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2013.01.01

ようやく来るか、不機嫌な時代

 2013年、明けましておめでとうございます。
 こないだ2000年になったと思ったら、もう13年。早いもんです。雲取山登山の御一行は意外なご来光が拝めたでしょうか。
 私はというと、昨晩は紅白歌合戦を見ながら、ツイッターに浸ってました。一昨年あたりからの吉例なんですよ。うざいツイートでご迷惑をかけました。
 さてさて。
 

cover
不機嫌な時代
JAPAN2020
 昨晩はなんとなく寝つかれず、ぐだぐだした元旦となり、ぼけっーと書棚を見たら、ピーター・タスカ『JAPAN2020 不機嫌な時代』があり、ふと手に取り、なんとなく読んでいた。2020年まであと7年かあとも思ったので。
 奥付を見ると1997年1月20日に出版された本だから、この本も16年前になるか。16年前に出された25年後の日本の予測の本。そして予測の期限でいうと、残り三分の一を切ったくらいか。どのくらい当たっているか。
 それにしても、時代の速さにちょっとびっくりしないでもない。
 1997年と言えば、小泉政権以前。橋本内閣のころ。橋本内閣から小泉内閣の時代に再読していたら、日本もけっこう改革に向かっているという印象だったろうけど、このどんより沈んだ現代日本で再読するとどうなんだろうか。
 再読した。
 結論から言うと、当たっている面と、すでに外れている面とあった。ただ、いずれも微妙な感じがした。
 「うあ、これは、めっさハズレだな」と思ったのは、タスカさん、1997年の時点で日本のデフレは終わりに向かったと予想していた点。どっこい、あれから16年しても日本はデフレに沈んでいたのでした。
 ただし、このインフレ転換の予言は、むしろ今年あたりから当たらないとも言えない。とすると、今この本を読み直す価値はあるか、なのだが、この本の枠組みでは金融政策は議論されていないので、やはり別の枠組みだろう。
 も、ひとつハズレたなと思ったのは、米国が日本やアジアへの関与を減らすということだった。これもある意味で当たりと言えないでもない。民主党政権ができたころのオバマ政権は日本に対する関心をかなり失っていた。原発事故のときも、あれでも引いていた。
 状況が変わったのはやはり民主党政権の功績と言えるだろう、逆説的にだが。
 現在でもそうとも言えるが、それまで日本が陰から支えていた東アジア諸国の安全保障のタガが外れた。中国様がずかずかと南シナ海に出て来た。各国、悲鳴を上げ、しかも親中かと見られていたオーストラリアも「中国、やべー」感が出て来て、間接的に米国の関与が少し深まりつつある。
 以上、けっこう大きな二軸で外れたとも言えるので今更読み返すまでもないかというと、未来予測としてのシナリオと見ると、どでも微妙に外れた感もあるものの、日本社会の根幹的な問題、特にマンサー・オルソンを参照した"redistributional coalition"(再配分連盟)の問題は、しみじみ民主党政権を通して理解できたので、しんみりと読んだ。
 これは簡単に言えば、利益団体のことで、従来は自民党的な政治の問題であり、小泉改革の文脈で論じられていたものだったが、日本の場合、民主党のほうがこれが露出することになろうとは。特に最悪だったのが、郵政改革のぶちこわしだった。
 日本社会に巣くう再配分連盟をどうするかだが、これも結論的にいうなら、金融緩和が当面有効だろう。じんわりと再配分連盟の弱化をもたらすことになるだろうから。逆に言えば、その抵抗勢力がこれからいっそう強くなるだろう。
 その他、個別に興味深い指摘もあった。
 これも民主党政権で痛感したことでもあったが、社会はその支配層の世代の人格形成期に影響されるというあたりだ。支配層は一般的に50歳から65歳。そして人格形成期は15歳から25歳である。同書が書かれた1997年ではまだ支配層が1945年から1960年としてしたわけで、まだ、戦後のアニマル・スピリットが残っていた。
 が、それから約15年シフトして、今の日本の支配層は1960年から1975年ということになる。「うぁあ、ダメじゃんその青春世代」という最悪の人格形成期である。このどたばたが民主党政権だったかと思うと、日本もすごいことやってしまった。
 これに併せて「合理的な無関心」という概念も提出される。オルソンの概念だろうか。再配分連盟が必死になっても、大衆はそこに利害を実感しないので無関心になるというものだ。それだけ言うならどうということでもないが。が、今回の選挙でも大衆の、政治無関心が話題になったが、この考え方すると、むしろ合理的というべきものだろう。
 やや勇み足でいうと、反・脱・卒などの原発に対する政治運動は、結果的に「合理的な無関心」によって抑制されてしまった。おそらく、そのことにいきり立つ一群の再配分連盟が十分な利益を構成できなかったからだろう。もっとも、TPP問題では、逆に再配分連盟が勝利するだろうことは明白でもある。
 いずれにせよ、これからの日本の政治課題は、「再配分連盟」と「合理的な無関心」の関連で、後者の部分を前者側にシフトさせるという意味での「Webで政治を動かす」はあまり有効でないように思う。普通に、「再配分連盟」の亜種になるか飲み込まれるかくらいだろう。むしろ「合理的な無関心」の側の大衆の無意識の高度化を見守るほうがよいように思う。
 同書の指摘で多少笑ったのだが、日本最大の再配分連盟は中年男性というのがあった。1997年ではそうだっただろうなと思わせるが、2013年ではどうか。
 この問題はごく簡単にいうと、「家計を維持するには妻が働かないといけないという状況になれば労働市場で女性が中年男性と競い合う」ということだ。
 ざっとした印象ではそうした傾向はまだ日本には見られないし、どうもそれを抑制しているのは、女性の側にもありそうな印象もある。
 あるいは、未婚化というのは、親という「再配分連盟」へのパラサイト化ではないか。同書にも指摘があったし、言うまでもないことだが、高齢者の資産はとりあえずそのままその次の世代に渡されるので、今の若い世代というのは、自立した家計を担うのでなければ、他の時代の若い世代と比べると、けっこう潤沢。
 どうにもこうにも「家計を維持するには妻が働かないといけない」という状況があれば、変化するだろう。そうなれば、つまり、日本の最終兵器、女性がまた出てくるわけである。「また」というのは、日本の戦時下で実は女性の労働力がマックスになっていた。それが戦争を長引かせてしまったと言えないでもないようだが。
 
 

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コメント

あけましておめでとうございます。

2001年に小泉純一郎首相出現以来の21世紀2度目の巳年です。

風雲児出現か。そんなこともないか。

とにかく、夏に参院選を控えた巳年です。

投稿: enneagram | 2013.01.02 06:36

いい家は、ずっと妻が働いていたよ。やだなぁ、遊んでいたとおもうなんて、笑。反対に、夫は、働いているつもりで威張ってただけで、ぜんぜん働いていなかったから、こうなっちゃっただけだよ。

確実なのは、能力主義がくるってことだよ。日本は学力主義でめちゃくちゃになっただけだよ。学力しかなくて高所得が決まるなんて世界で見ても異常だし、歴史でもおかしい。

まぁ、女帝がでて、清朝末期みたいになって、大混乱で、せめて救われているのは、戦争できないってくらいだろうね。勝てない戦争をするのも、バカな男の仕業だし。学力なんかより、働いた方がいいんだよ。政治家は、ちゃんと一般人の仕事をしたりボランティアしたらいいんだよ。有名政治家ほど、ずっと働いていないしね。いい加減、働かないで高所得って、やめてほしい。


新年そうそう、明るいなぁ、笑!

投稿: | 2013.01.02 07:14

連続投稿で失礼します。拝読し、2つの点で私は見解を異にします。「女性が社会進出するかどうか」という問題と、「親の遺産があるから今の若者はぜいたくだ」という問題です。以下、私の勘違いを含め、考えを述べてみます。昔、日本はアメリカに憧れました。「専業主婦なんて時代遅れだわ。だって、アメリカの女性はみんな共働き。共働きこそエリートよ」。しかし、現実は全く違った。アメリカは、共働きしなければ食べていけない国だった。日本はそれを見抜けなかった(あえて知識人が売名のために女性の社会進出を煽った背景があると私は思いますが)。いずれにしても、現代の日本では、夫婦が『共働き』をしなければ食べていけない時代です。共働きがエリート層だと考える日本人は、今はゼロに等しいでしょう。みんな、ますます厳しい時代になるから、今よりもさらに厳しい共働きになる、と日本全体が考えていると思います。次に、親の資産(遺産)があるから、今の若者は有利なのか、という問題。私は、日本の通貨が目減りを起こしつつあると思います。原油価格が上がり、石油、ガソリン、穀物が値上がりました。パンも牛乳も、野菜すら、数年前より約一割ほど値上がったと思います。どんなに老人世代の財産があったとしても、また「国債は未来の日本人の財産だ」なる愚論が言われても、なんせ地下資源もなく、食料自給率が著しく低い国なので、これからますます物価上昇(インフレ)するでしょう。問題は、日本の『円』の価値が、現状維持もしくは上昇するか、ということだと思います。間違いなく、『円』の価値は下落します。凄まじい前例なき高齢化社会で、産業の空洞化。日本は国際的に地位が落ちるし、物価上昇の中で『円』の価値が下がれば、実質的には老人世代の財産(遺産)が目減りしていることになります。中国やロシアに、中東の油田を買い占められた。もし仮に、中国が石油戦争を仕掛けたら、間違いなく日本は、どうにもならないスーパーインフレ(パン1つが千円)の情況を呈すると思います。その時、老人世代の財産なんぞ、ぱーんとはじけて、実質的にはゼロになるはずです。少し極論すぎますが、日本の害務省、罪務省、亡衛省の無能っぷりが、この国を滅ぼすだろうと思います。今回の選挙は自民党の圧勝ではなく、単に「民主党を潰せ」だけの風潮でした。マニフェストどころか、どこを目指しているか分からない今の社会的風潮。「ぜいたくは敵だ」が復活するはずです。

投稿: 大東亜 | 2013.01.03 07:46

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