[書評]ピンチョス360°(ホセ・バラオナ・ビニェス)
先日、人とうまい物や料理の話をしていた際、レシピの話の流れだったかと思う、「クックパッドって、見ますか?」と聞かれた。即座に「見ないですよ」と答えたが、全然、見ないわけではないのに気がついて、「ああ、見ることはありますし、さっと読んで参考にすることはありますが、あれで料理を作ったことはないですよ」と補足した。こうすればいいよとリンクで人に知らせたことはあったかもしれないけど、たぶん、あれで何か作ったことはなかったと思う。
クックパッドのレシピが悪いとはまったく思わないし、よく知らないけど、たぶん、カリスマ的な料理研究家さんもいるのではないか。でも、そうであったらむしろ、クックパッドじゃなくて、自分でブログに掲載するとか、レシピ本でも出せばいいのではないか。
料理を媒介にしたSNSとしてクックパッドは面白い試みだと思うけど、私にしてみると、なんというのか、現状だと中途半端に実用的なわりに、オーソドクシーや料理を通して何か訴えかけてくるものが見えないので、参考にしていると、なんか自分を見失っちゃうような感じがする。とま、そんな話もしたと思う。
それから、市販のレシピ本の話になって、「でも、クックパッドのせいでレシピ本が売れないんですよ」ということを聞いて、ちょっと驚いた。そんなことがあるのかと、知らなかった。
私は人の料理本とか好きで、結果的に趣味の一ジャンルになっているし、今でもよくレシピ本は買う。面白いレシピ本、多いと思うけどなあ。
![]() ピンチョス360° |
というわけで、比較的最近ので、飽かず眺めているのが、これ、『ピンチョス360°(ホセ・バラオナ・ビニェス)』(参照)である。表題どおり、ピンチョスの本。「360°」とあるのは前書きでも補足されているように、「全方位」ということ。各種のピンチョスのサンプルがきれいな写真で掲載されている。
ピンチョスというのは、一口サイズの軽食。バゲットにカットトマトを載せたりとか、串に刺した小さなハンバーグみたいのとか、よくホテルの立食パーティとかに出てくるあれ。
日本人の感覚からするとちょっとした洋酒のおつまみみたいな感じ。つまんで食べられるから、フィンガーフードとも言うらしいこともこの本に書いてある。
元来はバスク地方のバーから広まったものらしい。ピンチョスの名前から分かるように、ピンチということで、元々はおかずをパンに串刺し(ピンチ)したものらしい。スペイン語だから、タコスがタコとも言われるようにピンチョにもなるらしい。スペインなんで軽食のタパでもあるそうだ。まあ、そんな話は野暮なこと。
とにかくかわいい。きれいだ。うあ、食べたいと子供のように思える。
いろんな種類がある。バゲットに載せたり、潰してこんがりさせたパンに載せたり、ポテトに載せたり、野菜や果物に添えたり、一口スープと合わせたり、スイーツや、焼きおにぎりもある。ということで、この感覚だと、江戸前寿司も十分ピンチョスになるというか、ピンチョスだったのですね、寿司やおにぎりって。サモサや春巻きもピンチョス・ピンチョス。
それにしても見ているだけで楽しい料理の本だ。作り方については、後半に簡素にささっとまとまっている。基本的にどれもそんな難しいものではないから、作り方も簡素。でも、「ああ、あれとあれを組み合わせるのか」と感じることが多く、他の料理のレシピを考えるときのヒントになる。そう、料理を考えるときのヒント満載の本だ。
作り方については簡素と書いたが、後半にある「ピンチョスの味のベース」として数ページだけど重要な調理が解説されている。自分もよく作るけど、パプリカを真っ黒に焼いてから皮を剥いてマリネした「エスカリバーダ」は美味しいですよ。
この本はスタイリッシュに出来ているけど、このネタを数品用意して、クラッカーに載せてるとアメリカン。ということで、ピンチョス風のネタを数点用意して、クラッカーに載せると簡単にパーティー料理になるし、簡単な朝食や昼食にもなる。
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