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2013.04.27

抹茶モナカについて

 僕がモナカのアイスクリームを買う理由は二つある。一つは、食べやすいからだ。そのまま囓ることができる。バーのアイスだと、ガリガリ君とかね、暑い日だと食べていると、溶けた部分が棒をつたって手に垂れてくるでしょ。あれが苦手。モナカだとそれがない。でも、モナカだってすごく暑い日には、最後のほうになると、ぶにょっとして手にだらっとたれてしまうこともある。この問題はいまだに解決しないけど、よほど暑い日のことだからしかたがないかなと思っている。
 もう一つの理由は、半分に割ってわけて食べることだ。まるまる一つモナカ食べられないときとかあるし。え?だれと分けるか?そこはけっこう問題。それに分けた人が本当はまるまる一個食べたかったんだということもあるかもしれない。これも難しい問題だけど人間関係ってそういうものじゃないかと諦めている。
 どんなモナカのアイスが好きかというと、チョコのだな。本格的なチョコをモナカのアイスに期待することこはできないし、そこまで求めるべきじゃない。ラクトアイスの白い部分にちょこっとチョコがコートしているモナカでいい。これだと味や食感のアクセントがあっていい。ところがこの夏、いやまだ夏じゃないか、僕が直面したモナカのアイスクリームはといえば、抹茶モナカのアイスクリームなのだ。
 ことの発端はセブンイレブンだった。いつものとおり、たとえば松屋でスパイシーカレーを食べて駅まで遠いの歩くのめんどくさいなちょっと暑いなというとき、最寄りのセブンイレブンでモナカのアイスクリームを食べようと思った。分ける人はいたかって?いないのだけど。
 セブンイレブンではたいていの場合、モナカのアイスがある。その日僕が見つけたのはしかし普通のじゃなかった。抹茶モナカのアイスクリームだった。めずらしいなと思った。手にしてみるまでもなくセブンのマークがついているのでセブンブランドだったとわかったので、これはちょっとお安いのかなと思ったら、198円。え?ふつうだと100円とか120円くらいじゃないか。さすがインフレターゲット効果とか円安のせいなのかよくわからないけど、ちょっと高いな。だけど、それなりに美味しいからその値段なのじゃないかと、こういうときはとりあえず買ってみた。「抹茶もなか」とモナカのところがひらがなで書いてある。
 封を開けると、モナカの皮がグリーン。皮にも抹茶が練り込んであるのかと思って、囓ると、かりっときた。おおっ、こ、これは、モナカ? そりゃモナカである。でもこの感触、本物の最中に似ているじゃないか。
 そうなのだ。モナカのアイスクリームというのは、和菓子の最中を真似たもので、皮のところが同じと言ってもよいのだけど、普通に最中って売っている最中の皮は、あれは本当の最中の皮じゃないと常々思っている。本格的な和菓子の最中というのは、皮がかりっとして香ばしくて、ほほぉ、この皮が本体なのだと思わせる。それに甘味を添えるようにあんこが入っているものだ。それに栗とか入れてもいい。ようするに和菓子の最中というのは皮で勝負するものだとつねづね思っていたけど、もう何年もそういうのに当たらないし、そんなに高望みするものでもないから、ずっと忘れていた。本当のモナカの皮のおいしさというか、かりっいうのを。
 ところがこいつ、セブンの抹茶モナカの皮、かりっとするじゃないか。な、なんだ、これと思った。すごいな、ああ、これだけで200円近い金額でもいいや、かりかりと食って、駅についたのだった。けっこう幸せである。
 抹茶の味ほうは? 上品な感じ。ほんのりというか。もうちょっと上手にお茶の香りを活かしていいとは思ったけど。
 それから数日後。似たようなシチュエーションだった。初夏を思わせる空だ。駅の立ち食い蕎麦で残念なタイプのコロッケそばを食べて(それがどのように残念だったかについて語る気にはなれないのだけど、たぶんあなたが先日食べたそれみたいなものだろう)、なんかちょっと美味しいものがいいな、セブンの抹茶モナカだと考えついた。きっとどこのセブンにもあるだろうと最寄りのセブンイレブンに入ると、きちんとあった。
 二度目は喜劇であるという不吉な法則が当てはまる結果だった。どういうわけなのかわからないけど、これ、モナカの皮がかりっとしないのである。かにちゃん、という感じの促音のないオノマトペの世界なのだ。どうしたんだ、これ。さらに囓ると、やはり、かにちゃん。泣けそう。呆然としてでも半分くらい食べたら、途中あたりで、かしゃっという感じの部分があって、これでもう少し生きていけるぞと思ったけど、終盤もかにっちゃんという感じに戻ってしまった。
 同じ商品なのだろうか。なにか管理法の違いがあるのだろうか。それとも最初がとてもラッキーなタイプの「抹茶もなか」だったのだろうか。それから数日後にまた似たようなシチュエーションになったというか、今日だね。ゴールデンウィーク初日。眠たくなるようなバスを下りたらお昼だったので、松屋で牛飯を食って、空を見上げて、うーん、抹茶もなかぁと呟いた。この世界には正しい抹茶モナカと残念な抹茶モナカがある。そしてそれは一つの世界のなかで混じり合っているのだろうけど、今日の僕はなんかそういうに耐えられそうにないので、困ったなと思っていると、ファミマがあった。ファミマというのは僕は年に数回くらいしか入らない。でももしかしてそこには抹茶モナカがあるんだと、抹茶モナカの神様のお告げを受けたような気持ちがしたので入ってみたら、あったのだ。抹茶モナカ。別の。
 これがすごいんだ。どれのくらいすごいかというと名前がまず凄いんだよ。「宇治抹茶練乳あずき最中」というのだ。なんだか昭和浪漫ポルノみたいな感じの圧倒感とその文字が金地に浮かび上がっているのだね。すごいなあ。それに「遠赤外線焙煎強火製法」って書いてある。どうしてアイスクリームを遠赤外線の強火に当てるちゃうのかもうわけがわからないし、そしてあの文字を見なかったら、僕は怯んでその場で終わっていたと思うのだけど、その蒼々たる文字の羅列の上に白地に井村屋とあったのだ。井村屋。僕のごひいきの甘物菓子じゃないか。井村屋の甘物はどれも明確にくっきりはっきりと、これが井村屋の甘みだという明確な、少し刺すような甘みがある。すると、これにもあの井村屋の甘みがあるんだろう。そこを頼みに食ってみようかなと考えて買って食った。
 うっ、あんこ。うかつだった。あんこが入っていたのだった。考えてみたら、井村屋だよ。入っていておかしくないよ。というか、パッケージの写真よく見ろ。ちゃんとあんこが写っているし、そもそも「宇治抹茶練乳あずき最中」だろ。ああ、意味まで考えてなかったんですよ。そして、あんこに並んで練乳ソースも入っている。やるなあ井村屋。ここまで徹底するのか。ソースのおかげで抹茶の味や香りも強い。あんこはもうばっちり井村屋である。すごいなあ、いくらだったっけ、170円くらいか。皮のほうは、普通のモナカのアイスクリームと同じ。特にどってことない。
 で、半分食って、ぐったり来た。これもう半分は食べられないよ、大すぎだよ。分ける相手もいないよ。呆然として、とぼとぼ歩いて、でもなんとなく後半も食べちゃったのだけど、のろのろ食っているから最後は持っている指にでろっと解けちゃって、泣きたい気分になりました。人生いろんなタイプの孤独というのがあって、こういうのもあるんだよなと思った。抹茶モナカのような孤独っていうか。
 
 

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コメント

井村屋、好きです。缶入りのプリン、プリンなのにくりようかんみたいなまったりした和の味です。井村屋に抹茶最中アイスがあるとは知りませんでした。近くのスーパーにはタイ焼きアイスが売られています。https://www.imuraya-webshop.jp/products/detail.php?product_id=57 大人になったのであずきバーもタイ焼きアイスも箱買いできるのがうれしいです。

投稿: September | 2013.04.28 21:25

くだらん

投稿: | 2013.04.29 10:59

 やはりここは「ジャムんちょ」ですよ。

 イチゴジャムとアイスとチョコの夢のコラボレーション。これが本当の3味一体。

 去年の夏辺り、しばらく復刻していたの御存知でした?

 元祖「ジャムんちょ」は、だんだんジャムの量が少なくなっていき、人気が出たからだんだんコストを絞っているな、と高校生であった当時(30年前の話ですが)資本の論理を学んだのでした。

 そしてやがて消えていった。

 部活帰りの心の友、試験あけの、ジャンプ、マガジンとジャムんちょ。

 あの頃が蘇った復刻版じゃむんちょ。
もう売ってないんですよね。

投稿: Jamira | 2013.04.30 16:01

井村屋モナカは食べたことないですが
ファミマでしか見たことない、105円の、パッケージにおしゃれっ気が全然ないアイスモナカ、値段の割においしかったです。モナ王が出て以降、アイスモナカは大きいものが多くなった気がします。

投稿: | 2013.04.30 19:06

森永の『ジャンボ』というバニラモナカがパリパリしてます。値段が126円とあってアイスにチープ感ありますが個性が無い分モナカが引き立ちます。なかなかのマリアージュでした。

投稿: カワウチフミコ | 2013.05.01 08:51

つられて食べましたが、かりかりで美味しかったです>セブンイレブンPBの抹茶モナカ

ありがとうございました。また買ってしまうかも(同じ店で)

投稿: yoshie | 2013.05.08 23:07

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