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2013.05.15

橋下共同代表による問題発言の海外反響について

 日本維新の会・橋下共同代表が大阪市で13日、記者団に向けた発言に、NHKが言うところの「いわゆる従軍慰安婦問題」が含まれていて国内で話題になっていた。今朝ツイッターを見たら、毎日新聞・和田浩明記者がまとめた英語圏での報道のリスト(参照)も話題になっていた。
 私は、グーグルニュースが自動的にまとめたリストから該当の話題を辿って読んでいただけなのだが、そのわりに特に見落としていた記事はないようだった。これらのリストの記事は用語の選択などの点も含め、各報社の特徴などがよく表れているので、比較して内容を読んでみると海外報道での日本の扱いを知る上で格好の例になると思う。
 ツイッターではこのリストを元に、海外ではこんなに橋下発言が話題になっているという話題もよく見かけた。たしかにどれもベタ記事扱いではないので、話題になっていると言える。ただ、こうしてこの話題だけに焦点を当てて抜き出すとそう見えるかなという印象ももった。昨今の関連の海外報道の文脈のなかで見ると、日韓のこうした問題は米国政権側としては比較的抑制されたトーンが感じられるからだ。
 特にこの手の話題に力を入れるニューヨークタイムズ紙での扱いだが、自著『考える生き方』(参照)でも触れたけがオーディブルのおまけで配信される同紙のダイジェスト(といっても1時間くらいあるけっこうなものなんだけど)を聞くと、この話題の国際欄での扱いが意外に低かった。代わりにベンガジゲート問題やアフガニスタンでの子供を含めた民間人虐殺が主要な話題になっていた。基本、橋下氏はまだ日本の政治に直接影響をもたらしているわけではないし、逆に日本政府や世論の多数も橋下氏のような考えを支持しているわけでもないことは、国際的にある程度知られているし、さらにレイシズムの文脈で見るなら各国自身も問題を抱えている。扱いの重要性を低くしているのも頷ける。
 話を昨今の報道文脈に戻すと、先日のエントリーでパク大統領の米議会スピーチの様子を取り上げたが(参照)、こうした米議会スピーチの際の、関連する対日意識が興味深い。具体的にはパク大統領は「歴史に目を閉ざす者は未来が見えない」という表現を使ったことだ。普通に受け取れば当然対日批判ではあるが、あえて日本を名指ししていなかった。これが米議会でそのように抑制されたというところに国際情勢読み取りのポイントがある。
 簡単にいうとパク政権としては、米国の手前不用意に米同盟国の日本を批判したくないし、かといって韓国内政上、朴正煕の娘ということで「親日派(非国民のような意味合い)」と見られることを恐れるというバランスを取ったものだった。
 米側も、オバマ政権による北朝鮮政策の失策にも見える行き詰まりと、日本ではあまり報道されていないのだが韓国自身が米国の核の傘への疑念から単独の核化を望んでいることに苦慮していて、その配慮から韓国国民向けにパク大統領を厚遇するという演出をしていた。総じていえば、問題の主軸にあるのは、北朝鮮の核化の封じ込めであり、その文脈で見ると、日本の歴史意識問題は当面は抑制しておきたいというのがパク政権とオバマ政権や議会の基本的な総意になっているようだった。
 逆に報道からは見えづらいので議論しづらいのだが、安倍総理が国立追悼施設に否定的なほうが外交的には問題になってくるだろう(参照)。日本の外務省としてもこれは困ったことになっていると頭抱えているのではないだろうか。
 冒頭のリストに戻ると、これに挙がっている星条旗新聞の記事「大阪市長:『粗野な海兵隊員』は売春婦を使うことを考慮するべきである」(参照)が、現場を知悉していることに加え、他の報道メディアの政治・外交対応とは違う背景を持っていることから興味深い。
 基本的に日本バッシング的にも見える海外報道の大半は、日本に派遣されている記者の質にも関連するだろうが、日本国内のバッシング報道をつまみ食いしてまとめたタイプが多いのだが、この星条旗新聞の記事はそれらと骨格が違っている。なお、星条旗新聞は軍部の報道機関なのでその偏向があるとナイーブに思い込んでしまう人は同紙の歴史を少し調べてみるとよいだろう。なかなか気骨のある報道機関である(参照)。
 星条旗新聞の記事では、今回の話題について、いわゆる歴史認識問題として焦点を当てるだけではではなく、橋下発言の全体を見ている。その意味で、前提として日本国内報道としての橋下発言をNHK報道から顧みておきたい。「橋下氏 慰安婦必要の認識を重ねて示す」(参照)より。


 日本維新の会の橋下共同代表は、13日夜、大阪市で記者団に対し、いわゆる従軍慰安婦問題について、「いいか悪いかは別にして、軍の規律を維持するために当時は必要だった」と述べ、当時としては慰安婦の制度が必要だったという認識を重ねて示しました。
 この中で橋下共同代表は、いわゆる従軍慰安婦問題について、「いいか悪いかは別にして、軍の規律を維持するために当時は必要だった。戦争に勝った側が、負けた側を乱暴するという事実は山ほどあり、そういうものを抑えるためにも、慰安婦のような制度が必要だったのは厳然たる事実だ」と述べ、当時としては、慰安婦の制度が必要だったという認識を重ねて示しました。
 一方で橋下氏は、「慰安婦制度を、すべて否定するとかすべて正当化するのはだめだ。戦争の悲劇で生まれたものだから、意に反して慰安婦となった方には配慮を持って接しなければならない。政府が、拉致して暴行脅迫で無理やりそういう仕事につけさせたと世界から非難されているのは、違うと言わなければいけないし、国を挙げて拉致したという証拠が出てくれば、日本国として反省しなければいけない」と述べました。
 また、橋下氏は、今月上旬に沖縄のアメリカ軍普天間基地を視察したことに関連して、「海兵隊の性的なエネルギーを解消するために、司令官に対して、『もっと風俗業を活用してほしい』と言ったら、司令官は凍りついて、『禁止している』と言っていた。法律の範囲内の風俗業は認めないと、建て前論ばかりでやっていたらだめだ」と述べました。

 NHK報道は以上だが、対して、星条旗新聞の記事で重視されているのは、橋下氏による「もっと風俗業を活用してほしい」という部分である。
 ここに焦点を当てると、NHK報道に若干疑問が生じる。NHK報道に間違いがあるというのではない。米司令官の発言は橋下氏による証言であって、実際に米司令官が橋下氏のこの発言に対してどのような応答したのか、その事実がNHKでは報道されていないことだ。星条旗新聞の記事では米側のコメントがこの時点ではないとしている。
 「慰安婦(comfort women)」ついては、星条旗新聞の記事では、日本軍が自国民女性に加え、コリアン(朝鮮人)、中国人、および他国民を性利用したとして、日本人女性の慰安婦を筆頭にあげているのも特徴と言えるかもしれない。
 同紙は、橋下氏が占領下日本での遊興施設設置について語った点も言及しているが、星条旗新聞らしいのは、こうした「売春支援」は、現状では、統一軍事裁判法の下で軍法会議に服すると明記したことである。
 なかでも興味深いのが、売春支援("Patronizing a prostitute")という表現である。これが「慰安婦」の文脈で出てくることは、そう無理なく読めると思うのだが、星条旗新聞としては、該当歴史問題を「性奴隷」というよりは、売春支援("Patronizing a prostitute")として見ているからだろう。そう見ることで現在の問題との繋がりが論じられる。
 こうした視点から記事は、売春が日本国の法律で禁止されていることや、そうはいっても、類似のソープランド("Soapland")があることに言及し、また問題のあるマッサージ店が横須賀近辺にある実態についても触れている。さらに、このタイプのマッサージ店で米兵が金を盗まれた事件に言及し、日本に派遣された米兵はこうした点についてオリエンテーションを受けておくようにと注意している。
 記事の最終段では、ワシントンDCを拠点としたNPO法人「ポラリスプロジェクト」の藤原志帆子氏による、性産業には人身売買が関与していることが多いという指摘がある。文脈的には、慰安婦問題が現在の問題でもあることへの留意である。
 星条旗新聞の該当記事の展開は以上の通りなのだが、なぜ同紙がこうした展開をしているかという点については、同紙の近年の話題の文脈からは、在韓米軍での「ジューシー・バー」の問題が背景にうかがえる。同紙の記事インデックス「韓国の”ジューシー・バー”」(参照)に数年分の話題がまとめられているが、「ジューシー・バー」は問題のある遊興施設で、在韓米軍近辺にあることが多い。同紙の記事によると、フィリピンなどからだまされて連れられてきた契約的な隷属女性も多いらしい。
 
 

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コメント

全部見たわけでないですが、多くの場合、慰安婦数は20万人で、朝鮮半島、中国、フィリピン出身であった、と報じていますね。
結構な数ですが、どうやって集めたんでしょう?
うろ覚えですが、からゆきさんの場合、ルポ(サンダカン八番娼館)によれば、空気読める孝行娘が小間使いの募集に対して本当は売春婦なんでしょと思いつつも志願した、という話だったような。慰安婦もそんな調子だったんでしょうか?

投稿: | 2013.05.15 13:35

アメリカ

パンパン>女郎

日本

女郎>パンパン

こういう線引きでは? 日本の現在、新パンパンがでてきたら、とっとと検挙されそうだけどね。


あとね、世界中や隣国から、そのようには言われたくないために、あれこれ努力するけど、どんなにうまく修正できても、そのようにさらに言われるものなんだから、無駄すぎる。

アメリカは、結構、悪くいわれてるし、実際、ひどいことも歴史的にもやっているけど、修正しないどころか、もっと悪いところまで調べて公表するよね。映画「ニュースの天才」なんかもおもしろかったなぁ。最後にスタッフが反省するところがとくによかった。

それから、日本の政治家にしてもリーダーにしても、駄目なのは、自分一人で考えたことを、そのまま言ってしまうでしょう。グーグルのアドセンスポリシーに、自分の子供に見せても読ませても問題がないってあるらしいけどさぁ、リーダーは、自分の子供や嫁に話して、意見交換して同意をえられないようなことは、発言しちゃ駄目でしょ。グローバルは意外に家族主義によってささえられているんだし。

ちなみに、韓国は、アメリカのいいところを学んでいて、ドラマ「ロードナンバーワン」では、兵隊を強制徴収してるところを描いたりしてるし、あれは、見ていてびっくりした。だって、まったく兵として能力ないのを連行して、まぁ、戦闘していないときの雑用だよね、さすがに、盾にはしていなかったけど。逆に、敵側は、政治犯を盾にしつつすごい人数で攻めてきたんでしょ。とにかく、美化していなかったよ。

とにかく、美化は、無駄。通用しない。正当化も美化のうち。

投稿: | 2013.05.15 16:49

あとあと、

日本人同士の庶民の間でも、美化したり正当化する人は嫌われるよね、笑。まして、証拠がねーだろってひらきなおったら。

なんとかしてほしいよ>おえらいさんたち。

それとそれと、証拠がねーだろじゃなくて、悪事の証拠なんかじゃなくて、正義の証拠を残しながら力を使わない方がもっとおかしいんだよ。正義の証拠を残すことが歴史なんだし、笑。

投稿: | 2013.05.15 17:00

アメリカの調査でも強制連行は認められていないのに。強制連行を連呼して、賠償金のおかわりを言い続ける韓国人が問題です。これってサギですから。だまされた慰安婦には同情するし、早く人身売買や売春がなくなればと、日本人はおもっているよ。でもサギや、ひとをウソで貶めることは悪いことです。橋下さんがまたやってしまいましたが、合法性風俗(個室ビデオなど)を利用し、基地周辺の強姦事件をなくして欲しいというのが本音だったとおもいます。海外アバウトですね、売春婦はビジネスだったことが伝わってこない。強制連行はなく、問題が人身売買だったことを強調し、人身売買の犠牲者を見舞う気持ちを伝えればよかったのに。

投稿: | 2013.05.15 20:49

朝日が情報ソースのNewYorkTimesや東京支局の反日記者(YukaHayashi)が書くWallStreetJournalはかなり偏向していて絶句する事が多いです。「慰安婦」という言葉は全て強制連行が前提の「性奴隷SEX SLAVE」という言葉に置き換われています。世界がそれを読んで過敏に不快感を示すのは当然です。橋下氏が慰安婦問題に言及しただけで、「大阪市長が性奴隷制度を支持!!」と世界の政財界で読まれている2大新聞がやっているのです。これは翻訳による歪曲犯罪です。

投稿: | 2013.05.16 10:47

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