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2012.07.21

昨日の夜のノンアルコールビール

 お酒が飲めなくなったものの、夏の夜にはちょっとビールみたいなものが飲みたいなというときに、偽ビール。ノンアルコールビールを飲むことが多い。実体は炭酸水とさして変わらないが、まあ気分というもの。最近はそれなりに味もいいように思えてきた。昨晩も深夜、ふとノンアルコールビールが飲みたくなって、小雨のなか近所のコンビニに買いに行ったのだ。それだけのために。いつもは、スーパーとかで六缶入りとか買うのだけど。
 深夜のコンビニっていつも人がいる。きみたち寝ないのかねと思うが、そういう人がいるっていうのは、眠れない夜の優しさの部類じゃないか。さてと、とコンビニの冷蔵庫を開けて、キリンのにするかなと手に取ると、きんきんに冷えている。持っているだけで冷たくて指が痛い。これはいいと思って、いそいでレジに持っていく。これね、と言ってレジの台に乗せると、店員、まだ20代のお兄さんだろうか、バーコードでレジして、そこで「パネルにタッチしてください」と言うのだ。え?
 レジの機械のパネルを見ると、20歳以上であることを確認する、OK?みたいになっている。え? 俺、54歳ですよ。酒が飲めないからって、中年太りしてないからって、見りゃ、わかるでしょ。見えないネットですら、爺って言われるくらいなんだから。
 にへと笑って、そのとき僕はちょっと勘違いしたのだ。店員が冗談ではないけど、深夜で手順を間違えたんじゃないかと思ったのだ。これって、そのパネルの表示を見てもわかるけど、20歳以下の人にお酒を売らないというためのシステムですよね、むふっ。それにこれはお酒でもないし。
 で、なんとなく僕はぼけっとして、店員がちょっと困惑げな感じだったので、あ、それ袋に入れてくださいと言ったのだった。シールを貼った缶のまま持って、コンビニを出て、そこで一気にぐびーと飲むおっさんだと思ったんじゃないか。そうじゃないんだよ、家に戻って飲むんだよ。手で持ってると、冷たすぎるじゃないか。
 そうではなかったのだね。
 あの、パネル、と店員の兄さんは言うのだった。
 パネル? ああ、パネルね、そんなのあったよね。あは?
 あれれ、なんか世界が白いぞ。なんでここで凍るんだ?
 パネル確認してください、と店員は言うのだった。さっきのちょっとだけ困惑げな感じで。
 その時になって、わかった。そうか、俺も、これで20歳以上であることの確認するというか。俺、これに、同意するのか? え? 20歳以上の確認を54歳の俺が?
 ここで同意したからって、世間で下げる頭と同じようなもので減るわけでもないし、世の中というのはもともと理不尽の塊だし、じゃあとiPadでも触るようにタッチする。と、なんか、かすかにねちょとしたオーラみたいのが指先を、ちょりり~んと伝わってくる感じがして、なんかヤダなあという感じだった。でも、これでこの変なぷち凍った空気は終わるのでしょう。生きてるってめんどくさいね。
 小さいレジ袋に偽ビールを入れてもらい、受け取る。それでほんとに終わりでもよかったのだけど、他にレジに来る客はなさそうなので、ちょっと聞いてみた。
 これって、僕みたいにあきらかに20歳以上の人でも、タッチするの?
 はい、と店員は言うのだった。そして、それ以上聞くなよという感じもしたので、そこで、本当に終わりにした。こんな些細なことでも、深刻な恋愛でも終わりにするときは、そんなふうに理不尽をごくんと飲み込むものなのだ。
 もちろん、納得は行かないわけですよ。
 仮にですよ、あそこで、この俺が、いやあ、俺っち19歳だぁ、とか抜かして、こんなのタッチできないわ、とかこいたら、どうなっていたんだろう。
 そこまでやる勇気はない。むかし、マクドのお姉さんに、あとスマイル!スマイル!とか言ってたのはもう30年も昔のこと。
 家に帰る。深夜だし、やさぐれているので電気は明るくしない。節電のためでも反原発のためでもない。ただ、やさぐれているときは、薄暗いほうがいいじゃないか。さてと、と、グラスを取り出す。ビアグラスはあるのだった。
 偽ビールのプルリングを引き、どどっとグラスに注ぐ。まるでビールみたいだよなと思う。そして、あれ、僕はいつから缶ビールをグラスに入れて飲むようになったんだっけと思う。いや、そうじゃない。僕はいつまで缶ビールをそのまま缶で飲んでいたんだけっと思った。
 いつもそうしていた。
 いつもって、いつまでだい?
 30代まではそうだったんじゃないか。旅先でもそうだった。マルタ島にはなぜかハイネケンのビール工場があって、そのハイネケンも缶で飲んだ。香港で飲んだ青島はでっかいビンだったが、オリオンは缶だ。
 でも、もうずっとグラスに入れて飲んでいるなあ、俺。
 虚空に、ビールは缶で飲みますか?という架空のパネルが現れる。OKのほうを押してみる。なんか虚空のパネルからすーっと冷たく寂しいものが流れてきて、哀しくなる。
 そのあと、正確にいうと、すごい憂鬱になった。
 いやあ沈むなあと思った。沈む理由はわかっていた。こういうとき、酒が飲めるといいだよなあと思った。
 虚空のパネルに、お酒飲めますか、と出てくるけど、OKはタッチできない。キャンセルのほうをタッチする。
 キャンセル?
 なんだよ、それ。
 
 

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2012.07.20

米国英語と英国英語の発音の違い

 英語を意欲的に学ぶ人が多いみたいだが、米国英語と英国英語の違いはどうしているのだろうか? たまに疑問になる。インターネットを使って英語を学ぶという話題に、よくBBC(英国放送協会)やNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)が出てくるけど、BBCは概ね英国英語、NPRは概ね米国英語。英語国民ならどっちも聴けるだろうし、違いは東京弁と大阪弁くらいなものかとも思うこともあるが、英語を学ぶ日本人としてはどっちかひとつに基点を置いたほうがいいのではないかな。どうしてるんでしょうかね。
 問題意識を浮かび上がらせる意味で、ちょっと○×クイズをしてみたい。発音に絞った。


1 英国英語で"car"の"ar"と"father"の"a"は同じ音?
2 英国英語で"car"の"ar"と"aunt"の"au"は同じ音?
3 英国英語で"sport"の"or"と"door"の"oor"は同じ音?
4 英国英語で"sport"の"or"と"talk"の"al"は同じ音?
5 英国英語で"hot"の"o"と"stop"の"o"は同じ音?
6 英国英語で"hot"の"o"と"want"の"a"は同じ音?
7 英国英語で"teacher"の"er"と"umbrella"の"a"は同じ音?
8 英国英語で"teacher"の"er"と"her"の語末の"er"は同じ音?
9 英国英語で"famous"の"ou"と"America"の語頭の"A"は同じ音?
10 英国英語で"nurse"の"ur"と"work"の"or"はは同じ音?
11 米国英語で"car"の"ar"と"father"の"a"は同じ音?
12 米国英語で"hot"の"o"と"father"の"a"は同じ音?
13 米国英語で"good"の"oo"と"full"の"u"は同じ音?
14 米国英語で"sure"の"ure"と"poor"の"oor"は同じ音?
15 米国英語で"Europe"の"ur"と"plural"の"ur"は同じ音?
16 米国英語で"come"の"o"と"lunch"の"u"は同じ音?
17 米国英語で"teacher"の"er"と"umbrella"の"a"は同じ音?
18 米国英語で"nurse"の"ur"と"work"の"or"は同じ音?
19 米国英語で"teacher"の"er"と"her"の語末の"er"は同じ音?
20 米国英語で"hot"の"o"と"son"の"o"は同じ音?

 クイズの解答は文末に記した。解答が間違っていたらごめんなさい。でも、すぐに答え合わせするのではなく、できたら、以下の議論を読んで再度やりなおしてみるといいと思う。とはいえ、ちょっとややこしい話。
 英国英語と米国英語。学校ではどういう指導をしているのだろうか。たまに気になる。概ね米国英語が多いようだが、それほど違いは意識されていないようにも思える。どっちで学んでも英語力が付けばよいという印象である。
 それでいいのかもしれないが、たとえば、オックスフォード大学の出版部(Oxford University Press)は各種英語学習教材を販売しているが(参照)、簡単に音声で確認できるものを聞いてみると英国英語だった。聖公会系の学校だとこういう教材を使っているのかなと思ったものだ。他方、米国のESL(English as Second Language)だと米国英語が中心のようだ。
 考え方によって米国英語と英国英語の違いはそれほど問題でもなく、最初の決めごとかもしれない。そう思っていたが先日、オックスフォード大学の出版部のELT(English-language teaching)教材の"English File Pronunciation"という発音学習のアプリを見ていたら、英国英語と米国英語の切り替えができる。それはいいなと見ていて、ちょっと驚いた。

 驚いたのは、母音の組織の提示方法だった。英国英語と米国英語の発音が違うのはよく知られていることだが、母音組織として異なる体系にあることが最初に提示されていたのだった。


左が米国英語の母音、右が英国英語の母音

 米国英語の場合、母音組織は、(1)特徴付けなしの母音、(2)R音性母音、(3)二重母音、の3つの範疇で構成されている。
 対して、英国英語の場合は、(1)shortの母音、(2)longの母音、の2範疇が対立してあり、さらに(3)二重母音、の3つの範疇になる。
 そんなことは当たり前ではないかと言う人もいるだろうが、これは「音」としての差違というより、音素体系として提示されている点が重要。母音組織そのものが違うことになる。普通に考えれば、別の言語のようでもある。だが、どちらもラテン語文字という類似の表記法を使っているうえ、それを発音に事実上紐付けしている。その対応がどちらも異常なくらい複雑になっている。
 別の言い方をすると、米国英語ではshortの母音とlongの母音といった組織対立はなく、英国英語では米国英語を特徴付けるR音性母音がない。それでいながら、米国英語のlongの母音は、米国英語を特徴付けるR音性母音と関連がありそうに見える。
 学習者にしてみれば、どちらか決めておいて他方は無視してもよいようなものだが、それでも発音とスペリングの関係をルール化する場合、たとえば、"Silent e"といったフォニックス(Phonics)的なルールを採用する場合、英語がスペリングに使うラテン語の母音文字との関連で、shortとlongの関連が意識されることになる。つまり、米国英語でも、スペリング学習との関連で、shortの母音とlongの母音の関係は暗黙に理解が求められることになる。このことは、言語として見た場合、米国英語学習者にとっても英国英語の母音発音組織が暗黙に意識されることでもある。このあたりに大きな問題が潜んでいる。
 そこでまず、英国英語のshortの母音とlongの母音の組織だが、調音的には次のようになっているし、先のオックスフォード大学教材も暗黙にこの組織性を提示している。


 short  long
 ɪ    iː
 æ    ɑː
 ɒ    ɔː
 ʊ    uː
 ə    ɜː
 e
 ʌ

 これを"Silent e"からラテン語母音字に対応させるフォニックス(Phonics)的なlongとshortに分け直すと次のようになるはずだ。おそらくこれが英国英語ネイティブの発音意識に対応している。簡単にいえば、longはアルファベットの読み方と同じである。

  short  long
I  ɪ    aɪ
E  e    iː
A  æ    eɪ
O  ɒ    oʊ
U  ʊ    uː

 このラテン語母音字の表で短母音として抜けているのが、/ʌ/と/ə/である。後者は英国英語でもschwaと見ていいだろう。つまり、無アクセントの母音が/ə/だろう。こう整理して体系的に残るは、/ʌ/である。これはスペリングから見ると、Uのshortに対応していることが多い。これはあとで再考察する。
 英国英語の調音体系とスペリングとの母音意識体系の差をラテン語母音字に対応で見てきたのは、英語は元来、このラテン語母音字に近い発音だったからだ。それが現在の英語のように大きな変化をしたのは、中世期のグレート・ヴァウエル・シフト「大母音推移」(Great Vowel Shift)のせいである(参照)。チョーサーとシェイクスピアの間で起きたというイメージになる。
 それ以前の英語の場合は、概ね、longの母音は、shortの母音を伸ばしたものだった。日本語の音引きみたいなものである。"name"はそれゆえ、「なーめ」であった。
 グレート・ヴァウエル・シフトをラテン語母音字で整理すると、先のフォニックスのlong/shortの表に近くなる。ただし、以下の説明は正確ではなく。便宜である。ラテン語母音字の5字に"oo"を加えたのは、グレート・ヴァウエル・シフト以前のshortの母音は5母音を越えていたからだらだ。また当時の異スペリングは括弧に補った。

    旧long   現long
I(y)   iː     aɪ
E(ee)   ɛː, eː   iː
A(aa)   aː     eɪ
O    ɔː     oʊ
U(ou)  uː     aʊ
oo    oː     uː

 調音的には舌の位置が構造的に上顎方向にずれた。また、調音的にはみ出した部分は二重母音化した。その他にも段階的に変化した。以下の図は、米国英語ふうに変化を簡略化したもの。

 グレート・ヴァウエル・シフトの全体像は複雑だが、ここではスペリングとの関係だけに絞ってみたい。繰り返すが、そのため、学問的に厳密な話ではなくなる。しかし実際のところ、発音とスペリングに利用されているラテン語母音字との対応が、母音組織というより、英語学習上の問題になるだろうと思う。
 先に残した問題、"oo"と"u"の扱いだが、先ほどは、Uのラテン語母音字に/ʊ/と/uː/ を充てた。現在の英語では、これは"oo"に対応している。そこを整理しなおすと先に余った/ʌ/が当てはまることが多い。例えば、"up"や"nut"など。しかし"put"は異なる。また、/ɔː/の位置がないので、これに対応するスペリングとして"au, al"を含める。/ɑː/も対応しづらい。仮に"A"のlongに併記しておく。次のようになる。


  short  long
I  ɪ    aɪ
E  e    iː
A  æ    eɪ, ɑː
O  ɒ    oʊ
oo ʊ     uː
U  ʌ    uː
au,al 欠  ɔː

 "U"のshort/ʌ/に対応するlongは/uː/としたのでここは重複する。
 以上のように整理してみると、現代英国英語は母音は大きな変化を経たが、ラテン語母音字に対応する母音の構造意識で見ると、古代からの英語の構造をけっこう保持しているとも言えそうだ。おそらく、グレート・ヴァウエル・シフトはlongの母音で顕著でshortの音が保持され、それとスペリングの対応にlongの意識だけ付随したからではないだろうか。
 米国英語ではどうか。スペリングとの意識対応は変わらないので、構造的な違いはないと思われる。だが、米国英語にはlongが音声上は存在しないので、longとして意識されているとして当てはめてみる。

  short  long意識
I  ɪ    aɪ
E  ɛ    i
A  æ    eɪ
O  ɑ    oʊ
oo ʊ    u
U  ʌ    u
au,al 欠  ɔ

 以上の対比から、英国英語と米国英語の母音意識の構造上の差違は、英国英語から見た場合、/ɑː/と/ɔː/に大きく現れている。
 当然これは、英国英語のlong母音と米国英語のR音性母音とに関わり、ラテン語母音字から見ると対照の構造が存在しそうだ。しかし、"ir"と"ur"は英国long母音の対応はない。

ラテン語的表記  英国long母音  米国R音性母音
  ir      欠     ɪr
  ar      ɑː     ɑr
  or      ɔː     ɔr
  ur      欠     ʊr
  er      ɜː     ɜr
〈schwa〉     欠     ər

 米国R音性母音に対応する英国二重母音で見ると対応がはっきりする。グレート・ヴァウエル・シフトでlongが二重母音化したのと類似の構造がある。

ラテン語的表記  英国二重母音
  ir       iə
  ar       ɑː
  or       ɔː
air/ere/ear/are   eə
  oor       ʊə
  er       ə

 簡単にいうと、英国英語の場合、米国英語のR音性母音は、上顎に近い調音の"ir"と"ur"ではschwa(/ə/)を後置する意識となり、"ar"と"or"ではlongとして扱われることになる。ただし、無音でありながら意識の上では存在しているとも言える。
 というあたりで、冒頭のクイズを見直してみると、なんとなく議論の意図が汲んでいただけるのではないか。

[クイズの答え]1○2○3○4○5○6○7○8×9○10○11×12×13○14○15○16○17×18○19○20×
 
 

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2012.07.19

2ちゃんの、英語のfriendを「ふりえんど」って覚えた奴w

 英語学習ネタはしばらくやめようと思っていたのだけど、2ちゃんねるのまとめサイトで「英語のfriendを「ふりえんど」って覚えた奴wwwwwww」(参照)というのを見かけ、いつもどおりざっと笑いながら読んで終わりとしようと思ったけど、もしかしてこれ説明しておいたほうがいいんじゃないか、と思い直したので、ちょっと書いてみますか。それほど正しい説明でもないし、他所で見かけない話というのでもないけど。
 具体的にタイトルにあるように英語の"friend"を「ふりえんど」って覚えるという話だけど、このスペリングはどう見ても、/fɹɛnd/とは読めない。なので強引に覚えるしかない。「ふりえんど」もしかたないということになる。
 それでも英語にはスペリングのルールのようなものがある。例えば、母音が二つ並ぶシラブルの場合は前の方ので代表する。これが当てはまるのは"people"の"eo"で、"e"が発音のカギで、続く"o"は発音しないといった場合。他にもこんなの。どれも、後で説明するlongの母音になる。


fair, paint, wait
dial, trial, vial
dua, fuel, juice
clean, hear, people
boat, coat, four

 ルールとはいっても"people"の場合"e"の後ろが"o"であることはやっぱり覚えないといけない。ついでにいうと、発音しない後続母音字は脱落しやすい。英国英語だと"colour"だけど、米語だと"color"になった。
 "friend"だがこのルールだと「ふらいんど」みたいになるはず。でもそうなっていない。じゃあ、ルールもなんもないじゃん、なのだけど、母音が二つ並ぶシラブルの場合で"i"が先の場合はそれを無視というサブのルールがあるにはある。ただし、"friend"と適用が違う。

field, lied, piece

 "diet"もそれと違う。ああ、残念。
 次。
 2ちゃんの例では、

baseballを「ばせば11」って覚えた奴

 これはスペリングのルールどおり。
 "baseball"は、"base"+"ball"と分ける。
 "base"なんだが、この語末の"e"は英語国民は"Silent e"参照)として習う。意味は「発音しないE」なんだけど、機能はその前のアクセントのあるシラブルの母音をlongにすること。
 で、longって何?だが、ようするに、a・i・u・e・oというラテン語母音字を英語では、longとshortに発音し分ける。longのはいわゆるアルファベット読みになる。発音表記はIPAを借りるとこう。なお、これが英語学習によいというわけではないのはまた別の機会にでも。

   long    short
A   eɪ   æ
I   aɪ   ɪ
U   uː   ʌ
E   iː    ɛ
O   oʊ    ɒ

 以上から、"base"は、b + long a +sで、「べいす」みたいになる。
 "Silent e"のルール例はこんな感じ。

      Without silent e   →  With silent e
slat      slate      /slæt/ → /sleɪt/
grip      gripe      /ɡrɪp/ → /ɡraɪp/
run      rune      /rʌn/ → /ruːn/
met      mete      /mɛt/ → /miːt/
cod      code      /kɒd/ → /koʊd/

 なお、"Silent e"は、頻繁に使う語彙に例外が多い。

come, done, give, love

 次は"ball"だけど、これは"al"と"aw"は/ɔ/と発音するルールから「ぼーる」になる。「ぼうる」みたいに「う」の感じは入らない。日本語だと「あー」に近い。なお、"aw"は語末でないと、"au"になる。"launch"は、「らうんち」ではない。「らーんち」みたいな感じ。
 いずれにせよ、"baseball"は発音ができると、以上のルールからスペリングも決まる。
 ということで、英語を母国語としている人は、子どものころから発音を先に覚えて、それをスペリングにするルールを覚える。
 発音ができて、スペリングの基本ルールを覚えておけば、たいていの英語のスペリングが書けるということにもなり、実際のところ、英語のスペルチェッカーはそれが主目的になっている。まとめると、発音どおりに英文ワープロに入力すればほとんどのスペリングは修正してくれる。もっとも、やばい例外もあるにはあるので注意は大切。
 次。

soccerを「そっけら」って覚えたやつwwww

 これもだいたいルール通り。
 重要なルールは、単語はシラブルで分けるということ。シラブルって何かだけど、母音を1つ含んだ発音の単位。詳しくはこれも別の機会に説明するかもしれないけど、いずれにせよ、"soccer"は、"soc"+"cer"にわけられる。"Silent e"もなく、longの母音もないので、発音の /ˈsɑk.ɚ/ からだいたいスペリングが決まる。
 ただし、英語単語の慣例からすると、"socker"となりかねないし、"sucker" ( /ˈsʌk.ɚ/ )という単語もある。"c"がどういうふうに英語単語に出てくるかというのは、Centum-satem isogloss(参照)という問題がある。GIFを「ぎふ」と読むか「じふ」なども関連する。外来語の語感でだいたい決まる。でも、これらも明瞭化のために変化しやすい。英国英語だと"licence"だけど米語だと"license"になった。
 次。

Favorite ファヴォリテ

 これもだいたいルール通り。ポイントはシラブルに分けてアクセントの位置を確かめること。"favorite"は、fa + vor + iteになる。"Silent e"があるけど、"ite"にアクセントがないので、shortの母音になる。"vor"もshort。そして、"fa"にアクセントが来てlongなので、「ふぇいう゛ぁりと」になる。ちなみに、"ite"は現代語ではschwaになっているようだし、"vor"はr母音ではなくr音だけになっている。
 次。

acquire 
は覚えにくかった
qがマジ曲者

 シラブルで分けると、ac + quireで、"q"は通常"u"伴って"k"の子音を示す。アクセントは二番目になるので、quireが「くわいぁ」みたいになる。で、qの前のshortの"a"を示すために、"ak"なんだけど、Centum-satem isoglossで"c"になる。
 次。2ちゃんではないけど、

フィラデルフィアは「ぴーえいちあい ラデル ぴーえいちあい ア」だお。

 というけど、これもほぼルールどおり。シラブルに分けてアクセントの位置を確かめる。delにアクセントで、fila + del + fia。可能性としては、lを重ねてfillaかもしれないが、そこにアクセントはないのでshort母音でlが一つ。すると、filadelfia。おっとこれはスペイン語。英語ではギリシア語の外来語として、fをphにするので、"philadelphia"になる。
 すべての単語がこういくかというと、発音で覚えるんじゃなくスペリングから覚えやすい単語だとたまに混乱がおきる。たとえば、"jewelry"はネイティブも戸惑う(参照)。

I always said it like "JEW-LER-REE".
Is it suppose to be like " JEW-ELLE-REE"?

 いずれにしても、英語ってどうして発音とスペリングがめちゃくちゃになってしまったのかという大きなテーマがあって、これはまた別の機会にでも。
 
 

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2012.07.18

バターチキン

 バターチキン。そう、インド料理にある、甘くてバターの香りがする、カレーといえばカレーなんだけど、まあ、アレです。英語でもバターチキンというのかふと疑問に思って調べてみたら、むしろ英語圏でそう言ってるみたい。
 パンジャブ州の料理らしく、ベンガル料理を好む私としては、西の食べ物だなあ、というかムガール料理だなあ、シーク教徒とかかなあ、とか適当な印象から遠い感じがしている。日本にあるインド料理は、やたらとナンが出てくるように西の系統が多いんだろうか。まあでも、バターチキンはたまに食べたくなる。
 で、これ、問題なんだよなと思っていたのだった。問題というほどのことではないか。でもなあ、たぶん、と思って、ググってみると、最上位に「簡単おいしい本格派!バターチキンカレー [スパイス&ハーブ] All About」(参照)が出てきたので、レシピを見ると、見方によっては間違いでもないんだろうけど、まあ、どうしてこうなっちゃうんだろうという感じがした。二番目がこれ、「バター・チキン・レシピ」(参照)。読むと、こう書いてある。


 バター・チキンは、現地ではムルグ・マッカーニーMurg Makhaniなどとも呼ばれる。もともとは香ばしく焼き上げたタンドーリ・チキンを一口大にカットし、トマトやたっぷりのバターあるいはギー仕立てのソースで煮込むパンジャブ地方の料理。基本的にたまねぎを使わないのがちょっと変わっている。
 ムンバイやデリーの一流レストランや高級ホテルのダイニングのみならず、日本のインド料理店でもよく見かけるメニューのひとつだが、たいていは生クリームやカシューナッツがきいて、ヘビーな印象のことが多い。
 このレシピはそうしたバター・チキンとは明らかに一線を画するもの。インドの首都デリーにある「カリム・ホテル」(ホテルといっても宿泊施設はない。ムグライ料理の名店として現地の食通にもファンの多いレストランだ。URLはこちら)風の味つけで、みなさんに本場の味を伝道しよう。

 なんか超本格的らしい。本場の味を伝道するのだそうだ。
 そして三番目がクックパッド「バターチキンカレー(チキンマッカニー) by プラバール [クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが126万品」(参照)である。クックパッドらしい。
 うーむ、と私は思う。この三つのどれが本当なんだろうとも、つい思ってしまうかもしれないし、どれも本物なのかもしれない。うーむ。
cover
はじめてのインド料理
HEALTHY WAY TO INDIAN COOKING
 ついで困惑を足すと「はじめてのインド料理―HEALTHY WAY TO INDIAN COOKING」(参照)に「バターチキン」が載っていない。理由はわからない。
 そもそもバターチキンはインド料理として何かというと、"Murgh makhani"なのだが、これによく似た、ある意味、英国料理に、"Chicken tikka masala"というのがあって、これと「バターチキン」がどう違うのか。
 この似ている"Chicken tikka masala"のほうだけど、"Chicken"はチキン(鶏肉)なのはそのままで、"Chicken tikka"というのは、骨なしタンドリーチキンみたいなもの。これを"masala"(マサラ)というから調合香辛料で味付けしたということだけど、ちょっと乱暴にいうと、マサラというのはカレーのことだから、ようするに「チキンカレー」ということになる。かなり乱暴か。でも、ちょっとBBCの「Chicken curry recipes(チキンカレーのレシピ)」(参照)を覗いたら、インド料理のチキンカレーは"Chicken tikka masala"という感じなので、まあ、いいんじゃないか。
 そこで、バターチキンの"Murgh makhani"とチキンカレーとどう違うのか。
 前提として当然、"Murgh makhani"の意味が重要になる。"Murgh"は鶏肉、"makhani"は"with butter"(バターソース)ということで、「バターチキン」は直訳っぽい。
 たぶん、というくらいなんだが、バターチキンは鶏肉をバター風味のソースでいただくという料理で、他方、"Chicken tikka masala"つまりチキンカレーは、タンドリーチキンをカレー仕立てにしたというものだろうと思う。
 くだくだ書いたのは、これ、どうも先の各レシピで混乱しているか、チキンカレーをバター風味にするとバターチキンということになっているんじゃないかと疑問に思っていたのだった。
 特に、日本のカレーといえばハウスなんだと思うけど、このハウスが出している「英国式バターチキンカレー」(参照)には、こう書いてあるんだよ。

にんにく、しょうがで下味をつけた鶏肉を、じっくり炒めた玉ねぎとアーモンドのまろやかな味わいのカレーで楽しむ、英国式のバターチキンカレー(チキンティカマサラ)です。

 それ、バターチキンではないと思う。ハウスとしてもわかっていて、「英国式」としているのかもしれないけど。
 どうも混乱しているんじゃないか。それって、「チキンティカマサラの作り方:ハムスター速報」(参照)のほう。
 どっちでも美味しければいいじゃんというのはあるんだけど、個人的に、味的に、拘っている点は、トマトである。「バターチキン」にもトマトは入るみたいなんだが、さっきの3レシピにあるように、あんなにトマト入れるかなあ、あんなに入れるとバターのこってり感がなあとか思っていた。
cover
バターチキンスパイスミックス
(75g3人分)
 困ったなあと常々思っていたのだが、先日、たまたま「カレーツリー」という簡易料理のブランドにバターチキンを見かけて(参照)、成分を見ると、「おおっ、トマト少なめ、タマネギたっぷり、コリアンダーのリーフがけっこう入っている」と感動したので、これはうまそうだなと思って、作ってみたら、うまかった。できあがったら、うまくて、ぺろっと食べてしまって、写真とか撮るのをすっかり失念。個人的な印象だけど、近年そこここに見かけるインド料理専門店より、おいしい感じでした。
 箱の中に入っているのはタマネギをスパイスとローストしたもので、これを定量の水で溶けとあるんだけど、けっこう溶けにくい。生クリームは別途50g必要。バターも15g必要。鶏肉はもちろん。
 調べたら他にもこのシリーズのインド料理があるみたいなんで作ってみようかなとか思った。
 
 

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2012.07.17

凍れるコミュニティー

 20代のころだったけどその状況ではその集団にとって重要な意思決定の会議みたいなものに若者の声代表みたいに出席したことがあった。発言を求められて、じゃあというので問題点を整理して回答を述べた。たぶん回答というより、解答だったのではないかと思う。で、どうなったか。ご意見承りました、次、という感じで会議は進んでいった。
 あれれ、と僕は思ったのだった。そりゃ。まあ、でもいろいろ課題があるんだろうと思って聞いていると、どうもこの会議が録画されているなら僕の発言部分をカットしてもなんら違和感がない。その先も同じ問題が蒸し返されている。それ、さっき僕が回答したじゃん、これが巻末の解答集、とかいう感じでもういちど発言しようかと思ったけど、恩義あるかたが馬鹿止めろ視線を投げかけてきたので、黙って置物になった。
 どういうことなんすか、とあとでその人に聞くと、君は会議の意味がわかってないねというのであった。会議の意味って、合理的な解答に合意することじゃないんすかというと、苦笑して若いねというのであった。若い意見が求められていたんじゃないんすかと再度聞くと、君は頭がいいけど馬鹿だねと言われた。怖い者知らずにはメリットとデメリットがあるんだがと言って会議の意味を教えてくれた。
 会議は、えんえんとやることに意味がある。参加者の腹の一物が透けてくるまでやる、というのだった。会議で意思決定なんてしても、どっかで必ず造反者が出るんだ。隙あらば状況は動く。誰がどう動くかという読みが重要なんだ。会議というのはそのためのストレステストだ。あいつは腹に一物ありそうだ。あいつはへたれそうだという顔色を確認する。できたら弱いヤツは潰していく、なんたら。
 合理的じゃないですよ、それ。そんなことしたら参加者全員が不利益になりますよ。対外的に弱体化するための集団行動なんて馬鹿そのものですよ、と僕は言った。彼は苦笑して、まあいいと言っていた。彼も結局、その後干された。
 会議について、うんざりする経験は他にもある。度重なり、僕もうんざりし、できるだけそういう会議に参加しないで年とってしまったのだけど、それでもちょっと前だったが、似たような会議に出席した。特に意見が求められるわけでもなく、僕は愚鈍なんで参加する意味もないんだけど、むしろこの年代のメンツの一人といったふうであった。そこで変な議題が出た。
 その分野については僕には知識があるので、それならこれこれのほうがいいですよと対案を発言をした。たぶん、合理的だろう。どうなったか。承りました、検討しますということだった。意見も言ってみるのだったなと思ったのだが、次回、検討結果が出て、僕の提言は否定されていた。否定された理由が項目になっていたので読んで、ははは、これは違うなと思ったので、これこれは違ってますよ、と発言したら、会議の場が気まずくなった。せっかくお前さんの顔を立ててやったのに蒸し返すんじゃないよ的な雰囲気なのである。でも、合理的な解決がのほうがみなさんのメリットですよと思っていると、これは検討されたものですし、なんたらということで結局僕の提言は否定された。採決ということで賛成しかねるなあと思ったら、僕のために全員一致とならず、それはなんか気まずいという空気だった。全体からすれば些細な話でもあるんで、どうでもいいじゃんと思うには思ったが、些細な話というのは問題が些細ということであって、会議としては些細だったのかよくわからなかった。
 似たような事例がもう一度あって。会議が凍ってしまった。僕が凍らせたということか。すまんな。深く反省した。と同時に、そういえば、こうやって若い頃随分嫌われたものだったなと思った。
 若いころひょんなことで、世界の平和のために、みんなの心を前向きにみたいな会合に参加したことがあった。宗教かよそれ、と思ったが、どうも参加者は、理想の世界のビジョンに、うるうるしているのである。そりゃ、世界がみんな善人になって正しい世界を目指せば世界はよくなるよ。中国みたいに頭のいい奴が政治権力を握って金融政策をすればその場その場では合理的な対応になる。でも、そういうのってそれほど現実的ではないだけなんだがなと、僕は置物化していったのだが、どういうわけか、決議でもないのに、挙手を求められた。僕はそんな宗教みたいな理想には賛同しませんよとじっとしていた。挙手しない人が一人くらいいても気がつかないでしょと高を括っていたのだった。見つかっていた。
 なぜなぜとうるうる組に発言を求められた。いや、みなさんの善意や正しい考え方が意味を持つためには、少しだけ悪い奴とか反論者がいたほうがいいんですよ。でないと何が善意で何が正義なのか、比較できなくなっちゃいますよ。なので僕は気弱な天の邪鬼の役です。かわいい悪魔の代弁者、なんちゃって、と答えた。凍った。
 まただ。時間が止まったように光がくっきりとしちゃうあの凍った時間。で、なんか僕へのバッシングが始まった。バッシングがどうも僕とは関係ない方向で盛り上がっていくみたいなんで、うわこれはご勘弁と思って、置物力を強化したのだった。
 その会合のトイレ休憩のときだった。君に賛成しているんだという人がぽつんぽつんぽつんといた。一人は気弱そうな人で、君くらい勇気があればいいんだけどと言った。別に勇気じゃないんですけどと思ったが、答えるのも可哀想な感じの人だった。一人はにへら笑いして、君は正論だけどこうなっちゃうとしかたないねえ、みたいな感じであった。僕もにへら笑いして、そういう君が最低だんだけどねと思ったが言わなかった。自分のほうが最低力において優るんじゃないかと思い直したのだ。っていうか、僕はいずれ、気弱になるか薄汚いなく状況に立ち回る人間になるのかな、いやはやと思ったものだった。
 
 

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2012.07.16

アメリカ先住民はどのように北米大陸に定住したのか

 アメリカ先住民はどのように北米大陸に定住したのか。この話題に関連して、先週の科学誌「ネイチャー」と「サイエンス」に新説が掲載されていて興味深かった。「ネイチャー」のほうは「Reconstructing Native American population history(ネイティブ・アメリカンの人口史再構成)」(参照)、「サイエンス」のほうは「Clovis Age Western Stemmed Projectile Points and Human Coprolites at the Paisley Caves(ペイズリー洞窟のクローヴィス時代新大陸型有茎尖頭器と人糞石)」(参照)である。
 話題は、同じく「ネイチャー」誌の一般向け報道「Genomes and fossil faeces track the first Americans(ゲノムと糞石から最初のアメリカ人を探す)」(参照)が読みやすい。
 要点は、1万3000年前のクローヴィス時代のペイズリー洞窟にある新大陸型有茎尖頭器と人糞石DNAの分析から、同時代に2つの異なる石器文化が併存したことだ。別の言い方をすると、単一文化の民族がアジアから北米大陸に移住して拡散したのではないということだ。
 これまでの主要説では、最初に北米大陸に定住した先住民族は1万3000年前のクローヴィス人であり、これが拡散し北米各地に尖頭器を残したと考えられていた。しかし近年の調査で、太平洋岸北西部からチリ南部までにクローヴィス人に先行した民族の定住遺跡が発見されている。今回、ペイズリー洞窟にある有茎尖頭器を調べるとクローヴィス人の文化とは異なり、また人糞石からはそれが年代的に同時代であることがわかった。おそらく複数の民族と文化が併存していたのだろう。
 一般向けの報道として、BBCもこの話題に注目していた。「Americas 'settled in three waves'(アメリカ人は3波で定住した)」(参照)である。タイトルからもわかるように、こちらは「3波」が強調されている。3波はどうなったか。後からの2波は言語、エスキモー・アレウト語とディネ族のカナダ・チプウィアン語に影響を残すものの、これらの話者のDNAからは、彼らがその先行波の民族に取り込まれていったようだ。DNAからの関連の度合いはアレウト語話者で50%、チプウィアン語話者で90%とのこと。通常、言語と民族は一致するものではないが、興味深い結果だ。

 なお、アメリカ先住民の定住ついては「銃・病原菌・鉄」(上巻下巻)で、懐疑的にかつ慎重に扱っているので、今後の新説の動向と比較してみるとよいだろう。
 
 

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