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2013.08.22

[書評]鍛える理由 筋トレが人生を変える!(石井直方)

 先日このブログで、最近読んだ筋トレ関係の本の話をまとめた(参照)。自分でも筋トレを始めたので、参考になることはないかと思って読んでいた書籍である。その後も関連の書籍を読んでいるが、先日のまとめでもそうだが、この関連の一般書には石井直方先生が監修された本が多い。

cover
鍛える理由
石井直方
 石井先生はNHKの健康番組などでもよく見かける。その笑顔と温厚な人柄は私でも覚えている。若い頃はボディビルダーでもあったらしい。研究者でもありボディビルダーなのか、ボディビルダーが高じて研究者になったのか、どちらだろう。どちらもありということもあるだろう、などと思っていたが、それ以上の関心はなかった。が、関連書籍を調べていたらというか、べたに石井先生の著作を見ていたら、「鍛える理由」(参照)という本があり、筋トレをお勧めする理由でも書いてあるのかと読んでみると、自伝であった。
 1955年生まれの石井先生が2010年に出された本で、誕生日は知らないがだいたい55歳の時の著作である。おや。55歳で半生記を書かれていたのか。それはそれは、という点でも興味引かれて読んでみた。
 面白かった。私のような凡庸なのに挫折の多い人生とは違い、ピカピカのおぼっちゃマンから東大、そして東大の理学博士、国際的にも著名でありながらお茶の間にも有名人という完璧な人生である。とかいうと自分のひがみが入ったみたいだが、読んでいてそういういやみな印象はまったくない。先生の人柄がそのままに反映していて読んでいて心地のよい文章であった。もちろん、「完璧な人生」というのは反語で、いろいろ苦労されたこと、研究者として第一人者であることの困苦もじんわり伝わってきて読みごたえがある。
 面白さはいくつかの面がある。おそらくこの本を読む人は、石井先生に関心を持っている人だろうが、それは大きく分けて二つ、ボディビルに関心を持つ人たちと、先生の一般書から関心を持つ人たちだろう。
 私自身は、先に55歳の著書という点に触れたが、そのくらいの歳になった人間が人生をどう振り返るものかな、という点にひとつ関心があった。また、彼が1955年生まれ、私が1957年生まれと年代が近く、ポスト団塊世代の人生として共感できる部分が興味深かった。
 石井先生の父は早稲田大学でフランス文学を教えていた石井美久教授とのこと。現在入手可能な単著は見当たらなかった。仏文の学者さんらしく、息子さん、つまり石井直方さんは中学からは九段の暁星に通った。
 現在の暁星はよく知らないが、当時は小学校からの学生が多いようだった。私の個人的な思い出になるが、予備校時代、それほど親しくしていたわけではないが、知的な話が通じる友人の一人が暁星高校出で、いろいろ話を聞いた。いやはやハイソな世界があるものだなと思ったものだった(さらに余談だが大学ではさらにハイソな世界も垣間見た)。
 石井先生の奥さんもボディビルダー。トレーニングがきっかけで1980年に知り合ったとのこと。あの時代に女性のボディビルダーが話題になったものだった。本書にも言及があるが、なかでも西脇美智子さんが話題になった。懐かしい。彼女は1957年生まれなので、今年は56歳になる。何をされているのだろう。
 直方先生と、奥さんとなる久美子さんは1983年全日本実業団ボディビル選手権のペア部門で優勝。その写真も本書に掲載されている。なんかすごいよ。1986年に結婚され、本書出版時には、ご長男は美容師、次男は高校生、年離れて小学生の長女がいらっしゃるとのこと。そのあたりも、個人的に興味ひかれるところであった(理由は、まあね)。
 半生記としてはそのほか、学究、英国での暮らし、「あるある大辞典」出演がきっかけで一般書でも有名になるなどという話題が続く。すらすらと読み進めてしまう。
 当然だが、ボディビルや筋トレに役立つ話題も多い。なかでも、脂肪を減らしつつ筋肉を増やすという話題が面白かった。ボディビルダーとしての経験と研究者としての双方の面から書かれていて、なるほどと思わせる。
 自分もこのところ筋トレやっていて、体脂肪をもう少し絞りたいのだが、どうするのだろうと疑問に思っていた。摂取する総カロリーを大幅に減らすと体重は減るだろうが、筋肉も脂肪も両方落ちてしまう。そもそも筋肉は総カロリーが十分にないと増加しないらしい。それはそうだろうが、ではどうするか。難しいところで、上手にトレーニングするしかなさそうだ。
 石井先生の一般書に多い「スロトレ」ことスロー・トレーニングについての話題も多い。スロー・トレーニングなら筋肉への負荷も30-40%のIRMでよいらしい。これは他の本にも書かれているが、この本で読むととても納得した。私もさっそくジムでのトレーニングをスロー・トレーニングに切り替えてみた。
 いろいろ面白い本だった。こういうとなんだが、石井先生も、一般書やテレビ媒体で著名にならなければ、こうした半生記を書かれる機会はなかったのかもしれない。優れた学者であっても学究の人生としては、よい意味で普通の人生と言ってもよいだろう。
 そうした意味での普通の市民として書かれた半生記は、なんというか、小説風の半生記とは違った、実際の人生や、その時代の世相というもののじんわりとうまく伝えるものである。
 
 

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コメント

体脂肪率10%割ったら胸は消えるよ。
一昔前だと、本当にペッタンコだった。
で、現在のビルダーの胸は100%シリコン。

というか、形みりゃわかるでしょ。

投稿: F.Nakajima | 2013.08.24 17:35

スロトレを昨日から、取り入れはじめた。ちゃんと筋肉に来るので、つきそう。ただ、本を多く読んだり、頭をよく使う人は、握力、ハンドクリップのスロトレがよいのではと思う。ま、とにかく、一番、筋力がないところを優先ってことで。今まで、いくらやっても、握る力はついてくるけど、すぐとれてしまうし、トレーニング中、なんにも感じなかったけど、確かに、今回は感じる。ただし、血糖がしっかりある時にやらないと、これまた、無駄にはなると思うけど。頭を使う人は、結局、いい血糖を頭に使う・・・

あと、おもしろくて、といってもよくわからないことも多いし、そこまで筋力アップする必要もないので、こういうことを実践しているのかと、ツイッターの少年ビッチ @anaborriksutero

握力は、一日中、重いものを握っていれば、自然とつくのだけど、そういう生活できないし、本来、人間も猿で木につかまって、体重を支えられるのが正常で、それに、本物の猿たちの握力のすごさは、想像を絶するらしいので、握力を重点的に。あと、面白いから、腹筋とか、スクワットとか適当に楽しむつもり。

ま、一番最悪なのは、血糖を上げすぎて、すい臓が下げてしまうこと。こういう状態になっていて身体を動かしても、たぶん、疲れるだけ。

投稿: | 2013.11.15 09:15

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