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2013.12.01

特定秘密保護法案衆院通過についてのNew York Times記事

 New YorkTimes は11月29日に「秘密保護法案で日本は戦後平和主義から離れるだろう」という記事を掲載しました(参照)。さきほどブログ「内田樹の研究室」(参照)でも見かけましたけれど、米国の一部でこの話題がどう伝わっているか、ここでも訳出しておきました。やや荒っぽい翻訳ですけれど、飯前の暇つぶしでやったので、ご容赦ください。内容については、「特定秘密の保護に関する法律案Q&A」(参照)などとも参考にするとよいでしょう。
 では。どうぞ。

 東京 - 怒りに満ちた街頭抗議と終末論的な主要紙社説を払いのけ、保守的な日本の首相・安倍晋三が、秘密保護法を制定することは、日本の戦後平和主義を押し戻すための立法議案の初項目の一つを達成するかのようだ。
 火曜日に急ぎ衆議院を通過し、近く参議院も通過すると見られるこの秘密法案は、当地において「正常な」国と呼ばれるものへ日本を方向転換する安倍氏の尽力の初段階と見られている。それは、国防力の制限を削減し、地域の大任を担えるようにするものである。
 この法案は、今週承認された米国型「国家安全保障会議(NSC)」ともに、危機において首相の権限を強化することになる。
 国家機密をより厳しく制御することは、日本の情報保護の欠陥を補うために必要であり、なにより米国に対して、慎重に扱うべき軍事機密がより多く共有できるよう説得するためであると安倍氏は述べた。中国が台頭し影響力が強まるなか安倍氏は、日本を米国の軍事同盟国として一人前にしようとしてきた。
 しかしこの秘密法案は、瞬く間に反対者の矢面に立った。報道機関や大学に多く反対者が怖れているのは、この法案は強力な国家官僚に裁量を与えすぎるので、何が国家機密であることが判別できなくさせることや、不透明で知られる政府が一層情報公開を縮小させてしまうのではないかということだ。この法案が政府による権力の濫用をもたらすかもしれないと警告する者も多く、言論統制で軍部が日本を第二次世界大戦に引きずり込んだほどの、過酷な戦前の法律と比較してしまう評論家さえいる。
 「私たち近代史が示しているように、日本には言論についての自由の強い伝統がありません。官僚が国家機密にしたいものが何でも宣言できるようにすれば、私たちは北朝鮮や中国のような独裁主義と全く変わらないようになるでしょう」と、東京にある上智大学メディア法の教授。田島泰彦は語った。
 この法案に対する最大の批判の一つは、秘密であることの定義が曖昧で広範囲であることだ。現在の法案は、外交、防御、およびテロ対策指針など、慎重に扱うべき国家安全保障領域に触れるなら、政府機関の長に公開禁止の権限を与える。これらの秘密を漏洩させて有罪となると、日本の現行法下より長い間、最高禁固10年に直面する。
 この秘密法案は、今週衆議院で可決し、国家安全保障会議(NSC)創設の法案と並行して提出された。
 この二法案は、安倍氏の長期目標を達成するための、立法議案の初段階であり、それは、日本ではいまだ議論の余地を残しているものの、反戦憲法を改定して、貧弱な防衛力の代わりに十分に成長した軍隊が持てるよう日本の反戦憲法を改定したいということだ、と述べる政治評論家がいる。
 「この法律の枠組は、国家安全保障戦略の司令塔として役立つ新NSCが適切な運用をするのに必要である」と安倍氏が総裁を務める自由民主党の代弁役として使っている保守的な新聞である読売新聞は先月社説で述べた。
 衆参両院を統制できることから、日本国の政治的麻痺を終息させると確約した安倍氏は、この法案を三週間ほどで衆議院を通過させ、参院に送った。
 素早い対応は反面、反対左派には強引だという印象を残し、秘密保護法案は日本の民主主義の脅威だという恐怖感を与えた。さらに、日本の政治的な伝統である、大きな変革のための政治的な合意形成から、安倍氏は逸脱しているのではないかという、苦々しい苦情を引き起こした。
 「安倍氏の優雅な手袋の中に私たちは鉄拳を見た」と日本最大野党民主党指導者・海江田万里は火曜日の秘密法案投票後に述べた。
 最も声高な懸念が、福島第一原子力発電所近隣地域の居住者からも上がった。避難した浪江町の馬場有町長が、一度だけ催された月曜日の法案公聴会で言及したのは、2年前事故で放射性物質放出方向の予測発表で政府が失敗して、同町の人々が知らず汚染域に逃げたことだった。彼は、この法案が、政府が示した、危機の際に重要情報を隠蔽する傾向を強化しうると警告した。「必要なのはより多く公開することであって、減らすことではない」と馬場氏は述べた。
 この法案反対を切々と訴えている日本の一流作家、ジャーナリスト、学者も多く、少なくとも、法規定を越えて情報を宣言する官僚機構の権力に対して、より強力なチェック機構を含むべきだと促している。
 彼らや他の人も、この法案は、何を秘密とするかについて再検討する機構の創設に失敗していると述べ、米国など他の民主主義国が有するような強力な情報公開法が日本では欠落しているとも指摘している。また彼らは、この法案が秘密を漏洩させる公務員だけでなくジャーナリストや情報を得た大学研究者を起訴するためにも使われうると警告した。機密情報を代議士と共有するための明確な対応もまた存在していない。
 日本のもう一つの大手紙朝日新聞は社説で、この法案が国家機密保護に必要だとする反面、現行の法案は、有権者を無知にする「多くの問題」があると述べた。また、「国民が知る権利や調査する権利、さらには報道の自由に過大な制限を加える」とも述べた。
 今週の国会で安倍氏は、この法案は、日本が機密情報管理を強化するのに必要だと述べた。この件で彼が述べたのは、いくつかのスキャンダルの後、安全保障機密の漏洩や取り違えに対処するよう、米国が日本に求めたことだった。
 評論家たちの恐怖は間違ったものだと述べる専門家もいる。法案の中に文言はなくても、何が秘密と宣言されるかについて監視する機関の創設のために、安倍氏は貪欲なまでに野党に呼びかけをしていると彼らは指摘する。また、法案は軍事計画やテロリストから傍受した携帯電話メッセージのような機密情報に制限されるであろうとも彼らは述べている。
 「これで日本も米国並みの秘密管理になるくらいだと思う」と長谷部恭男(東京大学の情報法の教授)は言った。
 しかし、少なからぬ評論家が言うように、米国を模倣することがまさに問題なのだ。つまり、米国やその他の国が自国の政府に機密緩和を推進しているさなか、日本はこのような法案を可決すべきではない。
 国家安全保障局契約者エドワード.J.スノーデンに触れて、「米国の再考はスノーデン暴露によるところが大きい。そして日本は間違った方向からここに至っている」と上智大学教授の田島は述べた。
 
 

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コメント

a conservative newspaper that has long served as a mouthpiece for Mr. Abe’s governing Liberal Democratic Party.
安倍氏が自由民主党を制御するための代弁役として使っている保守的な新聞である読売新聞

ブコメでこの訳に大喜びしてる人がいるようですが
Mr. Abe’s governing Liberal Democratic Party.
は「安倍氏が総裁を務める政権与党の自由民主党」ですね。
「自民党を制御するため」とかどこから出てくるのかよくわかりません。

投稿: | 2013.12.02 10:33

訳のご指摘ありがとうございました。再考し、改訳しました。

投稿: finalvent | 2013.12.02 11:40

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