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2013.05.18

日本は人種差別の少ない社会を構成しているという調査結果

 15日だったがワシントンポストに、人種差別の度合いを世界地図に表示した記事が掲載され、話題になっていた。「世界でもっとも人種的な許容度の高い国と低い国を示した興味深い地図」(参照)という記事だ。読んだ人が一応に、おやっと思うらしく、タブロイド紙のメールは「君はびっくりするよ」とサブタイトルを付けていた(参照)。
 びっくりするだろうか。一目見ると、びっくりするのではないか。こんな感じだ。青色と赤色の二極からグラデーションになっていて、青色が濃いほど人種差別は少ない社会であり、赤色が濃いほど人種差別が多い社会という色分けである。

 誰もが自国を見る。日本はどうかなと見ると、基本、青い。つまり、人種差別の少ない社会だというのだ。
 日本の西に赤色の国があるなと見ると、韓国である。中国は中間的。台湾も青色国で日本より人種差別が少ない。フィリピンも赤色になっている。このあたりで、ちょっと誰もが首をかしげる。
 欧州はどうかと見ると、英国が人種差別の少ない社会を持ち、フランスが韓国と同じくらい人種差別の多い社会となっている。
 全体で見ると、インドが真っ赤なのにも驚く。
 なんなのこれ? と、誰もが思う。苦笑する人もいる。なので、話題になった。
 どういう基準で人種差別が少ない社会と見ているかが気になる。どうか。
 これは色の凡例にもあるが、「ご近所に別の人種の人がいてもかまわないですか?」という質問に対する回答を集計したものだ。青色国では、「別の人種の人が近所で暮らしても別にかまいませんよ」という回答者が多い国で、赤色国では、「近所に別の人種の人がいるのはいやだな」という回答者が多い国だ。
 疑問が起きる。二つ。ご近所の異人種生活を許容することが人種差別の過多の判定基準になるのか。また、その回答をそのまま正直に受け取っていいのか。
 最初の疑問については、むしろ、そういう風に問いかけたほうが生活実感に沿っているのではないかと考えたのが今回の調査者たちの創案だった。
 二つ目の疑問、回答を真に受けていいのか。規範性を共有している国家の国民、つまり、人種差別はいけないというのを建前にしている国家の国民と、正直に語っただけという国民の差かもしれない。どう考えたらよいか。
 この疑問は該当のワシントンポストの記事でもいろいろ言及され、さらに納まりがつかずさらに考察の記事(参照)まで書かれた。こうした議論が気になる人はオリジナルを参照するとよいだろう。
 私の考えでは、概ねこの地図の色分けで受け止めていいように思った。公的に問われたときその社会の市民が許容すると答える以上のことを求めるのは現実には難しいからだし、その規範性はそれなりに許容に沿っていると思われるからだ。
 というわけで、それなりにこの色分けの意義を認めたうえで、ではこれはどういうことなんだろうという考察が元の記事で展開されている。ざっくり簡単にまとめてみる。
 まず、ラテン系の国は人種の許容度が高い。またコモンウェルス(大英帝国の名残)でも許容度が高い。例外はヴェネズエラだが、ナショナリズムを高揚した反動だろう。
 他人種への許容度が低い国の理由は意外とよくわからない。インドや香港、ヨルダンなどだ。
 欧州はいろいろだが、フランスの許容度が低いのは注目される。中東は概ね許容度が低い。
 韓国の許容度の低さは異例だ。一般的に経済が発展すると他人種に許容になるものだが韓国は例外である。研究者は、韓国の国家血統主義が特異なため(racial-national identity as unique)としている。また、韓国への東南アジアからの流入が多いことと、日本と対立しつづけていることが挙げられている。
 パキスタンの許容度の高さは異例だ。韓国とは逆に経済の進展が低いのに許容度が高い。理由の考察は含まれていない。
 以上といったところ。概ね、歴史や国家主義の背景が多いように思える。
 いずれにせよ、日本は日本のネットで騒がれているほど、社会学的な調査の一例からは人種差別国としては目立っていない。普通に健全に発展した先進国のように見える。
 私の生活実感からしてもそう思う。
 先日連休のおりいろいろ出かけた際、中国語や韓国語、タイ語、フィリピン語などの会話を聞くことあったが、以前と比べると、おやっと気がつくと、耳に入るくらいだった。それほど目立たないのである。おそらく日本に暮らしているこれらの人々は、行動規範としては日本人と同じだからだろう。日本人のように暮らすことに慣れたのだろう。
 
 

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2013.05.17

橋下市長発言を米報道官が初批判した話題について

 今朝(日本時間17日)のニュースだが、旧日本軍の慰安婦を巡る橋下徹大阪市長による発言について、米国務省が非難したという報道が流れた。以下、この問題を論じるというのではないが、報道の過程をメモする意図で追ってみたい。
 まず報道だが、NHKでは「維新 橋下氏発言問題の事態収拾急ぐ」(参照)の関連ニュースとして「米国務省「異常な発言で不快」」として扱っていた。NHK報道らしく「従軍慰安婦」という術語には「いわゆる」が冠せられている。


 いわゆる従軍慰安婦の問題などを巡る日本維新の会の橋下共同代表の発言について、アメリカ国務省のサキ報道官は、「異常な発言で不快だ」と述べて、強く非難しました。
 そのうえで、「われわれは被害者に心からの同情を表すとともに、日本がこの問題や過去の問題について近隣諸国と協力し、前に進むべく関係を育むことを望んでいる」と述べて、日本政府に対して韓国や中国との関係改善を求めました。

 共同では「橋下氏発言は「言語道断で不快」 米報道官が初批判」(参照)がホームページではサキ報道官の写真ともに報道された。氏が女性であることの情報を補う意図があるかもしれない。

【ワシントン共同】米国務省のサキ報道官は16日の記者会見で、従軍慰安婦は必要だったとした、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長による発言について「言語道断で不快だ」と非難した。
 橋下市長の発言をめぐっては、在日米軍に風俗業者の利用を求めたことに絡んで米国防総省のリトル報道官が、米軍が買春を拒否するのは「言うまでもない」と述べていたが、米政府当局者が公式の場で正面から批判したのは初めて。
 サキ報道官は従軍慰安婦について「性を目的に人身売買された女性たちの身に起きた出来事は嘆かわしく、とてつもなく重大な人権侵害であることは明白だ」とも指摘した。

 ロイターでは「橋下氏の慰安婦発言は「言語道断で侮辱的」、米国務省が非難」(参照)である。

[ワシントン 16日 ロイター] 米国務省のサキ報道官は16日、日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長が第2次世界大戦中の旧日本軍の慰安婦について「必要だった」などと発言したことについて、「言語道断で侮辱的」だと非難した。
 サキ報道官は「当時、性を目的として人身売買された女性たちに起きたことは嘆かわしく、大規模かつ重大な人権侵害であることは明白だ」とし、米国政府は日本が過去の過ちについて周辺諸国と協力して対処することを望んでいると語った。
 菅義偉官房長官は14日、橋下氏の発言について直接コメントはしなかったものの、「政府の立場は、これまでも述べているように、従軍慰安婦の問題で、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々を思うと非常に心が痛むという点については、安倍内閣も歴代内閣と同様の思いを持って臨んでいる」と述べた。

 産経では「橋下氏発言は「言語道断で侮辱的」国務省報道官が初めて批判」(参照)である。

【ワシントン=犬塚陽介】米国務省のサキ報道官は16日の記者会見で、慰安婦制度が当時は必要で、他国も活用していたとする日本維新の会の共同代表、橋下徹大阪市長の発言を「言語道断で、侮辱的だ」と厳しく批判した。米政府高官が強い言葉で、公然と不快感を示したのは初めて。
 サキ報道官は記者会見で、慰安婦として女性が売買されたことは「嘆かわしく、明白で並外れた人権侵害だ」と指摘し、女性に対する「心からの深い同情」を示した。
 また、日本に対して、慰安婦や過去の歴史を「処理する近隣国との取り組みを継続し、前進を可能にする関係を築くことを望む」と注文をつけた。
 橋下市長の発言をめぐっては、国防総省のリトル報道官が「日本の一当局者の歴史分析にはコメントしない」としていた。

 朝日新聞では「米国務省、会見で橋下氏発言を非難 「侮辱的」と言明」(参照)である。

 【ワシントン=大島隆】米国務省のサキ報道官は16日の記者会見で、戦時中の旧日本軍の慰安婦について「必要だった」などとした日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長について、「発言は言語道断で侮辱的だ」と述べ、オバマ政権として橋下氏の発言を強く非難する立場を正式に表明した。朝日新聞記者の質問に答えた。
 サキ氏は「日本が近隣諸国とこの問題やほかの過去の問題に取り組み、お互いに前進できる関係を構築することを望む」とも話した。

 以上、検討のために五つの報道ソースを引用したが、主要な点について大きな差違はない。報道に齟齬があれば報道の歪みのようなものが暗示されるが、そうした問題はなさそうに見える。
 が、微妙に報道の副次的なポイントが違うことも読み取れる。NHKはこれを日中韓の関係の問題であることが示唆されている。共同では背景への配慮がない。ロイターでは日本政府の公式見解を示唆している。産経では以前の別報道官との対比がある。朝日では、この質問を促したのが自社の記者であることを明かしているが、この点で、他報道では今回のニュースが朝日新聞記者の質問への回答で生じたことへの言及がないことがわかる。
 オリジナルはどのようなものであったか。その前に、オリジナルの全文だと称する記事が朝日新聞のサイトに掲載されていたのでこれも検討材料に引用しておこう。「橋下氏発言を非難する米政府当局者のコメント(全文)」(参照)である。

 米政府当局者のコメントの原文と日本語訳は以下の通り。

→橋下氏のこれまでの発言
     ◇
【原文】
 Mayor Hashimoto’s comment is outrageous and offensive. As the United States has stated previously, what happened in that era to those women, who were trafficked for sexual purposes, is deplorable and clearly grave human right violations of enormous proportions. We understand that mayor Hashimoto is planning to travel to the United States, but in the light of these statements, we are not sure that anyone will want to meet with him.

【日本語訳】
 橋下市長の発言は、言語道断で侮辱的なものだ。米国が以前に述べている通り、戦時中、性的な目的で連れて行かれた女性たちに起きたことは、嘆かわしく、明らかに深刻な人権侵害で、重大な問題だ。橋下市長は米国訪問を計画しているそうだが、こうした発言を踏まえると、面会したいと思う人がいるかどうかはわからない。


 同社サイトの記事は後半が会員のみになっていることがあるので、この先の記事を含めての「全文」なのかということが、該当サイトからだけでは読み取れないが、先の日本国内報道ソースには、朝日新聞を含めて、米国としてはこの問題について周辺諸国と協力して対処するよう要望しているので、上記の一段落が全文であることはないだろう。
 加えて、訳文をみると多少違和感があるので、試訳してみたい。

 Mayor Hashimoto’s comment is outrageous and offensive. As the United States has stated previously, what happened in that era to those women, who were trafficked for sexual purposes, is deplorable and clearly grave human right violations of enormous proportions. We understand that mayor Hashimoto is planning to travel to the United States, but in the light of these statements, we are not sure that anyone will want to meet with him.

【試訳】
 橋下市長の意見は恥知らずで容認しがたいものです。米国は以前に述べたように、性目的で人身売買されたこれらの女性についてあの時代に生じたことは、嘆かわしいことであり、明らかに深刻で大規模な人権侵害です。橋下市長は米国旅行を計画していると私たちは理解しているが、こうした声明の視点から見ると、彼に面会したいとする人がいるなど確信が持てません。

【朝日新聞訳】
 橋下市長の発言は、言語道断で侮辱的なものだ。米国が以前に述べている通り、戦時中、性的な目的で連れて行かれた女性たちに起きたことは、嘆かわしく、明らかに深刻な人権侵害で、重大な問題だ。橋下市長は米国訪問を計画しているそうだが、こうした発言を踏まえると、面会したいと思う人がいるかどうかはわからない。


 試訳は拙いのだが、それでも朝日新聞訳が意訳であることはわかるだろう。政治的な英語の表現は難しいものなので、日本人に報道する際に意訳することは不思議ではないが、普通に訳として見てみても、この朝日新聞訳には疑問点が二つある。
 一つは"trafficked"が正確に訳出されていないことだ。朝日新聞訳では「連れて行かれた」と意訳されているが、"trafficked"は"trafficked women"が「人身売買された女性」と通常訳されるように、単に「取引された」というより、「人身売買」が強調される。日本は現在でも人身売買について米国から懸念を抱かれている国家であり、この問題に熟知しているはずのサキ報道官の意図からすると、この点が明確に日本に伝わらないのは残念なことだろう。別の言い方をすれば、この問題の米国の要点は、"trafficking"でもあるので、朝日新聞はもう少し国際的な人権問題の意識を持ったほうがよいかもしれない。
 二点目はこの部分の「全文」が米国発表の該当部分と異なることである。この点については、後で該当部分を取り上げるので比較すれば一目瞭然だろうが、公式発表と朝日新聞のその時点の取材が異なっているのかもしれない。
 さて、当のオリジナルはどうであったか。これはすでに米国務省から「Jen Psaki Spokesperson, Daily Press Briefing, Washington, DC May 16, 2013」(参照)に公開されている。該当部分を見よう。全体の流れを見るために、前後の質問を含めておこう。前にある話題は、パキスタンでシャリフ元首相の最大野党が選挙に勝利し、彼が首相に就任することに関連する。この問題はパキスタンの政情に関連して国際的には関心が持たれている。また朝日新聞記者の次の質問は、フィリピン沿岸警備隊が台湾漁船を銃撃した問題である。日本では報道が少ないが国際的には関心が持たれている。

QUESTION: And also as far as his ceremony is concerned, is the U.S. sending anybody for his ceremony? And also, is Secretary’s going to be in the region any time soon?
質問:そしてまた、彼の首相就任式に限定し、米国は彼の式のために誰かを行かせていることになるでしょうか? そしてまた、国務省人員が、今すぐ地域に赴くことになるでしょうか?

MS. PSAKI: I don’t have any update for you on either one, no scheduling announcements or any announcements on anyone attending, but I’m happy to look into it for you.
サキ氏:どちらの質問についても最新情報はありません。スケジュール発表もまた出席社の発表についてもです。しかし、あなたのために調べることができてよかったと思っています。

Why don’t we go to the back? You’ve been very patient.
後ろの方にしましょうか? あなたはずっと辛抱してました。

QUESTION: Hi, my name is Takashi from Japanese newspaper Asahi. Osaka City Mayor Hashimoto recently made a comment on the so-called “comfort women” issue, arguing that even though it is unacceptable from the moral perspective value, but the comfort women were necessary during the war period. And he also argued that it is not fair that only Japan is criticized by the United States and other countries, because there are other country military that were provided sexual service by prostitute. And do U.S. has any position on his comment or criticism against the United States?
質問:やあ。私の名前はタカシです。日本の朝日新聞から来ました。橋下大阪市長は最近、いわゆる「従軍慰安婦」問題に言及し、倫理的な点からは受容しがたいとしても、戦時に慰安婦は必要だったと議論しました。また彼は、売春によって性的なサービス提供する他の国の軍隊もあったのに、日本だけが米国や他国から批判されるのは公平ではないとも主張しました。そこで米国としては、米国に向けられた彼の批判についてどのような立場を取りますか?

MS. PSAKI: We have seen, of course, those comments. Mayor Hashimoto’s comments were outrageous and offensive. As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions. We extend, again, our sincere and deep sympathy to the victims, and we hope that Japan will continue to work with its neighbors to address this and other issues arising from the past and cultivate relationships that allow them to move forward.
サキ氏:私たちはもちろんその言及を知っています。橋下市長の意見は恥知らずで容認しがたいものです。米国は以前に述べたように、性目的で人身売買されたこれらの女性についてあの時代に生じたことは、嘆かわしいことであり、明らかに深刻で大規模な人権侵害です。私たちは重ねて被害者のかたに誠意を込めた同情を表し、日本が近隣国とこの問題や過去にまつわるその他の問題について議論を継続し、これらの国の関係が前進できることを望んでいます。

QUESTION: Do you describe this issue sex slave or comfort women?
質問:あなたはこの問題をどう表現しますか、性奴隷または慰安婦?

MS. PSAKI: Again, I don’t know that I’m going to define it. You kind of laid out the specific details there, and we have described this issue in the past as comfort women[ii].
サキ氏: 繰り返しますが、私はそれ定義するつもりがあるかはっきりしていません。あなたはそこで詳細を展開しているのしょう。私たちはこの問題を、かつて慰安婦として表現しています[ii]。

Go ahead in the back.
先に移ります、その後ろのかた。

QUESTION: It’s about Taiwan and Philippines. So yesterday in Manila, American Ambassador to the Philippines Harry Thomas talked to the reporters and expressed confidence that the two sides will work together, and these things will be resolved through negotiation. And he said “we” applaud Philippines’ expression of regret over this incident. So do you consider that his statement represented the position of the U.S.?
質問:台湾とフィリピンに関連したことです。つまり、昨日、マニラでハリー・トーマス・フィリピン大使が記者に話しかけ、両国が協調し、これらの問題が外交的に解決できることに自信を示しました。また彼は、「私たち」は事件について遺憾に思うと述べました。そこでですが、これは米国としての立場であるとあなたは考えますか。


 朝日新聞記者の前後の質問は、現在の国際情勢に関連した問題である。朝日新聞記者は質問する気満々だっただろう。が、現在の国政情勢に関連してない質問はどうしようかなとためらっていたところを、サキ報道官に促されたような印象もある。
 結果は、特に新しい見解はなく、もういいですよねという感じで流されている。流れのなかで見ると、橋下発言に米報道官があらためて怒りを示したというより、そんなの怒って当然でしょくらいの話である。
 また、米発表では、橋下市長に会う人はいないでしょうという部分の発言は掲載されていない。公式には削除されたのだろうか。
 報道の末には、朝日新聞記者による「性奴隷」か「慰安婦」との問いの回答に、[ii]という注が付いているが、以下のようなものである。

[ii] Rather than focusing on the label placed on these victims, we prefer to address the fact that this was a grave human rights violation of enormous proportions. The United States is also committed to working with our partners and allies around the world to denounce modern-day slavery and trafficking in persons no matter where it occurs.

【試訳】
私たちは、これらの犠牲者の上に貼り付けたラベル(どう呼ぶか)に焦点を当てるのではなく、これがて明らかに深刻で大規模な人権侵害だったという事実を述べたいと思います。米国はまた、世界中の私たちの協力者と同盟国とともに、どこで起きようが、現代の奴隷制と人身売買を非難することで協調活動をしています。


 注が特記されたのは、米国では、慰安婦問題は、現在の奴隷制や人身売買に繋がる問題として関心が持たれている点をあらためて重視しているからだろう。
 なお、今回日本で報道されたこの米国の記者会見では、台湾・フィリピン問題の後に、再度日本記者からの質問があり、そこでは北朝鮮拉致被害者問題に関連して飯島内閣官房参与の北朝鮮訪問の質疑があった。明確な発言が引き出せなかったこともあるだろうが、この点について国内報道は見掛けなかったように思う。
 

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2013.05.16

結婚がオワコン(終了)とネットで話題になるのはなぜなんだろう

 この冬ごろだっただろうか、ネットで「結婚はオワコン」という表現を見かけるようになった。オワコンというのは、「終わったコンテンツ」の略で、コンテンツというのは「中身」という意味。普通は、提供されるサービスの中身ということ。各種サービスが人気がなくなったり時代遅れになると、実際に終了になってなくても「あれはオワコンだね」とか言われる。もうダメだねという意味だ。結婚がオワコンというのは、結婚なんかもうする人はいないよ、という意味なんだろう。
 結婚なんてもうする人はいないよ、というのは、でも、どうなんだろうか。本当なんだろうか。
 この手の話題は、個人の主観が背景にあるにしてても、主観で言ってもしかたがないから、いろいろ統計みたいなものが出てくるわけなのだが、個別にどのネットの記事がというのもなんだけど、それって「結婚はオワコン」という命題をサポートしている統計値なのか、なんかのギャグなのか、よくわからないことが多い。
 これはもしかすると、ネットによくある大喜利ネタなのかもしれないなと思った。では僕もちょっと統計とかひっぱりだして、似たようなネタを作ってみようかなとも思った。
 ネットのネタには元ネタというのが必要だし、それなりに根拠がありそうな元ネタを使うと話題になりやすいので、内閣府にある比較的近年の「平成23年3月 少子化社会に関する国際意識調査報告書」(参照)にある結婚の話題を拾ってみた。ちなみに、ブログのネタを誤解する人が多いので、あらかじめ言うと、内容に関心があるならブログのネタなんか読んでなくて、元ネタをきちんと読んだ方がよいと思いますよ。あるいは本を買うとか。ネットの無料コンテンツは、現状、広告的なリンク集くらいの意味しかないんだから。
 ネットのネタなんてそんなもんよ、ということで、話芸やアオリで引っ張るのが大喜利の特徴だが、それもなんなので、ここは最初に結論だけで示しておくと、結婚がオワコン、ということは、全然なさそうだ。
 あれです、オワコンに見えるのは定義の問題というか、定義の詐術みたいなものはないか。
 結婚とは何か? いろんなこと言えるし、僕の経験談な考察については自著『考える生き方』(参照)に書いたのでブログでまでは書かないけど、統計とかで見る場合は、定義が必要になるわけですよ。そこで、公的な定義というのは公的な関わりをどう見るか、あるいは、実態をどう公的に把握するかということになる。ちょっと難しい言い方をすれば規範的に見るか記述的に見るかというか。
 結婚を公的制度として見ると、当然各国で制度が違う。という点で、それを考慮せずに杓子定規に比較するとまじめくさったナンセンスな人気エントリーが出来ちゃう。だからネットのネタになるというのもあるけど、この手の話題は、まず実態から見るのが社会学的な考え方だろう。
 その意味で、結婚というのが個人によるパートナー生活選択という点でオワコンなのかと問うなら、実際に長期にわたり同棲している関係も、国際比較上は事実上の婚姻関係と見るといい。
 その場合、同性の結婚というのはちょっと複雑なのだけど、男女の長期同棲なら、出産や育児にも直接関係しているので、やはり公的には、長期の男女同棲も広義に結婚の関係と見てよいだろう。実際、内閣府の調査もそうした実態から見ている。
 どうか。制度的な既婚と同棲関係を合算して広義の婚姻形態として見ると、日本、韓国、米国、フランス、スウェーデンの文化的な濃淡があると見られる先進国の代表五国で比べると、あんまり差がない。グラフは各国とも2005年と2010年の二期を並べているが、内訳は変化しても総数はあまり変わっていない。

 どういうことかというと、制度とか時流によって、制度的な結婚にするか、私的な同棲にするかという違いは先進国ではあっても、基本的に広義の婚姻形態にはあまり変化がないということだ。結婚、全然、オワコンじゃないじゃないですか。
 別の言い方をすると、日本の場合、未婚率の上昇が出生率低下の要因という議論が多いが、実態はそれほど他国と変わっているわけでもない。ただし、これにはちょっと留保がある。内閣府の報告書でもそこは触れている。
 これも結論からいうと、日本の場合、若い世代で既婚・同棲率が低いためだ。言い方はなんだけど、欧米の場合は若い時代の同棲中に、まずぽこんか、ぽこぽこんか、とりあえず子供を産んでしまうということのようだ。
 日本の場合は、そうしたことがあまりないのか、あるいはそこで産む前に留めてしまうということかなとも推測する。
 報告書を読んでいくと、日本の40代だと、結婚・同棲経験率は他国より低いわけではない。どうやら長期同棲の関係が形成されるのが日本の場合、40代近くにずれ込んでいると見てもよいだろう。
 なかなかよい人に巡り会えないという思い込みの妥協が付くのが30代後半ということではないだろうか。そして事実上の結婚関係に至るのが30代半ばというようになったので、出生率が低下しているとも見てよさそうだ。
 報告書は、ではどうすればいいかについては、若い世代が広義の婚姻関係が維持できるような収入の安定が重要だといったありきたりな結論にしていて、それはそうだろと思うが、関連で、ちょっとなあ、結婚阻害について、ああ、それがあったかあ、という要素の指摘があった。親の介護である。
 単純な話、30代半ばに婚期となると、男女双方、親の介護をどうしよう問題が結婚に関係しているわけだ。これはちょっときついだろうな、と他人事みたいに言うけど。
 このあたりで、僕もブロガーらしいことを考えたのだ。
 親の人生を子供の人生と切り離せるように、親の婚姻関係のほうも変えやすくしたらよいのではないだろうか。親子ぉという関係を薄くするというか。
 あるいは、若い時に出産に至る婚姻関係をためらうのは結婚を重視しすぎているので、もっと結婚を軽くしたらよいのではないか。カジュアルに、ツイッターでブロックするみたいに。あるいはその人にとって現在の結婚がオワコンなら新しく別のを始めるとか。
 結婚というは、男女とも、人生のライフサイクルに合わせる変動的なありかたと見ていってもよいだろう。米国とかだと、すでにそうなっている感じで、若い時のパートナー、中年期のパートナー、老年期に至るパートナー、というふうに婚姻が特定のライフサイクルの出来事化してきている。
 ただし、その米国でもそうだけど、結果はたいていの場合、中年の男が若い女と結婚するということにはなりそう。
 
 

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2013.05.15

橋下共同代表による問題発言の海外反響について

 日本維新の会・橋下共同代表が大阪市で13日、記者団に向けた発言に、NHKが言うところの「いわゆる従軍慰安婦問題」が含まれていて国内で話題になっていた。今朝ツイッターを見たら、毎日新聞・和田浩明記者がまとめた英語圏での報道のリスト(参照)も話題になっていた。
 私は、グーグルニュースが自動的にまとめたリストから該当の話題を辿って読んでいただけなのだが、そのわりに特に見落としていた記事はないようだった。これらのリストの記事は用語の選択などの点も含め、各報社の特徴などがよく表れているので、比較して内容を読んでみると海外報道での日本の扱いを知る上で格好の例になると思う。
 ツイッターではこのリストを元に、海外ではこんなに橋下発言が話題になっているという話題もよく見かけた。たしかにどれもベタ記事扱いではないので、話題になっていると言える。ただ、こうしてこの話題だけに焦点を当てて抜き出すとそう見えるかなという印象ももった。昨今の関連の海外報道の文脈のなかで見ると、日韓のこうした問題は米国政権側としては比較的抑制されたトーンが感じられるからだ。
 特にこの手の話題に力を入れるニューヨークタイムズ紙での扱いだが、自著『考える生き方』(参照)でも触れたけがオーディブルのおまけで配信される同紙のダイジェスト(といっても1時間くらいあるけっこうなものなんだけど)を聞くと、この話題の国際欄での扱いが意外に低かった。代わりにベンガジゲート問題やアフガニスタンでの子供を含めた民間人虐殺が主要な話題になっていた。基本、橋下氏はまだ日本の政治に直接影響をもたらしているわけではないし、逆に日本政府や世論の多数も橋下氏のような考えを支持しているわけでもないことは、国際的にある程度知られているし、さらにレイシズムの文脈で見るなら各国自身も問題を抱えている。扱いの重要性を低くしているのも頷ける。
 話を昨今の報道文脈に戻すと、先日のエントリーでパク大統領の米議会スピーチの様子を取り上げたが(参照)、こうした米議会スピーチの際の、関連する対日意識が興味深い。具体的にはパク大統領は「歴史に目を閉ざす者は未来が見えない」という表現を使ったことだ。普通に受け取れば当然対日批判ではあるが、あえて日本を名指ししていなかった。これが米議会でそのように抑制されたというところに国際情勢読み取りのポイントがある。
 簡単にいうとパク政権としては、米国の手前不用意に米同盟国の日本を批判したくないし、かといって韓国内政上、朴正煕の娘ということで「親日派(非国民のような意味合い)」と見られることを恐れるというバランスを取ったものだった。
 米側も、オバマ政権による北朝鮮政策の失策にも見える行き詰まりと、日本ではあまり報道されていないのだが韓国自身が米国の核の傘への疑念から単独の核化を望んでいることに苦慮していて、その配慮から韓国国民向けにパク大統領を厚遇するという演出をしていた。総じていえば、問題の主軸にあるのは、北朝鮮の核化の封じ込めであり、その文脈で見ると、日本の歴史意識問題は当面は抑制しておきたいというのがパク政権とオバマ政権や議会の基本的な総意になっているようだった。
 逆に報道からは見えづらいので議論しづらいのだが、安倍総理が国立追悼施設に否定的なほうが外交的には問題になってくるだろう(参照)。日本の外務省としてもこれは困ったことになっていると頭抱えているのではないだろうか。
 冒頭のリストに戻ると、これに挙がっている星条旗新聞の記事「大阪市長:『粗野な海兵隊員』は売春婦を使うことを考慮するべきである」(参照)が、現場を知悉していることに加え、他の報道メディアの政治・外交対応とは違う背景を持っていることから興味深い。
 基本的に日本バッシング的にも見える海外報道の大半は、日本に派遣されている記者の質にも関連するだろうが、日本国内のバッシング報道をつまみ食いしてまとめたタイプが多いのだが、この星条旗新聞の記事はそれらと骨格が違っている。なお、星条旗新聞は軍部の報道機関なのでその偏向があるとナイーブに思い込んでしまう人は同紙の歴史を少し調べてみるとよいだろう。なかなか気骨のある報道機関である(参照)。
 星条旗新聞の記事では、今回の話題について、いわゆる歴史認識問題として焦点を当てるだけではではなく、橋下発言の全体を見ている。その意味で、前提として日本国内報道としての橋下発言をNHK報道から顧みておきたい。「橋下氏 慰安婦必要の認識を重ねて示す」(参照)より。


 日本維新の会の橋下共同代表は、13日夜、大阪市で記者団に対し、いわゆる従軍慰安婦問題について、「いいか悪いかは別にして、軍の規律を維持するために当時は必要だった」と述べ、当時としては慰安婦の制度が必要だったという認識を重ねて示しました。
 この中で橋下共同代表は、いわゆる従軍慰安婦問題について、「いいか悪いかは別にして、軍の規律を維持するために当時は必要だった。戦争に勝った側が、負けた側を乱暴するという事実は山ほどあり、そういうものを抑えるためにも、慰安婦のような制度が必要だったのは厳然たる事実だ」と述べ、当時としては、慰安婦の制度が必要だったという認識を重ねて示しました。
 一方で橋下氏は、「慰安婦制度を、すべて否定するとかすべて正当化するのはだめだ。戦争の悲劇で生まれたものだから、意に反して慰安婦となった方には配慮を持って接しなければならない。政府が、拉致して暴行脅迫で無理やりそういう仕事につけさせたと世界から非難されているのは、違うと言わなければいけないし、国を挙げて拉致したという証拠が出てくれば、日本国として反省しなければいけない」と述べました。
 また、橋下氏は、今月上旬に沖縄のアメリカ軍普天間基地を視察したことに関連して、「海兵隊の性的なエネルギーを解消するために、司令官に対して、『もっと風俗業を活用してほしい』と言ったら、司令官は凍りついて、『禁止している』と言っていた。法律の範囲内の風俗業は認めないと、建て前論ばかりでやっていたらだめだ」と述べました。

 NHK報道は以上だが、対して、星条旗新聞の記事で重視されているのは、橋下氏による「もっと風俗業を活用してほしい」という部分である。
 ここに焦点を当てると、NHK報道に若干疑問が生じる。NHK報道に間違いがあるというのではない。米司令官の発言は橋下氏による証言であって、実際に米司令官が橋下氏のこの発言に対してどのような応答したのか、その事実がNHKでは報道されていないことだ。星条旗新聞の記事では米側のコメントがこの時点ではないとしている。
 「慰安婦(comfort women)」ついては、星条旗新聞の記事では、日本軍が自国民女性に加え、コリアン(朝鮮人)、中国人、および他国民を性利用したとして、日本人女性の慰安婦を筆頭にあげているのも特徴と言えるかもしれない。
 同紙は、橋下氏が占領下日本での遊興施設設置について語った点も言及しているが、星条旗新聞らしいのは、こうした「売春支援」は、現状では、統一軍事裁判法の下で軍法会議に服すると明記したことである。
 なかでも興味深いのが、売春支援("Patronizing a prostitute")という表現である。これが「慰安婦」の文脈で出てくることは、そう無理なく読めると思うのだが、星条旗新聞としては、該当歴史問題を「性奴隷」というよりは、売春支援("Patronizing a prostitute")として見ているからだろう。そう見ることで現在の問題との繋がりが論じられる。
 こうした視点から記事は、売春が日本国の法律で禁止されていることや、そうはいっても、類似のソープランド("Soapland")があることに言及し、また問題のあるマッサージ店が横須賀近辺にある実態についても触れている。さらに、このタイプのマッサージ店で米兵が金を盗まれた事件に言及し、日本に派遣された米兵はこうした点についてオリエンテーションを受けておくようにと注意している。
 記事の最終段では、ワシントンDCを拠点としたNPO法人「ポラリスプロジェクト」の藤原志帆子氏による、性産業には人身売買が関与していることが多いという指摘がある。文脈的には、慰安婦問題が現在の問題でもあることへの留意である。
 星条旗新聞の該当記事の展開は以上の通りなのだが、なぜ同紙がこうした展開をしているかという点については、同紙の近年の話題の文脈からは、在韓米軍での「ジューシー・バー」の問題が背景にうかがえる。同紙の記事インデックス「韓国の”ジューシー・バー”」(参照)に数年分の話題がまとめられているが、「ジューシー・バー」は問題のある遊興施設で、在韓米軍近辺にあることが多い。同紙の記事によると、フィリピンなどからだまされて連れられてきた契約的な隷属女性も多いらしい。
 
 

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2013.05.14

軍都東京・東京陸軍航空学校のこと

 先日、ひょんなことから東京陸軍航空学校の逸話を聞いて、驚いたというのではないけど、感慨深く思ったことがあり、こういう話、現代の若い人にはどう知らせているのだろうかと気になって、わかりやすそうな本として、ムック本だが、『知られざる軍都東京』(参照)、『知られざる軍都多摩』(参照)、『知られざる占領下の東京』(参照)を読んでみた。

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知られざる軍都東京 (
 自著『考える生き方』(参照)にも書いたけど、僕は昭和32年生まれで、東京オリンピック前の東京や日本の風景をリアルに知っているし、その後の高度成長期の変化をそれ以前の風景に感覚として結びつけることができる。それを手がかりになんとなく、自分の過ごしてきた東京の戦前・戦中・戦後の風景について知っているし、折に触れて関連の書籍なども読んではいたが、知識の抜けは多いし、全体像みたいのもまだよくわからない。冒頭で触れた逸話も、ちょっと虚を突かれた感じがしたのだった。
 東京陸軍航空学校についてはウィキペディアなどにけっこうしっかりした記述があるだろうと思って見たら、自分が思っていたよりは薄い(参照)。

 勅令第599号「東京陸軍航空学校令」(昭和12年10月22日、同年12月1日施行)により、1937年(昭和12年)12月に埼玉県大里郡に設置された後、1938年(昭和13年)8月に東京府北多摩郡へと移転した。
 本校の目的は、14歳から16歳の生徒に少年飛行兵となるため一年間の教育を行うことであった。その後、操縦の実技訓練は熊谷陸軍飛行学校で、技術の訓練は陸軍航空技術学校で実施した。通信はのちに水戸陸軍飛行学校で教育されることとなった。

 簡素過ぎて込み入った間違いもしようにないが、私はちょっとこれは違うかなと思う部分があり、実は先のムック本でもその情報がなくて落胆したのだった。
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知られざる軍都多摩
 ウィキペディアの説明では歴史風景の感触がわからない。その点、中央大学FLP松野良一ゼミによる「東京陸軍航空学校 少年飛行兵の記憶」(参照)では現在の武蔵村山の風景から当時の写真などを配してわかりやすい印象を与える。が、後半は九州の知覧など特攻隊の一般的な話に流れてしまい、東京陸軍航空学校の背景や当時の状況などがわかりづらい。見ながら、番組に登場される、この研究をしている東大和市の教員の方に会って話を伺ったほうがよいかなとも少し思った。ちなみに、番組はユーチューブにもある。

 この東京陸軍航空学校にこだわることの一つは、戦前から戦後に繋がる「公共」の隠された姿にも関心があるからだ。都下で施設がある戦跡の場合、その領域は戦後、ほぼそっくり別の公共施設や教育施設に代替化されることが多い。東京陸軍航空学校については現在、石碑などはあるにせよ、事実上跡形もなく撤去され、代替の施設が見当たらず、施設再活用の経緯も感じられない。あたかも過去を抹殺するかのようになっているのはなぜなのか、疑問に思っている。名目上は、食糧難に備えるために畑・保安林・採草地とされたことだが、地方のにわか仕立ての飛行場が農地・森林に戻るというのでもない。
 とはいえ関連施設についてはまったく無くなったわけではなく、村山陸軍病院域が東経大になっているのと、どうやら村山医療センターが村山陸軍病院の継続のように見えることだ。
 また、東京陸軍航空学校の領域を詳しく見ていくと(参照PDF)、武蔵村山の四中、七小、四小、さらに大南公園、屎尿処理施設が含まれていることがわかる。だが、学校については番号から見て戦後すぐのものではないだろう。


 他にも先のムック本をぼんやり見ていて、東京陸軍航空学校と日立航空機立川工場が近いことに気がつき、こちらの銃弾の残る変電所遺跡がもしかすると、東京陸軍航空学校の慰霊的な意味を持たされているのかと思った。もちろん、日立工場自体で、1945年2月17日から3回の爆撃を受け、111人が殺害されているのでその慰霊というのが一義的ではあるだろう。


旧日立航空機立川工場変電所

 こうした歴史は該当市町村の資料に当たらないとなかなか詳細がわからないので、調べるとなると手間暇かけることになる。が、考えてみると情報とは元来そういうもので、グーグルで検索して終わりというものでもない。
 ムック本を見ていてもう少し知りたいなと思ったのは、特に地図で俯瞰して思ったのだが、鉄道網の変遷が現代の地図からはわからないことだ。こうした都下の軍史跡は、往事は鉄道など交通網との強い関連があったと思われる。そうしたロジスティクス的なものや、歓楽街との関連も知りたいと思った。というか、歓楽街が深く軍に関連しているというのが冒頭の逸話でもあった。

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知られざる占領下の東京
 東京都もいろんな教育活動をしていると思うのだが、都民にわかりやすい一般的な軍施設の歴史や占領から戦後の変化をまとめた書籍など出版すればよいと思う。すでに出されているのかもしれないが、ちょっと見当たらなかった。
 
 

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2013.05.13

安倍首相は英語の発音矯正をしたらいいのに

 安倍首相が現在の政権について対外的にどう主張しているのか、本人の言葉をきちんときくべきだなと思って、日本時間だと2月23日だったが、安倍晋三首相がワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で政策スピーチを聞いてみた。内容は官邸のサイトにある。「日本は戻ってきました」(参照)にある。


 総理の職を離れて、5年という長い年月を送りました。それは、わたしにとって省察の時となりました。何はともあれ、これからの日本はどこに立つべきか、ということについてであります。あれこれが、果たして日本にはできるだろうかとは考えませんでした。何を、日本はなし続けねばならないかに、関心が向くのが常でした。そのような場合、変わらず胸中にありましたのは、次の3つの課題であります。
 いまやアジア・太平洋地域、インド・太平洋地域は、ますますもって豊かになりつつあります。そこにおける日本とは、ルールのプロモーターとして主導的な地位にあらねばなりません。ここで言いますルールとは、貿易、投資、知的財産権、労働や環境を律するルールのことです。
 第二に、日本はこれからも、誰しもすべてを益すべく十分に開かれた海洋公共財など、グローバルコモンズの守護者であり続けねばなりません。

 なかなかいい内容のスピーチではないかと思ったし、口調からは真摯な心情も感じ取れた。が、この官邸の動画にもあるのだが、英語の発音は典型的なジャパニーズ・イングリッシュだったので、ああ、これはちょっと発音矯正すればいいのにと思ったものだった。
 ちなみにユーチューブにもあるのでこんな感じ。

 「ちょっと発音矯正すればいいのに」と思ったのは、動画からもわかるように手振りなどからしてよく練習しているようなのだから、これにちょっと発音矯正を載せるくらいのことだからなと思ったのである。
 ただ、もうちょっと注意深く口のまわりの動きを見ていると、不必要に口の形を作っているようでもあるので、これはこれで発音矯正した結果なのかもしれないとも思った。
 ユーチューブを見ていると、ダボス会議2013での2013年1月24日(現地時間)のあいさつもあり、基本は同じなのだけど、それほどは違和感はなかった。

 "Japanese"のアクセントの位置が違うので、そうしたところは練習が足りなかったかもしれないが、それはそれでいいよということかも。
 いずれにしても、スピーチにあたっては安倍総理は1時間くらいはきちんと練習していそうだし、そうした練習回数も多いのだから、まとめて一回きちんと英語の発音矯正をすればいいのにと思う。発音矯正に要する時間は全部で10時間くらいなものだろうし。
 ユーチューブを見ていると前原誠司さんの英語スピーチもあった。

 前原さんは外交つうで英語も達者だろうから、やはりちょっと発音矯正すればいいのにと思う。
 というか、不思議なのだが、なぜ政治家は発音矯正しないのだろうか。してもこんなものというのもあるかもしれないが、知力を要するというものではなく、ただ指示通り真似るだけの訓練なので、そんなに難しいものでもないように思うのだが。
 そんなことをツイートしたら、いやそもそもそんな必要はないという意見もいただいた。

 ご意見をいただいて考え込んだのだが、もしかすると、日本の政治家はあえて、英語の発音矯正をしていない、ということがあるんだろうか。そのほうが政治家としてのメリットがあるのか。
 日本人のように、発音体系も文法体系も異なる英語はあくまで異国語なので、むしろ異国語であることがわかるジャパニーズ・イングリッシュで通したほうが、国際的な英語としての意味がある、というような。英国人だって英国英語で通しているのだし、と。
 それもそうかなと思ってそういえば、朴槿恵韓国大統領はどうかと思って見ると、こんな感じ。

 コリアン・イングリッシュだが、安倍さんのジャパニーズ・イングリッシュよりは聞きやすいような気がする。気がするというだけかもしれないが。
 それはそれとして、英語の発音矯正というのがあまり普及していないふうなのはなぜなのか不思議な気がしたが、現在の中学校や高校でもやってないみたいだ。大学でもやらないのだろうか。
 米国だとESL(English as a second language)の基本は発音矯正だし、それほど時間をかけてやるようなものではないようにも思うのだが。
 
 

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2013.05.12

ヨーロッパ人の歴史は1000年ほど。彼はいったいどこから来たのか?

 先日ハフィントンポストに「欧州大陸の人々は共通の先祖に繋がることがDNA研究でわかった」(参照)という記事があり、気になってさらっと読んだのだが、それによると現在の欧州人の祖先は1000年前くらいまでだというのだ。へえ、そんなに歴史がないのかと思い、いやそんなわけもないよなと思って、ちょっと考え込んだ。
 1000年前というと随分昔のような感じもするが、日本だと平安時代で『源氏物語』が書かれたころである。藤原道長の全盛時代でもある。そう考えると随分昔といっても、それほど古代というほどの感じはしない(古代であるだろうけど)。源氏物語はフィクションだけど、あの恋愛とかをやっていた時代が1000年くらい前になる。
 欧州大陸というから西洋史の知識から見ても、そんなに昔という感じはない。神聖ローマ皇帝でハインリヒ2世が皇帝になったのが1014年である。
 1000年以前に西欧でもすでに十分現在の西欧人の祖先がいたような気がするし、いないこともないと思うのだが、先のハフィントンポストの記事を読むと、それほどでもないらしい。現在の西欧人はDNAから見ると1000年前くらいに起源を持つ先祖から派生しているというのだ。ちょっとした村の村民が散らばって現在の欧州の国々ということなのか。
 ほんとか。それってどういうことなのか、なんともわからない。なにか基本的なことを勘違いしているのかもしれないと思うのだが、関連情報もよくわからない。
 遺伝子学と歴史の時間というのが感覚としてうまく擦り合わないせいもあるのだろう。が、西欧に元来いた原住民はというと、小アジアから農耕革命によって7500年前ころにやって来て、そしてどうなったかというと、その民族は4500年前ころに絶滅したらしい(参照)。
 もちろん数年単位の短期間で激動が起こったとは考えにくいのだが、いずれにせよ、現在の欧州人は、各国に散らばっているかのようで、共通遺伝子は1000年くらいの起源をもつと言ってよさそうだ。くどくど言うことになるのだが、歴史として私たちが学んで来たことうまく調和しないようには思えた。
 ハフィントンポストの記事によると、西欧人とはいっても、イタリア人は別らしい。つまりイタリア人のほうは数千年単位の歴史がありそうだ。ローマ文明とか考えるとそれはそうだろうと思う。
 記事に書いてあるわけではないが、察するに、アルプス以南の地中海文化の歴史は、それなりに数千年単位の歴史はあるのだろう。が、アルプス以北の欧州となると、どういうわけかわからないが、そこで住んでる諸民族の起源は1000年くらいということのなのだろう。
 奇妙なのでハフィントンポスト記事の元の情報(参照)をあたってみると、ベースでは3000年から4000年の歴史はありそうに書いてある。それでもけっこう短いようには思うが。
 もう少し読んでみると任意の欧州人二人を選ぶと1500年前に共通祖先が現れるということらしい。それならそんなに違和感はないという気もする。それでも読み進めると、共通祖先が近いのはやはり10世紀あたりになんかあったのだろうという推測はされている。4世紀のフン族移動、また6世紀から10世紀のスラブ人大移動だろうかともされている。
 スラブ人の大移動はたしかに大きな事態ではあったが、なんとなく東欧で納まっているような印象がある。が、DNA研究からすると、スラブ民族と非スラブ民族というのはそれほど大きな差はないのかもしれないとも思う。もっとも東欧はさらに祖先の同一性は高いらしい。
 ハフィントンポスト記事とは違い原文のほうでは、フン族とスラブ民族の移動の影響を、フランス、イタリア、スペインは受けなかったともある。
 こうしたことをどう考えたらよいか難しいと思うのは私だけでもないらしく、想定問答集なども公開されていた(参照)。ざっと読んでみると、わかるようなわからないようなという印象。
 全体としては、西欧の歴史というのは、いわゆる西欧の歴史として語られているよりはるかにユーラシア史側からの変動を受けて、比較的新しい時代に形成されたのではないかという感じがした。
 このあたり、最新のゲノム研究による西欧史やユーラシア史のまとめか、それまでの世界史との差違みたいなまとめがあるとよいのだが、あるのか。

追記
 自分の勘違いネタから書いたエントリーでしたが、もうちょっと抑制的にすべきだったなということで前半を少し訂正しました。コメント欄でいただいた指摘も参考にしてください。エントリーでも参照で示しましたがPLOSのシノプシスは「Genomics Recapitulates History in Europe」(参照)です。FAQ(参照)も参考にしてください。個人的には、動乱の歴史が同じくらい多そうな地中海世界と欧州世界なのにDNA上の差違があるは流入民族によってもたらされた社会変化なのだろうというところに関心がありました。 
 

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