どうやって英語を勉強したのか思い出せない
フランス語をほぼゼロから勉強していて、いろいろ思うことがあるのだけど、その一つは、自分がどうやって英語を勉強したのか思い出せない、というのがある。あー、いや、その、自分は英語ができる、とか言いたいわけではないです。けしてない。
それどころか、いろいろ言われるけど、はい、知ってます、僕はろくに英語はできませんし、英語は苦手です。でも、まあ、それなりに毎日、英語のニュースを聞き、読むようにしている。それ自体は英語の勉強のためじゃなくて、普通にニュースを知りたいなあというくらい。
例えば、最近の例だと、イラクのクルド自治区がイラク中央政府を無視してトルコ経由のパイプライン建設をしているとかいうニュースがあって、これは事実上もうクルド自治区独立を意味しかねないのだけど、そーゆーニュースって日本のメディアからは見られないので、しかたなく英語で当たるというか、英語のニュースを普通に見聞きしているとわかる。などなど。
話を戻して、どうやって英語を勉強していたのだろうか、自分? と問いかけてみる。不思議な気持ちになるからだ。
英語を勉強したのは学生のころで、中学生から高校というのがまずある。いやその前に小学六年生のころだったか、父親が「田崎英会話」とかいう音声テープ学習の教材を買ってくれたので聞いたことがああった。もちろん、さっぱりわからなかった。ひとつ覚えているのは、「ぷりーず・ちゃいむやね」というのがあった。「ぷりーず」はわかる。「ちゃいむやね」ってなんだろ? 「ちゃいむ?」。ずっと後になって、あれは"Tell me your name?"というぶしつけな物言いであったなとわかったが、もうひとつついでに、"Tell me"というのは、「ちゃいむ」に聞こえるということだった。後になって、音声学を少し勉強したが、日本語のTと英語のTは違うために、ああ聞こえる。
中学生のころの英語学習の思い出はというと、いくつか思い出すことがある。僕らのころから(1970年だったか)、なぜか、"This is a pen."というのがなくなっていた。たしか、初っぱなから、"Do you have"みたいなだった。
その先はよく覚えていない。二年生まではクラウンを使っていたが、三年生にホライズンかなにかに切り替わって、同級生と「クラウンの英語の教科書って物語になっているんでしょ、三年はどうなるの、あれ」と話していて、そこに英語のできる女の子が、「私、三年生の英語の教科書買ってきてあげる」と提言して、彼女に数名分、買ってきて貰ったことがある。読んでみるとたしかに物語になっていた。
高校の英語教育の記憶も、おぼろだ。教科書はなんとなく覚えている。どこの会社のだったか忘れた。三省堂だったか。ネルーのスピーチや、サキ(Hector Hugh Munro)、サマセットモーム、サローヤンの小説が載っていた。今思い返すと、けっこうレベルが高かったのか? おかげでそうした文学が好きになったというのがある。現代の学生さんで、サキ、モーム、サローヤンとか知られているのだろうか。まあ、いいけど。
高校の英語で何を学んだかはあまり覚えていないが、先生のレベルは、微妙だったなあと思い出す。一人、きちんとした発音の先生がいて、授業教材にFENの天気予報を使っていた。この先生、「僕は英語が苦手でダメでねえ」とかよく言っていたが、今思い返すと、この先生だけがまともに英語ができた。他の先生は、うーむ、なんと言っていいやら。
あの頃どういうふうに英語勉強していたかというと、学校で言われるとおり以上のことはしなかった。リーダーの教科書を字引を引いて訳をノートに書く。他は宿題をするくらい。
成績は普通かそれ以下だったが、高校の途中から学校で学んでいない問題がテストに出るようになって全然ダメになった。英文法もよくわからなくなった。その先の話は『考える生き方』(参照)に書いたので繰り返さないが、まあ、普通に英語ができなかった。
どこで英語を覚えたのだろうかという当初の疑問に戻るのだが、なんともよくわからない。覚えたプロセスをどうも失念している。そして、思い出そうとすると、なぜかとても奇妙な感じがする。
フランス語を勉強しながら、とりあえずの目標としてはピンズラーの第一段階30日を終えることで、これは、とりあえず終えた。で、この時点で、中学校の英語くらいの初級フランス語がわかるかというと、まだまだ。ピンズラー方式では単語が限定されているので、ごく基本の単語ですら知らない。"day"が"jour"なのは知っていても、"week"が"semaine"なのは知らなかった。忘れていたかもしれない。でも知らないと同じ。では、"weekend"は? というとフランス語で"week-end"というも知らなかった。
あと、800語くらいフランス語単語を覚えるなら、中学英語くらいのレベルに達するのだろうか? そのあたりがいま一つよくわからない。
ところが不思議なことがもう一つあって。なんと言っていいのか、例えば、たまたまルモンドの現在のトップニュースを開くと、こういうニュースがあるのだけど。
Quatre mois après sa destitution par l'armée, Mohamed Morsi, premier chef d'Etat démocratiquement élu en Egypte, est jugé pour "incitation au meurtre". Détenu au secret depuis son renversement le 3 juillet, il est arrivé lundi 4 novembre en hélicoptère dans la cour du tribunal du Caire aux alentours de 8 heures locales (7 heures à Paris) pour y comparaître aux côtés de 14 autres dirigeants des Frères musulmans. Tous risquent la peine de mort ou la réclusion à perpétuité.
きちんと音読すらできないのだけど、字面を追っていくと、何言っているかはなんとなくわかる。
"premier chef d'Etat démocratiquement élu en Egypte, est jugé pour "incitation au meurtre"”とかは、「エジプトで民主的な選挙で選ばれたムハンマド・モルシ元大統領が殺人罪」ということだろう。
ピンズラー方式のおかげなのか、それ以前からなのか、わからない。字面が英語と似ている影響は大きい。" la peine de mort"とかの"mort"は英語の"mortal"と同語源だし、日本人の常識として「死」が"mort"というのは知っているので、だから「死刑」だろうなとかの類推がきく。あと、この話題の関連ニュースは英語で聞いていたというのは、もちろん、ある。背景を知っているのは、文意の理解の援助になる、すごく。
ちなみに、翻訳ではないのだけど、こんな話だろう。「軍による解任から4か月後、エジプトで民主的な選挙で選ばれたムハンマド・モルシ元大統領は”殺人罪”で裁判にかけらた。7月3日の拘束以降のことして、11月4日8時(パリ時間7時)ヘリコプターでカイロの裁判所に、他のイスラム教徒幹部14人と連行された。彼らは死刑か終身刑に面している」かな。
当然、これでフランス語がわかったという気はまったくしない。ちゃんとわかるようになりたいなとは思う。無理かなあ。
話にまとまりはないのだが、考えてみると、母国語を習得した過程も思い出せない。
もしかすると、言語の学習・習得というのは、それのプロセスの忘却と関係しているんじゃないだろうか。語学的な脳の働きというのは、一見すると、「覚える」が中心のようだけど、実際には、「忘れる」というプロセスと一体なんじゃないかな。英文を読んでいるとき、自分の頭の中で日本語で翻訳しているわけでもなく、なんか、日本語を「忘れている」に近いような意識状態にあるし。
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コメント
The Brownsですよね。SusieとTomがいて、Blackieというスコッチテリアを飼っていたような。
私たちの学校では、教科書を全部暗誦させる英語の先生がいて私はたまたまその先生に英語を教わりました。
今思えばAudio-lingual Methodの一種に相当するかもしれません。批判もありますが、私にとってはこれは効果絶大でした。
投稿: onishi | 2013.11.04 18:56
僕の場合は、大学でガンガン英語の原書を当たらされることもなかったので(今思えば、やって欲しかった)社会人になってから1人でタラタラと辞書を引きながら英語を読んで、なんとかまあWebで普通に英語の情報を取れるようになりました。それでもちょっと格調高い文章になるとまだまだだし、リアルな庶民の映画のセリフとかになるともう全然ダメ。
ところで、初級のフランス語をやっただけでも英語の上級レベルのボキャブラリーが劇的に増えると聞きましたが(確かにスノビッシュなフランス語経由のボキャブラリーは多いと感じます)いかがでしょうか。本当ならやってみようかと思うのですが。
投稿: | 2013.11.04 23:10
1970年代の海外短波放送を聞くブームがあったときは、
日本のバイアスを通さず世界のニュースが聞ける!
とはしゃいでましたけど、
アメリカ本土は日本語放送の局がないし、
ロンドンBBC放送は有名でしたが日本語放送を止めちゃいましたし。
湾岸戦争の時大橋巨泉氏が
「日本では『多国籍軍』だなんて言ってるけど、欧米では『アメリカ及びその連合軍』と言っている!
『多国籍軍』だなんて、ごまかしだ!」
と吠えていましたけど、今になって調べてみると
大橋氏こそ情報格差につけ込んだプロパガンダだったのかなぁと。
投稿: てんてけ | 2013.11.06 09:52