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2013.12.05

なぜ「パラシュート」というのか知ってますか?

 先日「シェルブールの雨傘」の話を書いた(参照)。原題はそのままフランス語で「Les Parapluies de Cherbourg」である。つまり、「雨傘」は"Parapluie"である。ではなぜ、ここで「雨傘」なのか。別の言い方すると、なぜ「傘」じゃないのか?
 「シェルブールの傘」でなにか不都合でも? というほどでもないが、思うに、案外単純に"Parapluie"を訳したのかもしれない。というのは、"Parapluie"は、"Para" + "pluie"であり、"pluie"は「雨」だからだ。ちなみに、この日のピンズラーのレッスンでシェルブールは雨が多いというのが出て来た。雨は多いのだろう。ちなみにこの地は、原潜でも有名。
 どうにもつまらない話をしているようだが、じゃあ、"Para"のほうはどういう意味かというと、さて。いや、当たり前すぎて考えたことがなかったのだが、ギリシア語の"παρά"、つまり、"paradox"の"παρά"と同じで、「越える」というふうに理解していた。雨を越えるから、"Parapluie"は「雨傘」なのでは、と。
 あれ? そうか?
 ギリシア語の接頭辞が直接フランス語に付くわけがないから、ラテン語を経由はしているだろうが、なんか変だなと思って辞書にあたって、気がついた。ちょっと、違う。
 その前にちょっと話を戻すと、フランス語の"Parapluie"で連想されるのは、"Parasol"である。"Parasol"つまり、"Para" + "sol"で、"sol"で、"Soleil"、「日差し(太陽)」から来ていて、"Parapluie"と同じ構成の言葉だ。つまり、"Para"は「避ける」「遮る」というふうに連想はされる(後述するが実際は違う)。
 ここでさらに連想されるのが、「パラシュート」だった。"Parachute"である。字面を見ると、これはどうにもフランス語が英語に入った外来語である。とすると、"Parachute"は"Para" + "chute"で、その"chute"はというと、英語にもあって「滑り台」である。普通の英語だと"slide"だろうとは思うが。で、"chute"のフランス語の意味は、「落下」である。つまり、"Parapluie"や"Parasol"の"Para"と同じだとすると、「落下」を「遮る」わけである。
 あー、なるほど、たしかに、パラシュートは落下を遮っているわけだ。
 というわたりで、これらの"Para"を調べ直したら、イタリア語の"para"でさらにラテン語の"parāre"らしい。つまり、英語だと"Prepare"に近いらしい。とはいえ、印欧語のレベルまでいけば、"παρά"と同語根にはなるかもしれない。
 ということは、この"Para"は「避ける」「遮る」ではなくて、「備える」ということになる。とんだ勘違いをしていた。
 つまり、雨傘が雨に備え、日傘が陽光に備え、パラシュートが落下に備えるわけである。
 というあたりで、言葉をいじくるほかに、ちょうど「パラシュート」で考えたのだが、「雨傘」にしても「日傘」にしても、人間がある時期作り出したものである。が、「傘」の起源はというとややこしい。対して「パラシュート」くらいは起源が探れるだろうと調べてみると、そういうものは誰でも考えそうなものだから、ごちゃごちゃとした議論がある。とりあえず"Parachute"という言葉に沿ってみると、意外にもあっさりわかった。ジャン=ピエール・フランソワ・ブランシャール(Jean-Pierre François Blanchard: 1753-1809)である。
 ブランシャールは気球の発明者ではないが、気球乗りとして有名で、ようするに「パラシュート」は、彼の気球人生の一環として発明されたわけである。
 と、ここで、ちょっとウィキペディアに当たってみると、ルイ=セバスティアン・ルノルマン(Louis-Sébastien Lenormand: 1757-1837)がパラシュートの発明・命名であるかのようにも書かれていた。そうかもしれない。
 ちなみに、気球を発明したのは、モンゴルフィエ(Montgolfier)兄弟で、公式には、1783年のアノネーでの飛行らしい。ベルサイユ宮殿でルイ16世やマリー・アントワネットの前でも実演した。こうしてみると、熱気球というのは、その後のフランス革命を支える理神教(参照)の先駆的顕現という意味合いもあったのではないか。
 ブランシャールは1785年にはドーヴァー海峡の横断しているので、当時は、いわば後の飛行機技術ブームを先駆したような状態でもあったのだろう。パラシュートもそうした「技術」のなかで人の知られるところになったのだろう。
 なお、現在のパラシュートは空軍の要請でできたようで、第二次大戦にはよく活用された。その間のパラシュートについては今一つわからないが、なんかのおりにまず熱気球史でも読んでみるかな。
 
 

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コメント

パラソルと対比して、日陰の女ってことじゃないかな。

日本の首相になる人は、対比表現を身につけた方が大衆の理解が早いと思う。ええ加減に新聞社も身に付けてほしいよ。法案に対して賛成と反対のどちらも公平に扱うもんでしょ。なんか、政治家もマスメディアも和歌で相聞歌でもやってるつもりなのかなぁ。ま、とにかく、日本の今の映画は対比表現ひどすぎるし、夢がない。さらに、高い。日本の若い人は、日本の古い映画でもいいし、ヨーロッパの名画でもいいし、対比表現を感覚でとらえられるようになってほしいものだ。

投稿: | 2013.12.07 09:58

ネットも現状の日本も連想ゲームが好きなのかなぁ。それも、悪いイメージの。反対のいいイメージの連想もつまらないと思うけど、受けがいいんだろうなぁ。頭のためだったら、連想をやめてしまった方が楽だと思う。なんか、連想でつらくなっている人、多すぎ。

秘密保護法が、戦争する方にいって、人々が監獄にいれられるようになるっていうけど、もともとの戦時中の法律だって、かなり公平にできていたわけで、現実には、その法律を守らず、わけのわからない解釈で、軍部と警察が暴走してただけ。ということで、今だって、冤罪あり、別件逮捕ありで、そんな悠長な連想しているなら、冤罪をなくす方が先。で、新聞社は、冤罪させないように警察と馴れ合わないってことの方が重要でしょ。どうみても、警察からの情報が得られなくなる心配しているようにしか見えない。いい加減、行政は犯罪情報を新聞社に教えるのはやめてもらいたい。国民の秘密を守れって。

投稿: | 2013.12.07 10:10

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