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2013.09.11

[書評]一流選手の動きはなぜ美しいのか からだの動きを科学する (小田伸午)

 ところで2020年のオリンピック開催が東京に決まった。すでになんども書いてきたがオリンピックには関心がないものの、東京には来ないだろうとは思っていたので驚いた。欧米諸国からは遠いし、チェルノブイリ原発事故のように福一原発事故を理解している欧米諸国でもあるからだ。
 しかし、決まってみると、そういえば、オリンピックって中国が大量に金メダルを獲得するし(当然中国人がたくさんやってくる)、韓国も日本より多くの金メダルを取るのだから(当然韓国人がたくさんやってくる)、中韓がそろって東京オリンピックに取り組むというのも、この地域の緊張緩和にはよいこという想定もあったのでは、と思えてくる。

cover
一流選手の動きは
なぜ美しいのか
からだの動きを
科学する (角川選書)
 オリンピックには経済効果はないとも言われているし(とりわけ騒ぐような話題でもない常識として)、しかも2020年の東京オリンピックは湾岸でのエコノミーな大会になるので、1964年の東京オリンピックとはわけが違う。それでも、投資分くらいの経済の活性化はあるだろうし、この件で気持ちも前向きになる人が、後ろ向きになる人よりも多そうだから、まあ、いいのではないか。余談ついてで言えば、1964年の東京オリンピックをリアルに見てきた自分としては、あれは、東京に残る戦前・戦中の軍都の施設や占領軍施設(参照)を撤去する口実にもなっていたなと思う。そのあたりの感性を持つ人がめっきり減ったなあと感慨深い。
 かく、観戦スポーツには関心のない私だが、スポーツ全体に関心がないわけでもない。学生時代は陸上をやっていたし、大学では水泳、『考える生き方』(参照)にも書いたが、社会人になってからヨガとかフェルデンクライスとかしてたし、ダンスもやりたいなとかも思っていたものだった。最近ではマイブームは筋トレ。
 で、『一流選手の動きはなぜ美しいのか からだの動きを科学する (小田伸午)』(参照)。あっと驚くような新知見はないように思えたが、普通に面白い。著者は1954年生まれで私より3つ年上だが、冒頭彼が中学生で陸上部だったときの話が出てくる。「マック式ドリル」である。ようするにももを高く上げれば速く走れるという指導で、僕が中学生のときでもそんな雰囲気だった。もちろん、これはそう簡単な話ではない。そこから、この本は、身体の主観的な感覚の話題に移る。このあたりも、なるほどと思える。最近、エリプティカルマシンを使うのだが、これ前進しているのか後進かよくわからなくなる。マシンのほうで負荷をいろいろ変化させているみたいだが。
 第2章がまた面白い。いわく「細マッチョがゴリマッチョに勝つ」ということで、100キロのボディビルダーと60キロの空手選手の腕相撲の話がある。想像が付くように勝つのは空手選手。瞬発力が違うからだとも想像できる。が、では具体的になぜその瞬発力が出るのか、ボディビルダーは運動神経がトロいのかというと、そうではなく、「得体の知れない力」があるからで、それを解析すると空手選手は力を込めるときに、身体を急速に降下させ、つまりその加速で瞬間だけ百貫デブ状態になるからだ。それで「得体の知れない力」が支えられる、と。まあ、この話も中国武術にある発勁ですね。また、相手の力の入れ方をだますという話もあるけど、これも武術の本とかによくある話。いずれにしても、「からだの動き」でその機能は変わる。第2章では足の機能の話もいろいろあって面白い。余談だが、現代人は足が機能的に硬くなっているなあと思う。
 第3章はいわゆる体幹(コア)の話が多い。このあたりもすでによく話題になるところ。私が学んでいたフェルデンクライスでは、コアというより背骨から力をどう伝導させるかという話題だった。実際のところ、表題でもある「一流選手の動きはなぜ美しいのか」というのは、コアとの連動の機能的な美しさでもあるのだろう。
 最後の第4章は走り方に特化した話題。このあたりは、最近のボルト走法の研究とかでも興味深い分野だが、本書ではれいの「なんば」に集約されている。
 全体としては誰が読んでも面白い本だなという印象だが、56歳にもなった自分からすると、もうこうはいかないんですよね。最近、筋トレ関連で、スポーツをする中高年をよく見かけるようになったが、楽しくてやっているという心理効果が重要だとしても、これはまずいんじゃないかという体型や動きをよく見かける。中には若い気分の人もいるし、タニタの体組成計とかだとかなり10歳くらい若い年齢が出る人もいるのだが(ちなみに自分)、体組成と運動はまた別の話。
 とりあえずスポーツ習慣は中高年には健康によいとはいえるのだろうけど、これでいいのかなあという感じがしている。
 筋トレなんかでも、一生懸命腹筋100回!というのも見かけるけど、先日、ネットでちょっと話題になった、米国では学生には平泳ぎはさせないと同じようで、米国の筋トレにシットアップはもう事実上ない。代わりにでは、クランチかというと、これももうなくなっているんですよ。「10のパワー 週一回のゆっくりフィットネス革命(Power of 10: The Once - a - Week Slow Motion Fitness Revolution)」(参照)やその関連で紹介した「「科学による身体 一週間に12分で効果の出る科学的プログラム(Body by Science : A Research Based Program to Get the Results You Want in 12 Minutes a Week)」にも、シットアップはないし、いわゆる繰り返すクランチもない。理由は簡単で、身体壊すから。
 そのあたりの、そうだなあ、スポーツで身体を壊した中高年、なんつう本があったら読んでみたいものだが、ちょっと話題が暗いですよね。
 
 

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