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2013.05.19

オバマ政権を揺るがす新疑惑・IRSゲートなのか?

 米国の税務審査問題がちょっと怪しい雲行きになってきた感じがするので、簡単にメモしておこう。日本の報道を見ているとちょっと論点がわかりづらいのではないかとも思えることもある。
 米国の税務審査問題というのは、日本の国税庁に相当する米国の内国歳入庁(IRS: Internal Revenue Service)がオバマ政権に批判的な茶会党(ティーパーティー)など保守系団体に対して、去年の米国大統領選挙の期間中、通常よりも厳しい税務審査を行っていたという問題だ。簡単にいうと、オバマ政権にうるさいやつらを狙って税審査で締め付けていたという話だ。
 税についてはたいていの人や団体が痛い部分を抱えているものなので、厳しく突かれるとつらいものだし、リベラルを装っている権力者がこの手のイジメをするのもありがちなので、まあ、ふーんという感じで私は見ていた。問題点が去年のオバマ再選の大統領選挙の期間中というあたりだろう、というのは当然とはいえ、まさかオバマ政権としての組織的な関与まではないんじゃないの、またつまらない大騒ぎだろうなという印象はあった。
 そのころの様子を14日のNHK報道「米歳入庁 保守系団体を厳格審査」(参照)で拾っておくとこう。


 これについてIRSは、「ティーパーティー」や「愛国者」など、保守系の名称を持つ団体を対象に不平等な審査をしたことを認めましたが、現場の職員の独断であり、オバマ大統領から政治任用された幹部は関与していないと釈明しています。
 オバマ大統領は13日の記者会見で、「もし保守系団体だけを狙ったやり方だったのなら言語道断で、IRSは事実関係をきちんと説明しなければならない」と述べ、IRSに調査を命じたことを明らかにしました。
 ただ、この問題では、野党・共和党がIRSの長官の罷免を要求しているほか、与党・民主党からもIRSへの批判の声が上がっており、オバマ大統領は対応に追われています。

 というわけで、「愛国者」を称する団体を狙って締め上げたのは事実だった。が、この時点では「現場の職員の独断であり、オバマ大統領から政治任用された幹部は関与していない」との話であり、「IRSの長官の罷免」というはどうだろうかと私などはまったり見ていた。
 が、トップが更迭された。16日NHK「米の税務審査問題 IRSトップ更迭へ」(参照)より。

 これについてオバマ大統領は、15日、緊急に声明を発表し、「国民生活に立ち入るIRSの権限の大きさを考えれば許されるものではない。国民の怒りは当然で、私も憤っている」と述べ、保守系団体への差別的な取り扱いは許されないという立場を強調しました。
そのうえで、「IRSの信頼回復のためには人事を刷新することが重要だ」として、IRSトップのミラー長官代行を更迭する考えを示しました。
 ホワイトハウスとしては、この問題にオバマ大統領が直接関わっていないことを示すことで、事態の沈静化を図るねらいがあるものとみられますが、野党・共和党だけでなく、世論も政権に厳しい目を向け始めており、大統領は苦しい対応を迫られています。

 という動きから、尻尾切りというには大物を切った。実際、「愛国者」を称する保守派を狙い撃ちしたのだから公正性に欠くと言われてもしかたがない。問題はこのあたりで、本丸は「この問題にオバマ大統領が直接関わっていない」のか、ということになり、IRSゲートかという様相を示しだした。
 大統領選の最中にオバマ政権の高官がこの問題を知っていた可能性が出てきた。
 かくして、17日NHK「米大統領 税務審査問題への関与否定」(参照)では、IRSゲートかという疑念の枠組みが明確になってきた。

アメリカで、日本の国税庁に当たるIRS=内国歳入庁が、オバマ大統領に批判的な保守系団体に対して通常より厳しい税務審査を行っていた問題で、オバマ大統領は、記者会見で「何も知らなかった」と述べ、関与を否定しました。

 IRSで問題が閉じているなら、本丸のオバマ政権には深刻な影響はない。公的な組織を公正に管轄する責任が問われるという枠組みになる。が、そこも突破されたようだ。
 18日WSJ「米オバマ政権幹部、大統領選の最中にIRS税務審査問題を把握」(参照)より。

 米内国歳入庁(IRS)がティーパーティー(茶会党)など保守系団体を対象に税務審査を厳格化していた問題で、IRSを監督する独立機関の財務省税務管理監査官(TIGTA)が2012年6月ごろ、財務省幹部に対し、このIRSの問題を調査していることを報告していたことが明らかになった。大統領選の最中にオバマ政権の高官がこの問題を知っていたことが示唆されるのは初めて。


 財務省幹部が報告を受けていたことが判明し、今度はオバマ政権内で誰が問題を把握していたのかが問われることになる。

 これでめでたくIRSゲートの枠組みとなり、オバマ政権内に問題が及ぶようになった。
 同記事は続けて、議会公聴会の状況を記している。

この問題は、今月10日にIRS免税部門のディレクター、ロイス・ラーナー氏がある弁護士会の会議で、IRSが免税を申請した保守系団体に対して審査を厳格化していたことを明らかにしたことで発覚。その1週間後の17日、4時間にわたる米下院歳入委員会で財務省幹部への報告という新たな詳細が判明した。
 同委員会での公聴会では、10日のIRS高官による公表が演出だったことも明らかになった。更迭されたIRSのスティーブン・ミラー長官代行は、渦中のラーナー氏とこの問題の公表を事前に計画していたと証言した。共和党議員は最初に議会に報告がなかったことに驚きをあらわにした。
 しかし、公聴会を終えても、誰が保守系団体への審査の厳格化を命じたのか、なぜ不適切な行為が長期間継続されたかなど多くの根本的な疑問は解消されておらず、今後、捜査が長引く可能性がある。

 論点は、こうした問題は議会で最初に扱われるべきだということだ。現状では、あたかもIRSゲートもみ消しのような様相になってしまったのも問題である。
 今回の問題が米国で燃え上がっているのは、IRSゲートの側面の他に、公正を求められる税徴収機関が、税制について批判する市民団体を標的にしたことで、税への信頼性が毀損されかねないためである。オバマ大統領が強行に対応したかに見えるのも、IRSゲートの枠組みに加えて、税への信頼性を守るためだった。
 現下、米国のベンガジゲート(参照)とIRSゲートは、常識的に見れば、その命名すら正確とはいえず、またオバマ政権が致命的な事態になるようにも見えない。が、議会や税といった共和国の根幹を軽視する火消しを行うとそれ自体がとんでもない問題にふくれあがる懸念がある。
 
 

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