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2013.11.28

中国が設定した防空識別圏について

 中国が23日、自国の防空識別圏(ADIZ: Air Defense Identification Zone)の海図と座標を発表し、同日午前10時から施行するとした。この識別圏は日本国領土の尖閣諸島を含めたことで日本国内はもとより、国際的にも問題となった。すでに南シナ海で無茶な海洋進出をしては、フィリピンなどと派手に領土問題を起こしている中国がさらに手を広げ、大国である日本までつつこうとしているかに見えるからである。
 日本の報道では、尖閣諸島に焦点が当たるのはしかたがなく、領土問題として今回の中国の行動を扱っていることが多いようだった。確かにその側面にも問題はあるにせよ、世界を唖然とさせたのは、この空域を通過する航空機に対して事前に中国に通告することを求めた点である。しかも、この通告や中国側からの支持に従わなかった場合、中国は「防御的な緊急措置」を取るともした。
 どの国も防衛上、防空識別圏を持つが、その際、今回の中国のような威圧的な「俺様」的な態度を取ることはなく、非常識、極まりない。こういう非常識な行動を取るから中国が国際的に苦笑されてしまう。先日のフィリピン台風援助で中国がドケチの骨頂を示して国際社会の失笑を買うくらいならよいが、今回は苦笑ではすまされない。しかも、中国は宣言をしたとたんに自縄自縛になって実際の行動に出てしまう国なので、笑えないホラーが潜んでいる。
 防空識別圏については、英語を直訳して理解したほうがわかりやすように、空爆防衛のため、進行してきた敵機を事前に識別するために余裕を取る緩衝領域である。中国は特定の仮想敵国を意識したものではないとしているが、具体的には、日本と米国を想定しているとしてよい。なお、識別圏が韓国にも関連していたのは中国の失念によるご愛敬だろう。
 今回の事態で米国がすぐに反応したが、そもそも今回の事態は対米的な意味合いが濃かった。というのもこの尖閣諸島域の一部は明確に米軍の管轄に置かれているからである。ごく単純に言えば、中国は米軍と戦争を起こす気満々のメッセージを投げかけていたことになる。
 この件については、平成22年10月22日、当時の菅直人・総理大臣に向けられた、尖閣諸島と日米地位協定に関する質問で明確にされている。まず、質問だが(参照)、「二」以降を注目していただきたい。


平成二十二年十月十二日提出
質問第四四号
尖閣諸島と日米地位協定に関する質問主意書
提出者  照屋寛徳

尖閣諸島と日米地位協定に関する質問主意書

 尖閣諸島が沖縄県石垣市の行政区域に属するわが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明白である。菅内閣も一八九五年一月十四日の閣議決定によりわが国の領土に編入された、との統一見解を示している。
 二〇一〇年九月七日、尖閣諸島周辺でわが国の領海を侵犯した中国漁船が海上保安庁の巡視船と接触・衝突する事件(以下、中国漁船領海侵犯事件という)が発生した。同漁船の船長は公務執行妨害罪の容疑で逮捕・送検されたが、同月二十五日に処分保留で釈放されている。
 私は、中国漁船領海侵犯事件をめぐる問題について、いたずらに「中国脅威論」を煽ったり、「中国は悪しき隣人」などと感情的に批難、攻撃したり、偏狭なナショナリズムを鼓舞すべきではないと考えている。一連の問題は、国際社会に向けて、あくまでも尖閣諸島がわが国固有の領土であることを明確に主張しつつも、日中両国間のハイレベル協議と日中双方が冷静な外交交渉で平和的に解決すべきである。
 一方、中国漁船領海侵犯事件の発生を契機に、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であるかどうかという議論も再燃した。尖閣諸島をめぐっては、領有権だけでなく、日米安保にまつわる問題が同時に存在するのである。
 以下、質問する。
一 尖閣諸島の島ごとに所有関係及び賃貸借関係を明らかにされたい。政府が賃借している島があれば、その賃貸借契約の始期、賃貸借の目的を示されたい。
二 尖閣諸島に属する久場島及び大正島は米軍提供施設・区域である。一九七二年五月十五日の日米合同委員会におけるいわゆる「五・一五メモ」によると、両島の島全体が米海軍の射爆撃場となっている。政府が両島を米軍専用の施設・区域として提供した年月日、同施設・区域の所有者及び地主数を示したうえで、現在でも米軍は両島を射爆撃場として使用しているのか明らかにされたい。
三 久場島及び大正島における射爆撃訓練は、一九七九年以降実施されていないようだが事実か。事実であれば、米軍は三十年以上にわたって提供施設・区域を使用していないことになるにもかかわらず、政府が両島の返還を求めてこなかった理由を明らかにされたい。
 なお、一九七九年以降、両島で訓練が実施されたのであれば、その年月日を明らかにしたうえで、係る訓練に対する政府の見解を示されたい。
四 概して、米軍提供施設・区域である久場島及び大正島においては、わが国の国内法と日米地位協定のいずれが優先適用されるのか政府の見解を示されたい。
五 尖閣諸島は沖縄県石垣市の行政区に属している。行政区を預かる石垣市あるいは沖縄県が久場島及び大正島における実地調査を行う場合、施設・区域の管理者たる米軍の許可を得ることなく上陸は可能か政府の見解を示されたい。
六 米軍提供施設・区域である久場島及び大正島周辺には、訓練水域・空域が設定されている。米軍から同水域・空域における訓練通告がなされた期間中に、中国や台湾など第三国の漁船が同水域に侵入した場合、わが国の国内法と日米地位協定のいずれが優先適用されるのか、具体的な罰名及び罰条を明らかにしたうえで政府の見解を示されたい。
 また、第三国の者が久場島及び大正島に上陸した場合、わが国の国内法と日米地位協定のいずれが優先適用されるのか、具体的な罰名及び罰条を明らかにしたうえで政府の見解を示されたい。
 右質問する。


 菅元総理による回答は以下である(参照)。

二及び三について
 久場島及び大正島は、昭和四十七年五月十五日に開催された、日米地位協定第二十五条1の規定に基づき設置された合同委員会(以下「日米合同委員会」という。)において、日米地位協定第二条1(a)の規定に従い、それぞれ黄尾嶼射爆撃場及び赤尾嶼射爆撃場として、米軍による使用が許されることが合意された。
 久場島は民間人一名が、大正島は国が所有している。
 黄尾嶼射爆撃場及び赤尾嶼射爆撃場は、それぞれ陸上区域、水域及び空域で構成されており、日米合同委員会における合意において、米軍がその水域を使用する場合は、原則として十五日前までに防衛省に通告することとなっているところ、昭和五十三年六月以降はその通告はなされていないが、米側から返還の意向は示されておらず、政府としては、両射爆撃場は、引き続き米軍による使用に供することが必要な施設及び区域であると認識している。
四及び六について
 お尋ねの「優先適用」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、政府は、一般に条約を締結するに当たっては、誠実にこれを履行するとの立場から、国内法制との整合性を確保してきており、日米地位協定についても、その締結に当たって国内法制との整合性を確保している。
五について
 地方公共団体の職員等が黄尾嶼射爆撃場及び赤尾嶼射爆撃場への立入りを行おうとする場合には、平成八年十二月二日の合衆国の施設及び区域への立入許可手続についての日米合同委員会における合意に定められている所要の手続に従って、米軍の許可を得ることが必要である。

 つまり、尖閣諸島中の、久場島と大正島にある、それぞれ黄尾嶼射爆撃場と赤尾嶼射爆撃場は、米軍から依然日本には返還されていない。米軍下にある。

 日本との協定上、この二爆撃場を使う際には日本政府に通告することにはなっているが、基本、その軍事利用は米軍の意向にまかされている。
 今回、中国が設定した防空識別圏はこの二爆撃場を含めて設置したのであり、この地域で米軍が軍事演習をすれば、中国は軍事的な対応を取るという意味になる。
 中国がいくら非常識な国であれ、同じ連合国であった米国の、この地域の状況に無知であるとまでは思えない。
 ごく簡単に言えば、今回の事態は、中国は米国にちょいと試しに喧嘩をふっかけたに等しい。
 中国としては、米国に喧嘩をふっかけてみることで、この地域から米軍の力を除去しようとしたいという意図があったかもしれない。
 いずにれせよ、こうした中国の思惑が米国側に了承されたというシグナルを米国が発すると、これもごく単純に言えば、尖閣諸島問題は日本にとっては即決で否定的に解消されてしまうことになる。
 米国側はそれでどうしたか。
 中国のそうした思惑に対して、米国側は明瞭に拒絶のシグナルを出した。あえて、わかりやすく空爆可能なB52爆撃機を飛ばしたわけである。日頃日本では、国際コミュニケーション力が足りないと話題になるが、こうしたわかりやすい事例から、国際コミュニケーション力は学ぶことができる。
 かくして現時点で、明瞭になったのは、米軍は尖閣諸島から手を引くことはないということである。
 これに中国側がどう答えるかはまだはっきりとは見えてこない。
 ところで、なぜこの時期に中国がこの態度に出て来たのか? 今後はどうなるのか?
 明確な背景は見えないものの、今回の事態は基本的に突発的な事態や奇計というより、着々と進行する軍拡の一端だと理解してよさそうだ。ようやく防空識別圏に利用できる高性能早期警戒機の実効配備が可能になったので、防空識別圏設定に乗り出したと見てよいだろう。そう理解すると、今後も留まることなくこの傾向は続くことになる。
 今後の注視点は、ロシアから中国が購入しようとするスホイ35である。Voice of Russia、7月11日「来年 スホイ35戦闘機の中国供給契約 調印の可能性」(参照)より。


 ロシアと中国は、ロシアの最新型多目的戦闘機スホイ35型機の中国への供給に関し、来年2014年にも契約書に調印する可能性がある。6日、ロシアと諸外国との軍事技術協力関係筋の話としてインターファクス通信が伝えた。
 それによれば、供給は来年末からさ来年初めに開始される見込み。以前の計画では、供給契約調印は今年度中に行われるとされていた。プロジェクトによれば、ロシアは中国に、スホイ35型機24機を売却する。しかし中国側は。追加的な要求を提示した。中国政府は、ロシア空軍用に製造されているシリーズではなく、中国向けに特別に改良された戦闘機の納入を望んでいる。
 こうした中国側の提案は、追加的な検討を必要とするものだが、スホイ35対中供給に関しての政治的決定が下されていることから、どのような場合でも調印はなされるものと見られている。また準備中の契約では、スホイ社の援助で中国にスホイ35のメンテナンスにあたる技術サービス・センターが作られる事が規定されている。センターでは、中国人専門家が働く予定。

 この手の話は以前からもあるし、Voice of Russiaはどちらかというと面白ろネタサイトに近いが、注意しておいてよいだろう。
 なお、平和を希求する日本国民としては、日本国憲法でも明記してあるように、中国側に軍事的な緊張を高めるような行動には出てほしくないと願うものである。
 
 

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