたこともそれに継ぐ。これによって、日銀の基本的な道筋は岩田規久男の動向を注視していけばよく(岩田の命運でわかる)、また政府の経済政策については、浜田宏一の動向に注目していけばよい。
 特に、浜田宏一については、実質三顧の礼で安倍首相が招いたのであり、これまでの安倍政権の経済政策で大きな齟齬はなかった。
 そこでもっとも大きな齟齬のように現れたのが、消費税増税時期という課題だった。この点で、浜田参与は一貫して、消費税増税の延期を述べていた。
 当然、これは安倍首相も重視していただろう。
 しかも、浜田参与の主張は彼の主観というのではく、普通にマクロ経済学の知見から導かれたもので、安倍首相も受け入れることができる。
 ごく簡単にいえば、デフレ脱却の道筋が見える前に消費税増税をすれば、デフレ脱却が非常に困難になるということだ。そして言うまでもなくデフレ脱却ができなければ、経済成長はもとより、雇用の改善などもおぼつかない。
 私は9月12日の時点で、安倍首相が浜田参与と対立する内心を固めていたとは、以上の背景から想定しにくい。
 こうした想定について私の安倍首相への買いかぶりと見る人はいるだろうし、その点は批判を受けたいと思う。
 だが、こうした背景を見るかぎり、安倍首相がデフレ脱却の道筋を明確にする前に消費税増税を掲げ、その結果日本の経済を失速させ、経済が失速すれば首相が排除される日本にあって、自らの首を絞めるような行動をやすやすと取るものだろうか? しかも、9月12日には公式に否定したし、それ以上の否定は首相には不可能であった。
 9月12日の時点で、首相側の公式見解は、消費税増税は未決としていた。しかし、いずれ増税か延期のどちらかに決めなくてはならず、延期の可能性がない場合にも備えてそのプランB(代案)を用意しなくてはならない。この代案作成開始時期を使って、リーク側情報が、読売新聞を先導に動きだした。
 私の批判者が主張するように、公式見解を軽視するという前提に立ち、真実が、9月12日時点での首相の内心にあるというなら、その真実は、首相が政治を離れて自伝でも書くときにしかわからない。
 それでも、以上の流れから、リーク側と読売新聞を中心としてメディアの構造から、首相といえども、謀略(異なる内心が本心だとリークされること)のように陥れることは可能だということはわかる。
 しかも、大手メディアに私が抱いた疑念のかけらも見られなかった。
 私はこの構造を見て恐怖した。
 私の批判者はそういう私を滑稽だという。
 私がそれ(私が滑稽だということ)を確信できれば、恐怖も消える。家畜の安寧である。しばらくは虚偽の繁栄である。その先は、まあ、ということに、なれる。
 
 
 

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2013.10.04

消費税問題は、大手紙の飛ばし記事の研究によい事例でもあった

 消費税増税決定に至るまでの大手紙の報道は、大手紙報道の飛ばしの仕組みを考える上でよい事例を出してくれていた。ただ、事例はどちらかというと退屈なもので、エントリーに書くまでもないかと思っていたが、大手紙報道を安易に鵜呑みにしてしまう人も見かけたので、簡単に振り返っておくのもよいかもしれない。
 最初にこの方向で出て来たのは私の知る限り、朝日新聞だったがここでは、ここでは慎重に増税を決断したという報道にはなっていない。9月10日「安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で」(参照


 安倍晋三首相は9日、来年4月に消費税率を8%に引き上げるための経済指標面での環境は整った、と判断した。内閣府がこの日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)の2次速報値が大幅に上方修正されたためだ。安倍政権は増税した場合に景気が腰折れするのを防ぐため、経済対策の本格検討に入る。首相は好調な指標に自信を深めており、経済対策の規模や中身を見極めたうえで、10月1日にも増税の可否を最終判断する方針だ。
 内閣府は9日、GDP2次速報値で物価変動の影響などを除く実質成長率が年率換算で前の1~3月期よりプラス3・8%になったと発表。名目成長率はプラス3・7%とした。企業の設備投資が上向いたり景気対策で公共事業が増えたりしたため、実質2・6%、名目2・9%成長だった1次速報値から大幅に上方修正された。
 昨年8月に成立した消費増税法は「経済状況の好転」を増税の前提とし、その目安を「名目3%、実質2%の成長」と規定したが、2次速報値はいずれも上回った。雇用や消費などの指標も1年前に比べてほとんどが上向いている。

 この時点での朝日新聞記事は「10月1日にも増税の可否を最終判断する方針」としていて、それ以前の増税の意向や決断をむしろ否定する記事はなっているものの、「安倍晋三首相は9日、来年4月に消費税率を8%に引き上げるための経済指標面での環境は整った、と判断した」という「判断」のソースは私は確認できなかった。
 技術的に言えばこの時点以前に政府ではコアコアCPIに着目していたので(参照)、その点に触れていない以下の分析には恣意的な解釈の影がある。

 昨年8月に成立した消費増税法は「経済状況の好転」を増税の前提とし、その目安を「名目3%、実質2%の成長」と規定したが、2次速報値はいずれも上回った。雇用や消費などの指標も1年前に比べてほとんどが上向いている。

 問題のブレークは読売新聞12日「消費税率、来年4月に8%…首相が意向固める」(参照・魚拓)であり、非常に興味深い文体で書かれている。一面トップでもあった。

 安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。
 増税が上向いてきた景気の腰折れにつながることを防ぐため、3%の増税分のうち約2%分に相当する5兆円規模の経済対策を合わせて実施する考えだ。経済対策は、2013年度補正予算案と14年度予算案の一体的な編成や、減税を柱とする税制改正で対応する。
 首相は、10月1日に日本銀行が発表する9月の企業短期経済観測調査(短観)を分析した上で最終判断し、直後に記者会見を行い、増税に踏みきる理由や経済対策などを表明する方向で調整している。
 消費税は、1%の税率引き上げで2・7兆円の税収増となると見込まれる。複数の政府筋によると、首相は、3%の引き上げで約8兆円の負担を国民に求めた場合、回復基調にある景気が失速しかねないと懸念している。このため約2%分を経済対策で国民に事実上還元することで、景気への影響を1%引き上げと同程度に抑えることにした。

 記事もよく読めば「10月1日に日本銀行が発表する9月の企業短期経済観測調査(短観)を分析した上で最終判断し」とあり、最終的な判断がこの時点でまだであることがわかるが、問題は「安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた」のソースが不明な点にある。記事からはソースの言及がない。
 この点については同日午前の「内閣官房長官記者会見」(参照)で、そうした意向を首相が公式に発表したことが明確にされた。その時点で、では、読売新聞のこの記事の出所がどこなのかが疑問の対象になる。読売新聞の独断で書かれたとも考えられる。
 合わせて読売新聞同日「消費増税「2%」分実質還元…首相、苦肉の判断」(参照・魚拓)では、「5兆円規模の経済対策を合わせて実施する考え」を首相に帰している。

 安倍首相は、消費税率を2014年4月から予定通り8%に引き上げる一方、5兆円規模の経済対策を行うことで、増税による景気への悪影響を最小限にとどめたい考えだ。
 「経済再生と財政再建の両立」を政権の基本方針に掲げた首相にとって、苦肉の判断だ。
 消費税を14年4月に8%とし、15年10月に10%とする増税は、昨年8月の社会保障・税一体改革関連法成立で決まった。当時野党だった自民党は成立に協力したが、昨年12月に就任した首相は「増税は、回復し始めた景気に冷や水を浴びせかねない」(周辺)と考え、最終判断を保留してきた。
 財務省は「増税を見送れば、財政再建に後ろ向きと取られ、国債価格の下落などで信用低下を招く」と首相に予定通りの増税実施を進言してきた。増税を見送る場合、10月召集予定の臨時国会での関連法改正が必要となる。自民党内でも増税を容認する声が広がっており、首相は「方針転換は困難」と判断した。
 ただ、首相は、3%の引き上げを「あまりにも大幅過ぎる」とみて、2%相当の経済対策を実施する案を考え出した。社会保障・税一体改革関連法は、消費税をすべて社会保障財源に充てると明記しており、政府は、経済対策に充てる財源を別途確保する方針だ。

 読売新聞記事は「安倍首相は、消費税率を2014年4月から予定通り8%に引き上げる一方、5兆円規模の経済対策を行うことで、増税による景気への悪影響を最小限にとどめたい考えだ」としているが、同官房長官記者会見で「具体的な数字は全く出ておりません」として首相側の思惑としては否定され、かつ、その数字が「規模や中身については、これから甘利大臣と麻生大臣を中心に詰めていく」内容であることから、この二つの読売記事の出所は、「甘利大臣と麻生大臣」の系列からであることがうかがわれる。
 むしろ興味深いのは、文脈からわかるように、官房長官は「首相意向」とする記事の出所が「甘利大臣と麻生大臣」の系列からであることを示唆していると受け止めてもよく、政府内での亀裂を物語っているように読めることだ。もしこの亀裂の示唆を避けるのであれば、官房長官は言及を控えただろう。
 読売新聞の動向で興味深いのは、その12日ほど前になる8月31日の社説「消費税率 「来春の8%」は見送るべきだ」(参照・魚拓)では、消費税の見送りを社として主張していたことだ。8月末までは読売新聞は消費税増税先延ばし論に与していた。

 ◆デフレからの脱却を最優先に
 日本経済の最重要課題は、デフレからの脱却である。消費税率引き上げで、ようやく上向いてきた景気を腰折れさせてしまえば元も子もない。
 政府は、2014年4月に予定される消費税率の8%への引き上げは見送るべきだ。景気の本格回復を実現したうえで、15年10月に5%から10%へ引き上げることが現実的な選択と言えよう。
 消費増税を巡って、有識者らから幅広く意見を聴く政府の集中点検会合が開かれている。

 ◆成長と財政再建両立を
 安倍首相が今秋の決断へ、「最終的に私の責任で決める。会合の結果報告を受け、様々な経済指標を踏まえて適切に判断したい」と述べているのは妥当だ。
 日本は、15年間もデフレが継続し、巨額の財政赤字を抱える。景気低迷がさらに長期化すれば国力の低下が進みかねない。
 デフレを克服し、経済成長と財政再建の両立をいかに図るか。日本に求められているのは、この難題に取り組む方策である。
 読売新聞は年々増える社会保障費の財源を確保し、中期的に財政健全化を図るべきだとの立場から、消費増税の必要性を主張してきた。考えは変わらない。
 有識者らの多くは、来春に予定通り引き上げるよう主張したが、問題は、来春が増税するのに適切な時期かどうかだ。
 今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、年率換算で2・6%増にとどまった。
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果が見え始めてきたものの、民需主導の自律的回復というにはほど遠い。
 懸念されるのは、成長に伴って賃金が上昇し、雇用も拡大するというアベノミクスの好循環が実現していないことだ。
 来年4月は、春闘による賃上げや新卒採用の拡大などが見込まれる重要な時期である。好循環への動きに冷水を浴びせたくない。
 もちろん、消費増税だけで財政は再建できない。増税で景気が失速すれば、法人税や所得税などの税収も期待したほどは増えない恐れがある。それではかえって財政健全化が遠のくだろう。
 政府は今秋、成長戦略として投資減税などの追加策を打ち出す方針だが、そうした政策効果が表れるまでには時間がかかる。

 ◆15年の10%を目指せ
 8%への引き上げに固執した結果、景気が落ち込み、10%への引き上げを実現できなくなれば、本末転倒である。
 他方、消費増税を先送りした場合には、日本国債の信認が損なわれ、長期金利が上昇すると懸念する声が出ている。
 重要なのは、不安を払拭する政府の強いメッセージである。8%見送りはデフレ脱却を最優先した結果であり、財政再建の決意はいささかも揺るがないと表明し、内外の理解を求めてもらいたい。
 増税先送りに伴う消費税収分をカバーする財政資金の確保も課題になる。まず緊急性の低い歳出は削減し、併せて、あらゆる政策を検討する必要がある。
 利子が付かない代わりに、国債の額面分に相続税を課さない無利子非課税国債を発行し、家計に眠る貯蓄を有効活用することは政策メニューの一つだ。
 広く集めた資金を社会保障や防災・減災対策などに重点配分することが考えられる。

 ◆軽減税率を新聞にも
 15年10月に消費税率を10%に引き上げる際は、国民負担の軽減が不可欠だ。税率を低く抑える軽減税率を導入し、コメ、みそなどの食料品や、民主主義を支える公共財である新聞を対象とし、5%の税率を維持すべきだ。
 消費税率を1%ずつ段階的に引き上げる案では、中小企業などの事務負担が増大し、価格転嫁しにくくなるため、賛成できない。
 消費増税の判断にあたっては、世界経済への警戒も怠れない。
 シリア情勢が緊迫化し、米国による軍事行動が取り沙汰される。すでに原油価格が高騰し、円高・株安傾向も続いている。原発再稼働の見通しが立たない中、燃料高に伴い、電気料金のさらなる値上げも予想されよう。
 米国が異例の量的緩和策を縮小する「出口戦略」や、中国の金融リスクも波乱要因と言える。
 1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた際、深刻な金融不安に加え、アジア通貨危機が重なり、景気が急減速したことが苦い教訓である。
 内外情勢を十分に見極め、日本再生のチャンスを逃さない決断が政府に求められている。


 消費税延期を主張する8月31日の社説から、首相の確認を取らずに消費税増税の意向が定まったとする一面記事が出る9月12日までの間に、読売新聞に何があったのか? 理詰めで考えれば、この間に経済状況が好転したということだが、常識的に考えて、この社説の趣旨を転換するほどの状況変化はない。
 また、やや陰謀論めくが過去の渡辺恒雄の動向からすると、この間に、彼と政府あるいは財務省など官僚との間に政治的な接触があったのではないかとも疑われる。あまりこの点に深入りしたくはないが、この時期の渡辺恒雄の動向を洗うと、9月10日の首相動静(参照)に興味深い記述がある。

 【午前】11時48分、官邸。49分、報道各社のインタビュー。
 【午後】0時4分、無料通話アプリ「LINE(ライン)」の森川亮社長らベンチャー企業経営者と昼食。自民党の塩崎恭久衆院議員同席。55分、麻生副総理兼財務相、甘利経済再生相、菅官房長官。2時4分、閣議。27分、2020年夏季五輪の東京招致に関する閣僚会議。43分、APECビジネス諮問委員会日本委員の亀崎英敏三菱商事常勤顧問らから提言書受け取り。鈴木裕之野村ホールディングス取締役に委員の辞令交付。3時2分、外務省の斎木事務次官、平松総合外交政策局長。57分、自民党の高市政調会長。5時7分、北村内閣情報官、下平内閣衛星情報センター所長。14分、下平氏出る。35分、北村氏出る。6時、ロシアのプーチン大統領と電話協議。38分、東京・丸の内のパレスホテル東京。日本料理店「和田倉」で渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長ら報道関係者と食事。9時36分、東京・富ケ谷の自宅。

 普通に考えれば、この日、9月10日の夕食で渡辺恒雄が首相と会食して、首相の消費税増税の意向を確認したということになるだろう。しかし、12日の官房長官談話はわざわざそれを公式に否定しているし、またそれが仮に表面的であるなら「甘利大臣と麻生大臣」系のリークの示唆は控えただろう。いずれにせよ、この渡辺恒雄との会食に何かあっただろうことまでは推測してよいだろう。
 読売新聞の該当記事で堰を切ったように、共同・時事でも同種の報道が続く。内容および形式は基本的に読売新聞記事を踏襲していて新味はないが、この追従的な日本の報道の仕組みは興味深い。
 同日共同「消費税率、来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」(参照)より。

 安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。政府は、増税による景気腰折れを防ぐため、税率上げ幅3%のうち2%分に当たる5兆円規模の経済対策をまとめる方向で本格検討に入った。首相は10月1日に増税方針と経済対策を表明し、財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えだ。
 景気関連の指標が軒並み改善し、消費税増税法の付則で税率上げの条件となっている「経済状況の好転」がほぼ確認されたと判断した。国の財政悪化が深刻化し、社会保障の財源確保が急務となっており、政府、与党内で増税容認の意見が多いことも考慮した。

 同日時事より「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え-安倍首相、来月1日にも表明」(参照)より。

 安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。各種経済指標が堅調なことから、増税の環境は整ったと判断した。増税による景気の失速を避けるため、5兆円規模の経済対策を合わせて実施する方針だ。
 増税の是非を判断するに当たり、首相は4~6月期の国内総生産(GDP)改定値を最重視していた。9日発表のGDP改定値は、名目で年率換算3.7%増、実質で3.8%増となり、消費増税関連法付則18条に増税の目安として明記された経済成長率(名目3%、実質2%)を上回った。
 11日発表の7~9月期の大企業全産業の景況判断指数や、8月の国内企業物価指数も改善。首相は10月1日に発表される完全失業率や日銀の企業短期経済観測調査(短観)の内容を確認した上で、同日中にも記者会見して増税を表明する。

 記事形式として興味深いのは同日遅れて後続した毎日新聞記事「消費税:来年4月8%…首相、10月1日に表明へ」(参照)である。同日の官房長官記者会見を引用しながら、増税の意向が定まっていない点などについてこの報道は意図的に無視している。

 安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率について消費増税法に基づき、予定通り来年4月に8%に引き上げる方針を固めた。増税による景気の失速を避けるため、3%の増税分のうち、2%分に相当する5兆円規模となる大型の経済対策を合わせて実施する方向で調整している。首相は10月1日に日銀が発表する企業短期経済観測調査(短観)を確認した上で、同日中に記者会見し、増税方針と経済対策を同時に表明する方針だ。

 ◇経済対策、5兆円財源カギ
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」により、各種経済指標は好転している。判断指標となった4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は、改定値で年率3.8%増。増税の目安とされた経済成長率「名目3%、実質2%」を上回った。2020年夏季五輪の東京招致の成功という「第四の矢」の後押しも受け、首相は増税の意向を固めた。
 首相は10日、首相官邸に麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相らを集め、経済対策の中身を今月中に取りまとめるよう指示した。その際、示した文書では「消費税率の引き上げにより、景気を腰折れさせるようなことがあってはならない」と明記。政府高官は「消費税率を引き上げても、景気がよくないと財政再建につながらない」と述べ、経済対策の重要性を訴える。
 菅義偉官房長官は12日の記者会見で、消費増税に伴う経済対策について「消費税を引き上げる場合は経済への影響もあるため十分な対策が必要だ」と強調。記者団から「経済対策の規模も消費増税の判断の一つになるか」と問われると、「もちろんそうだ」と述べ、大規模な対策が不可欠との認識を示した。
 14年4月と15年10月の消費税率引き上げを定めた消費増税法は、民主党政権下の12年8月に成立した。すでに定められた増税について、首相は8月末に6日間かけて「集中点検会合」を開き、有識者ら60人に改めて増税の「是非」を問うてきた。7割の出席者が予定通り14年4月の税率引き上げに賛成を表明した。
 首相が増税実行に熟慮を重ねてきたのは、アベノミクスでせっかく上向いてきた景気への影響を懸念したからだ。財政再建を優先する財務省への反発もあり、首相は経済政策の中身を見極める方針。10月の臨時国会も「成長戦略実行国会」と位置付け、6月に発表した「日本再興戦略」に基づく産業競争力強化法案の早期成立を目指す。


 毎日新聞記事と同種の傾向は、東京新聞「消費税 来年4月8% 首相決断 社会保障目的どこへ」(参照)でも見られた。ただし、官房長官記者会見を毎日新聞よりも冷静にふまえ「消費税率引き上げは正式決定していないとしつつも」と限定した。

 安倍晋三首相は十二日、二○一四年四月から予定通り消費税率を5%から8%に引き上げる方針を決めた。最近の各種経済指標が堅調だとして、増税の環境はほぼ整ったと判断した。増税に伴う景気の落ち込みを避けるため、五兆円規模の経済対策を合わせて実施する方向。ただ、五兆円は消費税2%分に相当し、社会保障に充てるはずの増税の目的が大きく損なわれる。
 首相が増税の是非を判断するのに重視したのは、四~六月期の国内総生産(GDP)改定値。九日発表の改定値は、名目で年率換算3・7%増、実質で3・8%増。消費税増税法の付則で税率引き上げの目安となっている経済成長率(名目3%、実質2%)を上回った。
 政府・与党で予定通り増税を容認する意見が大勢を占めていることも考慮した。また、二〇二〇年東京五輪の開催が決まったことで、一定の経済効果が見込めることも判断材料となった。
 首相は十月一日に発表される完全失業率や日銀の企業短期経済観測調査(短観)の内容を確認した上で、同日中にも増税方針と経済対策を表明する方針。
 ただ、消費税増税に伴う低所得者対策はまだ決まっていない。
 政府・与党は食料品などの生活必需品に関し、税率を低くする軽減税率を導入する準備が整っていないとして、現金を配る「簡素な給付措置」を実施する方針だが、具体的な内容は未定だ。
 政府は八月下旬、有識者から意見を聞き、消費税増税を実施した場合の景気への影響を検証する「集中点検会合」を開催。増税を容認する有識者からも、低所得者対策の充実などを求める意見が相次いだ。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は十二日午前の記者会見で、消費税率引き上げは正式決定していないとしつつも、増税に伴う経済対策について「規模や中身を麻生太郎財務相と甘利明経済再生担当相で詰めている」と説明。正式決定後には、首相が自ら記者会見して発表することを明らかにした。

 振り返ってみると、大手紙報道は異常な事態だった。
 だが、私自身はというと、けっこう醒めて眺めていたし、きっかけでもなければブログに書く気もなかった。もともと、この安倍内閣は麻生太郎副総理兼財務相が実質、石原伸晃を立てようとした自民党内で権力クーデターのようにして作り上げたものだった。その背景には、デフレ政策を堅持する民主党政権への、財務省側の危機感を反映したものだったと思うからだ。
 こうした私の考えを「随分見苦しいw」と言う人もいる。




 私は、本当に思うのだ、「随分見苦しいw」と。だから、こんなことは書かないで、こっそり、日本のメディアと権力の構造について微笑みつつ絶望していたらよかったかな、と。いや、金融緩和はよかったじゃないか、それが消費税の増税のためであったとしても、と。
 
 
 

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2013.10.03

単純に情報操作にひっかかる人々について

【追記】
 エントリーアップ後、@wanroyoさんに主旨をご理解いただき、該当のtoggetterから私のツイートは外していただきました。
 @wanroyoさん、ありがとうございました。
 合わせて、@wanroyoさんに当てた文章は削除しました。
 以下、残る文章は、事実確認以外はすでに過去のものです。読まれるかたはその点ご留意ください。

 ※ ※ ※(以下、エントリー)

 どうでもいいかあとも思うけど、これはけっこう私に向けられた陰湿な攻撃なんで、しかも、そのレベルがかなりトホホなものなのでちょっと言及しておくかな。
 話は、よくあるtogetter、つまり、ツイッターの発言をまとめたもので、これである(参照)。まとめた人は@wanroyo(参照)という人。まとめの意図は以下の通り。


 2013年9月12日に、安倍首相が来年4月に消費税を8%に引き上げ、また経済対策として5兆円を投じる決断をしたと報じられました。9月19日にはそれと合わせて、法人実効税率引き下げを検討していることも報道されました。
 これらをデマだ飛ばしだと憤っていた方々の呟きを、10月1日の首相による増税発表後の呟きと合わせてまとめてみました。

 まとめを見るとわかるように、筆頭に私の9月12日時点のツイートが掲載されて、まあ、普通に読めば、私を「デマだ飛ばしだと憤っていた方々」の筆頭に置いて、揶揄してみた、という趣向と理解していいだろう。実際、安直にそう理解する人もいるみたいだった。例えば。




 ”orz”というは、ががっかり失望したというわけで、一般的に私のツイートに失望されるのはかまわないけど、このツイートについては失望するほうがどうかと思いますよ、というか、この手のチープな情報操作にひっかかるのはどうかと思いますよ。
 この話題を追ってきた人にとっては、こんなずさんな情報操作にひっかかることはないので、ほっておいてもよいのだけど、真に受ける人もいるみたいだった。全部が全部ではないけど、はてなブックマークのコメント(参照)を見るとけっこう見つかる。
 ただし、そのコメントがすべて私に向けられたものではないけど、私を筆頭にまとめられてはいるので、いくばくかは私にも向けられている。
 さて、こんなチープな誹謗みたいなものは、議論の余地なく、事実を見れば明らかなこと。その前に対比として、揶揄されている私の冒頭のツイートは以下。




 このツイートで一番重要のは、"9:14 AM - 13 Sep 13"という日時である。つまり、9月13日の私の発言である。内容は、その前日にあたる、平成25年9月12日(木)午前の「内閣官房長官記者会見」(参照)を元にしたものだった。
 まず、私のツイートで「消費税増税に関連する大手紙の飛ばし」としているのは、次のような記事である。

【読売】 2013/9/12朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」、同2面「『景気に冷や水』回避狙う 『2%』分は実質還元」
【毎日】 2013/9/12夕刊「消費増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」
【共同】 2013/9/12「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」
【時事】 2013/9/12「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え =安倍首相、来月1日にも表明」」
【東京】 2013/9/12夕刊1面「消費税 来年4月8% 2%分 経済対策5兆円 首相決断 社会保障目的どこへ」

 具体的にこの9月12日の大手紙報道についての政府見解はどうであったか。平成25年9月12日(木)午前の「内閣官房長官記者会見」で簡単に確認できる。
 映像でも見ることができるけど、簡単に書き起こしておこう。一部聞き取れない部分は**とした。


司会 お願いいたします。
官房長官 えー、どうぞ。はい
テレビ朝日記者 消費税についておうかがいします。テレビ朝日**と申します。一部報道で安倍総理がですね、来年4月から8パーセントに引き上げる方針を固めている報じられています。長官の所見と事実関係をお願いします。
官房長官 あのー、総理が消費税を引き上げるというですね、まあ、決断をしたという事実はありません。えーまあ、総理は種々の経済指標をしっかりと見きわめて、総理自身が来月上旬に判断をされるということであります。ただあの、先般の閣僚懇でですね、消費税を引き上げる場合には経済への影響もあるため、十分な対応策が必要であり、そうした意味合いも含めて経済政策パッケージをまとめるように、総理から10日の閣僚懇で指示があったところであります。規模や中身については、これから甘利大臣と麻生大臣を中心に詰めていく、そこはそうした事実です。
テレビ朝日記者 わかりました。10日の閣僚懇でそうした指示があったということは、素直に受け取れば、消費税引き上げとセットで経済対策のパッケージもという受けとめもできると思うんですが、そうではないんですか。
官房長官 あのー私も実は総理との会談に同席をしました。さまざまな状況を考えた中で、総理は10月上旬に、私が責任を持って判断しますと、そういうことでしたから、全くあの固めたということは事実と違うと思います。
司会 はい。
別記者 **新聞の**ですが、同じ読売の報道で、経済対策の規模なんですが、5兆円規模で総理が指示を出したということなんですが、これは大体5兆円という指示なんでしょうか。
官房長官 あのー具体的な数字は全く出ておりません。
別記者 数字というのも、じゃ、これから。
官房長官 あのー今申し上げましたように、えー経済政策、パッケージ取りまとめるようにですね、総理がこうこう指示したわけですから、それに基づいて、規模や中身については、今申し上げましたように、麻生大臣と甘利大臣との間で詰めていくということになるだろうと思います。ただ、そうしたもの全体を総理自身が掌握した上で、最終的に判断するということですから、まだ判断はしてません。

 官房長官は「全くあの固めたということは事実と違うと思います」と含みを残しているが、会談に同席していた範囲では、安倍総理が消費税増税を決心したことがないというのは事実で、それ以外に安倍総理が内心を記者に漏らした可能性の有無を配慮しているくらいことであり、常識的に考えれば、それはほぼありえないだろう。
 むしろ、官房長官による「具体的な数字は全く出ておりません」という公式発言からすると、5兆円という数字はまったくの誤報であり、これが時事などから出て来たことを考えると、この時点での大手紙の記事は、「甘利大臣と麻生大臣」の筋から出て来たと見てよいだろう。
 二大臣からの筋のリークであれば、大手紙がすっぱ抜き的に報道したこともありえないことではないが、その場合でも、「首相、意向固める」という記事に反して、首相の公式発言を保証する官邸から裏はとっていないことは明白であり、普通に考えて、これは「飛ばし」記事としてよい。
 むしろ、あの時点での私のツイート「消費税増税に関連する大手紙の飛ばしは、大手紙と政界・官界の癒着的構造の結果なんだろうけど」というのはそこを考慮してのことだった。
 
 
 

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2013.10.01

消費税増税。来年の花見は、お通夜状態になるか

 来年(2014年)4月の消費税率8%への引き上げが決まった。それなりにマクロ経済を勉強してきたように見える安倍首相のことだから、もしかするとこの時期での決定は先延ばしにするのではないかという一縷の望みはあったが、むなしかった。
 「この時期で」というのはデフレのさなかということだ。9月27日発表の消費者物価指数(CPI)では、前年同月比0.8%上昇で3か月連続プラスとなり、これをもって同時甘利明経済再生相は、閣議後会見でデフレを脱却しつつある過程にある、と述べたが、加えて、まだデフレ脱却に至っていないことも認めていた。同日のロイター「デフレ脱却しつつある過程=8月CPIで甘利経済再生相」(参照)より。


 同相は8月CPIを受け、日本経済は「長いデフレから脱却しつつあるという過程にある」との認識を示した。もっとも、電気代やガソリン代など円安の影響を除いたコアコアCPIは同0.1%低下と引き続き水面下にあり、「これがプラスに転じ、大きなショックでもない限り、もとの状態に戻らない環境が整備されたときに(デフレ)脱却といえる」と語った。
 その上で、物価が上がっても賃金が上がらないような状況では、デフレ脱却にはならないと述べ、企業業績の改善が賃上げに反映され、設備投資や消費に結びついていく「好循環」が不可欠と語った。

 安倍内閣としては、デフレの指標となる「電気代やガソリン代など円安の影響を除いたコアコアCPI」に着目し、消費税増税決定の判断材料としていた。7月9日ロイター「〔焦点〕政府のデフレ脱却判断、「コアコアCPI」採用へ」(参照)より。

 5月全国消費者物価指数(除く生鮮、コア)が前年比0.0%とマイナスを脱し、デフレ脱却の局面が近づいているとの声が一部のエコノミストから出ているが、政府はエネルギー関連を除いた「コアコア指数」で判断する方針を明らかにしている。コア指数の上昇には、単純に需要の強まりと判断できない「訳ありケース」が含まれているからだ。デフレ脱却判断のハードルが高くなり、結果として消費増税判断に影響する可能性もある。


 このようにコアコアCPIを基準にデフレ脱却時期を判断した場合、脱却を政府が宣言するタイミングは、コアCPIを基準に判断する場合よりも、かなり先送りされる公算が大きい。
 そのことは、政府が秋にも判断する消費税率の引き上げ判断に対し、微妙な影響を与える可能性がある。
 安倍晋三首相周辺のリフレ派と呼ばれる学者や専門家が、増税実施の判断にはコアコアCPIの上昇定着を伴うデフレ脱却の確認が必要と主張しかねないためだ。

 結果からすると、今日の消費税増税決定で、コアコアCPI上昇の定着を待たずに見切り発車した形になった。
 また、同種の指数として東大物価指数(参照参照)もある。
 いずれにせよ、デフレ脱却の見通しがまだたっていない時点で、消費を圧迫する消費増税が決定された。
 どうなるか。
 今日夜7時のNHKニュースでもエコノミストたちの予想をまとめたグラフを示していたが、来年3月ごろまでは駆け込み需要で消費の動向は崩れず、経済成長も緩やかに続くが、3月に入るころか、その半ばあたりで、ズドーンと急降下をはじめる。その渦中で消費税が上がることになる。
 これでは、お通夜のような暗いお花見ということになるのではないか。

 その後は、一時期の落ち込みは来年の8月に向けて持ち直していくとも予想されるが、それでも現在のような状態には戻らず、失われた30年に向けて、日本が邁進していくことなるか、あるいは、安倍首相はなんとか2年もちましたね、立派でした、みたいなことになるかもしれない。
 こうしたことは安倍首相本人もわかっていても、どうしようもならかったのだろうという気もする。
 記者会見では、安倍首相は増税の衝撃を和らげる点に配慮しているふうでもあった。日経「消費税、14年4月8%を政府決定 経済対策5兆円 首相「経済再生と財政健全化、両立しうる」(参照)より。


 消費税率引き上げは橋本龍太郎内閣で1997年4月に3%から現行の5%に引き上げて以来、17年ぶり2回目。民主党政権だった野田佳彦内閣で12年8月に成立した消費増税法に基づく。3%分の引き上げで消費税収は年8.1兆円増える見通しだが、初年度の14年度は約5兆円増にとどまる。政府は5兆円規模の経済対策で負担増の痛みを和らげたい考えだ。

 8兆円の増税に対して、5兆円規模の経済対策、というのだが、問題は単なる引き算ではないことだ。消費税は一年で終わるのではなく、恒久措置となる。さらに2015年にはさらに2%上がって10%になる。デフレ脱却もしれない状態でこれが続く。
 困ったことになったと思うが、とりあえず、8%に上げようとして、ずどーんと日本が沈むか、散りゆく桜の風景とともに静観するしかないだろう。
 
 

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