テストステロン補充は無益で危険なのか、というか米国近年の実態は化粧品のようになっている
男性の場合、当然といえば当然だが、加齢とともに男性ホルモンであるテストステロンが減少する。そこで昨日のエントリーではテストステロンの補充に、慎重ではあるが、どちらかと言えば肯定的な立場の書籍を紹介した(参照)。が、この逆の方向も米国では話題になっている。いわく、テストステロン補充には効果がないのに金がかかり、有害ですらあるというのである。
特にこのところ話題になったのは、7月のコンシューマー・レポートの提言だった(参照)。これがけっこう強烈なもので、結論を先に言えば、テストステロン補充は効果がないからやめなさい、というものだった。
話はコンシューマー・レポートらしく、テストステロンの市場での売上げ状況の説明から始まる。効果の有無は医学的な問題であり、市場動向とは直接は関係ないようだが、現実的には産業界の売らんかなの姿勢の影響はあるだろう。掲載されている棒グラフは確かにわかりやすい。一番上が広告費の増加、二番目が処方の増加、三番目が収益の増加。
広告費の伸びの点で2012年が際立って増加している。売上げが二年間で倍になるのだから当然とも言えるだろう。対して、処方も売上げに増加しているが広告ほどではない。医療としては新しい傾向とはいえるだろう。
テストステロン業界といったものがありそうに見えるが、実際には、二製品、アンドロジェル(AndroGel)と、アキシロン(Axiron)の寡占状態である。
問題の効能についてだが、コンシューマー・レポートではまず、米国泌尿器教会は近年のテストステロンは過剰であり、治療には危険が伴うとしていることを伝えている。が、同協会のサイトからは明瞭には理解できなかった。同協会のこの話題について配布したパンフレット(参照)では、テストステロン療法はED治療ではないという点が強調されている。それはそうだろう。
その他、同レポートでは2010年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンの研究から、テストステロン療法に効果が無かったという例を引いている。記事からは原典がよくわからないので別途探すと「テストステロン療法に関連した有害事象」(参照)のようだった。が、この研究の主眼はいわば心疾患の副作用なので多少文脈が違うようには思えた。
その他の問題点も同リポートは言及しているが、医学的な確実性という点ではそれほど強固のようにも思えなかった。
製薬会社としてもこの分野で一稼ぎしたいことはわかるし、現実、無用な、あるいは有害な結果となる処方はあるのだろう。が、一概に否定も難しそうだ。結局、専門医にまかせるということになり、コンシューマーの問題だとは簡単には言いがたいように思えた。
いずれにせよ十分に知識のある専門医からの診断を得て実施するという他にはないのだろう。
ここでちょっとちゃぶ台返し的な話の展開になってしまうのだが、現実話題となっているのは、アンドロジェルとアキシロンで、どちらも塗るタイプのものだ。アキシロンにいたってはデオドラントの化粧品のようですらある。
利用者の理解としては、育毛剤のミノキシジルのような感覚になり、テストステロン補充療法という意識は薄いように思われる。
昨日触れた『ヤル気がでる! 最強の男性医療 (堀江重郎)』(参照)はもっと明確に医療として理解しやすいし、『ライフ・プランの修得 健康で締まった強くセクシーな身体(Mastering the Life Plan: The Essential Steps to Achieving Great Health and a Leaner, Stronger, and Sexier Body)』(参照)のライフ先生の意見を読み返すと、彼はこうした外用タイプについて、吸収が安定的ではないし、セックス・パートナーや子供にも影響しかねないとして、好まないとしている。彼は注射を利用している。
つまりここでも医療としてのテストステロン補充療法の明確さが問われていると見てよいのだし、逆にコンシューマー・レポートが問題視するのは、安易な外用薬のほうではないだろうか。
まあ、ざっとこの分野を見ていると、すでに日本でもアンドロジェルとアキシロンは実質利用者がいるんじゃないだろうかという感じもする。
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