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2013.09.15

40歳過ぎのランニングで寿命が延びそう

 ツイッターのタイムラインを見ていたら、「40歳過ぎたらランニングは勧められない」という話題があった。なんだろうとリンク先を追うと、日経ビジネス・オンラインの対談記事「40歳過ぎのランニングは「元気の浪費」」(参照)があった。対談に含まれる各種の健康についての話題の一つに、その「40歳過ぎたらランニングは勧められない」という見出しがあり、面白そうな話題もあった。以下、「岡本」とあるのは岡本裕医師である。


――例えば、健康のためにランニングをしているビジネスパーソンが今とても多いのですが、岡本先生はランニングは危険だと言われています。
岡本:基本的にそれもリテラシーの問題だと思うんですが、自然界で自ら好き好んで走る動物は人間以外いないんです。それは、走るということが有害だからです。
 もちろん敵から逃げるとか、獲物を追う時は走りますが、あくまで短時間です。2時間も走っている動物はいない。
 ある程度の負荷をかけるのはいいんです。骨粗しょう症の予防にもなります。息が切れない程度のジョギングはいいけど、人間ってエスカレートするでしょう。タイムトライアルに夢中になって、4時間を切ったとか3時間を切ったとか熱中してやり過ぎますよね。若い人は精神力をつけるために多少はいいかもしれないけど、40歳過ぎてやるものじゃないです。体が下り坂に向かっている時に自ら痛めつけるというのは愚の骨頂です。
――走るよりは、自分のペースでの山登りなどを勧めていますね。
岡本:そう。リラックスもできるだろうし、景色を見ながらハイキング程度がいいんじゃないですか。
 走る人は寿命が短いというデータも実際あります。走ったら元気になるんじゃなくて、元気な人が走ってるだけ。元気を浪費してるだけ。

 確かにそういう考え方もあるだろうと思う。
 自分もよく奇妙な誤解されることもがあるが、この話で重要なのは「息が切れない程度のジョギングはいいけど、人間ってエスカレートするでしょう」という点で、肯定的に見るなら、「息が切れない程度のジョギングはいい」ということだ。
 実際そうした研究は近年よく見かけるようになった。なかでも注目されたのが、今年の4月に疫学の専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」に掲載された「男性・女性ジョガーの長寿:コペンハーゲン市心臓研究(Longevity in male and female joggers: the Copenhagen City Heart Study)」(Am J Epidemiol. 2013 Apr 1;177(7):683-9)だ。日常ジョギングをする幅広い年代層1,878人(男性1,116人、女性762)を対象に、日常ジョギングをしない人との比較で、最大35年間追跡調査したところ、ジョギングをする人では、男性で 6.2年、女性で5.6年の寿命が延びていた。
 延命の影響は日頃のジョギングと見てよいだろう。調査には各年代層が含まれ、統計的にも年代層が考慮されているようなので、40歳過ぎのランニングでも寿命が延びる、と受け止めてもよいように思われる。
 同調査で興味深いのは、先の岡本医師の発言とも呼応するが、「エスカレート」するとこの効果は弱まることだ。つまり、適度なランニングに延命効果があるが、度を超すとそうはいかない。
 では、適度とはどのくらいか? 同研究を指導したペーター・シュノル博士の話では(参照)、速さは、呼吸に少し負担がかかるが息苦しくない程度(中程度)で、時間は、一週間に1時間から2時間半まで。これを一週間に二、三回行うのが理想的らしい。
 実行しやすい最低限で見るなら、一週間に二回、30分ほど軽くジョギングすればよいということになりそうだ。
 効果は、酸素吸収効果を高め、インスリン抵抗性を改善し、善玉コレステロールを増やし、高血圧を下げ、血管内をきれいにし、免疫力を高め、骨密度を上げ、炎症しににくい体質にし、肥満を防ぐ……なんだが、いかがわしい健康食品の宣伝文句みたいだが、シュノル博士はそれらの効能を述べている。
 しかし、その研究だけで40歳過ぎてからのランニングって延命効果があるとまで言えるのだろうか。とか、コメントのツッコミがありそうだ。
 近年、米国癌研究所(NCI)が行った別研究もあった。PLOSメディスンに掲載された「適量から精力的な強度までの余暇の身体活動とその死亡率(Leisure Time Physical Activity of Moderate to Vigorous Intensity and Mortality: A Large Pooled Cohort Analysis)」(参照)である。
 こちらは40歳以上の寿命に関心を置いて調査している。結論は、ランニングとは限らないが適度な運動をしている人の寿命は3.4年から4.5年ほど延びていることだ。ここでの適度な運動の指標としては、WHOによる一週間に150分のきつめのウォーキングが挙げられている。これだと、一週間に5日30分のウォーキングになる。ちなみに、ウォーキングでの負荷は心拍数で管理するのもよいと思われる。以前書いた「ウォーキングには心拍計付き時計を」(参照)も参考までに。
 詳細に関心ある人は、それぞれリンクをたどるなどしてオリジナルに当たってみるとよいだろう。PLOSにも編集者による一般向けの解説があり、また米国癌研究所の研究にも別途、一般向けの説明記事(参照)もあるので、これらも参考にするとよいだろう。

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コメント

ランニングした後、熱い風呂入って、ビールをガブガブ飲まなければいいんじゃないの? 結局、一日を通しての生活がすべてだと思うけど・・・

もし、それでも、オススメできるとしたら、木のぼりかなぁ。木にのぼれない人が、いくら運動してもダメな気がする。木のぼりは、バランスと絶妙な筋肉の連携があっていいと思うよ。

投稿: | 2013.09.15 03:13

内容ではなく表記法に疑問があります。

3.4 や4.5 はどうよむのですか。「さんてんよん」「よんてんご」としかよめません。
正統的には「三四」あるいは「三、四」ではありませんか。

投稿: ワタン | 2013.09.15 03:38

リンク先の記事を読んでみると、
原文そのままの表記でした
「さんてんよん」「よんてんご」の意味で正しいようですよ

投稿: 通りすがり | 2013.09.15 11:22

>ワタンさん
横から失礼。
リンク先の記事自体が「3.4-4.5years」という記述です。つまり3~4年、4~5年ではなく、およそ3年5ヶ月~4年半ということでしょう。

投稿: カラ | 2013.09.15 11:26

2、3粒のアーモンドで致命的な病気にならなくなりますよ∀

投稿: ワカン | 2013.12.04 00:51

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